みどりの一期一会

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揺らぐ二元代表制 強い首長の権限/改革進まぬ議会/社説:2011扉を開こう 「地域自決」にかじ切る時

2011-01-09 08:19:16 | 市民運動/市民自治/政治
選挙講座で、岐阜のコンフォートホテルに泊っています。

ホテルのバイキングの朝食を済ませて、
これから二日目の講座。

今日は選挙本番、選挙カーの演説などを実地で練習します
(って、わたしは候補ものではなくて講師のほうです・笑)。

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地方自治関連の記事の続きです。

毎日新聞社説
社説:2011扉を開こう 「地域自決」にかじ切る時 

 豊臣秀吉が築いた城下町で、武将、浅井長政のゆかりの地である滋賀県長浜市は「まちおこし」のフロンティアとしても知られている。
 80年代、長浜は中心街を日曜の1時間に通るのは「人4人、犬1匹」と言われるほど地盤沈下に悩む地方都市の典型だった。だが「黒壁」と呼ばれる明治時代の黒しっくいの建物の保存に向け、市が支援し民間有志がまちづくりに乗り出したことが転機となった。和風建築の町並みとガラス芸術を融合させた戦略が成功し、「黒壁」の街を訪れる年間の観光客は約20倍に増えた。さすがに近年は不況の影響も受けるが、湖北随一の観光都市の地位は揺るがない。
◇画一性と決別を
 まちづくりは市が黒衣となり、住民が主役となって進められた。地域のことは地域が決める、言わば「地域自決」で再生した。中央官庁がいくら笛を吹いても、本当に地方の文化を生かした形で再生する方法を考えつくことはできない。
 むしろ、ありとあらゆる行政の分野で同じ規格や基準を国が地方に押しつけ、日本中の町並みすら似たものにしてしまった。そんな画一性こそが、今や国の豊かさを損じているのだ。
 今年は4月に統一地方選挙が行われる。中央で「2大政党化」が進んだのと同様に、地方政治でも果たして民主党が同じ基盤を築くことができるかが焦点となる。政権交代への国民の失望感が深まる中だけに、道は厳しかろう。
 だが、問われるものはそれだけではない。地域のありかたを自ら考え、争点とする動きが地方を揺るがしつつある。
 たとえば大阪府、大阪市、堺市3議会の議員選挙では、橋下徹大阪府知事が掲げる「大阪都」構想の是非が争点となる。府と守備範囲が重なりがちな大阪市を分割し、府に代わる「大阪都」に都市計画などの機能を一元化しようとする構想だ。
 大阪市の平松邦夫市長が激しく反論しているように、政令市を分割してまで地域を改編する必要が果たしてあるか、橋下氏らの説明が尽くされたとはいいがたい。
 とはいえ、地域の自治を国まかせではなく、住民を巻き込む形で議論することは決して無意味ではない。統一選に先立ち2月に行う愛知県知事選、名古屋市長選では河村たかし市長らが「中京都」構想の争点化をうかがう。付け焼き刃でない議論を期待したい。
 首都、東京都知事選も本当は例外でない。「都」に道府県より強い権限を与えた現体制は1943年、戦時体制の産物だ。大阪都構想とはむしろ逆に、東京特別区(23区)に通常の市町村と同等の権限を認め、超高齢化を迎える住民福祉に備える議論が提起されても、何ら不思議ではない。
 地方選挙は大きく変貌している。期限や財源を明記した選挙公約を有権者に示す「マニフェスト」運動が国政選挙に先駆け活発化したのは、03年統一選からだ。今や首長選ではローカル・マニフェストを候補が示すことは当たり前となり、地方議会では議員個人だけでなく、会派がマニフェストを打ち出す例も増えている。地域の将来戦略を選挙で具体的に競い、住民が吟味する土俵は着実に整っている。

 ◇住民の関与を強めよう
 一方で、地域のことは住民が決める原則を貫徹するには、住民がより積極的に行政に関与できる仕組みを政府も工夫しなければならない。
 首長、議員双方が住民から直接選ばれる二元代表制の下、多くの自治体ではこれまで首長と「オール与党」議会がもたれあってきた。国とのパイプを頼みに、公共事業などの利益配分にあずかる構図が定着していたためだ。
 ところが国と地方の財政が厳しさを増し、地域の自立と創意工夫が問われるようになると、こうしたなれ合いは通用しなくなった。首長が議会との対決姿勢を鮮明に打ち出し、むしろ住民と直接結びつこうとするケースが全国的に目立ち始めたのは、決して偶然ではない。
 首長と議会の対立を調和させるため、テーマによっては住民の意思を柔軟に反映させるための仕組みが必要だ。政府は、首長や地方議会をリコールする住民投票に必要な署名数の要件を緩めたり、市町村合併や大規模なハコ物施設の建設に関しては住民投票に法的な拘束力を持たせる立法を検討している。作業を加速してほしい。
 民主党政権が掲げる「地域主権改革」はなかなか思い通りに進まない。国から地方へのヒモ付き補助金の一括交付金への改編や、国の地方出先機関見直しは、中央官庁の抵抗に直面している。国から地方に権限や財源を大胆に移すことに国民の幅広い理解を得られないことには、強い推進力は生まれまい。
 明治維新を成し遂げた多彩な人材は「三百諸侯」の幕藩体制という、強固な分権体制から生み出された。「地域自決」の国づくりは中央主導と画一主義を廃し、多様な文化と価値観を地域社会に再構築する挑戦である。統一選の年、2011年をその契機としたい。
毎日新聞 2011年1月7日  


毎日新聞
 クローズアップ2011:揺らぐ二元代表制 強い首長の権限/改革進まぬ議会 
毎日新聞 2011年1月7日

 首長と議会の対立が先鋭化し、地方行政が混乱する自治体が相次いでいる。名古屋市や鹿児島県阿久根市では双方の対立の結果、1~2月にかけて出直し市長選や市議会解散の賛否を問う住民投票などを実施。首長と議会双方が住民から選ばれ、互いにチェック機能を果たす「二元代表制」の原則が揺らいでいる。4月の統一地方選でも焦点となる二元代表制の現状と課題を探った。【笈田直樹、高橋恵子、河津啓介】

 地方自治法改正案を議論してきた総務省の地方行財政検討会議は、昨年12月に改正案の原案をまとめた。
 首長の議会軽視に歯止めをかけるため、現行法で首長だけに認められている議会の招集権を議長にも付与。民意を測る手段として住民投票を重視し、行政への拘束力を持たせる--などが柱となる。
 昨年1月から1年にわたる議論は、名古屋、阿久根両市の対立劇とほぼ同時並行で進んだ。政府は今月召集の通常国会に地方自治法改正案を提出するが、検討会議の出席者にはなお懸念が残る。
 二元代表制の機能不全の背景に地方議会の形骸化があり、住民の議会不信が首長側の言動を助長している側面があるからだ。
 新藤宗幸千葉大教授(行政学)は「議員定数削減など議会側の改革が進んでいない。住民代表として実質を備えていないから、(首長側に)つけ込まれている」と分析。検討会議でも「議会が住民の信頼をどう取り戻すかが喫緊の課題だ」との意見が出た。

 ◇「投票行動に問題」指摘も
 全国都道府県議会などの調査では、首長が提出した条例案の99%以上が「原案通り可決」した。予算編成権と執行権を持つ首長の権限は強いものの、議会側は十分なチェック機能を果たしていない。
 一方、議員報酬とは別に議員に支給される「政務調査費」を巡り、不適正な利用が続出。全国市民オンブズマン連絡会議のまとめでは03~10年に返還勧告が出た事例は70件以上、総額約9億円に上る。
 前埼玉県志木市長の穂坂邦夫・日本自治創造学会理事長は二元代表制について「ほとんどの自治体は、首長と議会が権益を侵さないよう持ちつ持たれつでやっているから混乱が起きないだけ」と指摘。片山善博総務相は有権者の投票行動について「首長には改革志向を望み、議員選挙は地縁や血縁とか別の基準で動くダブルスタンダードがある。自治体行政に何を望むか明確にすることが必要だ」と注文をつけた。

 ◇阿久根、混乱の出口見えず
 鹿児島県阿久根市では、竹原信一前市長が議会を招集せず専決処分を乱発。強引な手法を「独善的」と批判する市民団体が市長解職請求(リコール)を展開し、昨年12月の住民投票で失職が決まった。出直し市長選(9日告示、16日投開票)には竹原氏とリコール団体出身の養鶏業、西平良将氏(37)が出馬を表明している。
 「市民の税金を阿久根市民全体のために」。年末年始に、竹原氏は原付きバイクで各戸を回り、こんなビラを配布している。対立した市議会に対しては「議員の収入に見合わない仕事ぶり」と批判。議員日当制導入やボーナスを半減したなどと実績を掲げ、その結果、2度目の失職となった--と記している。
 基幹産業である漁業などが低迷する中、竹原氏は08年8月の市長選で「官民格差」の解消を掲げ、初当選した。就任後は議会と市職員を「特権階級」と位置付け、09年2月に全市職員の給与明細を公表。議会側は09年に2度の市長不信任決議を可決し、竹原氏は失職したが、同5月の出直し市長選で再選した。昨年12月の住民投票の票差はわずか398票で、民意は伯仲している。出直し市長選後には、竹原氏の支持者が進めた市議会解散の是非を問う住民投票が2月にも実施される。市長選も通過点でしかなく、市政混乱の出口は見えない。

 ◇名古屋、市長が解散を主導
 名古屋市では、河村たかし市長と議会が市民税10%減税や議員報酬半減などをめぐって対立し、河村市長が主導して市議会解散請求(リコール)運動が展開された。2月6日に、愛知県知事選、河村市長の辞職に伴う市長選とともに、政令市初となる議会解散の是非を問う住民投票が投開票される。
 民主党衆院議員だった河村氏は09年4月の市長選に市民税10%減税を公約に掲げて立候補し、名古屋市長選史上最多の51万票を得て初当選した。河村市長は「歳入が減れば強制的に行財政改革ができる」と減税実施を主張。議会側は「将来の負担が懸念される」などと、民主市議団も含め、多くの市議が反対した。
 河村市長が選んだリコール運動には「首長が議会の解散を主導するのは、二元代表制の否定」との批判もあった。一方、住民投票実施に署名した市民からは「今の議会は何をしているか分からない」との声が聞かれ、運動は、議会に対する市民の不信感を表面化させた。二元代表制について河村市長は、議会が議決権を握っていることを指し「議会の一元代表制だ」と皮肉る。一方、市議には予算編成の権限が市長にあるとして「予算に触れなければ大胆な政策はできない。行政の出すものに○×つけるだけの議会なら市民に見えなくて当たり前」との不満がもれる。
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 【ことば】二元代表制

 国会議員が首相を選ぶ国の「議院内閣制」と異なり、地方自治体の首長と議員を住民がそれぞれ選挙で選ぶ制度で、憲法93条に規定されている。首長と議員は、相互に抑制し緊張関係を保ちながら自治体運営を進めることが求められている。



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