夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』

2024年01月05日 | 映画(た行)
『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』(原題:6/45)
監督:パク・ギュテ
出演:コ・ギョンピョ,イ・イギョン,ウム・ムンソク,パク・セワン,
   クァク・ドンヨン,イ・スンウォン,キム・ミンホ他
 
動楽亭に行く前になんばパークスシネマで2本ハシゴの2本目。
前述の『アンブッシュ』の次に本作を観ました。
あまりに楽しくて、ジワッと切なくて、「2023年の好きだった映画」にも入れてしまいました。
 
この邦題はもちろん『愛の不時着』から頂戴したものでしょう。
原題もそうなのかと思ったら全然違う。
かなり無理矢理な邦題に感じるけれど、上手く付けたものだと思います。
原題の“6/45”は日本のロトのような宝くじのことで、1から45までの数字のうち、6つを選んで当てます。
数字をいくつ当てるかで賞金額が決まり、6つとも当てれば賞金額は57億ウォン(=約6億円)。
 
ソウルの居酒屋で商品のオマケに配られていた宝くじ。
誰も当たるなどと思っていないから粗雑に扱い、捨てられた1枚がひらひらと飛んでゆく。
風に乗って宝くじが辿りついた先は朝鮮半島の軍事境界線近く。
 
拾ったのは、韓国軍の兵士パク・チョヌ。
たまたま当選番号の発表を見てそれが1等の当たりくじだと知り、驚喜のあまり挙動不審に陥る。
ところがふとそのくじが手から離れて再びひらひらと飛んで行ってしまう。
 
境界線を超えたくじを今度は北朝鮮の兵士リ・ヨンホが拾う。
これが何なのか知らないヨンホは、韓国の文化に詳しいチョルジンに質問。
嬉々として答えたチョルジンがついでに当選番号を調べると、なんと当たりくじ。
換金するにはどうすればよいかをヨンホとチョルジンは相談する。
 
飛んで行ったくじを探すため、夜中に境界線をくぐり抜けたチョヌはヨンホと遭遇。
くじの持ち主は俺だ、いや、拾った俺のものだと押し問答に。
 
挙動不審が問題視されていたチョヌは病院に送られそうになり、
当たりくじが境界線の向こう側へ飛んで行ったことを上官のウンピョに告白。
最初は信じなかったウンピョだが、証拠写真を見せられて信じざるを得なくなり……。
 
結局、韓国側も北朝鮮側もあと1人ずつが知ることになり、計3名ずつが顔を突き合わせます。
本作のいいところは、このうちの誰も抜け駆けしようとしないところ。
最初は相手の裏をかいて自分たちだけで独占することは考えるものの、
仲間うちでは裏切ることなどまったく考えません。
とても平和で可笑しなやりとりで、いや〜、笑いました。
そしてやっぱり最後にはホロリとさせられる。
 
みんなで相談した結果、チョヌとヨンホが人質として入れ替わることになりますが、
チョヌは畜産に詳しく、ヨンホは北朝鮮仕込みで地雷の撤去なんてお手の物。
目立ってはいけないのに、2人とも北朝鮮と韓国でそれぞれ英雄視されてしまうのです。
 
実際にはこんなことあるわけないけれども、こんなふうなら平和なのにって。
『アンブッシュ』を観た直後だったから、なおのことそう思いました。
 
字幕監修は松尾スズキ。なんで松尾さんなんでしょう。
でもたぶんそのおかげで、より面白い作品になっているのではないかと。
 
何度観ても笑ってしまうと思います。
みんな仲良く。無理ですか。

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『アンブッシュ』

2024年01月05日 | 映画(あ行)
『アンブッシュ』(原題:The Ambush)
監督:ピエール・モレル
出演:マルワーン・アブドゥッラ・サーリフ,ハリーファ・アル・ジャースィム,ムハンマド・アフマド他
 
2023年も押し迫った12月30日の晩、昨年最後の寄席に動楽亭へ行きました。
2本ハシゴの1本目は、ピエール・モレル監督のアラブ首長国連邦/フランス作品。
モレル監督がアラブ首長国連邦(UAE)に招聘されて実話を基に撮り上げたのだそうです。
 
2018年、内戦が続くイエメン南部に駐在するUAE軍の兵士たち。
帰国が間近に迫ったアリ、ビラル、ヒンダシの3人は装甲車に乗り、
戦闘地帯の住民へと支援物資を配りながら、渓谷をパトロールする。
 
すると、待ち伏せしていた敵が現れて急襲を受ける。
どこからともなくRPG(ロケット弾)が飛んできて、回避しようとすると下には地雷が。
必死で背走するうち、装甲車がスタック、どうにも動けなくなる。
3人を捕まえて人質に取ろうとしているのか、煙を焚いて燻り出されそうに。
しかし敵の狙いはパトロール隊を餌に本隊を出動させることで……。
 
タイトルの「アンブッシュ」が「奇襲」を意味すると知らなかったから、
ブッシュ?アン?ブッシュなの?ブッシュじゃないのかなどと阿呆なことを思っていました。
ポスターがまたちょっと私には気持ち悪くて、蟻に狙われる話なのかと思ったりも。(^^;
蟻に見えていたのは、UAE軍を狙う敵で、人海戦術でUAE軍に襲いかかるのですね。
 
装甲車でやってきたUAE軍を足で走って追い詰める。
土地勘がある者ばかり。遥か高い岩の上にはスナイパーがいて、怖いのなんのって。
装備的にはUAE軍のほうが勝っているはずなのに、敵の術中にハマってしまう。
 
正直なところ、敵の正体が何だったのかも私にはよくわからない。
なぜこんなに戦ってばかりいるのかもわかりません。
 
支援物資を運び込んだ村で、アリが子どもたちとボールを蹴るシーンがあります。
サッカーを教えてもらって喜ぶ子どもたち。
駐屯地の兵士たちの会話はサッカーのことで盛り上がっているのに、サッカーをせずに戦う。
子どもたちもいずれボールを蹴らずに銃を持って人の殺し方を覚える。
 
皆が仲間を助けようと必死になるのは素晴らしいこと。
でも、何のために戦っているのかを考えると、虚しくなります。
戦争はなくならない。戦場はいつまで経っても戦場のまま。
 
エンターテインメント性の高い作品で非常に面白いですが、
「面白かった」で済ませると罪悪感に苛まれる。

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