「青い花瓶」(1889-90)(絵葉書より)
国立新美術館で開催中の「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展を見てきました。初期から晩年までの作品約90点が展示されている今回の展覧会は、セザンヌの作品がたどる成熟への足跡がはっきりと見て取れて、とても興味深いものでした。
パレットナイフを使って描かれた初期の作品は、荒削りながら力強く、それなりに魅力的です。1870年代の風景画は、説明によると「画面構成を重視」して描かれたということですが、私には余り個性を感じられない<穏やかな印象派>の絵という印象を受けました。
セザンヌがその魅力を存分に発揮したのは、やはり後半生の静物画によってではないかと思います。「壺、カップとりんごのある静物」「青い花瓶」「りんごとオレンジ」・・・どれをとっても豊かな色彩と絶妙な画面構成が絵に重厚さと明るさを齎し、セザンヌらしさを感じさせてくれます。
同じ風景画でも、晩年(1896-98年)に描かれた「トロネの道とサント=ヴィクトワール山」は、静物画と共通する大胆さ、力強さが感じられて、とても魅力的です。そして最晩年、セザンヌの絶筆ともいわれる肖像画「庭師ヴァリエ」は、非常に軽やかなタッチの洒脱な画風で、いわゆるセザンヌらしさとは違うかもしれませんが、私は今回一番好きな作品でした。
テーマ・年代別の展示は説得力があり、所々に配されたアトリエの再現も興味深く、中々見応えのある展覧会でしたが、評判が高いせいか、平日だというのにとても混んでいて、人垣で見難い箇所があったのが少々残念でした。
「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展は国立新美術館で6月11日まで開催中です。(三女)