みどりの一期一会

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なぜ見直せない「新国立」 核燃サイクルと同じ“国策の暴走” 「復興五輪」の理念どこへ

2015-07-08 21:33:08 | ほん/新聞/ニュース
ウオーキングから帰ってきたら、
大きなカサブランカの花が開花していました。

きのう見た時ははまだつぼみだったのですが、
ひとばんで咲きました。
  

ところで、
カネ食い虫の新国立競技場。
JSC有識者会議は総工費約2520億円で、実施設計案を了承したという。
これって全部税金でしょ。

世の中には、生活苦で生きていくのもやっとという人がいるというのに、
なんという、納税者無視の事業だろう、とあきれる。

この問題には、毎日新聞が力を入れていて、
力作の記事が立て続けに載っている。

そのなかで、今日の社説と、一昨日の特集ワイドを紹介します。

朝日新聞の社説でも取り上げていたけれど、
この問題、まだまだ大きな社会問題になりそうだから、
またあらためて、紹介します。。

  社説:新国立競技場 無謀な国家プロジェクト  
毎日新聞 2015年07月08日 

 巨大な「負の遺産」となることが誰の目にも明らかなのに本当にこのまま突き進むのか。
 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)について検討してきた日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議は総工費約2520億円で、8万人収容、開閉式の屋根(遮音装置)を支える巨大アーチ構造が特徴的な実施設計案を了承した。今年10月に着工し、19年5月の完成を目指す。

 工期短縮のため屋根の設置などは五輪後に先送りされた。「国家プロジェクト」をうたいながら、財源のめどが立っていない状態での見切り発車だ。不足分は命名権の売却益や国民からの寄付、スポーツ振興くじの売り上げなどで賄うという甘い目算で、完成後は赤字が見込まれるため五輪後の運営・管理を民間に委託することを検討するという。あまりにも無責任ではないか。

 そもそも巨大アーチを備えたスタジアムは世界にも前例がなく、技術的な問題は解決されていない。アーチ構造を取りやめる代替案を公表している槙文彦氏らの建築家グループは先日、下村博文・文部科学相への提言書で「太平洋戦争末期に戦艦武蔵に無謀なレイテ島突撃を指示した軍参謀本部の姿勢と酷似したものがある」と指摘している。

 下村文科相は代替案を検討した結果、新たに設計をやり直すと19年9月開幕のラグビー・ワールドカップ日本大会には間に合わないとして現行案の維持を決めた。だが、槙氏らはアーチ構造をあきらめれば1000億円程度の費用削減につながるだけでなく、工期も短縮でき、十分間に合うと主張している。文科省はどんな検討をしたのか説明すべきだ。

 なぜアーチ構造にこだわるのか。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長はJSCの有識者会議で現行案を支持する理由として国際オリンピック委員会(IOC)との「国際公約」を挙げた。だが、東京五輪の準備状況を視察するため先日来日したIOCのジョン・コーツ副会長は本紙の取材に「変更したいと思えば、すればいい。総工費が増大して負担となることは心配している」と懸念を示している。現行案に固執する理由はない。

 建設資材や人件費の高騰などを受け、東京都は招致段階でIOCに提出した会場計画の見直し作業を進め、約2000億円を削減した。新たな施設の建設をとりやめ、千葉や埼玉などの既存施設を利用する。開催都市の財政負担の軽減などを目的にIOCが昨年まとめた「アジェンダ2020」の精神に沿ったものだ。新国立も例外ではない。


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  特集ワイド:なぜ見直せない「新国立」 核燃サイクルと同じ“国策の暴走” 「復興五輪」の理念どこへ  
毎日新聞 2015年07月06日 

 これはもう「無謀な国家プロジェクト」と呼ばざるを得ないのではないか。巨額な資金を投じることに反対の声が強まる中、2020年東京五輪・パラリンピック大会の主会場になる新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画が進んでいることだ。総工費は当初予算を895億円上回る2520億円になるが、財源が確保できていない。国の借金は1000兆円超なのに、なぜ、一度動き出した国策は止まらないのか。【堀山明子、吉井理記】

 「(東京五輪誘致で)支持を獲得できた大きなポイントは、あの新国立競技場の姿のはずだ」。大会組織委員会の調整会議が行われた6月29日、会長を務める森喜朗元首相は、アルゼンチンのブエノスアイレスで13年9月に行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会の最終演説を思い起こさせた。「あの姿」とは、キールアーチと呼ぶ2本の巨大な構造物を備えた現計画案だ。

 確かに、この総会で東京五輪の開催が決まり、関係者らは歓喜した。しかし、総工費が倍近くに膨らむ前の話だ。

 巨額な総工費を懸念する建築家らは計画の見直しを提案してきた。だが、建設主体の日本スポーツ振興センター(JSC)を管轄する下村博文・文部科学相は「国際公約だから」とほぼ原案通りの設計で建設を進める方針だ。

 JSCは7日に開く新競技場の将来構想有識者会議で、契約内容を報告。その後、施工予定業者の大成建設と竹中工務店と正式に契約を結ぶ段取りになっている。

 新国立の建設予算に895億円の追加がポンと決まる2日前の6月27日、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で、震災後初の「復興マラソン」が開かれた。市は、壊す前の国立競技場から聖火台を借りており、市総合運動公園に設置。この日、初めて「復興の火」がともされた。聖火は1964年の東京五輪で戦後復興のシンボルとされた。その聖火に被災者を励まそうという願いを込めていた。同公園周辺に仮設住宅が建ち並び、市全体では1万人以上が仮設住宅で暮らす。

 主催者は当初、火を絶やさないことを検討したが、断念した。理由は予算不足。火をともし続けるには発火装置の修繕が必要で費用は約800万円。だが、地元企業や市民の寄付は260万円を集めるのがやっと。復興マラソンでは、仮設の簡易発火装置で除幕式とハーフマラソンの4時間だけ聖火を維持するのが精いっぱいだった。

 復興マラソンの事務局関係者は語る。「今後も修繕費を集め、聖火をともし続けられるようになったら、仮設住宅に聖火台を持って行きたい」

 800万円と895億円−−。被災地がコツコツと資金を集めている時、新国立の巨額の追加予算が決まった。どう考えても金銭感覚がずれていないか。思い出してほしい。安倍晋三首相は「なんとしても『復興五輪』にしたい」と訴えてきた。石巻市で建設中の復興公営住宅は4000戸に約1000億円かかる見通しだが、もし895億円が被災地に回れば、単純計算で住宅3580戸分の財源になる。

 「国際公約というなら、震災復興を世界に示す『復興五輪』こそ、東京が支持された理由です。復興五輪、環境五輪、コンパクトな五輪という公約の原点に立ち返るべきではないでしょうか」

 こう話すのは、宮城県岩沼市の復興計画を支援してきた石川幹子中央大教授だ。新国立の建設問題が焦点になるあまり本来目指すべきビジョンが失われていると懸念する。

 石川さんは、日本を代表する科学者の組織、日本学術会議の分科会委員長として今年4月、新国立建設計画の修正案をまとめた。約1500本の樹木を伐採して人工地盤を造る現計画案は、自然への配慮が欠けると批判。樹木を残し、地下に眠る水循環を復元して競技場建物周辺に「本物の森」を創り出す案を提示している。学術会議は、首相所管の専門家機関で、政府に勧告ができる。現行案の反エコぶりを見かねて「最低限これだけは修正できるはず」と現実的な案をまとめたという。提案に文科省は「検討する」と答えたというが、採用されるかは未知数だ。

 なぜ、日本は走り出すと止まらないのか。公共事業に詳しい千葉大名誉教授の新藤宗幸さんは「ありえないずさんさ。公共事業の常識からもかけ離れている」とあきれ顔だ。公共事業で当初予算より増加することはあるが、倍増はほとんどありえないという。図面を作る「基本設計」、構造上の強度などを計算する「実施設計」、建設材料を定める仕様書など何段階も確認するのが常識だからだ。

 新藤さんは、思い起こす数少ない非常識の事例として八ッ場ダム(群馬県)を挙げた。建設費は86年の当初計画では2110億円だったが、現在では4600億円に倍増した。首都圏の水需要増加を見越して始まった計画だが、節水技術の進化や人口減で水需要は減少。このため政府は09年にいったん計画を中止したが、11年に「洪水を防ぐ治水」という新たな目的で建設を再開した。「必要性などおかまいなく、造ることや予算を維持すること自体が目的化した典型例です。新国立も、本当にあのデザインが必要なのか、吟味しないで決まったのでしょう」と疑問を呈した上でこう批判する。「文科省などは、五輪は国家威信を懸けた事業という時代錯誤的な意識が抜けていない」

 青森県六ケ所村で建設が進む核燃料再処理工場を取材し続けるルポライター、鎌田慧さんも「国家威信」のワナにはまっていると警鐘を鳴らす。国が音頭を取って始めた核燃料サイクル計画に基づく工場建設の予算は、93年の建設開始当初は7600億円だったが、現在は約3倍の2兆2000億円まで膨らんだ。「核燃サイクルは、技術的問題やコストなどの課題が多すぎ、諸外国はとっくに撤退したのに、日本だけが夢物語にしがみついている。一度決めたら変えない官僚主義のせいです。原子力船むつ、そして新国立も一緒。これでは、日本軍が『撤退は恥』と大勢の兵士を玉砕させた発想と、今も変わっていない」と批判する。そして市民にもこう問い掛ける。「国威発揚のために無謀な新国立計画を進めることは、必ず民衆にツケが回ってくる。私たち自身、なめられたままで本当にいいのですか」

 IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長は6月末、現行の奇抜なデザインでなければ国際公約違反かを問う毎日新聞の単独取材に、けげんそうな表情を浮かべて答えた。「(日本)政府が決めること。IOCが象徴的な施設を求めたものではない」

 国際公約でないなら、市民はもっと声高に叫んでいいのではないか。「この暴走、おかしい」と。


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