みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

ケアの社会学「第14(終)章 次世代福祉社会の構想」上野千鶴子(『atプラス 01』)

2009-08-22 06:00:00 | ジェンダー/上野千鶴子
『atあっと』1号から連載されてきた上野千鶴子さんの「ケアの社会学」も16回目。
書名も『atプラス』にかわった今回の「次世代福祉社会の構想」がいよいよ最終回です。

最後の号が出たと上野さんに聞いてすぐに、本屋で探して買ってきた。

<連載>ケアの社会学「第14(終)章 次世代福祉社会の構想」  
 

毎号20ページ近いボリュームで、読み応えがありましたが、
結びの14章も、1から7節まで。
4 ニーズ中心の福祉社会へ-「社会サービス法」の構想、から、
5 老・障・幼の統合へ、6 だれと連帯するのか?
7 当事者運動へ向けて、は、これからの社会への提言である。

昨日、紹介した上野さんのインタビュー記事の結びのことばは、
「超高齢社会では、すべての人が必ず弱者になる。団塊は人口が多い。集団として弱者という自覚を持てば、変化の希望があるかもしれない」というものだった。 

「ケアの社会学」の最終章「次世代福祉社会の構想」の結びも、
「超高齢社会はすべての人々に遅かれ早かれ「依存的な存在」、すなわち社会的な弱者になることを予期させずにはいない。加齢はだれにも平等に訪れる。時間という資源だけはすべての人々に平等であり,そしてだれにもコントロールすることはできない。社会的強者と弱者の境界が撹乱され、だれもが自分が弱者であることを受け入れなければならなくなるときが来れば、リスクと安全の再配分に対するニーズは不可避に高まるだろう。そのための社会的合意が、前世紀の末、97年に介護保険法の成立というかたちで達成されたことは、わたしたちに「社会連帯」にたいする希望を与える。
 「依存的な存在」をめぐるありとあらゆる社会的な課題は、高齢者だけでなく、女性、子ども、障害者、病者などを横断して「ケア」の課題のもとに合流しようとしている。「ケア」の思想と実践とは、超高齢社会を生きるすべての人々にとって必須の課題なのである。(完結)
で、社会的弱者の連帯を呼びかけている。

思えばわたしは、強者になりたいと思ったことは一度もなかった。
わたしが市民自治の分野でずっと思い続けたことは、
こども、女性、障がい者、マイノリティの「弱者の政治を実現したい」、つまり、
「弱者が弱者のままで生き延びることができる社会システムをいかにつくるのか」ということだった。
上野さんの「ケアの社会学」を読みながら感じたことは、希望はまだある、ということ。
そして、その希望をかたちにしていくのは、わたしたち自身だということ。

連載を読み終えて、「ケアの社会学」が、単行本になって出るのが待ち遠しい気持ちです。

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『atプラス』創刊号、他の記事も読み応えがあります。
ぜひお買い求めになって、お読みください。

『atプラス』 創刊のお知らせ
2009.7.21/at/「atプラス」編集部

2009年8月5日、太田出版より「思想と活動」をテーマにした雑誌『atプラス』が創刊されます。

事象を原理的思考と歴史性から読み解く「思想」と、多様な人びとの協同から生み出される「活動」に焦点をあてます。
たとえば新創刊号の特集「資本主義の限界と経済学の限界」では、岩井克人氏には資本主義の原理的考察から明らかになる「資本主義の不都合な真実」とその不都合を乗り越えるための「倫理」を、水野和夫氏には13世紀以降の金利の変遷から現代が歴史の転換点であるという指摘を、稲葉振一郎氏と権丈善一氏には経済学と経済学者の限界と可能性を、湯浅誠氏と白石嘉治氏には"市場"論理に対抗する市民社会を作り出す活動のあり方を書いていただきました。
今後とも皮相的な分析とは一線を画し、「モノゴトを根本的にとらえなおす」ことを基本に若い書き手を加えて、活発に問題提起を行っていきます。

◆『atプラス 01』目次
<特集>資本主義の限界と経済学の限界
○資本主義の「不都合な真実」/岩井克人(経済学者、評論家)
○ケインズの予言と利子率革命/水野和夫(三菱UFJ株式会社参与、チーフエコノミスト)
○100年に一度や二度は起きても不思議はない普通の「危機」についての、ひどく常識的な結論/稲葉振一郎(明治学院大学社会学部教授)
○政策技術学としての経済学を求めて/権丈善一(慶応義塾大学商学部教授)
○我は如何にして活動家となりし乎/湯浅誠(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、反貧困ネットワーク事務局長)
○反資本主義のエナルゲイア/白石嘉治(上智大学他非常勤講師)

<コラム>
○フェア・トレード研究における制度派経済学の役割/辻村英之(京都大学農学部研究科准教授)
○西行と往生=断食死/山折哲雄(宗教学者、評論家)

<連載>
○<活動>へのアート「マイケルとマルクス」/岡崎乾二郎(造形作家、批評家)
○ケアの社会学 「次世代福祉社会の構想」/上野千鶴子(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
○『世界共和国へ』に関するノート 「権力論(承前)」/柄谷行人(批評家)
○生活クラブと私の魂胆 「六八年革命の流れに掉さして」/岩根邦雄(生活クラブ生協・東京、埼玉、千葉、長野顧問)
○ポストオリエント 「平滑空間」と「長期持続」のあいだ/山下範久(立命館大学国際関係学部准教授)
○デザイン覚書 「階層のインターフェース」/鈴木一誌(ブックデザイナー)


『atプラス 01』といっしょに買った、信田さよ子さんの『選ばれる男たち』。
信田さよ子さんのblogて゜も、紹介されています。

順調なすべり出し(信田さよ子blog)


『選ばれる男たち―女たちの夢のゆくえ』(信田さよ子/講談社現代新書)
内容紹介
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妻を見下す夫。正義を振りかざす夫。妻の話は無視する夫。挙げ句、妻に守ってもらおうとする夫たちに、女たちは反乱の声をあげる。人気カウンセラーによる衝撃の「男の実態、女の本音」。

妻を守る男はほとんどいない、というのが私のカウンセラーとしての実感だ。でも、守らないだけならまだいい、あきらめればいいだけの話だから。もっとたちの悪いことに、彼らは妻から守ってもらおうとするのだ。それも威張りながらである。――<本文より>
目次
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プロローグ おばさんも仲間に入れてほしい!
第1章 妻たちの反乱――夢の男を求めて
第2章 今度生まれてくるときは
第3章 正義の夫、洗脳する夫
第4章 選ばれる男の条件
エピローグ 草食系男子はホンモノか?


新書版で読みやすい本です。

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