夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『映画 マイホームヒーロー』

2024年03月26日 | 映画(ま行)
『映画 マイホームヒーロー』
監督:青山貴洋
出演:佐々木蔵之介,齋藤飛鳥,高橋恭平,宮世琉弥,板倉俊之,大東駿介,淵上泰史,
   西垣匠,金子隼也,立川談春,神野三鈴,音尾琢真,津田健次郎,木村多江他
 
前週、93歳のが倒れて救急車で病院へ搬送されましたが、驚異の生命力。
今日明日の命かもしれませんと主治医から言われていたところ、
翌々日に「おなかが空いた」と言って普通食を摂れるように。
その翌日には好きなおやつも食べられるようになり、
さらにその次の日には自分のスマホで電話もかけてきました。
大腸から転移した癌が肝臓を覆い尽くしているので、終末であることに変わりはないけれど、とりあえず復活。
昭和一桁の人って本当に凄い(笑)。私はこんなに長生きできそうにないなぁ。
 
で、病院から連絡があればすぐに駆けつけられるようにしておきたいものの、
まっすぐ帰っても落ち着かないだけなので、やっぱり映画を観に行くことにしました。
 
イオンシネマ茨木にて2本ハシゴの1本目はこれ。
山川直輝原作、朝基まさし作画の同名人気漫画は2017年より『週刊ヤングマガジン』に連載中。
TVアニメ化されたのがちょうど1年ほど前で、その後TVドラマ化。
同じキャストでこのたび劇場版が作られ、監督もTVドラマ版と同じ青山貴洋。
私は劇場版の予告編で初めて本作の存在を知りました。
 
おもちゃメーカーの営業職に就くサラリーマン・鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)は、
7年前に長女・零花(齋藤飛鳥)と交際していた麻取延人を殺害した。
半グレ組織の一員だった延人に女性を殺した過去があると知ったうえに、
延人が決して零花を愛しているわけではないことも知ってしまったから。
 
そのとき、哲雄は妻・歌仙(木村多江)と協力して延人の遺体を処分したが、
延人の行方を捜す父親で詐欺師の義辰に犯行がバレ、
義辰は哲雄の目の前で自殺して哲雄に殺されたように見せようとする。
その罪を延人と同じ半グレ組織に所属する間島恭一(高橋恭平)になすりつけることに成功し、
鳥栖家は安泰したと思われていた。
 
ところが、義辰が10億円という大金を持って姿を消したせいで、
半グレ組織を仕切る暴力団“間野会”のトップ・志野寛治(津田健次郎)が躍起になって真相を暴こうとする。
ついに哲雄にたどり着かれてしまい、10億円を返さないならば、妻子を殺すと脅される。
 
困り果てる哲雄に連絡をしてきた謎の青年・大沢隼人(宮世琉弥)に会ってみると、
彼は間野会を潰すために哲雄に力を貸すと言い……。
 
殺害シーンがあまり気持ちの良いものではないので、楽しいとも言えませんが、
最後まで飽きずに観られるのは確か。
私のツボは志野が頼りにしている殺し屋役を演じた音尾琢真
チンピラなどの役がすごく多くて、だけどどこか抜けているところがあるから憎めない。
歴代の役の中ではその抜けたところが少なくて、いちばん怖かったかな。
でも、素人の哲雄にまんまと殺されてしまうのですから、やっぱり間抜けか。
 
これほど凄腕の女刑事・零花がそもそもどうして半グレとつきあっていたのか、
TVドラマ版を観ていないからさっぱりわかりません。
観ていなくてもなんら問題のない作品ではありますが、TVドラマ版ファンのほうがそりゃ楽しいでしょうね。
 
半グレ、怖いよ。
だけど、仕えていた人間にこんなにも虐げられ、あっさり殺されるのに、半グレで居たいものですか。
その気持ちがわからん。

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『PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』

2024年03月25日 | 映画(は行)
『PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』
監督:古厩智之
出演:奥平大兼,鈴鹿央士,山下リオ,小倉史也,花瀬琴音,斉藤陽一郎,山田キヌヲ,
   唯野未歩子,西間木冠,味元耀大,和田聰宏,三浦誠己,OooDa,平岩康佑他
 
イオンシネマ茨木にて2本ハシゴの2本目。前述の『ゴールド・ボーイ』の次に。
 
監督は『ロボコン』(2003)や『奈緒子』(2008)、『のぼる小寺さん』(2020)の古厩智之
eスポーツを映画化した作品は日本初なのだそうです。
キャラクタークリエイターの広井王子が企画とプロデュースを務めているとのことですが、
私はそれがどういう人なのかも知らなければeスポーツのことも全然知らない。
さらにはVTuberの胡桃のあが出演していることでも話題になっているそうだけど、
封切り日だったこの日の客は私ひとり。今年初めての“おひとりさま”でした。
 
何はともあれ、予告編がとても面白そうだったので、私は観る。
キャストもいいのだから、もっと宣伝すればよかったのに。
 
徳島県の阿波工業高専(実際は阿南工業高専らしい)の電気科3年、田中達郎(鈴鹿央士)は、
バスケットボールの有力選手だったが、手首を傷めたせいで辞めざるをえなくなる。
授業を聴いている様子はほとんどないのに、担任教諭の木村佳浩(三浦誠己)が呆れるほど学業優秀。
天才ゲーマーでもある彼はバスケよりも没頭できるものを見つけようとしているのかどうか、
全国高校eスポーツ大会の開催を知り、出場を決意する。
 
しかし、出場するには3人1組のチームが必要で、あと2人集めなければならない。
達郎はたまたま近くの席に座っている同級生でゲームオタクの小西亘(小倉史也)に声をかけると、
亘が「ほかにどうしても見つからなければ名前を書いてもいい」と言っているにもかかわらず、
すぐに応募書類に亘の名前を書き加える。
 
もう1人、達郎が貼ったポスターを見て連絡してきたのが、情報科2年の郡司翔太(奥平大兼)。
金髪でモテるが、その実は奥手。
同級生の松永紗良(花瀬琴音)が自分に想いを寄せていることは明らかなのに応えられない。
ふと目にしたポスターのキャッチコピーに惹かれ、応募したいと考える。
 
これで3人集まったものの、亘と翔太はeスポーツが何なのかも知らない。
達郎から「人ではなく車でプレーするサッカー」と聞き、習うより慣れろで特訓を開始するのだが……。
 
いずれも能天気な若者というわけではありません。
達郎の父親は飲んだくれで、酔っぱらって寝ている姿しか見ることがない。
母親はいつも疲れた表情で達郎に構っている余裕なし。
亘の家庭は一見平和ですが、友だちはひとりもいないことを家族は知っていて腫れ物に触るよう。
翔太の父親はDV気質で母親は離婚したがっています。
歳の離れた弟たちを守ろうとしていることが翔太の様子からわかります。
 
家には居場所がなくて、相談相手は誰もいないし、それを深刻に考えないように振る舞っていた。
そんな3人が集まって、車でサッカーするゲームにのめり込みます。
 
なにしろ私は大スクリーンを独占してたったひとりで本作を観るはめになったから、
肝心の全国大会のシーンではちょっと盛り上がれないままでしたが、
そこに至るまでのシーンはとてもよかった。予選のほうが楽しかったかも。
 
木村先生役の三浦誠己はバイプレイヤーですよね。本作でもめっちゃ良い味。
 
なんだかんだで、ザ・青春。

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『ゴールド・ボーイ』

2024年03月24日 | 映画(か行)
『ゴールド・ボーイ』
監督:金子修介
出演:岡田将生,黒木華,羽村仁成,星乃あんな,前出燿志,松井玲奈,北村一輝,江口洋介他
 
イオンシネマ茨木にて2本ハシゴの1本目。
 
中国の人気作家・紫金陳(ズー・ジンチェン)のベストセラー小説『悪童たち』を日本で映画化。
監督は『DEATH NOTE デスノート』(2006)の金子修介
 
莫大な資産を持つ事業家である東家に婿入りした昇(岡田将生)は、
妻の静(松井玲奈)から離婚を突きつけられ、義両親の殺害を決行する。
崖から突き落として事故による転落死に見せかけ、それが成功したかに思われたが、
犯行の瞬間を偶然動画に収めていた少年少女3人がいた。
 
中学生の朝陽(羽村仁成)と、彼を頼って家出したきた浩(前出燿志)と夏月(星乃あんな)は、
昇を脅して金を取ることを思いつく。
朝陽は親が離婚したせいで学費の工面に悩まされているし、
浩と夏月はこのさき自分たちだけで生きていかねばならない。
どちらの悩みも金があれば解決できることだと考え、昇に連絡して金を求める。
 
一方、静は両親の死は絶対に昇の犯行だといとこの刑事・巌(江口洋介)に主張。
取り合おうとしない巌に、もしも今後自分が死ぬようなことがあれば、
それは昇に殺されたのだと思ってくれと言う。
そして実際に静は車の運転中に事故に遭って死亡する。
 
やっと昇のことを疑いはじめた巌は、昇と朝陽が会っていることに気づくのだが……。
 
なぜ沖縄を舞台にすることにしたのかわかりませんが、
東なしではこの土地は潤わないことから警察もなかなか口出ししにくいという設定。
 
岡田将生演じる昇がとにかく卑劣な奴で、気の毒な環境にある朝陽たちが頑張る話かと思ったら、
どうですか、この想像を裏切るめちゃめちゃ嫌な展開。
いや〜、朝陽みたいな奴には『おまえの親になったるで』とは言えませんね。
生まれついての悪人というのはいると思います。そして彼がそう。
 
朝陽の本性を知ってからというもの、不気味なことこのうえない。
彼をいい奴だと信じて巻き込まれたあとの2人が可哀想。あ、ネタバレだ。(--;
大人をナメるなよと言いながら朝陽をナメていた昇すら少々可哀想になりました(笑)。
こんなモンスターを産んでしまった母親役に黒木華。彼女の心を思うとつらい。
 
途轍もなく嫌な話です。面白かったけど。

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『おまえの親になったるで』

2024年03月23日 | 映画(あ行)
『おまえの親になったるで』
監督:北岸良枝
 
前述の『月』を観たあと、5階のシアターセブンから6階の第七藝術劇場へ移動して。
平日だというのに満席。立ち見も出ようかという勢いです。
この週で一応上映が終了したのですが、これはまた再上映するでしょうね。
 
ご存じでしたか、“日本財団職親プロジェクト”。
2013年に「お好み焼 千房」の代表取締役・中井政嗣氏が発起人となり、
関西の中小企業7社が集まって発足したプロジェクト。
元受刑者に住まいや仕事を提供して再犯を防ごうというものです。
 
このプロジェクトの参加者のひとりが、大阪の建設会社の社長・草刈健太郎氏。
彼は妹を殺されたという悲しい過去の持ち主です。
 
犯罪の被害者遺族が、当の事件の加害者でないとはいえ、
はたしてほかのさまざまな犯罪者の更生に手を貸せるものでしょうか。
 
確かに、出所してきた彼らにの中は、凄絶な家庭環境に育った者もいます。
母親が父親を殺して、遺された子どもとか。
ヤク中の母親からネグレクトを受けてきた子どもとか。
 
それでもまともに育ってまともに暮らしている人もいる。
劣悪な環境に育ったから人を傷つけていいわけじゃない。
 
草刈さんは言います。加害者がひとり減れば、被害者もひとり減る。
自分の妹を殺めた犯人を許すことはできないけれど、加害者を減らすためにも再犯を防ぎたい。
 
手を差し伸べてもいっぱい裏切られます。
もともと辛抱強くできていない元受刑者たちは、草刈さんに感謝しつつも、
ギャンブルに手を出したり、ドラッグをやめられなかったり。
同寮者の金を盗んでまで元の生活に走ったりします。
 
それでも彼らを見捨てない草刈さん。
この10年で職親プロジェクトの参加企業は増え、少年院刑務所と連携を図り、
今はまっとうに働く元受刑者が職業技術訓練に訪れるなどしているそうです。
 
会ってみないと、それぞれがどういう人なのかわからない。
だから手放しで良しとは言えないけれど、応援したいプロジェクトではあります。

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『月』

2024年03月22日 | 映画(た行)
『月』
監督:石井裕也
出演:宮沢りえ,磯村勇斗,大塚ヒロタ,笠原秀幸,板谷由夏,モロ師岡,
   鶴見辰吾,原日出子,高畑淳子,二階堂ふみ,オダギリジョー他
 
見逃していた本作がシアターセブンで上映されているのを知って駆けつけました。
ヘヴィーすぎて、配信やDVDでは観る気になれないと思ったから。
 
石井裕也監督のことは『川の底からこんにちは』(2009)で大好きになりましたが、
たまに観るのを躊躇するほど重い題材で撮るんですよね。
本作は2016(平成28)年に起きた相模原障害者施設殺傷事件をモチーフにしています。
 
東日本大震災に絡めた処女作が大当たりした作家・堂島洋子(宮沢りえ)。
しかし以降は何も書けず、近隣の森の中に佇む知的障害者施設で働きはじめる。
 
夫の昌平(オダギリジョー)は映像作家を目指しているが、なかなか芽が出ず。
このままではいけないと、マンションの管理人の職に就く。
 
洋子の勤務初日に施設内を案内してくれたのは坪内陽子(二階堂ふみ)。
彼女は、自分も洋子のような作家になりたくてネタ探しのためにここに勤めていると言う。
 
重度の知的障害者が入所するこの施設では、虐待が常態化しているなか、
職員の自称さとくん(磯村勇斗)は絵が得意らしく、紙芝居を制作して入所者に見せていたが、
ほかの職員たちから手間が増えるだけだと文句を言われる。
 
ある日、陽子とさとくんを堂島家に招いたところ、
陽子は酔っぱらって洋子の小説を非難するわ、洋子が昌平に内緒にしていたことを暴露するわ。
さとくんが別の話を始めてくれたはいいが、それはさとくんの闇を匂わせる不穏な話で……。
 
モチーフとなっている事件の犯人は津久井やまゆり園の職員・植松聖(さとし)でした。
磯村勇斗演じるさとくんがその役ということになります。
さとくんは、口をきくことのできない障害者を「心のない者」とし、
この世で生きている価値はないとの考えから犯行におよびます。
 
事件前にさとくんと話す機会のあった洋子は、彼の犯行を予測し、
人を傷つけてはいけない、あなたの考えを認めないと憤る一方、
生まれてくる子どもに障害があるとわかれば中絶しようかという思いがよぎって自己嫌悪に陥ります。
洋子と昌平の間には息子がいましたが、先天的な心疾患を持っていたその子は3歳で他界。
夫婦の心の傷は何年経っても癒えることなく、洋子は次の子どもを持つのが不安だから。
出生前診断で胎児の異常がわかれば95%以上の人が中絶を選ぶという事実。
 
さとくんの犯行を許すことはできないけれど、耳元でわけのわからぬ言葉をずっと囁かれ、
唾や糞尿にまみれて患者の世話をしても、月給は手取り17万円。
陽子が言うように、まともな思考を持てなくなっても仕方ないと思わなくもない。
酷い施設だとわかっていても、よそはどこも受け入れてくれないから致し方ないと考える家族。
寝たきりの入所者の母親役、高畑淳子の叫びが胸に突き刺さります。
 
フィクションとは思えない状態に、なんとかならないものかと考える。
考えても何にもしない。私も同罪です。
 
余談ですが、「出生」は「しゅっしょう」と読むのが正しかったはずですが、これはもう過去のことなのか。
最近映画やテレビで「しゅっせい」と読まれることのほうが多い。
また、「他人事」も「ひとごと」ではなくて「たにんごと」と読むのが普通になっているようで、
そんな台詞を耳にするたびに、こうして読み方は変わって行ってしまうのかなぁと思うのでした。

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