みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

千代田区議会の取り組み「清水勉弁護士の話」/区立図書館・男女共同参画センター ミュウ(1/9)

2009-01-17 11:25:07 | 市民運動/市民自治/政治
今日は、阪神淡路大震災から14年目。

14年前、早朝の「どーん」と突き上げるような揺れで目覚めたときから3日間、
テレビを見続け、情報を得たいと電話をかけ続け、
4日目にいてもたってもいられぬ思いで現地に行ったことを思い出しました。
たどり着いた現場の役所はどこも、組織として機能しておらず、
災害に弱い行政の姿をさらけだしていました。
その後、なんども救援物資を運び、被災者を受け入れましたが、
「市民のための政治っていったいなんだろう」と考え続けた毎日でした。

1月8、9日の「自治ネット」の研修の二日目は「千代田区役所」。
千代田区は人口5万人、昼間の人口は80万人という東京都の特別区。
一昨年5月に開庁の新庁舎の1階のロビーでは、
「派遣切り」で仕事をなくした人たちの相談をしているとのことで、
たくさんの人たちでごったがえし、報道陣もちらほら。

1階のまんなかには障がい者の人たちのショップ「さくらベーカリー」があります。
庁舎内のパン工房で、パンやクッキーを作って売っているとのことです。


庁舎内に、図書館や女性センターもあり、
ユニークな取り組みをしている千代田区への視察は多く、
基本的には、議会事務局が窓口になって各課と調整するとのこと。

ということで、議会事務局の職員3人が出迎えてくれました。

研修に使わせてもらう委員会室は、なんと足元にAV電源があり、
PCにも対応できるようになっています。
さっそく持参のノートPCで、メモをとることにしました。

 

最初に、千代田区議会の説明。
千代田区議会は、「区議会だより」の「議案賛否の一覧表」で
個々の議員の賛否を公開、翌日の昼にはインターネットで公開、
などユニークな取組をしているそうです。

百聞は一見にしかず。
さっそく「議場」と「委員会室」を見せてもらいました。

 

 

議場は、「投票システム」が導入されていて、
議案によっては、「賛成」「反対」の記名投票をするそうです。
  

議場として使用しない場合は、コンサートホールにも変身。


一通り、新庁舎の議会関連施設を見せてもらって、部屋に戻り、
本題の「議会と情報公開」「政務調査費の審査会の説明」を受けました。

ここまで話してよいのか、と思うほどのざっくばらんな話で、
議会改革に取り組む事務局の姿勢に好感がもてました。

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議会事務局の説明のあとは、審査会の委員にもなっている、清水勉弁護士の話。
清水さんには、情報公開訴訟でずいぶんお世話になっています。

  ●清水勉弁護士の話

 市民オンブズマンで情報公開をしてきた。弁護士でなくても情報公開の裁判は勝てるということでやってきた。通常、弁護士はお金にならないしやらない、弁護士がやるのはおもしろいから。資料などから疑問がわかり面白みがある。首長、議会がどういう考えを持っているかとは関係なく、想像力がかきたてられる。どういう提案ができるかということを意識的にやっている。
 オンブズではランキングをやっているが、もともとは情報公開の重要性を分かってもらうためで、進んだ知事の突出ぶりをアピール。都道府県レベルでは一定程度になっている。
 情報公開はニュートラルな制度なので、使い方の力量を問われる。思想なビジョンを持って、そのために情報公開を使うというのがいいかな、と思う。どこかで一定の成果が出ればよそでも使える。
 「情報公開法」ができるときに、もろ刃の剣、と言われたが、情報公開はまさに使い方による。不正を働いた人が切られていくというのは当然のこととだが順序が逆になってはいけない。
 千代田区とは情報公開条例を作る時からかかわった。調査のはじめは千代田区議会は条例はできてなかった。制度は先進的なものをつくろうという意欲はもっていた。
 制度そのものはあればよい。要は、情報公開の基本的なスタンスを持って、それを実行するかどうかということ。制度を使うのは弁護士ではなくて、関心のあるテーマについて、関心のある人が使っていく。制度自体はシンプルにして、常識的に出るものは出て、運用がよければいい。人間関係、ソフトがいいと出す側も出しやすい。
 情報公開は、現場では今まで出してないどうしようという話になり、法律の話にならないので裁判で勝つ。一般の人は判例を知らないので、だれもが何をしているかを知りたいとき、議員に丸投げではなくて、情報公開をまずして、議員と一緒に考えることができる。情報公開は、だれもが使えるシンプルなしくみで、それを実行していくのが、オンブズの仕事。
 裁判に勝つということは、役所や裁判所の意識を変えることになる。法律の素人が裁判を起こすと、全国あちこちで勝つ。高裁、最高裁で情報公開裁判で勝ったので味をしめた。自分が正しいということが裁判で証明された。お上意識は薄れて、行政、政治が住民に近くなってきた、ということ。
 裁判所にしても、それまでは弁護士が代理人になっても、行政の裁判は勝たせてはならない、ということがあって、弁護士が行政訴訟をしなくなった。裁判所も情報公開については、前向きになりうるということがわかった。裁判所でも、あなたの行政はおかしいんじゃないか、ということが、条例でわかる。裁判官の横並び、法解釈としても、そのほうが筋があると思うと、住民を勝たせざるを得ない。
 司法試験は、行政法は必須ではなかったが、いまは必須科目になった。情報公開訴訟は、訴えの利益、当事者適格がなく、誰でもできるという新しい仕組みになっている。条例がそうなっていることに行政は気づいていない。自分たちが何を通したか知らない。
 熱心な職員がひとりいると、行政を根本から変えるような条例をつくる。情報公開法ができたのは、韓国が先にできたという外圧による。自治体が先にやっていたのに、あなたたちはできないのか、ということもひとつ。
 千代田区の場合も、情報公開制度の利用度はかなり低調。政務調査費の時もかなり協力した。政務調査費を見せてもらって、裁判に負けます、とはっきり言った。市民がいなかったので、わたしから(かえるように)働きかけた。制度は使わなければないのと同じ。
 審査会の人選では、実効性のある人を選んだ。効果は情報公開請求をしてもらえば結果が見える。住民が情報公開を使って変えてもらってよい。仕組みを作って安心<ではなくて、それをどう使うか、ソフトの部分が重要。そういう人選ができるどうかだ。
 わたしは、議員の日当性を打ち出した矢祭町の仕事もしている。日当制を言い出した議員は、日常的に仕事をしている人。議員だけが高い報酬をもらっててよいのか、という問題提起をした。矢祭町の職員の研修に招かれたとき議員が10人きた。質問をしていたのは圧倒的に議員。議会では普通の対話ではありえないことをやっている。大事なことを掛け合いでやっていくということを見せると、町民の側からすれば、レベルがわかって面白い。議会がこの程度と思えば、議員に対する報酬は何だと思う。議員がかみ合った話をしてると実感できれば、議会は必要だと思う。
 ドイツの議会では職員はほとんどいない。議員同士が議論する。地域住民から選ばれたというだけで威張ってしまい、選ばれた地域のためにどのような仕事をしたかを自分で問い誇りに思う。特別の人しか議員になれないのは、民主主義から外れる。誰でも考えて発言できるのが議員。議員の利権、今までの報酬をどのように維持するか、にこだわっていては、変えられない。
 いまは百年に一度ではなくて未曾有の状況。これ以上進むと、ものすごくひどいことになってしまう。見ない、考えないようにしているという状況。政治的にも経済的にもアメリカに従属してきたので、アメリカ同様の破綻するのは当たり前。
今年、もっとひどいことが見えてくるのは覚悟したほうがいい。そんな中で、どのように再構築するかを、考える。自分たち議員が地域のために何ができるかを考える。年間数万円であっても、意味のあるお金でなくては、何のために出ているのかが問われる。
 議員の法律的な素養については、官僚と同じようには法律的な素養をつけることはできないと思ったほうがよい。2000年の自治法の大改正の前と後では違う。地方分権が進んだ状況で、1条の2で、国のことは国にがやり、地方のことは地方でやるが基本になった。法解釈も地方自治。法の解釈権も各自治体にある。議員は行政のトップの長ではなくて、地域の実情で、こういう解釈もできる、ということを言っていける。行政法に詳しい専門家を使うこともできる。ちゃんと地方自治をやりたいと思っている自治体については、応援していこうということもある。
 法律的なことは基本的な考え方を知っておけばよい。解釈を専門家に聞く、ということで、議員もそういうことを使うネットワークを持っていると、間違いなく使えるし、他の自治体はこうなっている、ということもできる。
 情報公開は民主主義に意味がある。多数決や選挙を見ても、民主主義はけっこう危うい。選挙という民主主義の仕組みからすると、いい議員が当選するとは限らない。一般の住民が、政治に参加することがなかった。戦後民主主義の失敗は、新しい制度を作るとき、今までのどこがまずくて、どう直せばよいのか、のビジョンが必要。将来変えていくという前提で、いまどういう制度を作っていくか。失敗のどこが間違っていてどう変えていくのか、の議論が必要。
 日本の裁判官は戦争に加担しておきながら、だれも処罰されていない。ドイツの裁判所は、自分たちは戦争に加担した、という反省が、裁判所の入り口にかかげてある。裁判官も、組合に入っていて、政治活動もしている。今からでも自覚的に民主主義をつくっていく。議会がそういう仕事をすることができると思う。
(2009.1.9 千代田区役所にて)


情報公開が民主主義をすすめる、という言葉に共感しました。

清水さんの話が終わったのは、お昼過ぎだったので、
休憩がてら市役所の食堂で昼食。
午後からのテーマである「千代田区立図書館」と
「男女共同参画センターMIW(ミュウ)」も下見して、
とけっこうあわただしくすごし、
14:00~図書館長のお話。

 
千代田区立図書館は、指定管理者がはいっていて、
全国的にも、ユニークな取り組みをしています。
館長は、指定管理者側の方で企画等の取り組みをアピール、
主に、指定管理者制度にメリットを強調されましたが、
行政側の話も聞いてみたかった、という気がしました。

3時からは、「男女共同参画センターMIW(ミュウ)」を見せてもらって
 国際平和男女平等人権課長から
千代田区のDV対策や相談事業の取り組み、
「第三次推進男女平等行動計画」などの説明を受けました。

議会から男女平等政策まで、9時半から5時までの、
中身の濃い充実した研修でした。
千代田区の皆さん、ありがとうございました。

オマケは、15日の朝日新聞の社説です。

 【社説】男女共同参画―身近な拠点を生かさねば
2009.1.5 朝日新聞

 男女共同参画社会基本法。長くて堅苦しいのが玉にきずだが、この画期的な法律ができて10年になる。
 女も男も、それぞれの個性や能力を発揮できる社会をつくっていこうというねらいだ。さて、その理想はどこまで実現したのだろう。
 内閣府によれば、女性の衆院議員の割合は9.4%にすぎず、国際的にみると、かなり低い。政策決定の場への共同参画にはほど遠い。
 男性の意識には変化が見られる。女性の働き方で、子育てなどの中断なしに仕事を続けるのがいいとする人が急増している。しかし、自らが家事や育児に費やす時間は、共働きかどうかに関係なく、30~40分ほどしかない。頭では理解できるが、というところか。
 一方で、女性の働き方は、子育て期の30代以降になると、パートやアルバイトといった非正規雇用の割合が高くなり、40代以降では正規雇用を上回る。中年になると安定した仕事に就けないのが現状だ。
 法律のめざす社会への道はなお遠い、といわざるを得ない。
 しかし、この歩みを止めるわけにはいかない。
 さまざまな場面にある格差を解消し、平等を実現するだけではない。例えば、少子化の解消につながることも期待できるからだ。女性が働きやすく、男性が家事参加に積極的な国は、出生率が高いことが知られている。
 法律の趣旨を自治体で実践する場が男女共同参画センターや女性センターだ。地域住民の相談や学習・啓発の拠点となってきた。
 政府の男女共同参画会議は昨秋、こうしたセンターの役割を見直し、地域の人々がかかえる具体的な課題解決に取り組むことを求めた。地域でリーダーになる女性は少なく、女性の力が十分に発揮される場面もまだ少ないといった実情があるからだ。
 先進的なセンターは、シングルマザーを対象に、スキルアップのためのパソコン講座や男性の生活自立を支える料理教室を開いたり、NPOと連携した企画を立てたりして成功している。
 盛岡市にある「もりおか女性センター」が、昨年暮れに起業講座を開いた。20代から50代の14人が参加した。
 街中で自然食の民宿を開きたいのは40代の主婦だ。「夫の転勤先の海外で知った朝食だけを出す宿にしたい」
 派遣社員で働きながら、社会保険労務士の資格をとったので、自営につなげたいという女性もいた。
 女性のパワーが、いきいきとした地域を生み出すことを予感させられた。財政難でセンターを縮小しようとする自治体も出ているが、逆にこうした活力を生かさない手はない。
 暮らしの場で存在感のあるセンターがいまこそ求められている。
(2009.1.5 朝日新聞)



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