みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

信頼できる地方議会へ(片山善博さん)/「ひらかれた議会」腰砕け(伊賀市議会)

2009-01-19 19:49:39 | 市民運動/市民自治/政治
ブログ開設5年目のさいしょの記事を何にしようと思いながら、
母と病院に行き、姉たちと合流して{函館市場」で昼食。

かえってきて、年を越したフルーツでジャムを作っていたら、
あっという間に、夕食の時間になってしまった。

と言い訳をしながら、紹介したいのは、やっぱり自治体議会のこと。

1月11日の岐阜新聞に「信頼できる地方議会へ」という
前鳥取県知事の片山善博さんの【現論】が載った。
紹介したいと思いながら、webにアップされるのを待っていたら、
一週間もたってしまったけれど、議会のことを考えるにはとてもよい記事。

「読者の皆さんにも、是非議会に対する強い関心と厳しい監視を怠らず、
併せてどんな議会であってほしいかを、じっくり考えていただくよう願っている。」
という結びの言葉を心に留めて読んで欲しい。


【現論】信頼できる地方議会へ 片山善博さん 
岐阜新聞 2009.1.11

公正、活発な"競り"を
 過日、ゼミに所属する学生が自治体議会を傍聴した。地方議会をゼミのテーマとして取り上げているからだ。キャンパスに戻ってきた学生は「質問と答弁をひたすら読み合う、まるでお経を聞いているよう」「想像を絶するひどさ」などと、彼らの驚きを報告した。
 学生たちが目の当たりにし、そのひどさに絶句した議会のありさまは、わが国では決してまれではない。むしろ一般的だと理解しておくのがよい。例えば、ほとんどの議会では、審議を行う前に既に結論を決めている。
 いきおい審議や議論は形骸(けいがい)化し、いかにスムーズに議事日程をこなすかが当面の課題となる。このため、質問者との間で答弁内容をあらかじめ一字一句すり合わせておくなどという、ばかげたことをやっている都道府県議会もいまだにあるようだ。
 そもそも議会とは一体何なのか。議会を「魚河岸のようだ」と評した人物がいる。幕末に遣米使節団の副使を務めた村垣淡路守である。彼は米国議会を見て、日本橋の魚河岸のさまに似ていると日記に書きとどめている。一国の重要事項を決する場として魚河岸のような場がふさわしいと考えていたわけではないが、存外その評は議会の本質をついている。
 というのは、魚河岸で行われるのは競りであり、議会の本来の機能も競りのようなものだからである。

 プロセス欠如
 競りには三つの要素が備わっている。まず、決定に至るプロセスを公開の場で行うこと。次に、例えば競り売りの場合だと最高の価格を提示した者が落札すること。そして、それ以上の価格を提示できなかった者は、不満があっても従わざるを得ないことである。
 同様に議会もこの三つの要素が極めて重要である。ただし、魚河岸と異なり、議会が競るのは価格の高低ではなく政策の良否である。
 では、わが国の一般的な議会を、この三要素で検証するとどうなるか。まず、あらかじめ結論を決めて開く競りなどあり得ないことは言うまでもない。次に、議員と首長がひたすら原稿を読み合うだけの作業は、政策の良否を競うこととはあまりにも縁遠い。そこでは、多くの選択肢をめぐる
真剣な議論やせめぎ合いが見られないからである。
 その結果、多数決による結論は一応得られても、合意形成に不可欠な「オープンな議論を通じた説得と納得」というプロセスを欠いているので、住民はもちろん、議場に居合わせた議員ですら、その結論に心服することはない。形骸化した議会では、せっかく決めたことが実は同意を調達していないのである。

 議員の質 高く
 もう一つ重要なことを指摘しておきたい。以上のようなぶざまな議会を疑いもなく演じている議員や首長を、住民の皆さんは果たして尊敬できるだろうか。そもそも、わが国の地方自治は代議制によって形成されている。自治体の日々の運営を住民が直接行うのではなく、住民が選んだ代表の手によって行う仕組みである。
 これが成り立つための条件は、選んだ住民が選ばれた代表を信頼し、尊敬していることにある。であればこそ、その代表が決めた事柄に住民はおおむね同意し、従うことができるのである。もし信頼がなければ、代議制が成り立つ条件は基底部分で欠けている。
 折しも、政府の地方制度調査会では議会制度改革をめぐって議論が展開されている。その眼目は、地方分権時代をにらみ、まさしく「信頼できる議員」によって構成される「魚河岸のような」議会をどうやってつくるかということである。
 当面、議会の議決事項の拡大や議会の調査能力の強化とそのサポート体制の充実などが議題としてあがっているが、最も重要な事柄は、質の高い議員をいかに増やすかという点に尽きるだろう。
 それには、現行の議員の選び方・選ばれ方にとらわれることなく、諸外国に見られる一般市民が議員に就きやすい制度の研究も欠かせないというのが、多くの委員のほぼ一致した意見である。
 この際、読者の皆さんにも、是非議会に対する強い関心と厳しい監視を怠らず、併せてどんな議会であってほしいかを、じっくり考えていただくよう願っている。(慶応大教授)
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かたやま・よしひろ 51年岡山県生まれ。東大法学部卒。自治省に入り、能代税務署長、自治省府県課税課長などを経て、99年鳥取県知事に就任。2期で退任し、07年より現職。地方制度調査会副会長、中教審委員なども務める。著書は「市民社会と地方自治」など。 
(岐阜新聞 2009.1.11)



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こちらは、「開かれた議会」頓挫、の新聞記事。

伊賀市議会は、女性の議長がリードして議会改革を進めてきたのだけど、
議長が辞めたら、このありさま。
議会の努力や監視を怠ると、すぐに元に戻ってしまうという例です。


「開かれた議会」頓挫  
朝日新聞 2009年01月13日

◇◆評価全国一の伊賀市◆◇
 全国の地方議員や市民らでつくる団体から「活動・公開度全国一」と評価されたばかりの三重県伊賀市議会が「失速」している。07年2月に全国の市議会で初めて制定した議会基本条例でうたった市内38の地区ごとの議会報告会は今年度はまだ1回だけ。市側が議員に逆質問する「反問権」は事実上封印されている。議員からは「嫌々やっている」との声まで漏れている。(吉田海将)

◆市民報告会は低調/市の逆質問封印 「嫌々やっている」議員も◆
 同市議会は先月、「開かれた議会をめざす会」(代表・吉川洋千葉県議)から、一度も質問をしなかった議員が一人もおらず、政務調査費の領収書添付と公開をしているなどとして、アンケートした全国806市区議会の中で最高の評価を得た。
 その活動の柱となる同条例は、06年度の議長が就任時に公約として掲げたもの。議会では当初、反対意見が多かったが、「質問に緊張感がない」「政策論争していない」などの市民の批判に押される形で成立した。
 制定効果はあった。07年7月の議会報告会で、市がコスト削減などを理由に期日前投票所を2カ所に減らしたことについて「投票の機会が失われる」との不満が出た。自治会連合会が市に見直しを要望。議会側が後押しし、市は昨年11月の市長選でこれまでの6カ所に戻した。
 これら議会報告会や、反問権を実際に行使した実績から、全国からの視察は2年間で2千人を超えた。
 だが、足元は揺らいでいる。
 「厳しい財政状況について議会報告会を開いて市民の意見を聞くべきだ」
 「議会報告会は一度実施した。今年度はもういい」
 昨年12月24日の市議会閉会日。一般会計補正予算案などの主要議案が粛々と可決された後、議会改革に熱心な議員らが提出した「議会報告会を推進充実する決議案」をめぐり、激しい応酬があった。
 条例と実施要綱では、議会報告会を定例会後に毎回開き、38地区を1年間で回ると定めている。決議案は、規定通りの実施をうたった。
 07年度は定例会ごとに開いたが、今年度は6月議会後にまとめて38地区を回っただけで、定例会ごとには開いていない。実施要綱には拘束力はないという。
 決議案も、賛成は31人中11人で、否決された。提案者の一人、本村幸四郎議員(公明党)は「1年を通して開催しないと、市民の声を市政に反映できない」と、有志で報告会を開く方針だが、反対した議員の一人は「報告会は住民につるし上げられているようで嫌だ」と語る。
 また、市の懸案事項について議員全員が議論する政策討論会は今年度は1日のみ。07年度は3日だった。
 議員の質問への反問権が与えられた市側も及び腰だ。
 07年9月議会の一般質問で、議員が「(市の教育方針を示した)憲章の精神を生かす学校や家庭での取り組みは」と質問したところ、味岡一典教育長は「こうしたらいいんじゃないかという施策をお持ちだと思います」と逆質問した。
 議員は「受けて立たねばならない」と述べたうえで、「我が家の決まり、家訓コンクール事業(の実施)は一つの方法かと思います」と応じた。
 しかし、市が反問権を行使したのはこれを含めて3回だけ。味岡教育長が、市の校区再編の対案を求めたのと、前市長が防災施策についての質問の内容を確認するために使っただけだ。
 ある市幹部は「議員が答えられないような反問をすれば、議案に反対されるようなことが起きるのではないか」と心配する。森岡昭二議長は「『議員に恥をかかせたらまずい』という遠慮があるのだろう」と推測する。
 広瀬克哉・法政大教授(自治体学)は「議会報告会も反問権も、制度があることと実際の運用内容は別問題で、当初より明らかに後退している。有権者は、条例に対する議員の姿勢を選挙の投票の際の判断材料などとして重視する必要がある」と話している。
◎【伊賀市議会基本条例の主な特徴】
・市民への議会報告会の開催(7条)
・質疑応答で一問一答形式の導入。市長らの反問権の付与(8条)
・重要な政策で、政策の立案理由や背景、財源措置など7項目の提出を要求(9条)
・議会内の政策討論会の開催(12条)
・委員会による出前講座の開催(13条)
(2009. 1.13 朝日新聞)


明日は、「公開シンポ『ニーズ中心の福祉社会へ:
当事者主権の次世代福祉戦略』を読み解く」
を聴きに、東京に行きます。


次の「議会編」では、12月と1月に放映された、
<サンデープロジェクト「地方議会を変える」1,2>を紹介しますね。


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