みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

オピニオン「孤族の国」/男よ率直に弱さを認めよう 上野千鶴子さん 社会学者(朝日新聞)

2011-01-22 15:04:55 | ジェンダー/上野千鶴子
20日は、朝日カルチャーセンター新宿で、
上野千鶴子さんの最新刊「女ぎらい ニッポンのミソジニー」の
出版記念講座があったので聴きに行きました。

いつものことですが、ともちゃんに岐阜駅まで送ってもらって、新宿に直行。
紀伊国屋新宿本店の新刊本と専門書(医療)コーナーで時間をつぶし、
タカノフルーツで夕食代わりの特製メロンパンと、「フルーツチョコ」をいくつか購入。

新宿住友ビル7階の朝日カルチャーセンターには1時間も前の6時に到着。

100席が予約で満席ということなので、ドアの前で待ち、最前列に着席。

上野さんのお話しは「女ぎらい ニッポンのミソジニー」の「理論編」で、
パワポを使っての、濃密な内容で引き込まれました。
前回の「女ぎらい」読書会で出た疑問のかずかずもお話しを聞いてとけました。
はるばる著者の話を聴きにきた甲斐がありました。

あとで、上野さんに感想を聞かれ「めっちゃ、おもしろかった!」。
「きょう朝日の孤族の国に、記事が載ったんだけど・・・」
と聞かれたのですが、
「えーっザンネン。午前中にP-WANとブログの下書きを書いてたので、
バタバタしてて、けさの朝日は見てこなかった」。

翌日帰ってから、さっそく20日の朝日新聞を開いたら、
オピニオン「孤族の国」という大きな記事に、上野さんのインタビューが出ていました。

特集「孤族の国」は、「第1部 男たち」が、昨年12月26日からはじまり、
今年1月6日まで連載されていました。

 特集「孤族の国」(朝日新聞)

「男性編」だったのですが、わたしも熱心に読みました。
記事の反響も大きく、あちこちのMLやツイッターで取り上げられていました。

男性が「孤立」しやすいことは、わたしも16年前に実感しています。
阪神大震災が1月17日朝に起きたとき、子どもを持つ女性に安心できる場を提供したい、
と21日に徒歩で阪神間に入り、「岐阜に来ませんか?」とポスターをはって歩いたのですが、
じっさいにやってきた人たちは、ほとんどが「男」。
子持ちの女性たちは、避難所でも女性のネットワークの中で、
手助けしてくれる人も多く、男たちは避難所でも孤立していたようです。
とはいえ、「だれでも受け入れる」と決めていたので、被災地に救援物資を届けがてら、
現地や駅まで迎えに行ったりして、無条件で受け入れました。
それぞれ落ち着くところが見つかるまで、半年ほど救援活動をつづけたのですが、
社会からはじかれたり、病気だったり、深刻な事情を抱えたり、
どこにも行き場のない「ワケアリ」男性ばかりでした。

「孤族の国」を読みながら、人とのつながりも、セーフティネットも持てなくて、
現実に起きていることに対応できない、男たちのことを思い出していました。
それでも、この記事を読むと、「助けて」と飛び込んでこれた人たちは、
まだよいほうだったのでしょうか。
「男よ率直に弱さを認めよう」という上野千鶴子さんの「オピニオン」に共感します。
 

オピニオン「孤族の国」 耕論(2011.1.20 朝日新聞

男よ率直に弱さを認めよう
 上野千鶴子さん 社会学者


 連載「孤族の国」に「老後の世話をしてくれて、みとってもらえる相手が欲しいだけなのに」と嘆く独身の中高年の男性が登場しました。
 こんな虫の良い期待をするから結婚できないんだ、とツッコミたくなりました。女性では考えられません。
 孤独死や行旅死亡人が注目され、「家族がいるのになぜ?」という驚きの声が聞かれますが、家族は昔からそれほど頼りになるものだったのでしょうか。いまや家族は資源であると同時に、リスクにもなる時代。1人でいれば1人で死ぬだけですが、極端な話、家族といれば殺されるかもしれないのです。
 そもそも1人でいることの何がそんなに悪いのでしょうか? 私はシングル女性への差別的なイメージを前向きに転換したいと考え「おひとりさまの老後」を著しました。
 そこに「共助(ともだす)け」のネットワークを築いた女性たちを書きました。家族という資源を持たない「弱者」だという自覚に基づき、趣味や生協などの活動を通じて血縁や地縁に代わるつながり、助け合いの仕組みを作ってきた人たちです。
 共助けネットのキーパーソンの多くが「転勤族の妻」という調査結果があります。パート勤務もなかった時代、彼女たちは核家族での子育て期の孤立に苦しんだ。子を殺して自分も死ぬかというほど追い詰められ、”たこつぼ”からはい出るようにつながりを求めました。長い期間をかけ、知恵と工夫を重ねて生み出されたノウハウやスキルは、必要の産物です。
 男性にも学んでほしいと思うのですが、それには他人とつながる必要性を自分で感じなければなりません。男性は弱音が吐けない上に、新自由主義的な「自己責任論」によって、さらに追い込まれている。それでも自分の窮状を認められず、わかろうともしない。現実逃避の天才です。
 ・・・・・(以下略)・・・・・
(2011.1.20 朝日新聞)


とここまで書いて、
けさ(1月22日)の朝日新聞を読んだら、
特集「孤族の国」の反響編が見開き2ページにわたって載っていますので、
こちらは、明日また紹介しますね。

  
名古屋で買った「堂島ロール」を食べながら・・・。

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特集「孤族の国」に関連して、色んな記事が書かれています。

政府は朝日新聞の連載を受けて、問題の深刻さを認識、
「孤族」支援に乗り出す特命チームを設置したようです。

「孤族」支援特命チームを政府設置へ 首相が指示 
2011年1月13日 朝日新聞 

 菅政権は、家族との離別や失業などで社会的に孤立した「孤族」支援に乗り出す方針を決めた。月内に反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠内閣府参与ら有識者による特命チームを設置し、単身世帯の生活実態などを調査。今年夏までに提言をまとめ、2012年度予算案に反映する考えだ。
 菅直人首相は、朝日新聞の連載企画「孤族の国」などが取り上げた単身世帯を取り巻く現状を深刻だと判断。「近年、地域や職場、家庭でのつながりが薄れ、『孤族』のような状況が顕在化している」として、福山哲郎官房副長官を中心に対策を検討するよう指示した。その結果、「単なる弱者救済ではなく、今後の日本の社会のあり方を考え直す戦略を作る必要がある」(福山氏)として、湯浅氏や自殺対策支援のNPO法人「ライフリンク」代表の清水康之内閣府参与らが参画した特命チームの設置が決まった。
 特命チームは4月以降、実態調査に乗り出し、夏までに政策提言をとりまとめ、12年度予算案に対策を盛り込む方針。さらに、12年度中には政権として「社会的包摂戦略」をとりまとめる予定だ。
 首相は就任直後の昨年6月、所信表明演説で「だれ一人として排除されることのない社会の実現」を掲げた。今月4日の年頭記者会見でも、「最小不幸社会」の実現を目指すと強調。菅政権は「孤族」特命チームをテコに、孤立した人たちの全容を明らかにし、人を社会的孤立に追いやっている原因を調べ、孤立状態にある人を社会につなげるための対策に本格的に取り組む考えだ。  


近所に親しい人、いない 中高年男性4割 女性より孤独
2011年1月18日 朝日新聞

 中高年の男性の4割は親しい近所の人がいない。東京都八王子市のシンクタンク「八王子市都市政策研究所」が市内の3千人を対象にアンケートし、そんな結果が出た。
 市内の50~84歳の男女3千人を無作為に抽出し、昨年8、9月に実施し、2080人が回答(有効回答率70%)。「中高年世代の生活実態と生活意識に関する調査」と題し、人とのつながり、生きがいなど生活の実態を尋ねた。
 「親しくしている家族・親類、近隣、友人の人数」については、「家族・親類」3.88人、「友人」3.13人、「近所の人」2.46人だった。男性は女性と比べ、親しい人が少ない傾向にあり、男性の44.6%が親しく付き合っている近所の人が「いない」と答えた。
 健康状態については77.5%が「とても健康」か「まあ健康」と回答。外出の頻度は「ほぼ毎日外出している」が65~74歳で約5割、75~84歳では4割弱いたが、「週1回以下」という人も、75~84歳では1割以上いた。
 「積極的に参加したい活動」は「趣味や習い事などのサークル活動」が51%で最多。「ボランティア、非営利活動」が16%で続いたが「どれも参加したくない」という回答も26%あった。
 働く意欲は「高齢期(65歳以上)に働きたい」という人は約6割。70~74歳でも47%が「働きたい」と答えた。経済的なゆとりは35.5%が「あまりゆとりがない」、19.5%が「ゆとりはない」と答えた。
 幸福感を尋ねた質問では、「現在幸せだと思う」と答えた人が75歳以上で5割を超えたが、50~54歳では32.3%と、世代間で差があった。「寂しいと感じることがあるか」との質問では「ある」が8.8%、「ときどき」が38.5%。生きがいは「子や孫の成長」「友人との付き合い」「本や新聞」などが多数で、「メールやインターネット」も47.8%あった。
 同研究所の原島一所長は「高齢者の就労意識が高いことなどがわかった。行政やNPOだけでなく、市民にも今回の結果を生かしてほしい」としている。結果を掲載した報告書は市役所や図書館で閲覧でき、市のホームページにも掲載される予定。(波戸健一)  


生活保護、最多の3兆円超 09年度、失業者が急増
2011年1月22日 

 2009年度に支払われた生活保護費が初めて3兆円を超えたことが、21日分かった。08年9月のリーマン・ショック以降、失業者が生活保護に大量に流入し、働ける年齢の受給者が急増したためだ。厚生労働省は、就労・自立支援の強化などを中心に、生活保護法などの改正を検討する。
 生活保護費は国が4分の3、地方自治体が4分の1負担している。厚労省のまとめによると、09年度決算では国負担分が2兆2554億円、地方負担分が7518億円で、総額は3兆72億円。前年度より約3千億円増えた。
 年金だけでは生活できない高齢者世帯の増加で、生活保護受給者は増え続けている。さらに08年9月以降は生活保護を申請する失業者が増えた。保護受給世帯は昨年10月時点で過去最多の141万世帯。このうち、病気や障害がなく働ける年齢の世帯は23万世帯で、2年で倍増した。
 指定都市市長会(会長=矢田立郎神戸市長)は昨年、財政運営に影響が出ているとして生活保護の全額国庫負担など社会保障制度の改革を求める意見書を国に提出している。
 厚労省は近く自治体との協議に入る。具体的には、保護受給者の就労と自立を促すための支援策の強化、不正受給の防止策など生活保護の適正化に向けた対策を検討する。ただ、市長会が求めている保護費の全額国庫負担については、「現段階で国と地方の負担割合を変える予定はない」(保護課担当者)という。
 地方との協議で制度改革案をまとめ、政府が検討している税と社会保障制度の一体改革にも反映させたい考え。法改正が実現すれば、1950年の制度創設以来の大幅改正となる。

■自治体の財政「火の車」 支出は都市部に集中
 増え続ける生活保護申請で自治体財政は「火の車」だ。生活保護が集中するのは失業者が多い都市部。東京都、政令指定都市、中核市で、保護費の6割にあたる1兆9千億円が09年度に支出された。
 今年度も、19政令指定都市のうち17市で、09年度決算額を超える当初予算を組んでいるにもかかわらず、補正を組む状況に陥っている。
 09年度決算で最多の2675億円を支出した大阪市。今年度当初予算はそれを上回る2863億円だが、2月に補正を組む予定だ。名古屋市も今年度は前年度比8千人増の3万8200人を見込んでいたが、9月時点ですでに4万人を超え、2年連続で100億円規模の補正を組んだ。
 指定都市市長会が昨年10月に国に要望した改革案の柱の一つは、働ける年齢の人には3~5年の期間を設け、「集中的かつ強力な就労支援」をすることだ。期間が来ても自立できない場合、保護打ち切りも検討する仕組みだ。
 市長会の提案に、弁護士らで作る生活保護問題対策全国会議などは「生活保護に期限を設けることになり、生存権を保障した憲法25条に違反する。生活保護の増加は非正規雇用の増加や社会保障の不備に原因があり、働く場を用意しなければ解決しない」と強く反発している。
 国の推計では生活保護基準以下の所得なのに生活保護を受けていない人は最大229万世帯。本来生活保護が受けられる人に十分に行き届いていないという指摘もある。(諸麦美紀、永田豊隆)  


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