1月10日(水)
昨年暮れ、スキー友達の正さんからお誘いがあった。
「志賀高原に2泊3日、源泉かけ流しの大きなホテルで、
食事もまあまあだし、宿泊費も安いんですよ。」
いろいろやり取りがあって、
我々だけ前日にゆっくり夫婦で志賀を目指した。
指導員や1級の資格保持者達は、
明日、着いてすぐから滑り始めるとのこと。
さて、目指すホテルが後50mという所に看板が立っていた。
「四駆車以外、ここから先、進入禁止。電話を下さい。」
これは正さんから
「前回、滑っちゃって立ち往生をしたから、
新しいチェーンを買ってきた。」と伺っていたので、
看板の通りお電話をした。
電話の相手が「えっ、四駆じゃないのかョ・・・
じゃ、上の広い所で待ってて。」
夫はしばらくバックして左側に寄せて迎えを待っていたら
それと思しき大きな車が、すれ違いざまに右手で前へ前へと振っている。
夫が「うん?もっと上に行くのかな・・・。」と言いながら
車をターンさせ付いて行ったら、その車は我々の方に向きを変え、
車の中から白髪の男性がこちらをじっと見ていた。
「えっ、一体どうして欲しいのかな・・・。」と、
降りて聞きに行った夫が、
戻って来て、駐車場らしき所に車を止めた。
その男性が「前に向けるんだよ。」と言い、
「荷物を出すには後からの方が出し易くありませんか。」
と私が言うと、「前で良いんだよ・・」と一言。
改めて「お世話になります、よろしくお願いします。」と挨拶しても、
うん、でもなければ、こんにちは、でもなく・・・
夫が車の位置を直そうと横に大きくハンドルを切り、
S字に動かして頭を前にしようとしたら、
「またぁ、何やってんだよぉ、あんな所まで行って・・・」
横に雪が積んであるので、
その雪に並行するように車を止めた夫に
「真っすぐだよ、道路に向かって90度だって。」
男性の車に、全ての我が家の荷物を積み終わるまで、
その人は何もせず、じっと、立って見ていた。
最後に「サイドブレーキは引くんじゃない。」と言い、
毎年スキーに来ている夫もそのことは知っていたが、
少し傾斜しているように感じて、軽く踏んだそうだ。
すかさず「何やってんだよ、地元の者の言うことを聞くんだよ!」と一喝。

ホテルに着いても、その男性は全く何もせず、
スキーをどこに運んだらよいか、
と聞いても黙って睨んでいるように見えた。

玄関の中に入ると、とっても感じの良い女性が
「いらっしゃいませ、遠かったでしょう。」と出迎えてくれた。
私はその笑顔に向かって「すっごく、感じが悪かった・・・」と
訴えたら「うちの社長です。」と言われた。
私は多分そうだろうと思っていたので、驚かなかった。
もし、私が社長ならもっと礼儀を教えるだろうし、
挨拶も出来ない人は辞めてもらうはずだから。
それにしても、
この日本にこんなサービス業の人がいるなんて、
初めて会ったし、信じられなかった。
この夜、泊り客は我々二人と、
明日、明後日は同じ仲間の四人で、六人だけとのこと。
宿の人は例の社長とその奥さんだけだった。
今夜の食事。

「御主人がこごみがお好きだと正さんから聞いていたから、
解凍して作ったんですよ。」 優しい笑顔で言われた。

この奥さんでこのホテルは持っているのだ・・・
お心の籠った食事はおいしかった。