気ままに

大船での気ままな生活日誌

鉄の井と鉄観音さま物語

2013-10-30 09:30:40 | Weblog
人形町を歩いた時、そこの大観音寺のご本尊、鉄造菩薩頭が鎌倉の鉄の井(くろがねのい)から掘り出された仏頭だったことを知り驚いた。それで、その翌日、早速、鎌倉での調査に向かったのでござった。

まず、”鉄の井”の捜査。八幡さまのそばということで、すぐぴんときた。小町通りのゴールの辺りに井戸があったはず。鎌倉十井のひとつ。やっぱりそうだった。




鎌倉町青年団による石碑に由来が記されている。


要約すると、この井戸は鎌倉十井のひとつである。水質は清らかで甘く、真夏でも水が涸れることはなかった。 その昔、この井戸から高さ5尺余りの鉄観音(くろがねかんのん)の首を掘り出したことにより、 この井戸を鉄の井と名付けた。 正嘉二年(1258)正月17日丑の時に安達泰盛の甘縄(長谷)の屋敷から出火し、南風にあおられて火は薬師堂の裏山を越えて寿福寺に燃え広がり、 総門・仏殿・庫裏・方丈など全てを焼き尽くし、さらに新清水寺・窟堂(いわやどう)とその周辺の民家、 若宮の宝物殿及び別当坊などを焼失したと吾妻鏡にある。この井戸から掘出された観音像の首は、この火災のときに土中に埋められたのを、掘り出したもので、新清水寺の観音像と伝えられ、 この井戸の西方の観音堂に安置された。明治初年、東京に移ったと云われている。

この記述から判断すると、新清水寺の位置は、寿福寺から八幡宮に向かう道沿いと推察される。たぶん、こんな位置ではないか。そうすると、鉄の井との距離はわずかで、火災後、ご本尊の仏頭を運び、土中に埋めることは容易である。


掘り出されて、西方の観音堂に安置されたとあるが、それも現存していない。ここから西方というと、幅広くとって、今の小町通りを駅方面に向かうか、川喜多映画記念館を右にみて、寿福寺方面に向かう道のどちらかだろう。

前者だとすると、現在工事前の調査を行っているここかもしれない(笑)。観音堂の遺跡が出るかも。


後者だとすると、この黒塀の川喜多映画記念館の庭園の可能性も。裏山はあるし、”古寺巡礼”の和辻哲郎旧邸もあることだし。この縁で和辻邸が東京から移されたかもしれないし。(カメラを向けている姿が写っているが、私メです


記念館のもう少し、先を行くと、雰囲気がいかにも観音堂らしい、小さなお堂がある。明治の廃仏毀釈で追いだされた鉄観音の後を襲ったのかも(笑)。崖の朝顔が見事!


さて、もう少し、詳しく知りたいなと思って、たぶん鉄観音さまが運ばれた道を行き、寿福寺から鎌倉駅方面へ。目指した先は図書館です、ここには他ではみられない鎌倉関連の資料がいっぱい。いきなりつかんだ本に、まさにこの鉄の井のことが、詳しくかつ面白く書かれていたのだ。長峯五幸著 ”鎌倉・趣味の史跡巡り”

まず、この鉄観音さま。原材料は砂鉄で、刀鍛冶も供養のため、協力したのではないかのこと。戦場に捨てられた刀、薙刀、槍も材料に使われたらしい。お首だけでも5尺もあるので、関東はおろか日本一の鉄仏であった。お顔も穏やかな、ハンサムな仏像さまで、鎌倉でも人気があったようだ。17日に人形町に行けば、拝めます。


こういう伝説がある。火災のとき、新清水寺のお堂から紫金色の光芒が立ち上がり、巨大な流星となって飛び去るのがみえた。そして、そこには首のなくなった観音様が倒れていた。時が経ち、雪ノ下の井戸の水がたいそうおいしくなり、また眼病、胃腸病などにも効果があり、たいそうな評判となった。かすかに鉄の匂いがするので、ひょっして鉄観音さまのお首が入っているのではと、井戸替えのとき、井の底を30センチほど掘ってみると、まさしくあの鉄観音さまが現れたのである。

井戸の西の方に、きれいな観音堂が建立され、お首は安置され、焼け崩れた胴も運ばれ、納められた。井戸は誰れいうともなく、鉄の井と名付けられた。観音堂と鉄の井は日増しに参拝者が多くなったのである。時が移り、江戸期に入っても、江の島・鎌倉遊覧ルートも整い、多くの旅人が訪れた。寛政9年には、あの谷文晁が訪れ、紀行文とスケッチを残している(文晁紀行鎌倉)。東大図書館所蔵とのこと。

さて、明治に入り、悪名高い神仏分離令。八幡宮寺は、ただの八幡宮となり膨大な仏像、経典などを放出した。東京から来たふたりの骨董屋さん、これは商売になると、鉄の観音様を縛り付け、由比ヶ浜に運ぶ。そして、舟で三浦半島を寄港しながら、お首を参拝させて銭儲けをしつつ、東京湾に入ったところで、仏罰で大嵐に会う。危機一髪のところ深川の御船蔵前の河岸に漂着したのだった。そして、現在の、人形町の大観音寺のご本尊になられたのであった。あの二人は、ほうほうのていで、どこかへ姿をくらましたそうな。すっかり悔い改めて、あくどい商売はやめたということだ。

以上、鉄の井と鉄観音さま物語でした。

鉄観音さまがいらっしゃる人形町の大観音寺。


。。。。。

上原、あとひとつのセーブでワールドチャンピオン!!!


むべなるかな。おんめさまのムベの実。すっかり熟れてきました。




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