みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

WAN衆院選女性政策政党アンケート/『電網参謀』高橋茂/8.12から「毎日jpえらぼーと」

2009-08-09 17:42:55 | 選挙関連
けさの日曜日の朝刊各紙の一面は、いずれも全国知事会の評価特別委員会の、
自民、公明、民主3党がマニフェストに掲げた「地方分権」政策の採点結果のこと。
公明党、自民党が民主党を上回っているのは、民主の財源確保に不安があるから減点とのこと。

「マニフェスト」は、今度の衆議院選挙後の「これからの政権公約」なんだけど、
自公政権で、地方分権がちっともすすまない、「過去の実績」は考慮しなかったのだろうか。
とはいえ、地方分権がすすむのはよいことだ。

公約はおうおうにして選挙のときだけのものだけど、
各政党は、選挙が終わっても「政権公約」を守ってほしいものだ。

【政治】 分権公約採点、自公が民主上回る 知事会の評価特別委
中日新聞 2009年8月9日 00時16分

 全国知事会(会長・麻生渡福岡県知事)は8日、自民、公明、民主3党が衆院選マニフェスト(政権公約)に盛り込んだ地方分権政策に対する採点結果を発表した。100点満点で、自民が60・6点、公明が66・2点で、地方財源の確保策が懸念された民主の58・3点を上回った。
 知事会政権公約評価特別委員会の古川康委員長(佐賀県知事)は都内で開かれた発表記者会見で「比較的、点数が似通っていた。3党とも合格点と思われる点数がついた」と述べた。
 知事会独自の評価基準で初めて実施した採点には特別委の29知事が参加、平均点を出した。
 8項目の加点項目の合計では、民主が自民を上回っていたが、地方財源の確保に不安がある場合の減点項目で最大のマイナス5・5点となったことが響き、3党で最下位となった。
 知事会が分権推進の主戦場として最高の30点を配点した「国と地方の協議機関の法制化」では、3党で唯一公約に明記しなかった民主が18・2点で、自民の16・9点を上回った。知事会側は民主が公開討論会で追記を明言、さらに統治機構改革への地方参画を表明したことを評価した。
 一方、各10点のその他の7項目では、民主は地方消費税の充実など地方税財政関連の2項目で3点台と厳しい評価。自民は補助金見直しなど4項目で民主の得点を下回 (2009.8.9共同)


全国知事会は「地方分権」政策についての採点をしたが、
6月に発足した、WAN(ウイメンズアクションネットワーク)は、
8月7日(金)、8日(土)に各党(自民、公明、民主、社民、共産、国民新党)に、
女性政策についての「WAN衆院選女性政策政党アンケート」を送付したとのこと。
回答が届けば、有権者がそれぞれ重視する政策で、政党を選ぶ目安になるだろう。
【特設:衆院選】政党アンケート全文

一方、
前回の2007年の参院選で「毎日ボートマッチ(えらぼーと)」を実施した
毎日新聞は、8月12日から、衆院選「えらぼーと」を実施すると公表。
先行する読売新聞の「ボートマッチ」と比べるのが楽しみです。

えらぼーと:8月12日開始「政党選ぶ有効ツール」監修委
毎日新聞 2009年7月30日

 毎日新聞は、インターネットを通じて衆院選の争点を知るサービス「毎日ボートマッチ(えらぼーと)」を8月12日にスタートする。それに先立ち、設問の公平性などをチェックする監修委員会議を30日、毎日新聞東京本社で開いた。監修委員からは「今回は初めて本格的なマニフェスト選挙。えらぼーとは政策で政党を選ぶのに有効なツールになる」との指摘が出た。
 「えらぼーと」は、有権者が選挙の争点に関する設問に答えることで自分の考えと各政党候補者の主張を比較できるサービス。07年の参院選では40万人の利用があった。実施にあたっては、片山善博慶応大教授(前鳥取県知事)、曽根泰教慶応大教授、松本正生埼玉大教授に監修委員を委嘱している。
 監修委員による意見交換では「今回は『誰が議員になっても同じ』と言う人が少ない。有権者の意識は変化している」(曽根氏)、「イメージだけで投票せず主体的な選択を」(片山氏)、「1票の重みを感じて投票してほしい」(松本氏)など、有権者の主体的な投票に期待が示された。
 「えらぼーと」は、毎日jpと携帯サイトで提供する。今回は参院選時に寄せられた利用者の要望に応え、新たな機能を大幅に追加する。【田村佳子】

【関連記事】
衆院選「えらぼーと」実施について
毎日新聞 2009年7月30日 18時55分(最終更新 7月31日 10時44分)
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衆院選「えらぼーと」実施について

 毎日新聞社は、衆院選において、新機能を追加した「毎日ボートマッチ(えらぼーと)」を8月12日からユーザーのみなさんに提供する予定です。
 えらぼーとは、政治の争点に関する質問に答えてゆくと、自分と政党、候補者との考え方の一致度を数値で知ることができる仕組みです。
 毎日新聞社が2007年の参院選で日本のメディアとして初めてボートマッチを実施し、20代、30代を中心に約40万人が利用しました。「争点がよくわかった」「投票の参考になった」と好評を得ました。
 毎日新聞社では、衆院選、参院選などの国政選挙前に立候補者に対して、選挙の争点に関するアンケートを実施していますが、この候補者アンケート結果がえらぼーとの基礎データとなっています。
 ユーザーが同じアンケートに答えることで、政党や立候補者との一致度が分かるわけです。
 今年の総選挙は日本の将来を左右する非常に重要な選挙になるといわれています。来るべき総選挙を控え、雰囲気に流されず、じっくり政策を吟味し、未来を託すべき信頼できる政治家を選びたいものです。
 前回の「2007年参院選版えらぼーと」を公開しています。未体験の方はぜひ一度トライしていただき、衆院選前にえらぼーとを体感してみてください。

 ■BS11デジタルの報道番組「INsideOUT」(2009年6月26日放映)で紹介されました
 ■2007年参院選ボートマッチ
 ■2007年参院選ボートマッチ検証・2007年8月11日付紙面から

 ※「ボートマッチ」とは
 英語のvote(投票)とmatch(調和すること)を組み合わせた言葉。インターネットで展開する「ボートマッチ」は、有権者に自らの考え方に“調和する”政党を知ってもらい、選挙の投票に役立てるツールとして主に欧州で普及している。
 発祥地はオランダで、心理テストの発想から生まれた。中立の非政府組織(NGO)、「政治参加センター」(アムステルダム)が市民の政治への関心を高めるために開発し、89年に紹介。当初は紙上で利用する二者択一回答の単純なものだったが、94年にデジタル化されてから回答の選択肢も増えた。
 98年の同国総選挙でインターネット版が登場して注目を集め、広く普及。02年、03年の総選挙ではそれぞれ200万人以上が利用した。
 現在もっとも積極的に活用しているのはドイツ。実施主体の「連邦政治教育センター」(ボン)が各メディアと連携し、公共第二テレビ(ZDF)や有力誌「シュピーゲル」など主要メディアが自社のウェブサイト上でボートマッチを展開。02年の導入以降、国政選挙を中心にさまざまな選挙で毎回実施され、利用者は各メディアを合わせて延べ1000万人を超えている。 


《勝間和代のクロストーク》でも、毎日jpの「えらぼーと」のおすすめ。

《勝間和代のクロストーク》
◇マニフェストから政治家の個性を見抜く努力をしよう

毎日新聞 2009.8.9

 今回は、候補者のどの点を見れば私たちが、より信頼できる政治家を選ぶことができるか、提案したいと思います。
 18日の衆院選公示を前に、各政党からのマニフェストが出そろいました。どの党もそれなりに調査し、それなりの政策を掲げているので、教育の充実、格差の是正、公務員改革、税金の無駄遣い防止、介護の充実、少子化対策、雇用の安定、環境問題の推進など、素晴らしい言葉が並んでいます。
 しかし、私たち国民の視点から見ると、各党のマニフェストの内容の違いがわかりにくいのです。また、これまで、十分な成果を上げてきた、あるいは国民が実行状況に納得してきたかというと、そうではないと私は考えます。
 例えば、自民党は「政権公約05の実施状況」で、マニフェスト120項目について、どこまで達成したかということをABCランクで評価しています。Aは達成、Bは着手中、Cは未着手ということで、それぞれ、55件、65件、0件となっています。この実施状況の説明について、私は下記の二つの点で不満を感じました。
 (1)AとBの区別が明確でない。公約の時点で、明確なゴールが設定されているものと、抽象的な目標にとどまるものが混在している。(2)非常に細かい33ページにわたる表組みの文書になっており、わかりやすく読める仕様になっていない。
 すなわち、「がんばっています、でも全部はできませんでした」という形で、アリバイ的に使われているように見えてしまうのです。
 各党のマニフェストの開示状況にも大きな違いがあります。例えば、ある政党はバリアフリーをめざして、音声版や点字版なども用意して、図表や数字を豊富に使って説明しています。「どれだけ国民と継続的にわかりやすく話をしようとしているか」がここから透けて見えます。さらに、同じ党であっても、必ずしも各政治家の意見は同じとは限らず、候補者ごとのばらつきがあることにも注意する必要があります。
 したがって、私のお薦めの政治家選びの方法は、以下の二つになります。(1)政党のマニフェストについては、内容だけでなく、どれだけ国民にその内容を知らそうとする努力や継続的な対話をする姿勢を示しているかを見る。(2)政党のマニフェストだけでなく、候補者自身にどのような独自提案があるか、ばらつきがあるのかを見る。
 (1)については、各党のホームページで、マニフェストを見極めてください。(2)については、ボートマッチと言われる、私たちの意見により近い候補者を見つけるシステム(毎日jpの「えらぼーと」など)もありますので、ぜひ、使ってみてください。みなさんの意見をお待ちしています。



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8月4日の朝日新聞には、「若者よ、選挙に行こう」の大きな記事。

若者よ、選挙に行こう
 20年、30年後の未来につながる一票を--。政治が若者に冷たいのは、投票率が低いせいだと感じた20代、30代が立ち上がり、衆院選を前に、投票に行くきっかけ作りやマニフェスト作りに取り組んでいる。インターネットなどを使って同世代の無関心層に訴え、投票率アップをめざす。
(森川敬子、松浦祐子)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (略)・・・・・・・・・・・・・・・
同世代向け 独自案も  [マニフェスト]

投票率を上げるためだけではなく、政策課題に若者の声をもっと反映させていこうという動きも始まっている。
 「各政党のマニフェストには、驚くほど若者世代向けの政策がない、数年に一度の選挙。若者も自分たちの国のことを考えていこう」
政策課題に取り組むNPOなど22団体でつくる「Brand New Japan」(BNJ)が2日、都内で開いた若手討論会「真夏のポリシーフェスタ」で、幹事の坂田顕一さん(32)がこうあいさつした。
 坂田さんは就職氷河期世代。同世代には非正社員で働く人も多い。今の政策は若者世代に不利にできていると思うが、ただ政治に反対を唱えるのではなく、建設的な議論が必要だと感じてきた。
 討論会では、市民の立場から地方分権を考える「道州制.com」や、世代に特化した問題を扱う「世代政党」のあり方を検討する武蔵大のゼミの取り組みが発表された」。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・
(朝日新聞 2009.8.4)


朝日記事にとりあげられている「武蔵大のゼミの取り組み」は、
「市民と政治をつなぐサイト(P-WAN)」のメンバーでもある、高橋茂さんのゼミ。
最近、『電網参謀』を刊行し、『公職選挙法の廃止』にも執筆されている。

  
電網参謀 『デジタル軍師』が語る自伝的ネット戦略論」
(高橋茂/第一書林/2009)

詳細
序章 ネット戦デビュー 2000年長野県知事選
第1章 『ネット参謀』の波紋=全国の議員に向けて
第2章 公選法とネット戦略=全国の候補者と有権者に向けて
第3章 世代政党『快晴』=全国の若者に向けて
第4章 市民メディア=全国の市民記者に向けて
第5章 有料ネットサービス=情報のプロに向けて
第6章 地域政党『新しい信濃の国』=全国の有志に向けて
著者紹介
高橋茂[タカハシシゲル]
1960年長野県上田市生まれ。電子楽器のエンジニアだった2000年、偶然長野県知事選に関わったことがきっかけとなり、音楽の世界からインターネットと政治の世界に方向転換する。2002年、株式会社アイランドボイス設立。2004年、インターネット新聞「JanJan」に企画・技術サポートとして参加。2005年独立し、株式会社世論社を設立。2006年選挙情報データベースサイト『ザ・選挙』立ち上げサポート。2007年、コラムニスト勝谷誠彦氏のメール配信を開始。長野県にて地域政党『新しい信濃の国』設立。2008年より、武蔵大学社会学部非常勤講師。現在、株式会社世論社代表取締役。政治家、政治団体や市民活動などの活動サポートや、ネットメディアのコンサルティングをベースとして、講演や執筆も行う


ちなみに、
高橋茂さんには「P-WAN」サイトの製作をお願いしています。


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『なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか』今枝仁/裁判員裁判:初の判決

2009-08-09 00:16:19 | ほん/新聞/ニュース
注目の裁判員裁判の初判決が8月6日の午後に出た。
判決は懲役15年。求刑16年より1年少ない。

裁判員裁判:初の判決 被告に懲役15年 裁判員、会見で重圧語る
毎日新聞 2009年8月7日

 ◇主婦にできるか不安だったが皆と成し遂げた
 東京都足立区の殺人事件を巡る全国初の裁判員裁判で、東京地裁(秋葉康弘裁判長)は6日、隣家の女性を殺害したとして殺人罪に問われた藤井勝吉被告(72)に懲役15年(求刑・懲役16年)を言い渡した。公判を終えた裁判員6人、補充裁判員1人は、判決後に全員が匿名で記者会見。ピアノ教師の女性(51)は「いろいろ話し合う中で(判決を)決めた。不安というか心が揺れて大変だった」と、重い選択に市民が加わることの難しさを語った。一方で裁判員らは重責を果たした充実感もにじませた。
 裁判員と補充裁判員を務め終えたのは、38~61歳の男性3人と女性4人。5人が撮影にも応じた。
 女性契約社員(38)は「私みたいな一般の主婦が裁判に参加できるか不安だったが、皆さんと一つのことを成し遂げた」と語った。
 一方、補充裁判員として選ばれ、3日目から裁判員として審理に加わったアルバイトの男性(61)は「人のすべての自由を奪う重大な結論を出さなければならない」と重圧を説明した。そのうえで「被告、被害者のことを考えた。こういった社会がどうしたら少しでもなくなるんだろう。興奮してきてちょっと泣きました」と、判決前夜の心境を振り返った。
 検察、弁護側の立証や、判決を決める「評議」の雰囲気に関しては、高く評価する声が相次いだ。補充裁判員の男性会社員(38)は、双方の立証方法を「(必要な)情報を漏らすことなくまとまっていた。ビジネスに使うプレゼンテーション用資料に近い」と話した。評議も「堅い雰囲気と予想したが、(大学の)ゼミのようで素直な意見交換ができた」などの感想が続いた。
 公判日程については「4日あれば理解できる」「与えられた時間でやるしかない」と受け止め方は分かれ、男性会社員(43)は「複雑で証人が多い事件や死刑が絡むようだと4日間では日数が少ない」と指摘した。裁判員は生涯、評議の内容を話してはならない守秘義務が続くが、全員が「守ります」と述べた。【銭場裕司】

 ◇求刑16年に懲役15年
 判決は、最大の争点となった殺意の強さについて、検察側の主張を全面的に採用した。「『ぶっ殺す』と言う被告の声を聞いた」などと証言した近所の住民3人の証言について、判決は「信用性が高い」と指摘。「強い攻撃意思を持っていた」と強固な殺意も認定した。
 藤井被告は「被害者から『やるならやってみろ』と言われた」と主張したが、判決は「信用しがたい」と退けた。動機は「被害者に憤りを感じていた中、文句に言い返されて怒りを爆発させた」と認めた。
 量刑の理由について「身勝手で短絡的。遺族は厳罰を望んでいる」と指摘。反省の弁を述べたことも酌んだとしている。
 判決によると、藤井被告は5月1日、自宅近くの路上で、韓国籍の小島千枝(本名・文春子)さん(当時66歳)をサバイバルナイフで3回刺し殺害した。【安高晋、岩佐淳士】

 ◆同じくらいの年なら理解されたかも--被告
 ◇主張認定されず--弁護側
 「被告の言い分が認定されなかった」。弁護側の伊達俊二弁護士らは記者会見で、残念そうな表情を浮かべた。
 伊達弁護士は判決直後に被告と接見した。6人の裁判員は被告よりすべて若かった。藤井被告は「裁判員が自分と同じくらい人生経験を積んだ人だったら、考えを分かってもらえたかもしれない」と話したという。

 ◇理解得られた--検察側
 判決後、東京地検の谷川恒太次席検事は東京・霞が関の庁舎で記者会見し、「新たな制度の下で工夫に努めた検察の主張、立証に裁判員のご理解が得られた。今回の経験を踏まえ、分かりやすく、迅速、的確な主張、立証に一層努めたい」とのコメントを発表した。

 ◇裁判員に感謝--裁判長
 秋葉康弘裁判長は判決後「裁判員・補充裁判員の方々には熱心に参加いただき、大変感謝しています。制度の目的にかなった充実した裁判であったと考えています」とのコメントを発表した。
==============
 ◇おことわり
 裁判員法は裁判員や補充裁判員を特定する情報の公表を禁じており、公判中は匿名で報じるなど配慮してきました。裁判が終わり任を解かれると、本人の同意があれば、氏名や写真などを掲載することが可能になります。同意が得られた範囲で報道します。
毎日新聞 2009年8月7日 



   初の裁判員裁判、殺人罪被告に懲役15年判決 東京地裁
 朝日新聞 2009年8月6日22時24分

 東京地裁(秋葉康弘裁判長)で3日から始まった全国第1号の裁判員裁判は、最終日の6日、殺人罪に問われた無職藤井勝吉被告(72)に対し、裁判員6人と裁判官3人が一緒に話し合って決めた懲役15年の判決が言い渡された。市民の常識や感覚を刑事司法に反映させることを目的に導入された裁判員制度。初めての判決で裁判員らが選択したのは、検察側が求刑した懲役16年を1年下回る刑だった。
 裁判員らは3日午前に選任され、午後から連日の審理に臨んだ。5日午後から判決を決める非公開の「評議」に入り、6日まで評議を継続。午後、法壇に再び9人全員で並び、裁判長が被告に判決を宣告した。
 判決は、藤井被告が5月1日午前11時50分ごろ、東京都足立区内の自宅の斜め向かいに住んでいた整体師小島千枝=本名・文春子=さん(当時66)を口論の末にサバイバルナイフで刺殺したと認定した。審理では「殺意の強さ」をめぐって検察側と弁護側が争ったが、判決は検察側主張に沿う形で事実を認定。「ぶっ殺す」と叫んで被害女性の胸や背中を深く突き刺したことなどを挙げて「強い殺意」があったと認めた。
 そのうえで「人の命を奪った結果は誠に重大」「遺族の悲しみは深く、厳しい処罰を望んでいる」と量刑にあたって考慮した点を述べた。
 被告・弁護側は量刑を不服として控訴する方向で検討している。控訴審には市民が加わらず、裁判官だけで審理される。最高裁の司法研修所は「一審の結論を控訴審はできるだけ尊重すべきだ」とする研究報告書をまとめている。(向井宏樹)
朝日新聞 2009年8月6日


人は人を裁くことができるのか。
そんな問いを抱えながら読んだ一冊の本。


なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか
(今枝 仁 /扶桑社 /2008)
 

わたしたちが、日々、見聞きしている犯罪報道について、
刑事弁護人の存在意義について、深く考えさせられた。

著者の今枝仁氏自身が、「答を簡単に求めてはいけない」と述べているが、
なにが真実か、わたしにもよくわからない。
きっと見えている事実は、ひとによって違うのだろう。

安易な報道に振り回されることなく、自分で考え続けることはしたい、
読んだ人に「あなたはどこに立つのか」と問いを突きつけ、たじろがせる
という意味のある、良書だ。

この本を読んで、晩年の親鸞の和讃の結びのうたを思い浮かべた。

 とめるものゝうたえは いしをみづにいるゝがごとくなり
ともしきものゝあらそひは みづをいしにいるゝににたりけり


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 『なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか』今枝仁
私たちこそ何者なのか
2008年6月2日 読売新聞

 「魔界転生」「復活の儀式」等の荒唐無稽(こうとうむけい)な新供述に、日本中が牙を剥(む)いた光市母子殺害事件の差し戻し控訴審。その弁護団を途中解任された今枝仁弁護士が、この事件と大弁護団、そして加害者の元少年とどう関わり、何を見てきたかについて自ら書き綴(つづ)ったのが本書である。
 この陰惨な事件の加害者を守るという職務に、著者は終始悩み、葛藤(かっとう)しながらも、元少年と接見を重ね、同じ人間としての立場でその声に耳を傾けてきた。父親からの凄(すさ)まじい暴力と、それに生涯脅かされて自殺した母親との、性愛関係すれすれの結束とにがんじがらめにされた彼の生育環境がつまびらかにされ、「不遇な生い立ち」という平板な表現から想像されるレベルをはるかに凌(しの)ぐその悲惨さに、震えが走る。
 何が真相かは、本書を読んでも認定できるとは言えない。しかし一連の報道を通じて私達はすでに全ての事実を把握しているかのような錯覚に陥ったまま、すんなりと被害者側に自分を同一視し、怒り、吠(ほ)えた。そのことの奇妙さが、読むごとに浮き彫りになってくる。
 仮に、元少年が被害者宅を訪れた目的は「人と話がしたかった」からだ、という新供述の中にも真実の断片があるとするならば、虐待に晒(さら)された子供が、健康な精神的成熟も為されないまま、人恋しさを引き金に二人の命を奪うという蛮行に至るまで、何の手を打つこともできないような社会を支えている私達は、一体何者だろう。私達が自分を重ねるべきは「怒れる被害者遺族」の側ばかりではなかったかもしれない。
 4月22日、広島高裁は新供述を「信用できない」とし、死刑判決を下した。職務とはいえ結果として遺族の心を傷つけてしまったことへの謝罪を繰り返しながら、今後も全力で元少年を支えると誓った著者の決意は揺らいではいないだろう。いつの間にか「私」を見失い、非のない立場に乗り移ってやりすごそうとしていた自らの欺瞞(ぎまん)と危険性に気づかされる一冊だ。
 ◇いまえだ・じん=1970年、山口県生まれ。広島弁護士会刑事弁護センター副委員長。
扶桑社 1500円
評・西川美和(映画監督)
(2008年6月2日 読売新聞)




記事書評『なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか』今枝仁著、扶桑社
内外タイムス 2008年06月25日(水曜日)

 4月22日に広島高裁より死刑判決が言い渡された「光市母子殺害事件」。事件を担当した弁護団は、この裁判を死刑廃止運動のために利用し「復活の儀式としての遺体レイプ」とふざけた主張を展開し、各メディアから“悪魔の扶助者”として徹底的に叩かれた。橋下徹大阪府知事にテレビ放送で「あの弁護団に対して懲戒請求をかけてもらいたい」とまでいわれた弁護団の一員であった著者が、今すべてを口にする。

 当時18歳だったF少年との出会いから始まり、少年を狂気の犯行へと駆り立てた複雑な生い立ちを紹介する。乳児期の事故から斜視となり、学校ではイジメの対象に。家庭に帰れば、父による母と自分へのDV。
 それは文中で語られる著者の過去とも重なる。模試では全国3位のエリートだった著者も、中学校で挫折を味わってからは、引きこもり、入院、自殺未遂…。泣き虫弁護士が自分をさらけ出しながら、事件の真相をつづった。(税別1500円)
内外タイムス 2008年06月25日


『なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか』を読んで
janjan 黒井孝明2008/07/18


「光と影」光市母子殺害事件弁護団の300日(東海テレビ)


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