気ままに

大船での気ままな生活日誌

岡鹿之助展

2008-06-06 10:03:27 | Weblog
梅雨の晴れ間の、その日、ボクは銀座から京橋のブリヂストン美術館に向かった。そのときも、”気の向くまま散歩”だったから、その美術館で、はっきりと、誰れそれの展覧会があると知ってての行動ではなかった。ただ、そこで、ボクの関心のある画家展があるはず(何かの情報から得たものだが)だと出向いたのだ。

岡鹿之助展であった。もし意にそわない画家の展覧会であれば、日本橋の美術館に行こうと思っていたのだが、ためらいなく、この美術館に入った。点描画法による、ほのぼのとした、というか幻想的というか、なんともいえない印象を与えてくれる岡鹿之助画伯の絵を好ましく思っていたのだった。でも、考えてみると、このように岡鹿之助展として主要な作品を一同にして観るのは今回が初めてであった。

展示構成が面白かった。題材別のグルーピングなのだ。第1章は”海”、以下、掘割り、献花、雪、燈台、発電所、群落と廃墟、城郭と礼拝堂、そして、最後の章は融合である。なるほど、年代順の構成より、こういう分け方の方が、岡画伯にはあっているなと見終わったあと、そう思った。

ボクの好みは、第4章、雪であった。中でも、”積雪”が気にいった。音声ガイドによると、この雪の白は、キャンパスの白地の感じをそのまま利用したものだそうだ。川の中州の雪、橋の雪、屋根の雪、山の雪と、画面いっぱいに拡がる雪は本物の雪よりうつくしく感じた。モネの雪、先月観たばかりの東山魁夷の雪とも違った雪だった。白と褐色が、画伯の好きな色だそうだ。そういえば、この絵もこの二色が他の色を圧倒している。

雪は、この章ばかりでなく、ほかの章の絵でもたびたび顔を出す。岡鹿之助の代表作とされる”雪の発電所”もそうだ。雪が好き、白が好き、絵をみれば黙っていても画伯の好みがわかってしまう。

そして、三色スミレが好き、これも黙っていても分ってしまうなと思った。第3章の”献花”では三色スミレのオンパレードだ。ボクが面白いと思ったのは、どの三色スミレも、花がまるで、ひょうきんな子供の顔か、かわいい子犬の顔にみえてくるのだ。ボクだけが感じていることかもしれないが、本当にそう思ったのだ。そして、岡画伯はきっと家の回りに三色スミレを植えて、愛犬のように可愛がっていたのではないかと、いらぬ想像までしてしまった。

最後の章の最後の絵が、遺作の”段丘”であった。説明によると、丘の瀟洒な家々は、画伯が住んでいた田園調布の家並みをイメージしたものだそうだ。そして、右手前にはオレンジ色の三色スミレが一鉢。それは段丘を見下ろしているのではなく、こちらに視線を向けている。この三色スミレが画伯だなということが一目で分る。でも、このスミレだけは、いつものひょうきんな顔ではなく、すました顔をしていた。お別れのサインなのだろう。

ボクはこの絵をみながら、ふと前日に訃報を知らされた、大学同級の友人のことを想った。日曜画家であった彼は、どんな絵を遺したのだろうかと、想った。今日はこれから、彼のお別れ会に出掛ける。

。。。。。

積雪


遊蝶花


段丘


コメント
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