4月19日(日)Eテレの「クラシック音楽館」で放映された、ヒラリー・ハーン(Vn)、エサ・ペッカ・サロネン指揮フィルハモニア管弦楽団
「ブラームス作曲 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77」を見ました。
私は、クラシック音楽に親しむようになった40年以上も前から、ブラームスのヴァイオリン協奏曲が好きで良く聞いていました。
「めいすいの音楽随想 私の好きな3つの協奏曲・・・1973.3.17」
オイストラフとクレンペラーフランス国立放送管弦楽団のLP、クレーメルとカラヤン指揮ベルリンフィルのCD、他に演奏会やテレビ放送など
何人もの演奏者でこの曲を聴いてきました。
第1楽章のカデンツァを演奏するハーン
今回は、現代を代表する名ヴァイオリニストといわれるヒラー・ハーンが、どのような演奏をするのか期待を持って見ることにしました。
第1楽章は冒頭のオーケストラの演奏が長めですが、初めのヴァイオリンの音色から引きつけられました。彼女の演奏は豊かな響き、逞しくて、
緻密な響きを備えています。牧歌的な第2楽章の透明で美しい音、第3楽章のリズミカルで迫力ある演奏も軽やかで素晴らしい。
第2楽章 冒頭のオーボエの演奏に聴き入るハーン
今回の放送の演奏を見て知ったのは、コミュニケーション能力です。彼女の演奏する姿を見ていると、小さな動作の中に指揮者や
オーケストラ団員との間で行っている意思疎通がよく分かります。ヴァイオリンをしなやかに演奏する姿、第3楽章での軽いステップ、
指揮者を見る魅力的な眼やコンサートマスターの方を向いて伴奏に頷いてる様子などなど、”オーケストラと対話しながら演奏する姿も音楽”
であると感じさせてくれます。
これは、もちろん10年以上にも前から、サロネン指揮フィルハーモニー管弦楽団とハーンが共演を重ねてきたからということもできるでしょう。
あまりに素晴らしい演奏であったため演奏が終わった後、すぐに録画をもう一度、聴き直しました。NHKで放映した演奏では、近年では屈指
の名演奏であるといえると思います。この演奏を聴き、ヒラリー・ハーンのファンになりました。
アンコールで弾いた 「バッハの無伴奏バイオリン・パルティータ第3番ホ長調からジーク」も素晴らしい演奏でした。
● ハーンとサロネンのインタービューの言葉
ブラームスの協奏曲・・・ヒラリー・ハーン
「最近の演奏会で感じたことですが、この作品には、すごく強引なところと細やかな感性とが入り交じっています。
こうした特徴は他のバイオリン協奏曲には見られません。オーケストレーションも見事で楽器間の対話がいたるところで行われています。
私もその対話に加わることができるので本当に面白いです。オーケストラは単なる伴奏ではありません。
ソロの役割としてオーケストラに彩りを添える程度の場合もありますし、ソロとオーケストラの間で主導権を相互に受け渡す場面もあります。
美しく力強い音楽であると同時に大変緻密に書かれています。ですが、そういった細かい点はあまり重要ではありません。
相乗効果の結果として生み出される全体像に面白さがあるのです。」
ヒラリーハーンについて・・・指揮者エサ・ペッカ・サロネン
「彼女は周りがよく見えています。自分の世界に入ってしまうタイプではなく、音楽をみんなで作り上げようとするタイプです。
演奏中に常に意思疎通が出来ているので次に彼女が何をやりたいのかがすぐに分かります。明確なメッセージを発して
くれるので彼女の要求を察知することが出来るのです。」
エサ・ペッカ・サロネンとの共演・・・ヒラリー・ハーン
「サロネンさんは、並外れたエネルギーをすべて演奏に注ぎ込んでいます。私が新しいことをしようとすると
その一歩先まで読んでくれます。ソロからオーケストラに主題を受け渡す時など、わたとの意図した流れを、彼はすぐに察してくれます。
オーケストラの団員も耳をそばだてて私のアイディアに反応してくれます。事前に説明する必要などありません。
何かを投げかけると彼らはそれを、さらに膨らませてくれます。
大きな流れの中に身を投じて一緒に何か築き上げている実感があるのです。」