みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

『倚りかからず』「自分の感受性くらい」/茨木のり子

2007-09-23 19:57:41 | 花/美しいもの

倚りかからず
茨木のり子



もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない 
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある

倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ



『倚りかからず』(茨木のり子/筑摩書房/2007)

自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ




「倚りかかるとすれば それは 椅子の背もたれだけ」
「倚」と「椅」の対比と言葉が好きです。



「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」
も好きな言葉です。



ちょっと疲れたときには、

野の花を愛で、

すきな詩を口ずさみます。


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コメント (6)
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