中日新聞の生活面、7月17日の稲熊美樹さんの記事です。
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ママバッグでお産を支援 日赤がウガンダに衛生用品配布 2015年7月17日 中日新聞 内戦で混乱が続いたアフリカ東部のウガンダで、日赤が出産前後の母子を支援する活動を続けている。現地の赤十字社と連携し、妊婦健診の受診を促し、出産時に最低限必要な衛生用品を詰め合わせた「ママバッグ」を二万個以上配布。清潔で安全なお産で、母親と赤ちゃんの命を守っている。 「狭い部屋に五人の妊婦がおり、中には床に寝ている人もいて驚いた」。昨年三月、同国北部アムル県などを訪れた名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)看護師の山田則子さん(42)は、保健所(日本の医療機関に当たる)の設備の不備に目を丸くした。 救いだったのは、ママバッグに入っていたビニールシートを下に敷いて分娩していたこと。「役だって良かったと感じた」と振り返る。 山田さんが現地に滞在したのは二〇一四年三月から一年間と、今年五月から一カ月半の計二回。首都カンパラのアパートに住み、同国赤十字社に通って物資調達の支援をしたり、車で七~九時間かけて田舎に行き、すでに配ったママバッグがどのように使われているのか確認したりした。 ママバッグには、止血用綿花や滅菌済み手袋、せっけん、ビニールシート、清潔なタオルなど九品目が入れられている。 このうち、かみそりと臍帯(さいたい)を結ぶひもは、へその緒をしばって切り離すために使用。タオルは赤ちゃんの体をふいたり、寒いときには体を包むこともできる。軟こうは赤ちゃんの目に塗り、クラミジアなどに感染するのを防ぐ。 日本円で一セット二千円。現地の農家の月収とほぼ同じ高価なものだ。山田さんは「アフリカの女性にとって出産は命がけ。ママバッグが安全に出産できる一助になれば」と話す。 ◆助産師介助 死亡率が低下 ウガンダは、一九八〇年代から二十年以上続いた内戦の影響で、今も難民キャンプで暮らす人がいる。人口は、日赤がママバッグを配っている北部二県で約四十万人。同国の合計特殊出生率は六人(日本は一・四二人)近い。 しかし妊産婦死亡率は日本の六十倍。死亡の主な原因は、出産時の出血による失血死や感染症、高血圧などの妊娠中毒症だ。こうした症状は、適切な医療処置が施されれば助かる可能性が高い。妊娠中毒症は妊婦健診で発見できる。 現地ではこれまで医療従事者ではない人がお産に携わってきた。日赤は二〇一〇年から、保健所での妊婦健診を四回以上受診し、保健所で出産した妊婦にママバッグを贈り、医師や助産師らがかかわって出産する環境づくりをしてきた。 助産師が付き添う出産は、一〇年には29%だったが、一二年には62%に上昇。人口十万人当たりの妊産婦死亡率は四百三十五人(一〇年)から三百六十人(一三年)に下がるなど、ママバッグの効果が表れているという。 (稲熊美樹) |
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社説:国会前デモ 街頭のデモクラシーよ 2015年7月18日 中日新聞 安保法制に反対する若者たちが国会前に集まっている。憲法に違反し、「戦争できる国」へと暴走する政治に黙ってはいられない。同じ思いで集うデモは民主主義の表現手段である。耳を傾けよう。 「憲法守れ! 勝手に決めるな! 国民なめんな!」 マイクを握った若者に合わせ、激しいコールが響き渡る。プラカードを掲げ、声をからし、深夜まで沿道に人波があふれる。 国会前のデモは、学生グループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」などがツイッターやフェイスブックなどで呼びかけ、法案審議が始まった五月から行動してきた。 二十代が多いが、年上の世代とも連携する。参加者は毎回増え、衆院の特別委員会で強行可決された十五日の夜には、主催者発表で十万人にまで膨れ上がった。 同じような思いを共有した人が国会前だけでなく、全国各地で行動を起こしている。 四年前の福島原発事故の後、デモに参加することは市民にとって当たり前の行動となってきた。 今、各地で行動を起こしている若者はまさに、おかしいことにはおかしいと言う、異議申し立ての手段だという感覚を持ちあわせている人が少なくない。それが行動につながる。 原発再稼働も、特定秘密保護法も、反対する世論をまるで無視するように強行されている。 貧困と格差が広がる中で、若者の暮らしは追い詰められている。 ブラック企業やブラックバイトに象徴されるように、違法、脱法、長時間、低賃金の労働がはびこる。安保法案ができて、日本が他国の戦争に加担する国になったとき、だれが自衛隊に入るのか。だれが戦地に向かうのか。 奨学金の返還に苦しむ学生の中では「自衛隊で何年か働けば、学費免除になるような制度ができるのではないか」という不安が、現実味を帯びて語られてもいる。そういう不安を考えてほしい、というのだ。 たくさんの異論があってこそ、民主主義は成り立つし、よりよい答えを導くはずだ。 法案の審議は参院に移る。 日本の将来を率いる若者の叫びにじっくり耳を傾けてはどうか。 「民意は国会の中でなく、外にある」と若者は力強く言った。 国会前にこれだけ多くの若者が集まるのは、聞く耳を持たない政権への危機感の表れである。 |
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