めいすいの写真日記

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椿姫「さよなら過ぎ去った日々よ」・・・あさドラ「エール」音は、この曲を歌い学内コンクール優勝

2020-05-30 | オペラ・バレエ

 朝ドラ「エール」(5月29日放送)。二階堂ふみ)は東京帝国音楽学校の歌劇「椿姫」ヴィオレッタ選考 学内コンクールで、「さよなら過ぎ去った日々よ」歌い、ライバルの夏目千鶴子を破り優勝する。でも、彼女の歌は時々止まってしまうので、ドキッとしてしまいます。ほんとの歌手でないので仕方ない?・・・。
 この曲の悲しげなメロディが、「主人公の幼なじみの村尾鉄男とカフェの女給の希穂子」との「悲しい別れ」のバックグランド・ミュージックにもなっている。

では、実際のオペラの舞台では、
 新演出 メトロポリタン・オペラ「椿姫」第三幕で「さよなら過ぎ去った日々よ」を歌うヴィオレッタ役のディアナ・ダムラウ
 パリのアパート、復活祭のカーニバルが窓の外で行われている。結核の末期症状となっていたヴィオレッタは
さようなら 過ぎし日々の楽しかった夢よ バラ色だった頬も青ざめてしまった
 私は アルフレードの愛まで失ってしまった 彼の愛は 慰めで疲れた心の支えだったのに・・・慰めで・・・心の支えだったのに・・・  
 神よ 道を踏み外した女(ラ・トラビィアータ 歌劇「椿姫」の原題)に微笑んでください  どうかお願いですから  私を受け入れてください 
 もうすべて終わったんだわ 今や すべて終わってしまった 喜びも悲しみも もう終わりなのね
 お墓は 人間にとってすべての果てよ 私のお墓には 涙もお花も捧げられないんだわ
名を記した十字架もない 十字架もなく お花もない・・・
 神よ道を踏み外した女に微笑んでください どうかお願いですから
  私を受け入れてください  もうすべて終わってしまったんだわ」と時々咳き込みながら歌う。でもダムラウの歌声が終始、乱れず伸びやかで素晴らしいのは、さすが人気絶頂の実力者。
 その後、アルフレードが駆けつけ、二重唱「パリを離れて」を歌うが、力尽きて息絶える。

 ところで、オペラの題材となったアレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿を持つ女」(1848)には、マリー・ディュプレシーというモデルがいる。そのマリーについてデュマは次のように書いている。「痩身型で、一見して華奢で、頭も鼻も小さく、目は日本人のように細長く、しかもそれが生き生きと輝き、唇は濃い桜色で歯なみは美しく、それは陶器の製品のようだった。・・・物腰は優雅で、話はものやさしい調子で、博学で機知に富み、おもしろく、彼女こそは人情に生きた最後の商売女で、その人情の豊かさが若死(23才)を招いたのだ」
 とにかく、一種の気品を備えた彼女の美しさは抜群だったらしく、人気絶大のピアニストであり、作曲家であったフランツ・リストも「まるで女王のようだ!」と賛嘆の声をもらしたという。
 彼女の前には、いつも椿の花束があり、月のうち25日は白、5日は赤であった。

   だが彼女が結核で死亡した時には立ち会う人は、いなかったという。
 しかし、現在、モンマルトルのマリー・ディュプレシーの墓には、献花が絶えない。すぐ傍らにはデュマ・フィスも眠っているとのことである。

     メトロポリタン・オペラ 「椿姫」新演出 は、
  WOWOWライブで6月5日(金)午後2時25分より再放送されます。


カラーの花

2020-05-29 | 

 いつものサイクリング道路の新河岸川の小さな堤防の法先(のりさき)にカラーの花が咲いていました。

 カラーは、サトイモ科オランダカイウ属の花。水芭蕉によく似ています。英名は Calla lily(カラー・リリー)

 シンプルな花なのでブーケなどによく使われます。南アフリカ原産で、日本には江戸末期にオランダから渡来しました。

水芭蕉と同じように白い部分は花ではなく、中心にある黄色の部分が花です。開花時期は5月から7月。

花言葉は「乙女のしとやかさ、夢のように美しい」。白い部分には小さな虫がいっぱい着いていたので払いました。

・・・「きれいな花には虫が付く」
  


朝ドラ次回作(2021年前期)「おかえりモネ」のヒロインに清原果那

2020-05-27 | テレビ

 彼女は昨年前期の朝ドラ100作目「なつぞら」でヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)と生き別れた妹・千遥を好演。と、ネットでは紹介されています。

 しかし、なんといってもBS時代劇「蛍草」菜々の剣(全8回)清原果那の
  主人公の菜々を演じた演技力が冴え渡ります。まさに時代劇のフレッシュなヒロインが誕生しました。

   奉公先の主人を陥れようとする敵は、父を死に追いやった男だった!
 藩内の不正を正そうとする主人に危機が迫る中、一風変わった仲間たちの助けを得て、一途な16歳のヒロインの戦いが始まる・・・。

菜々(清原果那)女中としての奉公も、子供達の優しい相手役を上手くつとめていた

剣豪轟平九郎に、父親の敵討ちとして藩主の前で果敢に真剣で立ち向かう菜々(清原果那)

 ドラマの中で、何回か立ち回りを演じますが、一部、真剣を使っているのではないかと思うほどの迫力を感じさせました。清原果那の運動神経は抜群らしく、剣術指南役を演じる壇浦五兵衛(松尾諭)が「清原さんは立ち回りの演技をすぐに覚える。私はかなわない」と言ったそうです。NHKのカメラワークにもよるのですが、まさに真に迫る殺陣が見られました。
 BS時代劇「蛍草」菜々の剣、轟平九郎の悪役ぶりも際立ち、素晴らしい出来映えでこれまでになく感動しました。その中心人物である清原果那の演技も大きな役割を果たし凄いといえます。
 
 今度の朝ドラは時代劇ではないけれど、現代劇でも彼女の持つ雰囲気は必ずや人気を得るだろうと思います。


ポピー三題・・・富士見市山崎公園

2020-05-25 | 

ポピー、別の名は「ひなげし(雛罌粟)」「虞美人草」。開花時期は4/ 5 ~ 6/15頃。

ケシ科、ケシ属の花ですが、阿片は取れません。

「虞美人草」とは、中国歴史上の絶世の美女(秦末、項羽の愛する虞妃)にたとえた。

オレンジ色の花は、「長実雛罌粟(ながみひなげし)」と呼ぶようです。

富士見市山崎公園のポピー園です。


ミハイロフスキー劇場バレエ「ラ・バヤデール」

2020-05-23 | オペラ・バレエ

   「影の王国」でソロルとニキアは結ばれる

愛を誓った恋人達を引き裂く王の娘との縁談
失意の中 赴いた元恋人の祝いの席で女(ソロル)は策略にはまり絶命する

男(ニキア)は後悔の念にさいなまれ彼女の面影を追うのだった
古代インドを舞台に繰り広げられる舞姫と戦士の悲恋をナチョ・ドゥアドが新たに振り付けた話題作

ニキヤ(寺院の舞姫)  アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ
ソロル(戦士)          ヴィクトル・レベデフ
ガムザッティ(王女)  アンドレア・ラザコワ
王(ガムザッティの父) アンドレイ・ガシャネンコ
大僧正         セルゲイ・ストレルコフ

ミハイロフスキー劇場バレエ団
現振付  マリウス・プティパ
改定振付   ナチョ・ドゥアト
音楽   ルドヴィク・ミンクス
舞台美術・衣装 ・アンゲリーナ・アトラギッチ
管弦楽  ミハイロフスキー劇場管弦楽団
指揮   パヴェル・ソロキン 

2019年11月14.16ミハイロフスキー劇場 NHK BSプレミアム 2020.5.18 放送

(第1幕)舞姫ニキヤと戦士ソロルは恋仲
     大寺院で舞うニキヤの美しさに魅了された大僧正は彼女に求婚するが拒絶される。
 ニキヤとソロルはひとときの逢瀬を楽しみソロルは神聖な炎にニキヤとの愛を誓う。
   その光景を目撃した大僧正は激しく嫉妬し復讐を誓う。

ソロルとニキアは逢瀬を楽しむ

(第2幕)王宮の一室
 ソロルは王女ザムザッティとの結婚を王から命じられる。
 王はソロルがニキヤとの恋仲を大僧正から告げ口され、ニキヤとの殺害を企てる。
 ソロルに恋人がいると知ったガムザッティはニキヤを呼び出し激しく責める。
 婚約式の席、悲哀を感じながら祝いの踊りをするソロルに花かごが渡されるがその中には毒蛇が仕掛けられており噛まれて倒れる。彼女に横恋慕していた大僧正の差し出す解毒剤を拒否して、その場で絶命する。

ソロルは毒蛇に噛まれる

(第三幕)
 愛するニキヤを失って絶望したソロルは、阿片を吸い、幻の世界に逃避しニキヤの面影を追う。


ソロルは阿片を吸い、幻の世界に逃避する

(影の王国)幻想の世界。ラバヤデールの神髄ともいえる精霊達のバレエが始まる。

 「影の王国」、精霊達のコールド・バレエ(群舞)、アラベスク(片方の脚で立ち、もう一方の脚を上げる)を何度も行う。このシーン、ドゥアトは幻想的になるように、うすい網の幕を掛けている。そのため、写真もぼやけている。

(感想)

 古代インドが舞台で舞姫ニキアと戦士ソロルの悲恋物語はニキヤが結婚式の会場で失意の中で美しく踊る中、蛇の毒で倒れるという衝撃的な出来事が起こる。これらガムザッティ(王女)や大僧正との人間関係は緊迫感を出し、物語を盛り上げる。
 ニキアが阿片を吸い逃避する夢の中で「影の王国」が現れ、精霊達24人が白衣のチュチュの群舞(コール・ド・バレエ)踊る。ヒマラヤの山からジグザクに舞い降りる様子を表現としたという場面は古今のバレエの中で最も美しいシーンの1つである。
 精霊たちが何度もアラベスク(片方の脚で立ち、もう一方の脚を上げる)もバレエのなかで最も美しいポーズのひとつといわれる。
 これまでプティパの振付に改定振付を行った今回のナチョ・ドゥアト版はプティパによる振付を生かしながらも民族舞踊のエッセンスも取り入れた舞台になっている。ダンスも多く、王さえも踊る。アクティブでスピーディな作風になっていて親しみやすい演出だ。
 出演者の衣装もカラフルで、ニキヤの薄地のコスチュームも魅惑的で踊りも見事である。演じるアンジェリーナ・ヴォロンツォーワは素晴らしいバレリーナだと思う。また影の王国の精霊達のチュチュは通常は白であるが、薄い水色となっている。
 従者達の野卑でエネルギッシュな踊りも舞台をおおいに盛り上げている。
 一部、物語が簡素化されている部分もあるが、「ラ・バヤデール」を魅力あるバレエにしていて好感が持てる改定振付だ。

 ところで、ミハイロフスキー劇場バレエ団。同じサンクトペテルブルクにあるマリインスキー劇場バレエ団の方が有名だが、団員の多くはマリインスキー・バレエ団の付属学校の卒業生という。ナチョ・ドゥアド、が2011年にミハイロフスキー劇場バレエ団の芸術監督に就任、2014年にベルリン国立バレエ団の芸術監督として招かれた後、2019年に再びミハイロフスキー劇場バレエ団に復帰した。世界各国から認められ、注目されている振付家である。

 なお、ミハイロフスキー劇場は単にマールイ劇場(ロシア語で「小劇場」の意)と呼ばれることもあるとのこと。


反田恭平のピアノ演奏・・・FAZIOLIというピアノは?

2020-05-19 | クラシック音楽

                                                                    2019.1.30 CHABOHIBA HALL(東京都立川市)

 曲目は オール・ショパンプログラムで
       アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 作品22
       マズルカ ハ短調 作品56 第3
               ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58

 反田恭平の演奏は素晴らしいということは知っていたが、演奏会はもちろんのこと、 NHKの放送でもじっくりと聞いたことが無かったので、5月18日(月)のNHK BSプレミアム「クラシック倶楽部」で録画し、じっくりと聞くことが出来たのは、幸運であった。
 彼の演奏は、体幹がしっかりしているのか、身体にぶれがなく、基本に忠実な演奏で、安心して聞いていられる。無理をしなくてもフォルテがらくらくと出せるのが良い。曲の合間に入る説明もわかりやすく的を得ていた。
 一曲目の「アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ」ではショパンらしい煌びやか演奏を聴かせてくれた。
 「ピアノソナタ第3番」は、これまでアルゲリッチやポリーニの「2番」、「3番」のカップリングされたCDを買い、親しみを持とうと努めてきたが、三楽章に「葬送行進曲」の方に意識がいきがちで、完成度の高いと言われる3番は避けがちであった。今回の反田の演奏を何度か聞くうちになるほどと思うことが出来るようになってきたので収穫だったと思う。ただ、第三楽章の夜想曲といっても良い美しい歌謡楽章では、甘美で陶酔されるよう演奏することではポリーニに1日の長があるように思えた。 
 
 ところで、ビデオ画像にするとピアノは何を使っているのかが気になる。スタインウェイ全盛のピアノの世界。たまにYAMAHAのピアノだとなんとなく喜びが湧いてくるものであるが、今回は大きな白い文字で「FAZIOLI」と書かれていた。しかも、このグランドピアノなんだか長いような気がする。初めてなので「このピアノって何?」とWEBで調べることにした。

 FAZIOLI(ファツィオリ)は1981年に創業したイタリアのピアノメーカーのもので、綿密な手作業を各所に導入し、独特のこだわりを持ったピアノらしい。生産はグランドピアノを限定としている。
 あのジュリアード音楽院では1924年から名器としてスタインウェイ以外は学内への納入を認めない体制を貫いてきたが(学内300台弱全て)2010年、それがほどかれ、同院ではファツィオリを第一線の名器として認定、注文・納入を開始したというから、よほどのピアノらしい。 ショパンコンクールやチャイコフスキーコンクールなど数多くのコンクールでも使用し始められいるようだ。ピアニストの人気も高いらしい。
 また、現時点で世界最長サイズ(奥行き308㎝)のモデルも製作している。 なお、308㎝モデルのみ、「左側に4番目のペダル」の特殊な設計が標準仕様となっている。
  こうしたことが分かったので、ペダルは幾つあるのかビデオ画像を見たら4つある。反田も第4ペダルを多用していた。そうするとFAZIOLIで一番高価な308のようだ。日本には数台しかないだろう。テレビでは、一切ピアノのことは触れられなかった。おそらく反田自身が選択したものと思われるが、いずれにしても、なぜ使ったのかは一切不明である。 (敬称略)

   また、CHABOHIBA HALL(東京都立川市)も後ろ側が下部に石庭が見えるのがとても粋に思えた。100人程度の小ホールらしい。NHKが録画したくらいだから、かなり音響効果が良いのだろう。


モーツァルト「ドン・ジョバンニ」 と 朝ドラ「エール」

2020-05-15 | オペラ・バレエ

オペラ史上最強のアンチヒロイン、疾走するフェロモン、ドン・ジョヴァンニの没落を優雅にして劇的な音楽で描くモーツァルトの代表作

 伝説のプレーボーイとして名高いドン・ジョヴァンニの没落を描く、モーツァルトの傑作オペラである「ドン・ジョバンニ」。夜這いしようとし、女性ドンナ・アンナに騒がれ、彼女の父親である騎士長を刺殺してしまったドン・ジョヴァンニ。懲りない彼は、その後も女性をあさり続けるが、騎士長の亡霊が出現してから運命が変わっていく。
 2,065人もの女性を誘惑した貴族ドン・ジョヴァンニのオペラであると同時に、彼を糾弾する女性たちのオペラでもある。追い詰められる男と追い詰める女性たちというように、いつのまにか主役が交代しているように見えるのは、モーツァルトの魔術に他ならない。

朝ドラ「エール」音 が東京帝国音楽学校で受ける授業の黒板 (NHK1)

ところで、5月12日の朝ドラの「エール」で、主人公古山祐二(古関裕而がモデル)の妻 音 が東京帝国音楽学校(現在の東京芸術大学)で受ける授業で、教師より「ドン・ジョバンニはモーツァルトの歌劇集の中で最大の作品であると認められます」と紹介されました。そして大学の三年生のスターと音のライバル?夏目千鶴子が指名されて、ジョバンニとツェルリーナの二重唱「手を取り合って」を歌うシーンがありました。時は昭和8年4月。個人的にはモーツァルトの最大の作品は「魔笛」か「フィガロの結婚」だと思っていますが、再度「ドン・ジョバンニ」をおさらいするきっかけになりました。

 演出 マイケル・グランデージ
 ファビオ・ルイージ  指揮 メトロボリタン管弦楽団・合唱団  
 ドン・ジョヴァンニ ・・・  マリウシュ・クヴィエチェン     
 レポレッロ ・・・ ルカ・ビザローニ     
 ドンナ・アンナ ・・・ マリーナ・リベッカ     
 ドンナ・エルヴィーラ ・・・ バルバラ・フリットリ     
 ドン・オッターヴィオ ... ラモン・ヴァルガス     
 ツェルリーナ ... モイツァ・エルドマン     
 マゼット ・・・  ジョンシュア・ブルーム   
 騎士長 ・・・ ステファン・コツァン   

  MET上演日 2011年10月29日 WOWOW放送 2013.4.24 

  (第1幕のあらすじ)

 騎士長の家。公職の騎士ドン・ジョバンニがドンナ・アンナのもとに忍び込むが、アンナに騒がれ、駆けつけた父の騎士長を殺してしまう。彼女の許嫁ドン・オッターヴィオが復讐を誓う。ジョバンニの従者レポレッロは、主人が捨てた女ドンナ・エルヴィーラをアリア「カタログの歌」で言いくるめる。
広場でマゼットと踊るツェルリーナを見かけたジョヴァンニは、彼女に食手を動かすが、昔の恋人エルヴィーラがもまたもや現れてジョヴァン二をなじる。そのやりとりから、アンナは、彼こそ父を殺した男と気づく。自邸でジョヴァンニは宴を開き、仮面姿のアンナたちを招き入れる。ツェルリーナをものにしようとした彼は、失敗しレポレッロに罪を擦り付ける。一同に詰め寄られた二人は、その場を逃げ出す。

レポレッロがエルビーラに向かって歌う有名な「カタログの歌」。前半は国別のリスト・アップ、後半は様々な女性のモチーフを好色に歌い上げる。

 ドン・ジョバンニとツェルリーナの二重唱「手を取り合って」。稀代の女たらしが村娘を誘惑する過程を歌う「誘惑の二重唱」はこのオペラの白眉となっている。

 ドンジョバンニが歌う「シャンパンの歌」、「酔いが覚めないうちにパーティだ。広場に娘がいたら、その娘も連れてこい。メヌエットでも、ドイツ舞踊でも好きなだけ踊らせてやるのだ。その間にいろいろな女と楽しむぞ。」とエネルギッシュにテンポ良く歌う。いかにもドン・ジョバンニらしい面が出ている。

ドン・ジョバンニが主催する舞踏会。多くの招待客が一堂に会して、舞踏会を盛り上げ、「自由 万歳!」と歌い上げる。。当時は劇場を訪れた観客も一緒になって「自由 万歳!」と歌っていたといいます。社会道徳や階級社会を無視して生きるドン・ジョバンニの精神に共感し、自由を謳歌したいという気持ちがあったのでしょう。

  (第2幕のあらすじ) 主従は衣服を取り替えて行動し、マゼットは、従者姿のドン・ドョバンニにひどく痛めつけられる。人々に囲まれたレポレッロ、正体を明かして逃げ出す。墓地内の騎士長の石像に、「晩餐に招きたい」とドン・ジョバンニが声をかける。
 夕食を取る彼の前にその石像が姿を現わす。悔い改めぬジョヴァンニは、業火に引きずり込まれてしまう。レポレッロが悪者の最後を語り、一同が頷いて幕となる。

「窓辺に出て来ておくれ」ジョバンニのカンツォネッタ。レオポレッロに扮したジョバンニがマンドリンを手に、窓辺に立つエルヴィーラの侍女に向けて甘美な求愛の歌を歌う。
 「ドン・ジョバンニのセレナード」して良く知られている。かたちだけでもマンドリンを手に歌ってほしかった。

第2幕の最終盤、ドン・ジョバンニは炎の渦巻く穴の中に落ちていく。

 ジョバンニ以外の登場人物が勢揃いして、各自の今後の身の振り方を語り、「悪人の末期はこの通り」と歌って幕になる。

  (感想)
 始まりは、ニ短調の劇的な序曲となるが、このトーンが、このオペラの全体を支配することになるため、最初から緊迫した気持ちになる。
 全般を通して、音楽は舞踏会などの優雅な調べと結末での劇的な旋律などモーツアルトらしく、多様性に満ち、奥が深いドラマチックな内容となっている。

 登場人物もそれぞれに個性に富み、人物の性格描写も優れていて、オペラの傑作と呼ぶにふさわしい。私は、このオペラを3つの男女のカップルの行動から見ることにしていた。

 一つは、田舎娘のツェルリーナと間の抜けたマゼットのカップル。
 ツェルリーナは一見、純情可憐のようでいて、マゼットに遠慮するそぶりを見せながら、百戦錬磨の色男ジョバンニを誘惑する雰囲気がある「小悪魔的女性」である。アリア「手に手を取り合って」はジョバンニとツェルリーナの美しい二重唱であるがそうした感じを抱かざるを得ない。マゼットはツェルリーナの浮気心に対して毅然とした態度でいるようなのだが、アリア「ぶって、ぶって、大好きなマゼット」などとツェルリーナに歌われるとコロリと手玉に取られてしまう。モーツァルトは、こうした女性を生き生きと描いている。おそらくモーツァルト自身が、好んだ女性だったのであろう。

 二つ目が、ドンナ・アンナとドン・オッターヴィオのカップル。
 父親をジョバンニに突然に殺されてしまったため、父親離れが出来なくなってしまったアンナは、オッターヴィオを愛することが出来なくなってしまい、「復讐を」と言い続けることになります。アンナはジョバンニに暴行されそうになるのを拒絶したのですが、恋人まで拒絶することになってしまいました。それだけに、オッタービィオのアリア「彼女の安らぎこそが」は甘美で叙情的で胸を打ちます。また、このオペラではオッターヴィオを除き、男性歌手はバスかバリトンなので、テノールのラモン・ヴァルガスの歌声はとりわけ美しく響きました。

 三つ目はドンナ・エルヴィーラとドン・ジョバンニ。本当はカップルとは呼べないのですが、ドンナ・エルヴィーラは三日間ドン・ジョバンニの妻でした。「捨てられた女」のエルヴィーラはドン・ジョバンニをひどい男と思いつつ、忘れることが出来ない女性として描かれています。これは、現代にも通じる女性であり、恨んだり、愛したり、邪魔をしたり、庇ったりするのは現実を見るようです。
 こうした、カップルのそれぞれが綾になり進行するのは、なかなか見応えがあります。

 一方、ジョバンニの好色ぶりは流石です。二重唱のアリア「手に手を取り合って」(前出)やマンドリンで歌われるアリア「さあ、窓辺においで」は、ドン・ジョバンニのセレナードとも呼ばれていて、素晴らしい恋の歌になっています。これらの曲は、モテ男はこのように女性を誘惑するのだとモーツァルトが教えてくれているのようなものです。
 
 しかし、第2幕の後半になると墓場のシーンやドン・ジョバンニの館に騎士長の石像が登場する場面などから再び劇的となり、一気に結末へと至ります。
 このオペラは、まさに光と影、明と暗が交錯し、オペラ・ブッファ(喜劇)と言われながら、文豪ゲーテがデモーニッシュ(魔神的)と呼んだような魅力に溢れていて、十分に楽しむことが出来ました。

 MET首席指揮者F・ルイージの情熱的な指揮のもとで優雅にして劇的な音楽が流れます。レチタティーヴォ(叙唱)も指揮台のすぐ前にチェンバロを置き自ら弾きます。舞台を見ながらなので流れを止めることのない演奏となり素晴らしい。

 また、マイケル・グランデージの演出はトラディショナルで、舞台・美術・衣装は合格点といえます。ドン・ジョバンニの館での舞踏会なども、良く雰囲気が出ていました。
 
 なお、METの「ドン・ジョバンニ」は同じ演出で2011年版と2016年版がありますが、ドン・ジョヴァンニを演じるマリウシュ・クヴィエチェンが若くて力強く演技している2011年版を使用しました。


特別定額給付金のオンライン申請・・・パソコンで実施、一発完了。

2020-05-14 | その他

私の申請地の志木市は、現在申請書を印刷中、袋詰めの後、郵送は5月25日からということなので、パソコン申請をすることにした。

1.パソコン+ICカードリーダー

 4~5日前に、パソコンで特別定額給付金のオンライン申請をしようと思ったが、ICカードリーダーが家にはないと思っていた。
 買おうとすると4~5千円もするので、もったいないと思い、書類が届いたら書類申請をするつもりだった。
 今日、自分の部屋を大掃除していたら、e-TAX対応の ICカードリーダーが出て来た。Windows8.1までの対応となっている
 ちょっと昔に買った物。そういえばE-TAXをしようと思って買ったことがあったことを思い出した。

 私のパソコンWindows10であるが、使ってみたらOKだった。カードリーダーにはカードの半分しか入らないが、
ICチップを読み取るように差し込めば良い。

2.振込先金融機関口座の確認書類

 EOSONプリンター付属のスキャナーでキャシュカードを読み込めば、Jpeg ファィルになるので、それをアップロードした。

3.マイナンバーカードの暗証番号

  今回使用する暗証番号は2つある。①券面事項入力補助用暗証番号 4桁 ②署名用電子証明書類暗証番号6~16桁。
  先に、①を使用することになり、最後に②を使用した。(②は5回失敗するとロックされてしまうようだ)

 いずれにしても、ICカードリーダーを使用し、パソコンで入力する場合は、さほど問題は起こらないと思う。

 受付が完了すると15桁の受付番号が交付される。 


世界で1番美しい本・・・「ベリー候のいとも豪華なる時祷書」(フランス)

2020-05-10 | 読書

                        BS4K 2020.5.3放送       本の冒頭の1ページ

パリの郊外にある中世の趣を残す「シャンティ城」

 その中に3万点もの美術品を貯蔵する「コンデ美術館」があります。壁一面に飾る方法は19世紀のまま、伝統を頑なに守るやり方です。 

壁一面所狭しと飾られているのは、フランス近代の傑作やルネッサンスの名画の数々。

 その古い城の奥深く、一般客の立ち入りが禁じられた部屋で「世界で1番美しい本」は大切に守られており、600年の間、人の眼に触れることがありませんでした。
 美術の専門家さえ目にすることの許されない門外不出の本です。
 今回、NHKの超高精細8Kカメラでの撮影が許されたということです。

本の名は「ベリー候のいとも豪華なる時祷書」。「時祷書」とは日々の日課をまとめた本のこと。この本は15世紀国王の弟、べリー候チャンが作らせました。

 本の冒頭に描かれているのは1年12ヶ月の中世フランスの暮らし。季節ごとに繰り返される行事や仕事の全てが、現代のフランスにもスローライフとして引き継がれています。
 そこには、ラテン語の細かな文字で祈りの言葉が書かれています。印刷技術の無い時代のため一文字、一文字が全て手書きで丁寧に書かれています。
  紙は子牛の皮をなめして作った当時最高級の牛皮紙。
  挿絵には金やラピスラズリ※ の顔料が惜しげも無く使われています。まさに贅の極みといえます。この本はベリー候の存命中には完成せず80年近くをかけ複数の画家により描ききりました。

※ ラピスラズリの青い色は世界で最も高価な顔料で金よりも貴重とされています。
「海を越えた」という意味の「ウルトラマリン」とも呼ばれて、芸術家に重宝されていました。
  画家ミケランジェロの初期の作品「キリストの埋葬」は未完のままこの世に残っていますが、「キリストの埋葬」が未完なのは、絵を描く上で使うウルトラマリンの顔料をミケランジェロが手に入れられなかったからだと言われています。一方で、ラファエロはウルトラマリンの顔料を絵の仕上げに使い、フェルメールはふんだんにウルトラマリンの顔料を使ったが故に家族を借金の泥沼に陥れていました。

  この時祷書の中でも最も貴重とされるのが冒頭からの12ページ。月ごとの生活を描いた細密画です。
  そこで、この12ヶ月の細密画の中からいくつかを・・・

● 1月

 宮殿で新年の宴が開かれています。召使い達は宴のために忙しく立ちまわっています。画面の右、青い色の服を着ているのがこの本を作らせたベリー候ジャン。後の金文字は「近う、近う」。気さくに声をかけています。
 左上、顔が隠れている黒い服を着た人物とその隣、灰色の帽子をかぶっているのが、この絵を描いたランブール兄弟。

● 2月

 暖炉に当たる農民達。奥には寒さをこらえて薪作りににいそしむ男達。

 当時、農民の絵が描かれることはありませんでした。雪が描かれているのも西洋絵画では初期の頃だそうです。

● 4月

 新緑の色が鮮やかな世界。城を背景に貴族の男女が婚約指輪を交わしています。 
 男性は青のガウンに金色の王冠の刺繍が描かれています。女性は長くて赤い珊瑚のアクセサリーをつけています。すみれ色のローブを春一番に咲くスミレに合わせています。侍女達もすみれを摘んでいます。

● 7月

男達は小麦の収穫。川の手前、女達は、羊の毛を刈っています。

● 9月

 葡萄の収穫。待ちきれず中央の少年は葡萄を食べています。葡萄は城内で葡萄酒を作ります。

● 11月
    豚はドングリを食べて、十分に太ってきました。男は、棒でどんぐりをたたき落としています。これらの豚は新年の大切な料理に使われます。どんぐりで育った豚は味が良いとのことです。

 「時祷書」は、本の大半が福音書の引用や聖母マリアに献げる言葉からなっています。
   祈祷の習慣が行われるようになるにつれ、暦、運勢、占いなど、手の込んだ時祷書が造られるようになりました。中世では人気があり、誰もが持つようになりました。なお、祈りは1日8回行われていたといいます。
  ベリー候はこの時代、芸術への最も有力な支援者でした。写本や美術品にお金をかけ、多くの時祷書を持っていました。この本はその中で最高のものだということです。


矢車菊・・・ツタンカーメンの墓にも

2020-05-07 | 

矢車菊、または矢車草。鯉のぼりの柱の先端に着いている矢車に形が似ているから名が付いたという。ヤグルマギク属ヤグルマギク科の花。ヨーロッパ原産。ドイツの国花。春から夏にかけて咲く。

 ツタンカーメンの墓。棺の上にはヤグルマギク、蓮、オリーブ等で作られた花輪が載せられていた。 写真は第1人形棺。ツタンカーメンの墓は厨子5つ、人形棺3つ計8つからできていてマトルーシュカのように何層にもわたり開けていくようになっていた。そして最後に”ツタンカーメンのマスク"をかぶったツタンカーメンのミーラが入っていた。

3000年以上も前、古代エジプトでも愛されていた花だったようです。


モーツァルト作曲「コジ・ファン・トゥッテ」(2)・・・ 舞台はニューヨーク近郊の遊園地

2020-05-05 | オペラ・バレエ

                                wowow 2020.4.30                                      

 賭けたもの、それは恋人の貞操!男女の心の奥底を描くモーツァルトの名作をフェリム・マクダーモットがちょっと奇抜な新演出をしている。

 1950年代のニューヨーク近郊リゾート地コニーアイランドに置き換えた現代風のポップな新演出である。舞台も他にコニーアイランド内のモーテル、スカイラインの客室など。

 恋人の貞操を信じる青年たちに差し出された危険な賭け!純情な士官たちは老獪な哲学者に勝てるのか?変装して互いの恋人を口説くゲームの結末はいかに?男女の機微をピュアにして精巧な音楽で描き尽くすモーツァルトの名作。

 ブロードウェイの大スターK・オハラのモーテルの小間使い役は、注目のキャスト。
 A・マジェスキー、S・マルフィらフレッシュな顔ぶれも、若者たちの恋の冒険にぴったり。

 モーテルのメイドのデスピーナはブロードウェイの大スター、ケリー・オハラが演じる。このドラマの脇役の筈が、歌唱力・演技力で主役といっても良いほどに活躍。

 老哲学者の筈のドン・アルフォンソも若々しくてエネルギッシュ、大道芸人達を引き連れて「恋人の貞操を崩すための悪だくみ」をデスピーナと共に進める。 
 今回の演出では、この二人が物語をすすめる強力な布陣となっている。

フィオルディリージ(左)とドラペッラ(右)は、普段着で登場。

 フェルランド(左)とグリエルモも革ジャンとジーンズのリラックス姿

指揮:デイヴィッド・ロバートソン
演出:フェリム・マクダーモット
出演:ケリー・オハラ・・・デスビーナ 
   アマンダ・マジェスキー・・・フィオルディリージ
   セレーナ・マルフィ・・・ドラペッラ
   ベン・ブリス・・・フェルランド
   アダム・プラヘトカ・・・グリエルモ
        クリストファー・モルトマン・・・ドン・アルフォンソ
    上映時間:3時間38分
MET上演日:2018年3月31日言語:イタリア語
3時間38分  MET上演日:2018年3月31日
言語:イタリア語

● この演出の見せ場は、本物の大道芸人が登場すること。見せ場の一つになっている。

火吹き師の演技

軽業師

蛇使い師

剣飲み師

● 遊園地内の施設もおおいに利用されることになる。

コーヒー茶碗の回転台

観覧車

「恋人同士を交換した結婚式」が進められることになるが・・・・。

(感想)

  フェリム・マクダーモットの演出は、コニーアイランドの施設や人物を思いきって利用したストーリーを展開している。
 まさに、アメリカ人が親しみを感じやすい舞台を作り上げたと言えよう。
  「初心者に分かりやすいというオペラ」との解説もあったが、その通りかも知れない。METのカーテンコールでの観客の喚声も高かったように思えた。

「コジ・ファン・トゥッテ」は、アリア、二重唱、各種重唱と名曲に事欠かない。ケリーオハラを始めとする”6人の主役”は生き生きと演技し熱唱していた。
さすがMET だけあって若手とは言え、それぞれの実力は十分であったといえる。
   その中で、特にドラペッラ役のセレーナ・マルフィ(Ms)は豊かな才能を感じさせてくれた。

 ただ、モーツァルトの作曲した当時の18世紀末、貴族社会の優雅さを求めることが出来無い、のは見る人によっては寂しさを感じてしまうのではないか。

「コジ・ファン・トウッテ」(1)は

めいすいの写真日記 モーツァルト作曲 MET「コジ・ファン・トウッテ」(1)

を参照してください。


つつじ三題

2020-05-04 | 

大紫つつじ。たくさん咲いているつつじに珍しくクロアゲハが蜜を吸いにやって来ました。大紫つつじはつつじの

中で1番花びらが大きいらしい。

こちらは平戸つつじ

白いつつじ。つつじは、つつじ科つつじ属で開花時期は4月15日から5月15日頃まで。歩道脇によく植えられます。

これらの花々も志木市の「いろは親水公園」のサイクリング道路脇に植えられていました。

「いろは親水公園」は、現在閉鎖中です。


モーツアルト作曲 「コジ・ファン・トウッテ」(1)

2020-05-02 | オペラ・バレエ

 《女はみんなこうしたもの》恋人たちを待ち受ける愛の試練!モーツァルト円熟の音楽が「心変わり」の悲喜劇を彩る。

演出:レスリー・ケーニッヒ
出演:スザンナ・フィリップス(フィオルディリージ)
   イザベル・レナード(ドラベッラ)
   ダニエル・ドゥ・ニース(デスピーナ)
   マシュー・ポレンザーニ(フェルランド)
   ロディオン・ポゴソフ(グリエルモ)
   マウリツィオ・ムラーロ(ドン・アルフォンソ)
演奏:メトロポリタンオペラ管弦楽団、合唱団 指揮:ジェイムズ・レヴァイン 
上映時間:3時間46分 .MET上演日:2014年4月26日
言語:イタリア語.

 君たちは、愛する人の貞操を疑ったことがあるかい?「あり得ない!と答えた若者たちに老哲学者が持ちかけた、恋人の貞操を試す金のコイン100枚を賭けたゲームとは?美しい音楽のオブラートに包まれた「愛」の問題作、それが《コジ・ファン・トウッテ》。
 18世紀のナポリ。青年士官のグリエルモとフェルランドは、フィオルディリージ&ドラベッラ姉妹と熱愛中。恋人の愛を信じて疑わない若者たちに、自称哲学者のドン・アルフォンソが賭けを持ちかける。それは、変装して互いの恋人を口説いてみろというものだった。自信満々の2人は受けて立つが、小間使いデスピーナの協力を取りつけたアルフォンソの指示通り変装して芝居をするうちに、恋人たちの心が揺れ始める・・・。

 18世紀後半、モーツアルトの時代には貴族の戯れ・遊びとして恋人交換を題材とする物語がはやっていて、それを題材にしたようです。
 しかし、 ”あり得ない”筋立ての喜劇で 姉妹が婚約者達の企んだたちの悪い冗談に乗せられてしまう。観客が喜劇の設定に疑問を持つのは後回しである。
”女性は不誠実”と歌う物語の前提は公正とはいえないが最高の音楽には異論も立ち消えてしまう。さらに、この名作がモーツァルトの解釈で名高いJ・レヴァインの手にかかればなおさらであり、衝撃的な「愛」の悲喜劇を若手スターたちが生き生きと描く。
 また、女性レスニー・ケーニッヒの演出も1996年にMETでの初のオリジナル演出で「コジ・ファン・トゥッテ」を手掛けたもの。20年近い歳月で演じられ続けた舞台は、18世紀のスタンダードのもので、簡素ながらも分かりやすく海をバックにした背景はとても清楚で美しい。モーツァルトの音楽を引き立てるのに大きな役割を果たしている。

 ここで、「コジ・ファン・トゥッテ」のモーツァルトらしいアリアと重唱の場面を取り上げてみたいと思う。

第1幕 「風が穏やかでありますように」船出する二人の士官を見送る、やさしさ美しさでいっぱいの三重唱。中央アルフォンソ、左フィオルディリージ、右ドラベッラ 嘘を仕掛けたアルフォンソはやけに真摯に歌う。

第1幕 「風や嵐にも」フィオルディリージ(ソプラノ)の一番の聴かせどころ。
 岩のように、じっと動きません。風や嵐にさらされても、その輝きが私たちを守り続けているのです。死だけがこの心を変えられるのです。と強い意志を装飾的な歌唱で示す。

第1幕「僕たちの恋人の愛の息吹は、やさしく心を慰めてくれる。」とフェルランド
   が歌う甘く抒情的なテノールの名歌である。

第2幕 磁石のかけら、メスマーの石、18世紀後半動物時期とメスマーの命名する、ある種の力が存在すると考えられ、当時は実際に行われた心理療法。催眠術の先駆だった。
 小間使いデスピーナ演じる医者がヒ素を飲んで(演技)死にかけているフェルランドとグリエルモは磁気をかけられ、足をバタつかせる。いかにも嘘くさい。

第2幕 「女は15歳にもなれば」 激烈で軽快なデスピーナのアリア。
  大人の流儀を知らなければ、悪魔がどこに潜んでいるか、何が良いことで悪いことか
  巧みな駆け引きを覚え恋人達を魅了するのです。と歌う。

第2幕「私は、黒髪の彼にするわ」二重唱
 ドラベッラ・・・わたしはあの黒髪の彼にするわ
 フィオルディリージ・・・じゃあ、私は茶髪の彼ね。
 ここで愛を語る二人の男になびき始める。

第2幕 「恋は盗人 誘惑のヘビよ」積極的に生を楽しむドラベッラのアリア。
        気まぐれに心の安らぎを与えたり、好みのままよ、人の心に

 第二幕 「もうすぐ彼の腕の中に」フィオルディリージとフェルランドの二重唱
 悩んだ末にフィオルディリージは恋人の軍服を着て戦場に赴こうとするが・・・、剣を抜いてまでして対抗するが・・・ 口説き落とす場面の二重唱は、物語のハイライトで特に印象的な曲である。

 このオペラは、不道徳オペラということを多くの人が分かっているようだ。METの観客も素晴らしいアリアや重唱のあとは大きな拍手をし、おかしいと思った時にはクスクスと笑い出す。笑いが起こる場面が結構多い。

 ただ、フィオルディリージは美貌と美声と真面目な演技でとても魅力的であった。
MET2017-18シーズンにはプッチーニの「ラ・ボエーム」でムゼッタを演じた若手実力派である。悩み葛藤する場面も多いが、太陽のような明るい笑顔に惹きつけられる。

  また、フェルランドを演じるマシュー・ポレンザーニは2016-2017シーズンのモーツァルト「イドメネオ」のタイトルロールであり、モーツアルト歌いと知られていて、さすがといえるテノールの軟らかで甘い歌声を聞かせてくれた。

 この「コジ・ファン・トゥッテ」はMET新演出で2020年4月30日に今回記述した演出とは似ても似つかない、奇抜な演出で上演されました。
 このことは、コジ・ファン・トゥッテ(2)として、ここにアップするつもりです。


黄菖蒲

2020-05-01 | 

黄菖蒲は文目(あやめ)科アヤメ属の花、開花時期は5月5日から五月末まで。

志木市の新河岸川の右岸にある小さな遊水池のほとりに咲いていました。黄菖蒲は水辺を好むようです。

暗い場所に、日に映えた黄色の花は、とても良く目立ちます。