毎年12月31日に放映される「クラシックハイライト」。クラシック音楽のすべてのジャンルで、NHKが昨年一年間に 放映した優れた公演を紹介してくれるものですが、2012年は趣向を変えて、今年から始まった「ららら♪クラシック」の年末スペシャルとなりました。また、司会者・解説者・ゲストと出演者が出て話をするようになりました。21時から23時50分まで行われました。私は、紅白歌合戦をこの番組が始まるまで見てい ましたが、その後はずっと、この番組を見ました。その中で日本人の3人の演奏家および2つのオペラ作品を記してみようと思います。
まず最初に登場したのが、中学一年生(13歳)の牛田智大君。ライジングスターとして紹介されました。名前を聞いたことはありましたが、テレビでもお目にかかるのは初めて。まだあどけない顔をしていますが、クラッシックピアノニストとしては最年少でCDをリリース。ショパン国際音楽コンクール in Asiaで史上初の5年連続1位となど、すでに輝かしい経歴を持っています。テレビでの印象は、あどけない顔をしていますが、受け応えはさわやかでした。
ピアノの練習は、曲のイメージ(風景・せりふなど)を作りながら行うとのこと。スタジオで演奏したプーランクの曲は、メロディーや「泣ける和声」といわれる曲想が好きと言っていました。
まさに、天才少年とは彼のことをいうのだという雰囲気です。今後すくすくと育ってもらい、ショパンコンクールの本選で日本人初の第一位になることが出来たならと思っています。
バッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督である鈴木雅明さんが、ドイツ・ライプチヒの音楽賞「バッハ・メダル」を授与されました。このメダルはバッハ音楽の普及に尽くした人に贈られるもので、過去に受賞者には、トン・コープマン、ニコラス・アーノンクール、ヘルベルト・プロムシュタットなどそうそうたる人たちがいて、東洋においてもカンタータの演奏など中心に、バッハの音楽を身近にしたことへの高い評価があったものと思われます。
バッハの200を超えるカンタータは、ルター派の教会の礼拝のために書かれた音楽ですが、それぞれ曲に大きな違いがあると言います。このため、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏などは、ある程度の年月をかければ可能となるのですが、バッハのカンタータの全曲演奏となると一生かかってしまうと鈴木さんは言います。
バッハのカンタータというと有名な「心と口と行いを持って」(主よ人の望みの喜びよ)、コーヒーカンタータなど数曲しか聴いたことがありませんが、バッハの曲目の多様性と奥の深さに改めて驚きます。こうした機会に私もバッハの音楽への理解を深めていこうという気持ちになりました。
教会カンタータ 第128番「ただキリストの昇天のみが」を演奏するバッハ・コレギウム・ジャパン。
将来が期待される指揮者の山田和樹さん(33歳)。2009年、指揮者のコンクールとして知られるブザンソン国際音楽コンクールで優勝。パリ管弦楽団で何回か指揮をしており、スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者でもあります。
彼の指揮による今年8月にサイトウ・キネン・フェステバル・イン松本で行われたオネゲルの劇的オラトリオ「火刑台のジャンヌダルク」が放映されました。小澤征爾さんの体調が思わしくなく、指揮を指名されました。ジャンヌ・ダルクを演じるのはヘルベルト・フォン・カラヤンの娘で女優のイザベル・カラヤン。カラヤンの生存中に、このオペラに出演させるとの約束が小澤征爾さんとの間であったらしい。
山田和樹さんが小澤征爾の指導を受ける様子も放映されました。このオーケストラは国内のみならず、海外からも演奏者が呼び寄せられますが、オーケストラが一体となった演奏は迫力のあるものでした。
二期会60周年記念公演のマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」。解説の諸石幸生さんの話では、「こうしたオペラでは、マリア・カラスやレナータ・テヴァルディなど過去の有名な歌手の真似をしたり、近づこうとする点から出発していたのを、楽譜そのものから出発するようになっているような気がした。それが、この公演を価値あるものとしている」というような趣旨の発言していました。それが、正しいかどうかは別として確かに歌手のレベルが本場ヨーロッパと比べても遜色なくなりつつあるとは思います。
さらに、演出者がこのオペラはヴェリズモ(現実主義)・オペラといわれ、人間味と生活臭にあふれていて演技が難しいが、あえて選んだといっていました。近年はオペラの演出もこなれてきたともいえるからでしょう。また、ハイビジョン映像と大画面テレビ、そしてホームシアターが普及し、オペラの醍醐味を分かるようになり、目や耳の肥えたオペラファンが少しづつ増えているということも背景にはあると思います。
最後に、藤原歌劇団のベルリーニの「夢遊病の女」。NHKのBSで全曲を放映されたので録画し見ましたが、舞台や衣装なども、設定となっているスイス、アルプス山中の村の雰囲気が良く出ており、アミーナ役の高橋薫子(S)さんの伸びやかな声も素晴らしくて、水準の高い見応えのあるオペラとなっていました。