めいすいの写真日記

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ミラノ・スカラ座パレエ「ラ・バヤデール」

2022-05-30 | オペラ・バレエ

                             NHKプレミアム・シアター 2022 5/23

愛を誓った恋人ニキア(寺院の舞姫)とソロル(戦士)を引き裂く王の娘(ガムザッティ)との愛の悲劇


ニキヤ(寺院の舞姫)  アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ
ソロル(戦士)          ヴィクトル・レベデフ
ガムザッティ(王女)  アンドレア・ラザコワ
王(ガムザッティの父) アンドレイ・ガシャネンコ
大僧正         セルゲイ・ストレルコフ

ミラノ・スカラ座バレエ団
元振付  マリウス・プティパ
改定振付   ナチョ・ドゥアト
音楽    ルドヴィク・ミンクス
舞台美術・衣装 ・アンゲリーナ・アトラギッチ
管弦楽ミラノ・スカラ座劇場管弦楽団
指揮 ケヴィン・ローズ

 ソロルに恋人がいると知ったガムザッティはニキヤを呼び出し激しく責める。
 逆上したニキアはナイフでガムザッティを襲おうとする。

 王はソロルとニキヤとの恋仲を大僧正から告げ口される。ソロルには王女ザムザッティとの結婚をを命じ、
ニキヤへの殺害を企てる。
   一方失意の中、ニキアは、赴いたソロルとガムザッティの王宮の結婚式で、花籠に仕組まれた毒蛇に噛まれる。
彼女に横恋慕していた大僧正の差し出す解毒剤をも拒否し、その場で絶命する。

愛するニキヤを失って絶望したソロルは、後悔の念にさいなまれ、阿片を吸い、幻の世界に逃避しニキヤの面影を追う。

(影の王国)幻想の世界が現れる。ラバヤデールの神髄ともいえる精霊達のバレエが始まる。
   精霊達24人が白衣のチュチュの群舞(コール・ド・バレエ)を踊る。ヒマラヤの山からジグザクに舞い降りる様子
を表現としたという場面は古今のバレエの中で最も美しいシーンの1つで見事。印象的だ。

白く長いスカーフを持って踊るニキアとソロルのパドゥ・ドゥは「影の王国」での結婚を意味
しているものとされている。

ソロルが結婚式場に登場する際の象の乗り物など、背景がエキゾチックである
また、王宮には奴婢がいて、スピーディで柔軟な動きを見せてくれるのも魅力的であつた。


歌劇「椿姫」・・・ヴェローナ野外劇場

2022-04-12 | オペラ・バレエ

                                                                                                                    2022/4/11 NHKプレミアム・シアター

2000年前に建造された大理石づくりの円形闘技場アレーナ・ディ・ヴェローナ
 当時は人間同士や人間vs猛獣の戦いが行われる闘技場だったが、現在は夏の野外オペラの殿堂として
世界最大の動員数を誇る

 この物語の時代、「椿姫」の原作者デュマ・フィスがドゥミ・モンド(上流社会もどき)と名付けた裏の社交界があった。
パトロンを持つ高級娼婦達が自分の部屋を富裕層のサロンとして提供し、日夜パーティーを繰り広げている。
日陰の社交界に咲く高級娼婦ヴィオレッタは不治の病・結核に侵されていたが病状が好転し、
パーティーの日々へと舞い戻った。そんな彼女を慕う田舎出の一人の青年がいて・・・。

     演出・美術 ミケーレ・オルチェーゼ
     指揮   フランチェスコ・イヴァン・チャンパ
     合唱指揮  ヴィート・ロンバルディ
     アレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団・合唱団・バレエ団・技術チーム
     演出・美術 ミケーレ・オルチェーゼ
    2021年8月7日・19日 ヴェローナ野外劇場(イタリア)

  ◆ ヴィオレッタ・ヴァレリー ・・・ ソーニャ・ヨンチェヴァ
     日陰の社交界に咲く高級娼婦 ヴィオレッタ・ヴァレリー ソーニャ・ヨンチェヴァ
  ◆ アルフレード・ジェルモン・・・ヴィットリオ・グリゴーロ
   ヴィオレッタに恋い焦がれる田舎生まれの青年
  ◆ ジョルジョ・ジェルモン・・・ジョルジュ・ペテアン
     アルフレードの父

第1幕 ヴィオレッタの家

  アルフレードは華やかなパーティーの席で「乾杯の歌」を歌う

ヴィオレッタは自分の心に起こった心のときめきを「ああ、そはかの人か」と歌う。

 続いて、「花から花へ」と享楽的に生きる自分の人生を歌う。
 そこに外を歩くアルフレーどの歌が聞こえてくる。

第2幕 第1場 パリ近郊の別荘

アルフレードはヴィオレッタとの愛の生活「燃える心を」を歌う。

そこに、父親のジョルジョ・ジェルモンが訪ねて来て「プロバンスの海と陸」を歌い、アルフレードを戒める。

第3幕 病気のヴィエレッタが生活するパリの寂しいアパート

  しかし、ここにはウフィツィ美術館とのコラボレーションで数々の名画が登場、野外ならではの豪華な舞台。

 私の最も好きな絵画のヴォッティチェリの「春」「ヴィーナスの誕生」が飾られていたのはまさに驚き。

  駆けつけたアルフレードとヴィオレッタとは抱き合い、二重奏「パリを離れて」」を歌う。
 ヴィオレッタは最後の力を振り絞り、教会に行こうと立ち上がろうとするが、不思議な穏やかさの中で息耐える。

【感想】野外劇場ならではの圧倒的に迫力のある大舞台で繰り広げられるオペラに惹きつけられた。
   ヴィオレッタを演じるソーニャ・ヨンチェヴァが美しい歌声と素晴らしい演技を繰り広げ、
  アルフレード役のグリゴーロも魅力的で存在感があり、 近来にはない「椿姫」見事なの出来映えであった。

(了)


新国立劇場バレエ 「白鳥の湖」・・・ 芸術監督 吉田 都

2022-01-31 | オペラ・バレエ

                                                                                                                           NHK BSプレミアム 2022/1/30

 新国立劇場の舞踊芸術監督が吉田 都になって一年、新らたに制作された「白鳥の湖」
・・・永遠の愛が静かな湖畔に舞い降りる。(全4幕)

 華麗な舞、豪華なセットと衣装、にこやかな笑顔など英国ロイヤルバレエや
ボリショイバレエに決して引けを取らない素晴らしいバレエを見せてくれた。

【振付】マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、ピーター・ライト
【演出】ピーター・ライト
【共同演出】ガリーナ・サムソワ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【管弦楽】ポール・マーフィー指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
【美術・衣裳】フィリップ・プロウズ
【照明】ピーター・タイガン
【制作】2021/10/23
【出演】 
 オデット/オディール:米沢唯 はかなげな姫と魔性の女を抜群のテクニックで踊り分ける
 ジークフリード王子:福岡雄大 戸惑いながら真実の愛を見つける若者を情感たっぷりに演じる
 王妃:本島美和
 ロットバルト男爵:貝川鐡夫
 ベンノ:木下嘉人
 ほか新国立劇場バレエ団

 第1幕【宮廷の庭】 楽しく無邪気な少年時代に終わりを告げる日

   ここ緑美しい湖畔を臨むとある美しい城
ジークフリート王子の成人を祝うパーティーが開かれている
 ジークフリートと踊る城内の若い女性達、豪華な衣装、華麗な踊り、美しい笑顔に惹きつけられ、最初から引き込まれる

   王子は母である王妃から明日の舞踏会で花嫁を選ぶよう言い渡される

第2幕【湖のほとり】 
 王子は悪魔ロットバルトが支配する深い森の湖畔でロットバルトによって白鳥
 に姿を変えられたオデットに出会う

                                         ジークフリートと踊るオデット
 

 湖畔の白鳥の群れも実はみなロットバルトに呪いをかけられた乙女たちだった

  オデットは王子に、まだ恋をしたことのない青年による永遠の愛の誓いだけがロットバルトの
魔力に打ち勝つことができること、そしてもし誓いが破られれば白鳥たちは二度と人間に戻れないことを告げる

                    有名な四羽の白鳥の踊り

第3幕 【宮殿の広間】  舞踏会  愛の試練が訪れる
          各国の姫達を招いた舞踏会が始まる。ハンガリーの踊り、ナポリの踊り、マズルカなどが行われる

その後に、ロットバルトと娘のオディールが舞踏会に現れる。なんとオディールはオデットにそっくり

 オディールは、高度なテクニックの32回転ルッツを踊る
   王子はオディールの妖艶な魅力に幻惑されオディールに愛を誓ってしまう            

 その窓辺には必死で訴えかけるオデットの姿が・・・

第4幕 【湖のほとり】悲しみに沈む白鳥たち
      畔では王子の裏切りを知った白鳥たちが深い悲しみに沈む

   深い霧の中に悲しみに満ちた白鳥たちが浮かび上がる

 王子は悔恨の情に責めさいなまれ、オデットに許しを乞う

そこにロットバルトが現れる。ジークフリートはロットバルトに決死の闘いを挑み、倒す



   しかし、ジークフリートは湖に向かったオデットを追うが、すでに身を投げていた
 ジークフリートもその後を追う。ベンノも駆けつけたが間に合わなかった
 ベンノに運ばれてくるジークフリートの亡きがら
 背景にオデットとジークフリートの亡霊が浮かび上がる 

 【感想】
     新国立歌劇場バレエ団の重要な演目のひとつである「白鳥の湖」。コロナ禍の中、吉田都 
 舞踊監督になって1年目、新制作となって演じられた。
 出演者全員、粒選りのダンサーが満を持して素晴らしいバレエを見せてようとしていて熱気が、
 ひしひしと伝わってくる。
     音楽、衣装、セットはもちろんのこと、演出も素晴らしく、吉田都監督の意気込が良く現れていた。
  新国立劇場バレエ団は「日本のバレエ界の宝」良いバレエを今後も、演じ続けて貰いたいと思う。

     (了)


NHKニューイヤーオペラコンサート2022

2022-01-06 | オペラ・バレエ

                                      NHK Eテレ 2022/2/3

  今年も、恒例の「ニューイヤーオペラコンサート」(第65回) が1月3日に東京芸術劇場で
  行われました。
  コンサートのテーマは特別編「それでも人は歌い続ける」(出場者名・・・敬称略)

  司会者は久保田祐佳アナウンサー・檀ふみ・黒田博。
  管弦楽は、阪哲朗指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
  阪哲朗は、あまり馴染みがないけれど、ヨーロッパで活躍するオペラ指揮者。

 今回は放映されたオペラの曲目のうちから13曲を掲載しました。

オープニング

ヴェルディ作曲 歌劇「椿姫」から乾杯の歌「友よ、さあ飲み明かそう」
 冒頭にふさわしい名曲である。

 アルフレードの笛田宏昭が華やかに歌い始める。

 続いてヴィオレッタの歌を森麻季が歌い、合唱となる。

プログラム前半

■ ヴェルディ作曲 歌劇 リゴレットから「あれかこれか」

ヴェルディの歌劇の中でも女好きの代表マントヴァ公爵の歌を若手テノールの宮里直樹が伸びやかに
歌い上げてくれた。

■ ドニゼッティ作曲「連隊の娘」から「みんながごぞんじ」

 連隊の兵士の憧れのマリーの歌うコルラトゥーラ・ソプラノの歌声が素晴らしい。高橋維は「魔笛の夜の女王」も歌うとのこと。
  ただ「連隊の娘」に「さあ来た、コノヤロウ、ほら来た、コンチクショウ」などというセリフはあったかなあ。

■ ロッシーニ作曲「セビリアの理髪師」から「陰口はそよ風のように」

 ロジーナを恋をしているアルマヴーヴァ伯爵を追い払おうとする音楽教師ドン・バジーリオの歌。
オペラの中では聞き逃してしまいそうな曲だが、ロッシーニらしい軽やかな曲である。
妻屋秀和のバリトンらしい渋い声が魅力的である。

モーツアルト作曲 歌劇「魔笛」から「恋を知るほどの殿方には」
       ハパゲーノ 黒田博、パミーナ 砂川凉子

 パミーナを歌う砂川凉子のソプラノは柔らかい声で聞きやすく、とても魅力的。
 舞台に「魔笛」の雰囲気はないが、それはそれでモーツァルトらしい曲である。

モーツアルト作曲 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から「みんな楽しくお酒を飲んで」

 このオペラ、無類の女好きのドン・ジョバンニは憎まれ役となっているが、この曲はテンポも良く印象的。
大西宇宙が好演し、とても楽しめた。

ビゼー作曲 歌劇 歌劇「カルメン」から セギデテーリャ「セビセリアのとりで近くに」

 歌劇「カルメン」の中でもおおいに酒を飲み、歌い、踊りが盛り上がるカルメンの仲間達の居酒屋。しかし、カスタネットを叩き、
 フラメンコのリズムで踊らなければカルメンの個性が残念ながら出てこない。

歌劇「カルメン」から闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」

 背景に闘牛の牛が映し出されて動くなど迫力十分。

 闘牛士の服装で歌うのも素晴らしい。
 実際のオベラでは歌の場所は、リーリャス・パスティヤの店の中なので背広で歌ったりすることも多い。
 やはり闘牛士の服装の方が雰囲気は出る。取り巻きの女性達が闘牛士を前に黙ってはいられない様子が描かれる。
 この演奏会の方が背景が実は「闘牛士の歌」にふさわしい。

プログラム後半

■ コルンゴルト作曲  歌劇 「詩の都」から「私に残された幸せ」

後期ロマン派、ウィーンの作曲家コルンゴルド。弱冠20才の時の作品だという。
マーラーを彷彿とさせるとも言われる管弦楽に乗って、森麻季が熱唱し伸びやかで美しい歌唱を聞かせてくれた。
本コンサートでも印象に残った曲のひとつである。

 ワーグナー作曲 歌劇「ワルキューレ」から「冬の嵐は過ぎ去り」

 やはり、このコンサート、ワーグナーの歌は欠かせない。聴き応えのある曲である。
 イタリア・フランスオペラ役が得意という村上敏明がジークムントの歌を堂々と歌う。

プッチーニ作曲 歌劇「トスカ」から「星はきらめき」 

 司会の檀、黒田両名が話題にした悪役スカルピア(警視総監)は唖然とするほどの悪役ぶりだが、
 両名はこのオペラを、演じるとすれば、スカルピア役をやりたいとのこと。
 実際の社会では起こることがまれだからとのこと。ちょっとびっくり。

 そのスカルビアのために死に至るカヴァラドッシの生への執着を福井敬が切々と歌う。背景は星がきらめき美しい。

 2018年のニューイヤーオペラコンサートでスカルピアの「行けトスカ」が青山 貴によって合唱「テ・デウム」とともにうたわれている。

プッチーニ作曲  歌劇「蝶々夫人」から花の二重奏「策の枝をゆすぶって」

       蝶々夫人 小林厚子  スズキ 山下牧子

 三年ぷりのピンカートンの船が沖合に来たことを知り、喜びに溢れる蝶々夫人、聴き応えのあるスズキとの二重唱だ。

■ レオンカヴァレッロ作曲「衣装を着けろ」 

 カヴァリレア・ルスティカーナとともにヴェリズモ(写実主義敵な)オペラの傑作。

 旅芸人一座のカニオは妻に裏切られてもなお道化を演じ、舞台で妻を殺害。
 実話を元に作られたオペラの劇的な緊張感に溢れるアリアを 笛田宏昭が見事に歌う。

フィナーレ
    ヨハン・シュトラウス作曲 喜歌劇「こうもり」から 「ぶどう酒の燃える流れに」                          

                      出演者全員       

 指揮者の阪哲朗は指揮が軟らかで見ていて安心感があった。節目、節目の動作もリズミカルで合格点である。
 今年はコロナ禍ということもあって会場には観客が入場制限のため、まばらであった。
 来年は、もっと賑わいのある舞台となることを願っている。

(了)


歌劇 オッフェンバック「ホフマン物語」・・・ハンブルグ国立歌劇場

2021-12-15 | オペラ・バレエ

                               NHK プレミアム・シアター 2021/12/12

 クラシック音楽の名曲「ホフマンの舟歌」で知られる「ホフマン物語」。ダニエル・フィンツィ・バスカルの演出は、
サーカス的手法を使用し、幻想的でカラフルで、見応えのある出来映えとなっている。
 また、4人の宿命の異なるヒロインを姿を変えて演じるオルガ・ベレチャツロの活躍は見事と言うほかはない。

【作曲】オッフェンバック
【演出】ダニエル・フィンツィ・バスカル
【出演】
ホフマン・・・バンジャマン・ベルネーム
・姿を変えてホフマンの前に現れる宿命のヒロイン・・・オルガ・ベレチャツロ

オランピア
アントニア
ジュリエッタ
ステッテラ

・ホフマンの友人に変身し彼の流転を見守る詩の女神・・・アンジェラ・ブラウザー

ミューズ
 ニクラウス

・ホフマンの恋路を妨げる悪魔の化身・・・ルカ・ビザローニ

リンドルフ
コぺリウス 
ミラクル
ダッペルトゥット 

・姿を変える悪魔とヒロインに付き従う・・・アンドリュウ・ディッキンソン
   アンドレ・シュニーユ
   フランツ
   ピティチョオチョ

【管弦楽】ケント・ナガノ指揮 ハンブルク国立歌劇場管弦楽団
【合唱】ハンブルク国立歌劇場合唱団
【上演】2021年9月19・22日   ハンブルク国立歌劇場(ドイツ)

第1幕
  舞台はニュルンベルク、ルーテルおやじの酒場。ホフマンの才能を愛する詩人ミューズ
が友人の姿を借りて彼を見守る。 
 近くの歌劇場ではモーツァルトのオペラが上演中、学生達や代議員リンドルフなど出演中の
歌姫、ステッラの信奉者が集まっている。
 学生達は、ホフマンが゛現れるのを待ち望んでいるが、リンドルフにとってはステッラの愛を争うライバルなのだ。

ミューズが登場。

ホフマンの友人ニクラウスに変身し、 ホフマンを悪魔から守ると宣言する。

 ホフマンは「クラインザックの一代記」を歌う。
 「昔アイゼナハの宮廷にクラインザックという、こびとがいた 
  そいつがクラインザック 明日になったらぶちのめせ」 

 【第2幕】オランビア
 ここは物理学者ハパランザーニの家、彼の弟子であるホフマンは娘だと紹介された美しい
オランピアに一目ぼれする。
  大勢の客を招いたパーティが開かれオランビアも歌を披露する。しかし、彼女の出生には秘密
があってそのカギを握る奇妙な目玉商人として物理学者との間にトラブルが発生して・・・

 オランピアは「オランビアの歌」を歌う

  自動人形がここまでやるとは・・・オランピアはホフマンとダンスを踊るが力が強すぎてホフマンを倒してしまう。

【第3幕】アントニア
   舞台はミュンヘン、クレスペルとアントニアの父娘家、父は娘をホフマンから遠ざけるために
この地へやって来た。
 病身のアントニアは父から歌うことを禁じられている。若くして無くなった元歌手の母
と同じ目に遭うのではと心配しているのだ。
  母を死に追いやった幻術の使い手、医師ミラクルが現れ・・・・

ホフマンはアントニアと愛を語るが・・・

     アントニアの母が現れ、ミラクルの魔力でアントニアは天に昇ってしまう。

【第4幕】ジュリエッタ
 舞台はゴンドラの行き交うベネチア、度重なる失恋に懲りたホフマンは愛を
否定し、酒に溺れて大騒ぎ、そこに現れた正体不明のダッペルトゥットが,高級娼婦ジュリエッタに
怪しくささやく。「ホフマンを誘惑し、彼の鏡像を奪え」と・・・・

 幕が開き、ジュリエッタとニクラウスは「ホフマンの舟歌」を歌う。

ジュリエッタはダッペルトゥットの依頼を受け、ホフマンから鏡像を奪う。

 ダッペルトゥットから盲目にされたホフマンは怒り、ジュリエッタの恋人
  ピティキナツチョを剣で刺す

【第5幕】ステッラ
ホフマンの告白は終り、舞台はニュルンベルクの酒場へ戻る。愛に裏切られ続けたホフマン、ステッラ、リンドルフ
の三角関係の結末は・・・。

 そうか、3つのドラマが1つのドラマに・・・3人は結局、同じ女性ステッラなんだ!

  ミューズは、その姿をニクラウスから戻し
  「天賦の才が再び燃えさかる、あなたの苦しみに笑いかけなさい 
    人は愛を通して高貴になり、涙を通してさらなる高貴へと至る」
   とホフマンに歌い話しかける。

 ステッラはホフマンと別れ、リンドルフのもとへ

【感想】ホフマンの前に現れる宿命のヒロインをすべてオルガ・ベレチャツロが演じたことにより、
    難解な物語が分かりやすくなった。また、オルガ自身もなかなか魅力的で舞台を盛り上げた。
    NHKが協賛していることもあってか、カメラワークも良く、映像も音声もよかった。


METオペラ プッチーニ「蝶々夫人」

2021-11-24 | オペラ・バレエ

                                                                                                                                            WOWOW 2021/11/20

  絶大な人気を博するプッチーニの名作オペラ「蝶々夫人」(Madama Butterfly)は、
アメリカ海軍士官と恋に落ちた芸者蝶々さんのひたむきな愛を〈ある晴れた日に〉、
〈花の二重唱〉などプッチーニならではの甘い名曲で悲劇を彩るドラマ。
 さらに、アカデミー賞に輝く名監督A・ミンゲラが演出した伝説の名舞台により、
 東洋の美を結集した幻想的な世界が、このオペラを盛り上げる

作曲:ジャコモ・プッチーニ
演出:アンソニー・ミンゲラ
管弦楽 メトロポリタン管弦楽団 指揮カレル・マーク・シション
出演:蝶々夫人・・・ホイ・ヘー
ビンカートン・・・ブルース・スレッジ、
シャーブレス・・・パウロ・ジョット 
スズキ・・・エリザベス・ドゥショング
上映時間:3時間9分 MET上演日 2019年11月9日 
言語:イタリア語

19世紀末の長崎。駐屯しているアメリカ海軍の士官ピンカートンは、斡旋屋ゴローの
仲介で芸者の蝶々さんと「結婚」する。だがこの「結婚」は契約で、いつでも解約できる、
つまり蝶々さんは現地妻だった。しかし蝶々さんはうすうすそれを知りつつ、ピンカートンを
本気で愛してしまう。ピンカートンがアメリカに戻って3年が経った。その間に彼の子供を
生んでいた蝶々さんは、ピンカートンの帰りを待ち続ける。ついにある日、
ピンカートンを乗せた船が長崎に着くが…。

第1幕

「蝶々夫人」が舞台に登場。華やかな着物と鏡張りの天井に映る影が美しい。

第1幕の終わり。「愛の二重奏」。このプロダクションでは、黒子の持つ提灯と、きらびやかな背景が
見どころの一つ。しかし、このアリアそのものは「偽りの恋?」のためか、今ひとつ人気が無い。

第2幕

あまりにも有名なアリア「ある晴れた日に」は魅力的な旋律だ。

 蝶々夫人とスズキとの「花の二重唱」。こちらも親しまれているアリアである。

第3幕

冒頭、蝶々夫人の人形とピンカートンとの劇。この先の出来事を暗示しているようだ。

【感想】

 蝶々夫人と息子「坊や」とのシーン。文楽を模したという人形は三人の黒子によって演じられる。
喜怒哀楽をも表現し、人間よりも親しみが湧きやすいらしい。このため、この物語の悲劇性を一層高めることになった。

 前々回(2008年)の「蝶々夫人」を演出した故アンソニー・ミンゲラのプロダクションの再々演であり、
すでにMETの定番となっているようである。それだけに障子や提灯といった日本風のアイテムを駆使し、
豪華絢爛たる和服で着飾る出演者にも、なるほどと納得する簡素で繊細、鮮烈で、素晴らしい演出である。
 このオペラの他の演出版はいくつか見ているが、プッチーニのオペラそのものの音楽的な充実感で満たされる上に、
衝撃的で圧倒的な感動を受ける優れた内容となっている。。
 世界を席巻する蝶々さん歌いホイ・へー、演技派バリトン、シャープレスのパウロ・ジョット、ビロードの声と
完璧な技術で絶賛されるスズキのエリザベス・ドゥショングなど今回のキャストも万全だ。


METオベラ マスネ作曲マノン

2021-10-16 | オペラ・バレエ

                                                                                                                                       WOWOW 2011/10/9

  美貌と官能で男を操る小悪魔マノン。一方、自由奔放なマノンに魅入られ、翻弄される青年デ・グリュー。
 マノン役には才能溢れる美貌のL・オロペーサ。若手としてMETで育ちヨーロッパに進出し
数々の名歌劇場で大活躍、今回はMETに凱旋し歌姫(ディーヴァ)の大役で魅せてくれます。
  騎士デ・グリュー役のM・ファビアーノとの共演も充実し、ゴージャスな衣装も見事。
  L・ペリーの演出は華やかでありながら退廃的でもあります。

【原作】アベ・プレヴォ-
【作曲】マスネ
【演出】ロラン・ペリー
【指揮】マウリツィオ・ベニーニ
【出演】
   マノン・・・リセット・オロペーサ
   騎士デ・グリュー・・・マイケル・ファビアーノ
   従兄レスコー・・・アルトゥール・ルチンスキー
   貴族プレティニ・・・ブレット・ポレガート
   伯爵デ・グリュー・・・クワンチュル・ユン
   ギョー・・・カルロ・ボージ
【上演】MET上演日:2019年10月26日
    上映時間:4時間10分(休憩2回)
【言語】フランス語

【あらすじ】 
第1幕 アミアンの宿屋の中庭  
   男を夢中にさせる美貌を持つ少女マノンは、享楽的な性格を懸念した家族に修道院に
送られることになる。
アミアンの宿屋に従兄弟のレスコーと共にマノンが来る。好色な貴族ギョーが彼女に
言い寄って来る。レスコーは身持ちを固くしなさいと説教する。
  しかし、その後、騎士デグリューが現れ、マノンの美しさに魅せられて恋に落ち
彼女とパリに駆け落ちする。

 第2幕 パリのアパート

  パリでデ・グリューは、二人の結婚の許しを得るために、父親に手紙を書いている。
  居所を突き止めたレスコーと貴族プレティニがやって来る。プレティニはマノンに享楽的な生活の素晴らしさを歌い、マノンの気持ちを揺さぶる。

 皆がいなくなり、マノンは別れる決心をしてアリア「 さようなら、私たちの小さなテーブルよ」を歌う。
   戻ってきたデ・グリューは父親の寄越した人々に連れ去られる。

第3幕 
第1場ラ・レーヌ通りの祭日
   人々はラ・レーヌ通りで 祭りを楽しんでいる。
 

 ギョーは今マノンと暮らすブレティニにマノンの要求通り自宅にオペラ座を呼べないようでは、いずれマノンに
捨てられると嫌味をいっている。

 そんな中、贅沢と人々の称賛によって一層磨きあげられ輝くばかりのマノンが
アリア「私はどんな道も女王のように歩くの」を歌いながら登場する。
   そこへデ・グリューの父親が通りかかりブレティニと挨拶をかわす。
息子はすっかり失恋の傷も癒え、サン・シュルピス神学校で信仰生活を送っていると話す。
その話を聞いたマノンにたちまちデ・グリューへの熱い想いが蘇る。

 そうとは知らないギョーは、ブレニティの鼻をあかしてマノンの気を惹こうと祭りにオペラ座を呼んでくる。
いよいよオペラ座のバレエが繰り広げられるがマノンの心はすでにデ・グリューのことで一杯である。
ギョーのもくろみは見事に外れてしまう。

第2場サン・シュルピス神学校

 デ・グリューは神父になった。尼僧や信者たちがデ・グリューの説教をほめたたえている。

デ・グリューはマノンとの辛い思い出を忘れるために聖職に救いを求めていた。

   デ・グリューはマノンの姿をみて驚き「お帰りください!」と何度も叫ぶが、マノンは諦めない。
心から自分の行いを悔い、許しを乞う。マノンの激しい情熱に揺れるデ・グリュー。
マノンは彼の手を握り甘く歌う「この手を握っているのは、もう私の手ではないの?」と。

マノンの愛に打たれてデ・グリューは彼女の愛を受け入れる。

 第4幕 パリのオテル・ド・トランシルヴィア賭博場

  賭博に興じる人々の中に老貴族ギョーとレスコーたちとマノンとデグリューは出会う。
ギョーはデ・グリューに勝負を挑むが大負けする。それをインチキ賭博だと怒って出ていき警察に告発する。 

第5幕 ル・アーブル港への街道

  デ・グリューは父親である伯爵のとりなしで釈放されるがマノンは植民地に流刑されることが決まる。
マノンを奪回するためにデ・グリューは仲間を集めるがうまくいかず、レスコーにわいろを渡してマノンと出会う。

 投獄生活で衰弱しきっていたマノンは彼の腕の中で息絶える。

 

【感想】マノンはファム・ファタル(運命の女・男を滅ぼす悪女)といわれることがある。
 しかし、このオペラでは、それだけでは言い尽くせない部分がある。
 まずは、家族によりマノンが修道院に送られる場面で、デ・グリューが夢中になり駆け落ちし、
バリで二人だけの生活を送り始めるところはお互い様。貴族プレティニに享楽的な生活の素晴らしさを話されて、
愛人になる。この辺のところは本人の意志というよりも、”男の方が悪”と言えなくもない。
 デ・グリューが神父になったと知った時、迷いもせず、愛人プレティニを捨て神学校に駆けつけ、
よりを戻そうとする。神父としての説教が素晴らしいと称えられるデ・グリューである。
プレティニより人間的な男の下で暮らしたい。というのは”再び誘惑”とはならないのでは?
 いずれにしても男を”夢中にさせる小悪魔”という形容も私には適切でないように思えてしまうのだが・・・。
 そういった意味ではマノンとで・グリューの二重唱こそが、お互いの愛情の表現として
緊迫感があり見どころであることは間違いない。
 そしてこのシーンはマノンの若さと強い情熱こそが悲劇を起こしたと考えたくなる。 
 3時間を超える大作であるが,それぞれの人物描写が細やかで、見栄えのする場面も多く、
一つの恋愛の形が表現された、優れたオベラであると思う。

(了)


METオペラ フィリップ・グラス作曲アクナーテン

2021-09-23 | オペラ・バレエ

                                 WOWOW 2021/9/18

 古代エジプトの王アクナーテンの激動の生涯。音の迷宮と荘厳な演出が五感を虜にする。
 平和を求めて宗教改革を断行した古代エジプト国王アクナーテン。新しい社会を築き、美しい王妃と愛の生活
を営んだ若き王者の悲劇的な末路とは?
 ジャンルを超えて活躍する人気作曲家P・グラスの代表作がMETで初演。光り輝く花園のような音の迷宮が、
P・マクダーモットのカラフルで荘厳な演出が五感を魅了する。マルチなスターA・ロス・コスタンゾが、
伝説のエジプト王を体当たりで演じる。

【作曲】フィリップ・グラス
【演出】フェリム・マクダーモット
【指揮】カレン・カメンセック
【出演】出演:
  アクナーテン・・・アンソニー・ロス・コスタンゾ
          カウンターテナー
  ネフェルティティ・・・ジャナイ・ブリッジス
  太后ティイ・・・ディーセラ・ラルスドッティル
  アメンホテプ3世(亡霊)・・・ ザックリー・ジェイムズ
【上映時間】:3時間39分 (休憩2回】
【上演日】:2019年11月23日
【言語】:混合言語

 第1幕 アクナーテンは、太陽神アテンを頂点とする一神教を宣言する。

  第1幕   戴冠式を終えたアクナーテンと、王女ネフェルティティ

古代エジプトの壁画にも描かれているジャグリング

【あらすじ】紀元前1300年代のエジプト。父であるアメンホテプ3世の死去に伴って
即位したアメンホテプ4世は、太陽神アテンを唯一神とする一神教を宣言、「アテンの精神」を
意味するアクナーテンと改名し、神官たちを排除して新しい都市を建設する。
 アクナーテンは美しい妃ネフェルティティと愛し合い、6人の娘をもうける。
しかし追放された神官たちと古い宗教に慣れた国民の不満は高まり、
やがてアクナーテン一家に反旗を翻すのだった。

【このオペラの特徴】
 現代作曲家のP.グラスによる今作は,出演者にとっては人生が激変する体験。
  METでは見ることの出来ないような目を見張る演出で今作は”恍惚へと誘う儀式”と呼ばれます。
 オケが豊潤に奏でる流れるような音楽はジャグリングで目に見える形で表現されます。
 グラスらしい抽象的な物語で語られるのは、王アクナーテンの栄光と破滅。
 古代エジプト史では彼の功績は謎に包まれています。
 彼は時代に先駆けて一神教を採り入れました。太陽神です。短い治世だったのも当然かと・・・
 王アクナーテンと伝説の女王ネフェルティティの二人は美しい世界を築きます
 創造力の尽きないP.マグダーモットの演出はグラスの作品にピッタリ。うっとりさせる光景が展開します。

 まとめてみると 
  ①ミニマル・ミュージック ・・・ パターン化された音型を反復
                楽譜は複雑で演奏が困難とのこと
  ②パーカッションや鐘の音を多用。オケからバイオリンを省く。コンマスはビオラ
  ③豪華な衣装 古代エジプト王室を彷彿とさせる豪華な衣装
  ④照明 高度な技術で舞台を盛り上げる
  ⑤ジャグリング ジャグリングのバターンと音楽との関連性を持たせた 
  ⑥スローモーション 動作にスローモーションを多用している
  ⑦タイトルロールのアンソニー・ロス・コスタンゾは当初、裸体で 登場

 頭髪を全部そり、全身脱毛(ワックス脱毛は痛いらしい)・・・別世界に誘うためとのこと

 

第2幕   アクナーテンと、王女ネフェルティティは愛を誓い合う

 第2幕 古代都市テル・エル・アマルナの建設が進む(工事はジャドリングで表現)
     中央はアメンホテプ3世(亡霊)

 第2幕 アテン賛歌 アクナーテンは太陽神アテンに祈りを捧げる

第3幕 家族 アクナーテンと王女ネフェルティティと6人の娘たち

第3幕  アクナーテン達が独自の世界を築く中、民衆の不安は高まり
     神官たちはアクナーテンに反乱を起こす。

第3幕 アクナーテンは死を迎え、17年間の治世は終わる。見守るのはアメンホテプ3世(亡霊)

第3幕 新たなファラオが戴冠する。右はミイラになったアクナーテン

第3幕 アクナーテン、ネフェルティティ、ティイ の霊魂が再び響く

 第3幕 現代 アクナーテンの古代都市 テル・エル・アマルナへの道案内

テル・エル・アマルナにはマラウイを南下して河を渡る
ナイル河東岸に着いたら その先は徒歩かロバで進む
村の南が古代都市テル・エル・アマルナ 
ネフェルティティ神殿のほか アクナーテン期の遺跡はわずか
くさび文字の粘土板はシリアとの通信手段
現在はカイロ博物館で見られる
ナイル河東岸へはフェリーで移動する車と一緒に地元民や荷車も乗る
乗り場は 町の南端  朝6時の便に乗る場合 30分前には乗り場へ
フェリへは混み合うので乗り遅れないように
かつての王都の面影はない 泥レンガの建物は崩れ落ち
巨石の神殿は 基礎だけが残る
墓と都の遺跡のほかに 平原の石碑が 当時の範囲を示している
石碑の多くは 散在しており 保存状態も悪い

  これは、遺跡の現代人への道しるべと言ったところか

(了)


METオペラ ベルク作曲「ヴォツェック」

2021-08-16 | オペラ・バレエ

                                         WOWOW 8/14

 妻に裏切られ、上官に虐げられる兵士の悲哀!人生の不条理をえぐり、深い感動を与える20世紀の傑作オペラ

【作曲】アルバン・ベルク
【演出】ウィリアム・ケントリッジ
【管弦楽】ヤニック・ネゼ=セガン指揮:メトロポリタン管弦楽団
【出演】
 ヴォツェック・・・ペーター・マッテイ
 マリー・・・エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー、
 鼓手長・・・クリストファー・ヴェントリス
 医者・・・クリスチャン・ヴァン・ホーン
 上映時間:1時間54分
 MET上演日:2020年1月11日
 言語:ドイツ語

【あらすじ】
19世紀初めのドイツ。貧乏兵士のヴォツェックは戦地では上官に虐げられながらもじっと耐え、
戻ってからは、愛人のマリーと子供を養うため、医師の人体実験の被験者になっている

 貧乏暮らしに疲れたマリーは、鼓手長の誘いに乗り、ヴォツェックを裏切る

 彼女の浮気に気づいたヴォツェックは、酒場で踊るマリーと鼓手長を目撃し、マリーへの殺意を抱く。

 貧困にあえぎながら妻と子を養う男に忍び寄る人生の魔の手、果たしてその結末とは・・・。

 【音楽】
   アルバン・ベルクは、魔性の女を描いた名作オペラ「ルル」を作曲し
20世紀の音楽界に重要な地位を占める新ウィーン学派の一角にある。
 第一次世界大戦に参加し、上官の不当なパワハラなど自身の軍隊での体験が「ヴォツェック」に反映
されていると言われている。
 このオペラでは、精緻で透明な音楽で現代社会の歪みを描き出した。

【演出】
 現代を代表する美術アーティストのウィリアム・ケントリッジ。METのデビュー作「鼻」、
そして「ルル」を演出、ドローイング・アニメを駆使し、オペラに新風を吹き込んだ。
 3作目の「ヴォツェック」でも現代に通じる混沌とした世界をドローイングを多用して描いている。
どこまでが装置でどこまでが映像なのかと区別が出来ぬほどの混然とし、刻々と変化する舞台づくり
は見事である。

一方、マリーの息子が難病を患っているという解釈で、異形の人形で表現されていることには無情を感じざるを得ない。

(了)


マリインスキー・バレエ 「ドン・キホーテ」

2021-07-24 | オペラ・バレエ

                                   BSプレミアム 2021/7/19

  スペインの作家セルバンテスの「ドン・キホーテ」が原作であるが、バルセロナの町の人気娘キトリとバジルの恋を
物語とした古典バレエとなっている。明るく、陽気な雰囲気が飛び出してくるようなエネルギッシュでバラエティに
富んだ作品である。最近、人気が高まっている演目である。

【元振付】  マリウス・プティバ
 【改訂振付】 アレクサンドル・ゴルスキー
 【追加振付】   ニーナ・アニシモワ
        フョードル・ロプロフ
 【音楽】   ルドヴィク・ミンクス
 【舞台美術】  アレクサンドル・ゴロヴィン
 【衣装】    コンスタンティン・ゴロヴィン
 【出演】
 キトリ(宿屋の娘)・・・ヴィクトリア・テリョーシキナ
 バジル(キトリの恋人)・・・キム・キミン
 ドン・キホーテ・・・ソスラン・クラエフ
 サンチョパンサ(ドン・キホーテの従者)
 ロレンツォ(キトリの父)ニコライ・ナウモフ
 ガマーシュ(裕福な貴族)・・・ドミートリ・ブハチョフ
 エスパーダ(人気の闘牛士)・・・ロマン・ベリャコフ
 メルセデス・・・ オリガ・ベルク
 森の女王・・・マリア・ホーレワ
 キューピッド・・・タマラ・ギマディエワ
 ヴァリエーション・・・レナータ・シャキロワ

 マリインスキー劇場バレエ団 ワガノフ・バレエ学校

  【プロローグ】 

 

 老騎士ドン・キホーテは騎士道物語を読みふけり従者サンチョ・パンサとともに冒険を求めて旅立つ

【第1幕】 

 舞台はスペイン・バルセロナ、町で人気者の宿屋の看板娘キトリとバジルは恋人同士。
 父は貧しい恋人パジルとの結婚を許さない。
一方、キトリはお金持ち求婚者に興味を示さない。町の人で賑わう広場にドン・ホーテが現れる。

恋人の同士のキトリとバジル

人気闘牛士エスパーダと闘牛士たちの踊り

ドン・キホーテと従者サンチョ・パンサが現れる。

第2幕】 
 結婚の許しが得られなかったキトリとバジルは父ロレンツォから逃げ、ロマノ野営地に迷い込む。

 ロマの踊り

 キトリの美しさに魅了され彼女こそ憧れの姫だと信じるドン・キホーテもやって来る。

 ロマの歓迎を受ける中 ドン・キホーテは風車を邪悪な魔術師と思い込み闘いに臨む。

ドン・キホーテは深い眠りに落ち、美しい森の王国の夢を見る。そこには憧れの姫の姿をしたキトリがいる。

  中央キトリと右キューピッドの踊り

 森の女王の踊り

 夢から覚めたドン・キホーテは父からキトリたちを逃がそうと試みるが・・・

【第3幕】

バルセロナの町に着いたキトリとバジル

結婚の許しが欲しいバジルは、ひと芝居うつ

キトリはドン・キホーテに、父への説得を懇願する。

アジア人の踊り、追加振付ということである。

 

【 キトリとバジルはめでたく結婚

キトリとバジルの結婚の踊りが始まる

バリエーションの踊り

キトリとバジルの結婚を喜ぶパ・ド・ドゥ

舞台の最後に登場したキトリの32回転?ルッツ!
鉄壁なテクニックとダイナミックな技で踊り続けてきたキトリが最後の最後に魅せた扇子を手に持ったルッツ。

そのスタミナについては驚きとしか言いようがありません。

ドンキホーテたちは、キトリとバジルに別れを告げ、新たな冒険に旅立つ。

【感想】

 古典バレエを得意とするロシア・サンクトペテルブルクのマリインスキー・バレエ団。美しさと優雅さを見ることが出来た森の王国は
伝統が良く生かされたシーンであった。
 一方バルセロナの町の踊りはスペイン色の豊かで、リズムに富んだ陽気でエネルギッシュな雰囲気がキレのある踊りで表現されていた。
 マリインスキー・バレエ団が丹精込めて取り組んでいたように思う。


ワーグナー作曲「パルジファル」

2021-07-16 | オペラ・バレエ

                                     WOWOW 2021/7/10

  ワーグナーは超大作『ニーベルングの指輪』後、善悪について思索する一方、精神性と信仰を探求し始めた。
 『バルジファル』は、その成果であり、彼の最後の作品で祝祷でもある。

【演出】フランソワ・ジラール
【演奏】メトロポリタン歌劇場管弦楽団   指揮  D・ガッティ
【出演】
   パルジファル・・・ヨナフ・カウフマン
   騎士のグルネマンツ・・・ルネ・パーペ
   クンドリ・・・カタリーナ・ダライマン
   聖杯守護団の王アンフォルタス・・・ペーター・マッテイ
   魔術師クリングゾル・・・エフゲニー・ニキティン
 【上演】2013年4月   5時間12分

 序曲   静謐で悠久さを感じさせる名曲
 第1幕   モンサルヴァート城
 伝説の中世スペインのモンサルヴァート城。キリストを刺した聖槍とその血を受けた聖杯を守る騎士団を率いるアンフォルタス王は、
 魔法使いクリングゾルに操られた魔性の女クンドリに誘惑され、聖槍を奪われた上に怪我を負い苦しんでいた。

 騎士グルネマンツが、城の近くの森の中で配下の小姓たちにこれまでの経緯を物語る。
 王アンフォルタスを救うことができるのは「聖なる愚者」だけだという。

森の中で、白鳥を射落とした若者が連れてこられる、自らの名も生い立ちも知らない。
ただクンドリが母が亡くなったと伝えると,彼は驚く。

 聖槍を奪われ、脇腹に傷を負うアンフォルタスは、苦しみながらも聖杯の儀式を行う。

  しかし、聖杯が開帳されるが、若者が何かを起こすことはなかった。
 グルネマンツは期待していた若者に失望して追い立てる。

第2幕 クリングゾルの魔の城
   
 クリングゾルの魔の城は、大量の赤い血で満たされ。槍の林立する恐怖の空間。

襲いかかる兵士たちをなぎ倒して、この城にやって来来た若者がいた。クンドリは「バルジファル」と呼びかける。

 この城の主は、聖槍を持つクリングゾル

まず、クルングゾルの支配下の女性たちから誘惑を受けるパルジファル

ここでは、クンドリはクリングゾルの支配下にある。親の愛を語るクンドリから愛の口づけを受けるが、
この時、パルジファルは知を得、アンフォルタスの痛みを感じることになり、クンドリの誘惑から逃れる。
誘惑に失敗したクンドリに変わり、クリングゾルが聖槍を持ってパルジファルに立ち向かってくる。

  パルジファルは「このしるしでお前の術を破ってやる」と言ってクリングゾルから素手で聖槍をつかみ取る。
中央は倒れたクリングゾル。クリングゾルの魔術は破られた。
 槍でパルジファルを突こうとしていた女性たちは、この後槍を収め、城は崩壊する。

 聖槍を手に入れたパルジファルはこの城を立ち去り、その後、アンフォルタスの居場所
を尋る旅に出て、長い歳月が経過する。 

第3幕 ある聖金曜日のモンサルヴァート城

 長い歳月の後、やっとパルジファルは聖槍をもち荒廃したモンサルヴァート城にたどり着く。
 先王ティトゥレルは失意のうちに没し、聖杯の騎士団は崩壊の危機に瀕していた。

  クンドリが水を汲んできてパルジファルの足を洗い、グルネマンツがパルジファルの頭に水をかける洗礼の儀式を行う。
 この後、有名な「聖金曜日の音楽」がが流れる。

 城内では、先王の葬儀のため、息子のアムフォルタスは聖杯を開帳する役目となる。
  しかし彼は脇腹のその傷の苦しみに耐えきれず、配下の者たちに自分を殺せと命じる。

 その時、パルジファルが現れ、聖槍を彼の傷口に当てると見事に快癒する。
  愛と哀れみの試みを持ち、聖なる棋士となったパルジファルはアンフォルタスから
    聖杯を守る務めを受け継ぐと宣言する。

 あなたの傷を塞いだ槍から聖なる血が流れ落ちる。聖杯の中に波打ち湧き出る聖なる泉に憧れ,聖なる血が流れ落ちる。
 この後、グンドリは呪いを解かれ、息絶える。

バルジファルによって聖杯は高く掲げられた。

【感想】
 どこまでも続く静謐な音楽、魅力はあるが5時間あまりの大曲を集中力を持って聞くには努力が必要だ。
  フランソワ・ジラールの演出は近代性を持たせたというが、解釈しにくいところが多少あったことを否定出来ない。
 ただ、映像は効果的に使われていた。


夏の夜の夢・・・パリ・オペラ座バレエ

2021-07-04 | オペラ・バレエ

                                                                                                                          NHK BS プレミアム 2021/6/20

 シェークスピア原作の喜劇をメンデルスゾーンが美しい音楽で飾り、美しい舞台と衣装でバランシンは
「夏の夜の夢」をまさに”夢のような”バレエにつくりあげた。

 第2幕、メンデルスゾーンの結婚行進曲は誰もがよく聞く結婚式の音楽です。

      妖精たちの踊り

【出演】
オベロン(妖精の王)・・・ユーゴ・マルシャン
ティターニア(妖精の女王)・・・ エレオノーラ・アバニャート 
妖精パック・・・エマニュエル・ティボー
ライサンダー ・・・ アレッシオ・カルボーネ
ハーミア ・・・ レティシア・プジョル
ディミトリアス ・・・ オードリック・ベザール
ヘレナ ・・・ ファニー・ゴース
シーシアス(アテネ公爵)・・・ フロリアン・マニュネ 
ヒッポリータ(アマゾンの女王) ・・・ アラス・ルナヴァン
ボトム (職人 ロバの頭)・・・ フランチェスコ・ヴァンタッジオ   
ティターニアの騎士・・・ ステファン・ピュリョン
パピヨン ・・・ ミュリエル・ズスベルギー
デヴェルティマン・・・ バク・セウン、カールパケット
パリ・オベラ座バレエ団 パリ・オペラ座バレエ学校

【原作】シェークスピア
【振付】ジョージ・バランシン
【音楽】フェリックス・メンデルスゾーン
【舞台美術・衣装】クリスチャン・ラクロア
【管弦楽】パリ・オペラ座管弦楽団 指揮 サイモン・ヒューイット
          ソプラノ プランヴェラ・レナート
     アンネ・ゾフィー・ブュクレ
     合唱 パリ・オペラ座合唱団 合唱指揮 ホセ・ルイス・バッソ 
 【収録】 パリ・オペラ座 バスチーユ 2017/3/18・23

第1幕 アテネ公爵シーシアスの城近くの森

 アテネ公爵シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒッポリタとの結婚式が間近に迫っていた。
 貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲であるが、ハーミアの父イージアスはディミートリアスという若者と
ハーミアを結婚させようとする。
ハーミアは聞き入れないため、イージアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、
 シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。
 シーシアスは悩むものの、自らの結婚式までの4日を猶予としてハーミアへ与え、ディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。

                           ライサンダーとハーミアと妖精パック

 ライサンダーとハーミアは夜に抜け出して森で会うことにする。
 ハーミアがこのことを友人ヘレナに打ち明けると、ディミートリアスを愛しているヘレナは二人の後を追う。
 ハーミアを思うディミートリアスもまた森に行くと考えたからだ。
 その頃、森の中では、妖精王オーベロンとその妻の女王ティターニアが、美しいインドの少年をめぐって喧嘩をし、
仲違いしていた。機嫌を損ねたオーベロンは妖精パックを使って、キューピッドの矢で射られた不思議な花、
花の匂いを嗅ぐと最初に見たものに恋するという匂いをタイターニアに嗅がせることにする。

 この花の匂いは強力なもので、目を覚まして最初に見たものに恋してしまう作用がある。
 妖精パックがこの花の匂いをバラまいて、人間の頭をロバに変えて・・・。
ところが、パックは早とちりし、森で眠っていたライサンダーたちにもこの花の匂いを嗅がせてしまう。 
 花の匂いのせいで、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになり、4人の関係があべこべになってしまう。

ついにはライサンダーとディミトリアスが剣を取って闘うことに

 さらに、パックは結婚式の準備で森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変えてしまう。目を覚ましたティターニアはこの奇妙な者に惚れてしまう。
 ティターニアは、ロバとパ・ド・ドゥを踊ることになり、滑稽を通り越して悲惨なことに。

  ティターニアと妖精たちの踊り  ティターニアは眠り続ける。
 この場面、バレエとしては珍しくソプラノのアリアが歌われ、合唱も聞こえてくる。

 オーベロンはタイターニアが気の毒になり、ボトムの頭からロバの頭を取り去り、ティターニアにかかった魔法を解いて二人は和解する。

また、シーシアスとヒッポリータによりライサンダーとディミトリウスにかかった花の匂いの魔法も解かれ、
ハーミアとの関係も元通りになる。
 中央はシーシアスとヒッポリータ、右はライサンダーとハーミア、左はディミトリアス とヘレナのカップル

 これで2組の男女、妖精の王と女王は円満な関係に落ち着き、5人の職人たちもシーシアスとヒッポリータの結婚式で
無事に劇を行うことになった。

第2幕 ・・・ メンデルスゾーン結婚行進曲とバレエの饗宴     
シーシアスとヒッポリータ、ライサンダーとハーミア、ディミトリアスとヘレナ の3組の結婚式

     シーシアスとヒッポリータのパ・ド・ドゥ

   3組のカップルとパリ・オペラ座バレエ団のコールド・バレエ。

 

 メンデルゾーン劇付随音楽「夏の夜の夢」より「結婚行進曲」(5分6秒)

【感想】舞台美術・衣装を担当したクリスチャン・ラクロアはフランスの80年代のファッション界の寵児。
 パリらしい華麗な美術で見る者の目を楽しませてくれる。
  振付のバランシンはメンデルスゾーンの音楽を徹底的に追求し、劇付随音楽「夏の夜の夢」では足りない部分を、
 あまり知られていないメンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第9番まで使用して構成した。
  このバレエのなかでは、ソプラノのアリアや合唱(コーラス)を使用しているのは斬新だ。
  舞台中央に大きな貝殻を据えるなど、華麗なバレエとして見どころのある作品である。

(了)
 A Midsummer Night's Dream
 Midsummer というのは夏至のことであり、今年は6月21日である。 
 真夏というのは7月末~8月上旬であるので、日本語訳では「夏の夜の夢」とするのが正しいとのことである。


アンナ・ナネレプコ IN 東京 ・・・ 2016年3月

2021-07-01 | オペラ・バレエ

 2016年3月 世界の劇場で活躍するトップスター アンナ・ネトレプコが11年ぷりに来日公演を行った。
  たぐいなれな才能と他の追随を許さない存在感で人気実力ともに世界が認めるオペラ界一の歌姫が
 イタリア・オペラの名曲の数々を歌い圧倒的な歌声で聴衆を魅了した一夜である。

 私が見たこの映像は、2021年6月のNHKのBS4K放送である。オペラやオベラ歌手を今まで、BS4K放送で見たことがなかった。
 オペラ番組をBS4K放送で初めて見て、ハイビジョン放送との映像と音質の違いに驚かざるを得なかった。
 7年前の録画とは言え、4K画像は明らかに優れている。さらに音質もはっきりと違う。 このことを知る上で格好の番組になった。
 オペラは最高のエンターテインメントと言っていいと思うけれど、放送されているのはハイビジョン放送ばかりである。
 違いを知るにはある程度テレビが大画面でないと分からないのだが、今後は時間がかかるだろうが、次第にオペラ放送は4Kになっていくのではないか。
 蛇足だが、今回添付した写真もクリアに撮れていると思う。

【出 演】
  アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)
  ユシフ・エイヴァゾフ(テノール)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指 揮】ヤデル・ビニャミーニ


【曲 目】
・歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」から 「私は神の卑しいしもべです」
            チレーア 作曲       (ネトレプコ)
・歌劇「トラヴァトーレ」から  ヴェルディ 作曲
   「静かな夜~この恋を語るすべもなく」 

      「トラヴァトーレ」から「静かな夜~この恋を語るすべもなく」を歌う 

・歌劇「オテロ」から 「すでに夜もふけた~あなたから戦の話を聞いた時」
            ヴェルディ 作曲 (デュエット)

・歌劇「蝶々夫人」から 「ある晴れた日に」 プッチーニ 作曲 (ネトレプコ)

        「蝶々夫人」から 「ある晴れた日に」を歌う 

・歌劇「アンドレア・シェニエ」から 「なくなった母を」ジョルダーノ作曲
                   (ネトレプコ)
   「第4幕 フィナーレ」 (デュエット)
・歌劇「チャールダッシュの女王」から「私のの故郷の山にある」カールマーン作曲 
                      (ネトレプコ) 
・忘れな草    デ・クルティス作曲 (デュエット)

【収 録】 2016年3月21日 サントリーホール
  

 一時はシーズン幕開けのMETの演目は、アンナ・ネトレプコ出演のものと決まっていたようだけれど、
 最近はネトレプコの歌唱はお目にかかる機会がやや少なくなっている。
でも、この時は全盛期と言っても良く、声の艶やかさ、伸びの良さ、拡がりは見事で感動的である。
 NHKの音響陣?が、マイクを舞台と客席の境に4本立て、さらに客席の上には10本ものマイクを天井から吊している。
 つまりアンナ・ネトレプコの声を収録するために14本もマイク使用している。22.2マルチャンネルと表題部に出ているが、
より効果的にネトレプコの声を拾っていることは確かである。この音声は20世紀の初めにアンナ・ネトレプコと言う人気と実力を兼ね備えた
オペラ歌手がいたことを、後の世にも残すことになるだろう。
 実を言うと私はアンナ・ネトレプコの大ファンである。
WOWOWで放映されたネトレプコの演目を録画したブルーディクス版を多く収集している。
 今後もライブラリーを増やしていきたい。

  METのライブビューイングではどのような収録をしてるのか?進歩はしているけれど、マイクのセッティングは、まだまだの気がするし、
 映像も4K・8Kの収録ではないようだ。WOWOWで見られるオペラやハレエが4K放送になれば、さらに現実に近い臨場感が出てくると思う。
 その時には今一回り大きいテレビに出来るよう準備をしておこうと思う。

(了)


ワーグナー作曲 楽劇「さまよえるオランダ人」

2021-06-26 | オペラ・バレエ

                                     WOWOW2021/6/12

 呪われたオランダ人船長を救う永遠の愛!。
 オランダ人船長が神を罵った罰で永遠に海をさまよい続けるという幽霊船伝説をもとに、
 ワーグナー自身が遭難しかかった体験を重ね合わせて書かれた、初期のオペラ。
 永遠に海をさまよう呪われたオランダ人船長を乙女ゼンタの愛が救う物語で、
 この「愛と自己犠牲による救済」は本作以降、ワーグナー作品に共通するテーマとなった。
 勇壮なオーケストラ、美しいアリアや重唱、「水夫の合唱」など、聴きどころにも富んだ作品である。
 F・ジラール演出はメトロボリタン歌劇場に合わせて作られた大規模で現代的なプロダクションである。

 クラシック音楽界の巨匠V・ゲルギエフが評価の高いワーグナー作品の指揮を執り、
 日本人で初めてライブビューイングに登場する藤村実穂子の深い歌声にも注目が集まった。

【演奏】メトロポリタン歌劇場管弦楽団 指揮ワレリー・ゲルギエフ
【演出】フランソワ・ジラール
【出演】
エフゲニー・ニキティン・・・オランダ人
アニヤ・カンペ・・・ゼンタ 
藤村実穂子・・・マリー 
フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ・・・ダーラント
セルゲイ・スコロホドフ・・・エリック
デイヴィッド・ポルティッヨ・・・船の舵手
【上演】2020年3月10日、2時間28分、ドイツ語

ノルウェー船は嵐に遭い、自分の港になかなか戻れなかった。その間、赤い帆のオランダ船に出会う。

 ノルウェー船の帰航を待つ村娘達は糸紡ぎをしている。この演出では糸紡ぎ機が太いロープに変わっている。
 ただ、遠目に見るとこのロープは美しく舞台には映える。後の大きな目は本来はオランダ人の肖像画である。
これを象徴しているらしい。

 マリーを演じる藤村美穂子はたくさんの糸紡ぎ娘のまとめ役。

ゼンタの父親ダーラントはオランダ人船長との結婚を勧める。

 オランダ人船長は心からゼンタに救いを求め、結婚を望む。

 ゼンタはオランダ人船長に自らの手で救済したいという。

 三者三様の言い方ながら、ゼンタは真の愛によりオランダ人船長と結婚することになったと思えた。

 しかし、結婚式直前、エリックがゼンタに対するこれまでの愛を切々と述べ、オランダ人船長とゼンタの結婚に強く抵抗した。

このため、オランダ人船長はゼンタの救済したいという思いを諦めてこの地を去り、海に向かう。

 ゼンタもオランダ人船長を追い、海に身を投げる。オランダ人船長の地上での救いは得られなかった。
 しかし、永遠の呪いからは救われた? 空は燃え上がり,海の水があふれ出てくるが・・・。

【感想】「ゼンタのバラード」でオランダ人の宿命を知っていて,自分こそ彼を救う唯一の女性と歌う。
 またゼンタはオランダ人との「愛の二重唱」により誓いを破れば運命が襲いうことを知らされるが、「永遠の愛」を誓った。
  しかし、ストーリーが展開する中、エリックの想いが通じ、ゼンタの想いは通じたのかが分からなかった。
少なくともオランダ人船長とゼンタによる地上での救いは果たせなかったし、結婚式典も行われなかった。
 その点、このオペラの納得のいかない部分が残る。

(了)


映画 「ラ・ボエーム」・・・アンナ・ネトレプコ出演

2021-06-17 | オペラ・バレエ

                             2021/06/16 NHK クラシック音楽館

 プッチーニの傑作オペラ「ラ・ボエーム」の映画版。19世紀半ばのパリを舞台に、貧しい中でも自由を謳歌して生きる若者たちの愛と生と死の物語が展開される。お針子ミミを演じるのは現代最高のソプラノであるアンナ・ネトレプコ、2008年当時の圧倒的な歌声を聞くことが出来る、映画ならではのリアリティーあふれた背景描写なども注目される。

【監督】ロバート・ドーンヘルム
【原作】アンリ・ミュルジェール
【音楽】ジャコモ・プッチーニ
【管弦楽】管弦楽:バイエルン放送交響楽団
     合唱:バイエルン放送合唱団
     指揮:ベルトラン・ド・ビリー
【製作】2008年 オーストリア・ドイツ合作 イタリア語 115分
【キャスト】
 ミミ(お針子)・・・アンナ・ネトレプコ
 ロドルフォ(詩人)・・・・ローランド・ビリャソン
 ムゼッタ・・・・ニコル・キャベル
 マルチェッロ(画家)・・・・ジョージ・フォン・ベルゲン
 アルチンドーロ(枢密顧問官 ムゼッタのパトロン)・・・・イオアン・ホーランダー

 あらすじ
 クリスマス・イブの夜に出会い、ひと目で恋に落ちた詩人のロドルフォとお針子のミミ。二人は芸術家仲間たちとともに貧しくも夢にあふれた暮らしを送るが、不治の病を患っていたミミの病状が日に日に悪化し、貧しさゆえに何もしてやれないロドルフォは彼女との別れを決意する ・・・。


第1幕 パリの屋根裏部屋

クリスマス・イブ夜、ミミはローソクの火をもらいにロドルフォのいる部屋を訪ねてくる。

ロドルフォは 「冷たい手」を歌う。

   ミミは「私の名はミミ」を歌う。

 ミミとロドルフォはクリスマス・イブでにぎわうパリの街カルチェ・ラタンに出かける。

第二幕 カルチェラタン通りのカフェ・モミュス

 賑わう・カルチェラタン

弦楽器も演奏している広々としたカフェ・モミュスで青春を謳歌する芸術家4人とミミ。

 そこに、マルチェロのかっての恋人ムゼッタがパトロンを連れてやって来る。ムゼッタはマルチェロの気を引こうと「私が街を歩くと」を歌う。

 カルチェ・ラタンは、フランス軍楽隊が行進し盛り上がる。
   結局ムゼッタは、パトロンと離れ、マルチエッロとよりを戻す。

 第三幕 アンフェールの門の前

 2ヶ月後、雪の降りしきるなか、近くの居酒屋でムゼッタとマルチェロが働いている。ミミはそこを訪れマルチェッロに二人の仲が上手くいかないと嘆く。

 肺病を患い症状が悪化しているが貧しさために助けられないとロドルフォはマルチェッロに話す。物陰で聞いていたミミ人は愛を確認しながら 別れることになる。
 一方、マルチェッロとムゼッタの二人にも喧嘩が始まり、破局が訪れる。

第4幕 パリの屋根裏部屋

  ロドルフォとマルチェッロは、お互い恋人と別れてしまったので、昔が忘れられず、二人で気を紛らわしている。

  そこに、ムゼッタに連れられて瀕死のミミが運び込まれてくる。なんとか助けようとするが間に合わず、ミミは愛するロドルフォのそばで息絶える。

【感想】やはり、舞台で行われるオペラと空間の制約を受けにくい映画とでは、雰囲気が違う。屋根裏部屋が広々としている。(^^) ミミが鍵を落とすシーンとロドルフォが拾い隠すシーンなどはっきり分かるし、カフェ・モミュスでの飲食も雰囲気が良く出る。
  人物が大写しになる点も違うし、音響効果も歌声だけでなくオーケストラの音も良い。

 しかし、この映画の最も素晴らしい点はアンナ・ネトレプコの歌唱力にある。伸びやかでつつややかな歌声に惹きつけられる。
 さらに美貌と若々しい演技は他のソプラノ歌手を寄せ付けないものがある。まさに感動的である。この映画に出演していた当時は,絶頂期であっただけになおさらである。アンナ・ネトレプコの偉大さを知ることが出来る作品だ。
 ロドルフォ役のヴィットーリオ・グリコーロとマルチェッロ役のジョージ・フォン・ベルゲンも好演して盛り立てたと思う。 
 
   一方、フランコ・ゼフィレッリの演出したメトロポリタンオペラ(MET)版の「ボエーム」を見たことのある人にとっては、あまりに絢爛豪華なカルチェラタンの雰囲気に今回は物足りなさを感じてしまうのはやむを得ないだろう。なんと言ってもMETの看板演目なのだから・・・。
めいすいの写真日記 METオペラ プッチーニ「ラ・ボエーム」


 もう一つ、ムゼッタ役は華やかさに欠けていた。それが、ネトレプコの魅力を引き立てていた?


  (了)