夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『高野豆腐店の春』

2023年08月26日 | 映画(た行)
『高野豆腐店の春』
監督:三原光尋
出演:藤竜也,麻生久美子,中村久美,徳井優,山田雅人,日向丈,竹内都子,
   菅原大吉,桂やまと,黒河内りく,小林且弥,赤間麻里子,宮坂ひろし他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『ブギーマン』の次に。
 
「こうやどうふてんのはる」だと思い込んでいました。
へ~、藤竜也が高野豆腐つくる話か。ご当地ムービー的なやつねって。
それにしても「春」って、夏に春の話ですか、と思ったら、
「春」は麻生久美子演じる娘の名前でした。嗚呼、何もかも勘違い(笑)。
 
広島県尾道市で豆腐店を営む高野辰雄(藤竜也)。
妻には早くに先立たれ、出戻りの一人娘・春(麻生久美子)が店を手伝ってくれている。
 
心臓に持病を持つ辰雄は、早めに手術を受けるほうがいいと主治医から言われた途端、
春のことが心配になり、腐れ縁の仲間たちに相談。
町で評判のべっぴんさんの春とならいくらでも一緒になりたい人がいるだろうと、
彼らは選りすぐりのお見合い相手を辰雄に紹介する。
 
春に直接話を持って行ったところで嫌がるのは目に見えているし、
まずは辰雄が相手と会って○×を見極めたい。
辰雄が気に入ったのは、イタリア料理店オーナーシェフ・村上ショーン(小林且弥)。
ふたりが偶然会ったように装う場を設けようとする辰雄と仲間たち。
 
そんな折、辰雄は病院で同じく心臓疾患を抱える女性患者・中野ふみえ(中村久美)と知り合う。
彼女と交わす会話が楽しくて、年甲斐もなくウキウキする辰雄。
 
春と村上の仲がどうなっているのか春本人に聞けずにいたところ、
春から紹介したい人がいると言われて辰雄はドギマギ。
てっきり村上だと思っていたのに、春が挙げた名前は全然ちがう人。
駅前のスーパーで豆腐売り場を担当する西田道夫(桂やまと)。
正真正銘イケメンの村上に比べ、西田はチンチクリンとしか言いようがなく……。
 
若手俳優はほとんど出演していないので、若かりし頃の藤竜也を知っている層、
わりと高年層の方々にお薦めしたい作品です。
 
豆腐店が出てくる作品はこれまでにも観たことがある気がしますが、
こんなふうに豆腐について蘊蓄が語られる作品は初めてかもしれません。
父親の作る豆腐が世界で一番と信じる娘が語る語る(笑)。
 
辰雄の仲間たちには、徳井優とその妻役に竹内都子
山田雅人日向丈菅原大吉といった面々が、良い友だちを演じています。
みんなめっちゃ口が軽いけど(笑)。
 
春だけど夏の話だと思ったら、被爆者の話でもありました。
戦争が終わってから何十年経とうが、被爆した事実は消えないし、
代々子孫にもいつかそれが体に出るのではと心配がつきまとう。
つらいことだったけど不幸せでおったらあかん。そうですね。
 
辰雄とふみえの会話から、辰雄の家族について明かされる事実。
それを踏まえて、終盤の辰雄と春のやりとりには涙せずにはいられません。
 
娘のいるお父ちゃんたち、観に行ってください。みんな泣いちゃうよ。
良い作品でした。

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『ブギーマン』

2023年08月25日 | 映画(は行)
『ブギーマン』(原題:The Boogeyman)
監督:ロブ・サヴェッジ
出演:ソフィー・サッチャー,クリス・メッシーナ,ヴィヴィアン・ライラ・ブレア,
   デヴィッド・ダストマルチャン,マリン・アイルランド,マディソン・フー,リサゲイ・ハミルトン他
 
イオンシネマ茨木にて、予告編の上映開始時刻が17:15。これは私の終業時刻と同じなんです。
本編の上映開始に間に合うはずもないんですが、仕事帰りに2本ハシゴしようというときに、
こんなホラー作品がその日の〆だなんて嫌じゃないですか。
ダッシュで帰らせてもらい、本編開始10分後に入場しました。
 
原作はスティーヴン・キングが1973年に発表した短編小説『子取り鬼』。
『ブギーマン』って聞いたことのあるタイトルだから、リメイクかと思って調べてみました。
だって、以前はホラー作品というだけで避けていたので、全然知らないんですもの。
 
で、『ハロウィン II』(1981)がもともとは『ブギーマン』という邦題で劇場公開されています。
でも本作はそのリメイクというわけではない。
また、サム・ライミ監督も2005年に同名で撮っていますが、そのリメイクでもない。
“ブギーマン”とは、子どもを狙う怪物で、世界各国に存在する民間伝承なのですね。
 
見逃した最初の10分間に何があったかわかりませんが、あまり影響はなかったと思われます。(^^;
 
両親と長女と次女4人家族だったハーパー家。
しかし母親が事故に遭って急逝し、深い悲しみに暮れる毎日が続いている。
さて、私が観たのはこの後から。
 
ある日、セラピストの父親ウィル・ハーパーのもとへやってきた男性レスター・ビリングスは、
悲しみの淵にいるウィルならばわかってくれるはずだと言って、荒唐無稽な話を始める。
レスターには3人の子どもがいたが、末っ子を乳幼児突然死症候群で失ったあと、
家に怪物がいると上2人が言い出し、それを信じずにいたら、2人とも相次いで死んでしまったと。
明らかに様子がおかしいレスターに恐れをなし、ウィルは席を外して警察に通報する。
 
その間、ハーパー家の長女で女子高生のセイディは、物音と争うような声を聞き、
亡き母が使っていた部屋に足を踏み入れてみると、
なんとクローゼットでレスターが首を吊って死んでいた。
 
レスターは自らの子どもを殺害したのではと疑いがかけられていたらしく、
それを苦に自殺したのだろうというのが警察の見解だが、
この事件以来、ハーパー家の次女でまだ幼いソーヤーが「家に怪物がいる」と言うように。
 
最初はソーヤーの妄想だと思っていたセイディも、次々と起こる異変に信じざるを得なくなり、
レスターの妻リタの話を聴くためにビリングス家へと向かう。
荒れ果ててまるで廃屋と化したその家の中には銃を構えたリタがいて……。
 
いや~、怖かった。
おそらく90分のうち、7割ぐらいの時間は目を閉じている、あるいは薄目状態だったと思います(笑)。
とにかく私、クローゼットが怖いんですよ、『クローゼット』(2020)を観て以来。
自分が衣装持ちじゃなくて良かった、誰かが隠れられるようなクローゼットが家になくて良かったと思う。
 
子どもの心に隙間があるのを察知して、その家に入り込むブギーマン。
天井に不気味なシミを発見したら、それがブギーマンに居座られているしるしです。
自分も悲しいのはわかるけど、子どもに向き合わない親に任せていられないとばかりに、
ブギーマン退治に挑むセイディが頼もしいし、ブギーマンを寄せつけない方法を考えるソーヤーのなんと可愛いこと。
 
ラストの地下室の対決シーンで、母親の存在がかいま感じられたところは泣きました。
怖いけどいい話だったのに、そんな終わり方しないでよ。まだおるんかいっ!(^O^;

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『星くずの片隅で』

2023年08月24日 | 映画(は行)
『星くずの片隅で』(原題:窄路微塵)
監督:ラム・サム
出演:ルイス・チョン,アンジェラ・ユン,パトラ・アウ,トン・オンナー他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの〆は香港作品。
 
ラム・サム監督の単独デビュー作品なのだそうです。
主演のルイス・チョンはシンガーソングライターとしても活躍するコメディ俳優らしい。
共演のアンジェラ・ユンはえらく可愛い人だなと思ったら、トップモデルなのだとか。
10代か、せいぜい20歳にしか見えないのに、今年30歳と知ってビックリ。
 
コロナ禍で静まり返る香港
“ピーターパン・クリーニング”という清掃会社を起業した青年ザクは、
今にも潰れそうな中古のバンで顧客のもとを走り回っている。
 
ある日、事務所を置くビルの階下に入居するシングルマザーのキャンディが、
どうしても雇ってほしいと言ってザクを訪ねてくる。
人を雇うような余裕はないけれど、このところ腰痛が酷いから、手伝いはほしい。
試用期間ということで3日間、キャンディを働かせることに。
 
仕事自体は丁寧で早いが、幼い娘ジューを抱えて生活に困っているキャンディは手癖が悪い。
かつて近所のコンビニでアイスクリーム万引きするのをザクは見かけたことがある。
今回は清掃に入った個人宅からマスクを数箱盗んだのがバレて、契約を打ち切られてしまう。
怒りが収まらないザクはキャンディをクビに。
 
しかしどうにもキャンディ母子のことが気になるうえに、
彼女がいるほうが明らかに仕事がスムーズに行く。
もう盗むなと約束させ、再びキャンディと仕事を始めるのだが……。
 
悪くはなかったのですが、期待していたほどには良くなかったかなぁ。
子どもを抱える母親には行きづらい世の中で、同情の余地はあるものの、
こんな信用の置けない女の面倒をどうして見続けるのか。
ザクおじさん、お人好しにもほどがあるやろ。
これがブスだったら同じように面倒を見たか。若くて美人だからだよねぇと思ってしまう(笑)。
 
ただ、香港の景色には息を飲む美しさがありました。
彼らが暮らしている付近はちっとも綺麗とは言えないのに、だから余計に切ない。
英語タイトルは“The Narrow Road”。狭い路地から彼らはいつ出ていけるのか。
 
清掃に使う機材はケルヒャーのもの。
去年亡くなったの部屋にあったケルヒャーのスチームクリーナーは私が使っています。
そんなこんなで、期待したほどの作品ではなかったのに、いろいろと想う。

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『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』

2023年08月23日 | 映画(か行)
『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』(原題:QT8: The First Eight)
監督:タラ・ウッド
出演:ゾーイ・ベル,ブルース・ダーン,ジェイミー・フォックス,サミュエル・L・ジャクソン,
   ジェニファー・ジェイソン・リー,ダイアン・クルーガー,ルーシー・リュー,
   マイケル・マドセン,イーライ・ロス,ティム・ロス,カート・ラッセル,クリストフ・ヴァルツ他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの3本目は、この日いちばん楽しみにしていた作品。
もうめちゃめちゃ楽しかった!
 
私がクエンティン・タランティーノを知ったのはいつだったでしょうね。
デビュー作のレザボア・ドッグス』(1991)が最初だったかもしれないけれど、
もしかすると『パルプ・フィクション』(1994)を先に観たかもしれません。
映画オタクで、日本贔屓で、愛すべき人柄のタランティーノ。
かねてから10本撮ったら引退すると宣言していたそうです。寂しいやんか。
 
そんな彼について話しまくるのは、上記の俳優たち。
それに加えて、映画関係者やルームメイトなどが実に楽しげに話しています。
 
『ジャッキー・ブラウン』(1997)、『キル・ビル』(2003&2004)、
『イングロリアス・バスターズ』(2009)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)、
『ヘイトフル・エイト』(2015)それぞれについて、撮影秘話的な話も含めながら。
 
レオナルド・ディカプリオが「ニガー」と言えずに困っていた話などは、
翌日からのレオの演技が本当に黒人を奴隷扱いするものになっていたとか、
その後のシーンでも流血の惨事となっているのもかまわず演技を続けたとか、
レオ様やっぱり凄いんだわと思える話もあって楽しい。
 
『それでも夜は明ける』(2013)とタランティーノ作品を比較して表した言葉も面白く、
また、スパイク・リーが『ジャンゴ』の黒人差別表現に怒っていたことに対して、
黒人俳優のジェイミー・フォックスがウケていた理由になるほど。
 
女優であり、スタントウーマンでもあるゾーイ・ベルの話も楽しかったなぁ。
スタントマンって、反射的に顔が映らないようにしてしまうそうですが、
女優として彼女がアクションシーンを演じたときは、
タランティーノが「君の顔は絶対映るようにしなきゃ」と撮り直しになったこととか。
 
なんだか書き出すとキリがないくらい、楽しい話てんこ盛りでした。
楽しくない話としては、ハーヴェイ・ワインスタインの話にも言及しています。
タランティーノ作品を必ず配給してきたミラマックス
あの事件が業界にどれほどの影を落としたことか。見るのもキモい、ハーヴェイ。残念なことです。
 
それを除けば、ずっとニヤニヤしながら観ていました。
タランティーノ作品のファンだと言っても、私なんて全部せいぜい数度観ただけ。
登場人物がこんなに繋がっているなんて知らなかったよ。
まるで伊坂幸太郎じゃあないか。遊びごころ満載。
こりゃ一度、全作品続けて観なきゃいいけませんね。
 
「クエンティン・タランティーノの書くものには、“不誠実さ”はまったくない。」by サミュエル・L・ジャクソン。

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『ふたりのマエストロ』

2023年08月22日 | 映画(は行)
『ふたりのマエストロ』(原題:Maestro(s))
監督:ブリュノ・シッシュ
出演:イヴァン・アタル,ピエール・アルディティ,ミュウ=ミュウ,キャロリーヌ・アングラーデ,
   パスカル・アルビロ,ニルス・オトナン=ジラール,アンドレ・マルコン他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの2本目。
 
第64回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したイスラエル作品『フットノート』(2011)のリメイク。
『コーダ あいのうた』(2021)の製作陣が手がけたフランス/ベルギー作品です。
 
フランソワ・デュマールとドニ・デュマールは、共に著名な指揮者
父親のフランソワは40年以上のキャリアを誇るベテランだが、ここ最近はくすぶり気味。
それに対して息子のドニはヴィクトワール賞を受賞するなど、勢いに乗っている。
フランソワはドニの活躍を素直に喜べないばかりか、それを態度に露骨に出すものだから、
父子は顔を合わせれば喧嘩ばかり。
 
そんなある日、フランソワのもとへ1本の電話が入る。
それはミラノのスカラ座からで、音楽監督に就任してほしいという依頼。
夢にまで見た世界最高峰からの依頼に有頂天になるフランソワ。
自然とドニへの態度も和らぎ、ホッとする家族たち。
 
ところが翌朝、今度はドニにスカラ座の総裁マイヤーから電話があり、呼び出される。
聞けば、マイヤーの秘書カルラが父子を間違って電話してしまったらしい。
フランソワから何度も留守電が入っていたせいでそのことに気づいたと。
 
マイヤーはドニからフランソワに話をするように言うが、
あんなにも喜んでいるフランソワにどのように伝えればいいのか。
苦渋のまま時間が経ち、焦るドニだったが……。
 
予告編を観てとても良さそうだと思いました。
『テノール! 人生はハーモニー』並みの出来を期待して観に行ったのですが、うーん、だいぶ残念。
 
ピエール・アルディティ演じるフランソワにまったく魅力なし。
息子のほうが人気者でスネる爺ちゃんといえば可愛いかもしれないけれど、大物指揮者ですよ。
こんな器のちっちぇえところを見せられてもねぇ。
団員に八つ当たりして、自分の携帯が鳴っているのにも気づかず怒る。
このシーンって、本国ではウケるところなのですか。まったく笑えない。
 
だいたい、スカラ座が間違って電話したくせに、それを息子から父親に伝えろと言うのはいかがなものか。
「ウチの美人秘書が阿呆で間違っちゃったんだ。申し訳ないけど頼むよ」とでも言うならまだしも、
「おまえから父親に言え。時間はない。スカラ座だぞ。就任したい奴はほかにいくらでもいる」って、超高圧的。
 
自分の勘違いだと知った後にフランソワの取る行動も腑に落ちません。
ドニの家に押しかけ、陰で笑い者にしたんだろと悪態をつく。
どうやら帰り際にドニに言い渡したことは息子を羽ばたかせるための言葉だったようだけど、
私にはただ嫌味を言って帰ったようにしか思えません。
善人面、被害者面をしていて、顔を見ているだけで嫌になった(笑)。
 
一方、ドニ役のイヴァン・アタルはアラン・リックマンを彷彿とさせ、悪くありません。
別れた妻は変わらずドニのエージェントを務め、恋人は美人ヴァイオリニスト
彼女が難聴という設定は別に要らないんじゃないかと思いましたが、
その彼女から「クソじじぃ」呼ばわりされるところなんかは気の毒すぎてちょっと笑いました。
 
ニルス・オトナン=ジラール演じる一人息子マチューも良い。
両親が別れてもこんなに面白い子に育つ。ピアノに料理に、彼はいつでも楽しげ。
 
オチもあまりに唐突です。
万事オッケーということで後味は悪くないけど、丸くおさめすぎだってば。

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