夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

癒しの卵料理。

2010年02月08日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
映画に出て来る料理や飲み物について、
過去にも何度か書いていますが、
週末に観た映画は、卵料理にグッと来ました。

1本目は、中国/日本の作品、『1978年、冬』(2007)。
先月末にレンタル開始となりました。

文化大革命が終焉を迎え、新時代が幕を開けたばかりの1978年。
中国北部の田舎町、西幹道(原題はこの町の名前)。
ある日の演芸会で、都会から越してきた美少女シュエンが踊ります。
11歳のファントウとその兄で18歳のスーピンは、彼女に一目惚れ。
スーピンはシュエンに言い寄りますが、つれない素振り。
しかし、ある出来事がきっかけで、シュエンと恋仲になります。

ところが、スーピンとシュエンの密会現場に大人たちが踏み込み、
ふたりは不良のレッテルを貼られ、恥さらしと罵倒されます。
ファントウはスーピンの弟であることからいじめられ、
逃げる途中に土中の穴に転落してしまいます。

学校から知らせを受けて、ファントウを迎えに来た母親。
いつもは子どもを激しく叱り飛ばす母親ですが、
ファントウの頭を優しく撫でると、アルミの弁当箱のふたを開け、
「美味しいものを作って来たよ。豚肉と卵入りだ。ちょっと食べな」。

本作には、ほかにも餃子や饅頭が登場します。

2本目は、アメリカの作品、『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』(2007)。
劇場未公開作品で、先週レンタル開始になったところ。

遠く離れて暮らす父親に認知症の疑いがあるとの連絡を受け、
大学教授のジョンと派遣社員のウェンディ兄妹は、父親のもとへ。
どちらも引き取るのは無理だと、老人ホームへの入居を決めます。

ウェンディは同じアパートに住む既婚男性と長らく不倫中。
ジョンはポーランド人女性と3年間同棲していますが、
彼女はビザが切れるために、あと数日でポーランドへ帰る予定。
なぜ結婚せずに彼女をそのまま帰すのかと、ウェンディは呆れ顔。

ある夜、ジョンの家をウェンディが訪れると、
そのポーランド人女性が来ていました。
明日、空港までジョンに送ってもらうので、今日は泊まるとのこと。
彼女がウェンディにこっそり打ち明けた話は、
「彼は結婚を拒むけれど、私の卵料理に泣くのよ」。
翌朝、オムレツを食べてむせび泣くジョンの姿は、なんだか愛おしいです。

本作は、カリッと焼かれた薄めのトーストも美味しそう。

いずれも暗め。だけど、美味しい匂いに支えられ、
ちょっとはいいことあるかなと思えたりもするのでした。

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『セントアンナの奇跡』

2010年02月05日 | 映画(さ行)
『セントアンナの奇跡』(原題:Miracle at St. Anna)
監督:スパイク・リー
出演:デレク・ルーク,マイケル・イーリー,ラズ・アロンソ,
   オマー・ベンソン・ミラー,ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ他

社会派で名高いスパイク・リー監督の戦争ドラマ。
前述の『縞模様のパジャマの少年』のこともあったものですから、
テンション低めで観始めましたが……。

1983年のニューヨーク。
郵便局で切手販売を担当する初老のヘクターは、
その日、切手を買いに来た男性客を見るや顔をこわばらせ、
カウンター越しに銃を発射、即死させる。

定年まであとわずか、経歴には何の汚点もなく、
第二次世界大戦では受勲しているヘクターが、
なぜ残りの生涯を台無しにするような事件を起こしたのか。
その理由は1944年のイタリアでの出来事までさかのぼる。

第二次世界大戦下のイタリア、トスカーナ地方の山中。
アメリカ軍の黒人兵士のみで構成される歩兵師団は、
前線でドイツ軍と激しい戦闘を交え、作戦どおり渡河に成功したのは、
スタンプス、ビショップ、ヘクター、トレインの4人だけ。
ただちに本部に救援を依頼するが、白人である上官は、
彼らの渡河を信じず、まさに彼らがいる地点を攻撃。

とにかくその場を離れなければと周辺をさまよううち、
ドイツ軍の砲撃によって負傷した少年を見つける。
少年との出会いに何か神懸かり的なものを感じたトレインは、
足手まといになると他の者から言われても、少年を抱えたまま。
4人は少年を連れて山間の村の家へと駆け込む。

村には、今はドイツ軍の姿は見えないが、どこか近くにいるはず。
また、ナチスやファシストと戦うパルチザン部隊も山中に潜んでおり、
ヘクターらは一時も気を抜くことができない状況。
本部からは、捕虜のドイツ兵を確保のうえ再連絡するようにとの無茶な要求。
しかし、ドイツ兵を捕まえたパルチザン部隊が村へ下りて来たため、
そのドイツ兵を一日借りるということで話をつけるのだが……。

まず、郵便局での射殺のシーンがあり、
その後、新米の新聞記者がなんとかスクープを手にしようと、
身柄を拘束されたヘクターに面会を求めます。
ここから120分強に及ぶヘクターの回想シーンが始まります。

163分の大長編ですが、いたるところに伏線がちりばめられていて、
それをひとつずつ拾って観て行くと、本当におもしろいです。
これぞ映画の醍醐味。

人間性について考えさせられるとともに、
「奇跡」を信じたくなる物語でした。

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『縞模様のパジャマの少年』

2010年02月02日 | 映画(さ行)
『縞模様のパジャマの少年』(原題:The Boy in the Striped Pyjamas)
監督:マーク・ハーマン
出演:エイサ・バターフィールド,ジャック・スキャンロン,
   デヴィッド・シューリス,ヴェラ・ファーミガ他

同名小説“The Boy in the Striped Pyjamas”を映画化。
今まで観たどんな戦争映画よりも強烈な反戦映画と言えるでしょう。
感動的なラストを期待していると、奈落の底に突き落とされます。

第二次世界大戦下のドイツ、ベルリン。
8歳のブルーノは、豪邸で両親と姉とともに暮らしていたが、
ナチス将校である父親の転属で、田舎へ引っ越すことに。

殺風景なその土地には、学校もなければ子どももいない。
都会から離れたくなかったブルーノは気落ちするが、
窓の遠く向こうに見える農場らしきものに興味を引かれる。

あの農場に行けば、誰かと友だちになれるかもしれない。
そう考えたブルーノが、農場へ遊びに行ってもいいかと両親に尋ねると、
農場へ行くどころか、敷地内からは決して出てはいけないとの答え。
しかし、退屈していたブルーノは、裏庭の扉が開いている隙に、
森を抜けてこっそり“農場”へと向かう。

鉄条網が張り巡らされた“農場”。
そこで働く人びとは、全員、縞模様のパジャマを着ていた。
隅っこに隠れるように座り込む少年を見つけて話しかけると、
彼はシュムエルと言い、ブルーノと同い年であることがわかる。
以来、ふたりはフェンス越しに話をするようになるのだが……。

“農場”は、言うまでもなくユダヤ人収容所のことです。
もし、ホロコーストについて何も知らない人がいたとしても、
この作品に前知識は必要ありません。
ブルーノと一緒に“農場”を見て好奇心を持ち、
ユダヤ人に関する家庭教師の教えや、父やその部下の態度に疑問を感じつつも、
父の仕事は有意義なことだと信じようとし、
けれど、母が半狂乱で泣いているのが気になって仕方ない。
そんなふうに、ブルーノと一緒に、ひとつずつ知ってゆきます。

そして、ブルーノは知らないまま、
私たちがすべてわかったときは、時すでに遅し。
例えようのない衝撃を受け、しばらくは立ち上がることができません。
タイトルが別に指していたものを悟り、呆然とします。

二度と観たくないけど、一度は観るべき、
また、どんな人にも観てほしい作品です。

余談ですが、前述の『ヴィクトリア女王 世紀の愛』
心優しきアルバート公を演じたルパート・フレンドが
ナチスの中尉を演じていたギャップで衝撃度も増しました。

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