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雑誌をパラリと立ち読みしていたら、ヘルマン・ヘッセの写真が出ています。キャプションに「晩年、庭仕事を愛したヘルマン・ヘッセ」と書かれていました。ヘルマン・ヘッセ、「車輪の下」などで有名なドイツの作家です。私は中学の頃、ドイツ文学にすっかり魅せられた時期があります。ヘルマン・ヘッセ、トーマス・マン、シュトルム、シュテフターを読み漁り、挙句にNHKのラジオ「ドイツ語講座」まで聴き始めました。もちろん長続きはしませんでした。
ヘルマン・ヘッセは好きな作家です。1996年初刊和訳「庭仕事の愉しみ」と言う本が出ていると知り、早速ポチリとしました。庭仕事中のヘッセの写真がたくさん出ています。ストローハットにメガネ、白のシャツ白のズボン姿のヘッセはどれも楽しそうに庭仕事をしています。晩年、目の衰えで執筆の仕事が長くできなくなると庭に出ていたそうです。ドイツの家、、スイスの家、どれも畑が続くような庭にブドウを植え、花を咲かせ、それぞれを見事に手入れしています。良い土を作るための「焚き火」も欠かせない仕事の一つだったそうです。ヘッセが本の挿絵や友人に宛てた手紙に描いた水彩画も載せられています。 本の最後には数編の短編小説がありました。日本語ですので読み終わるのに二日です。
たとえ目の不調が庭仕事にヘッセを向かわせたのだとしても、その庭仕事からヘッセがもらったもの、庭仕事へのヘッセの心の向き方、それが余すところなく書かれていました。
今の時代とは違います。戦後敗戦国となったドイツでの生活は精神的に耐え難いものがあったようです。世界中がアメリカの風潮になびくことを嫌っていたそうです。一つの花から教えられること、一本の木が導いてくれること、焚き火が迷いや気持ちの高ぶりを鎮めてくれること、私も日々経験していることです。「焚き火」が恋しくなりました。昔はこの家の庭で「焚き火」をしていました。ある頃から母が消防署へ電話をしてから「焚き火」を始めるようになりました。今では焚き火は禁止です。
巻末の短編小説も心にストンと落ちる話でした。Z世代の子供達には理解できない世界かもしれません。
この本は今も文庫本で刊行されています。私は単行本の古本を手に入れました。値段が3分の1でした。おそらく以前の持ち主は読んでいなかったのではと思います。実はずっと読み続けている本があるのですが、気になる本が出てくるとポチント新しい本を入手してしまいます。あと一息、読みかけの本を読み上げましょう。
久々に琴線に触れる本との出会いでした。
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