Polepole Life new

びわ湖の湖南に在住。
亡きA.コッカーNOIRと山歩きを愛すシニアライフを綴ります。

約束の旅路

2007-07-02 14:52:01 | 映画・観劇





(劇場用ポスター)

『約束の旅路』公式HPリンク



映画は、アフリカ・スーダンの難民キャンプで一人の女性が
腕の中の息子を亡くすところから始まる。
そして、その様子をじっと見つめるもう一人の女性。

過酷な状況と、深い悲しみが冒頭から迫ってくる。

でも、それは単に難民キャンプでの悲惨なスナップではなく
ここから、亡くなった子供に与えられるはずだったチャンスを
一人の少年が譲り受けるために旅立ち、生き、成長していく
この物語の始まり。

わが子の命と人生を守る為に、主人公を突き放すように送り出す実母。
無言のうちにその意志を悟り、他人の子の命を必死で守ろうとする
子供を喪った偽の母ハナ。。。

難民キャンプのエチオピア系ユダヤ人を密かにイスラエルに移送する
『モーセ作戦』は1984年、実際にあった歴史的事実であり、その後
1991年の『ソロモン作戦』で、主人公シュロモを演じたモシェ・アベベ
、シラク・M・サバハはエチオピアを後にしてイスラエルに渡っている。

主人公シュロモはキリスト教でありながら、実母の機転とハナの協力で
エチオピア系ユダヤ人の亡くなった少年と偽って、イスラエルにたどりつく。

暗い背景の中で、シュロモは多くのすばらしい人と出会う。
その人々との一つひとつの出会い、会話がすばらしい。
こんなに『立派な人物』が列挙して出てくるなんて・・・ともすれば
現実離れに鼻しらみそうな程の登場人物の言葉や人間性に、素直に
自分自身が洗われるような気がするのは、映画に込められたメッセージが
誠実な真実に満ちているからだろう。

本当にいい映画に、数年ぶりに出会えた。
日本でもきな臭い空気が流れ、人々の内面の荒廃が日々のニュースに
形を変えて流れている今、この映画を創った人々がいるということ、
この映画を多くの人々が支持しているということが、とても心強く、
気持ちを明るくしてくれる。
この映画の背景になる宗教問題や人種差別、政治的な問題に
興味がなくても、よく理解できなくても、誰もが、そのひと自身の
問題に共通する何かをこの映画の中のどこかに見つけ、何かを
学び取ることが出来る映画だと思う。


多くの名場面から私自身のマイベスト3を選ぶとしたら・・・

ひとつは、シュロモが始めて一人で通学する帰り道、脇にそれ
イスラエルに来て初めてはくことを憶えた靴下をぬぎ、素足になって
空を見上げるシーン。
(きっかけをくれたのは実母、多くの人が暖かく見守り育ててくれる。
でも、本人だけが自分の中に育てなければいけないものもある。
立ち向かっていこうとするシュロモの姿勢が伝わる。)

感動することの多い義母ヤエルの言動の中では、特に〝エチオピア式〟を
学んだヤエルにシュロモがうちとけるシーン。
(自己を隠し続けることで苦しみ続けたシュロム。信頼や愛情は、
自分自身を理解し、受け入れられて初めて芽生えるものではないだろうか?
それは、身近な日常の中でも決して例外ではないと思う。 )

最後の1つは、養祖父がキブツにシュロムを訪ねた時、牧草地で語る
シーン・言葉。。。
「土地は、分かち合うべきだよ。
   太陽や日陰のように。互いに愛が学べるように」
(イスラエルの問題だけではなく、土地ではない他のものに
言葉を置き換えれば、ほとんどの難問を霧消させることのできる
糸口になりうる言葉だと思う。)


            +  +  +


 楽しみにしていたファーストデー『映画の日』。
午前中の「琵琶湖一斉清掃」参加にも、日曜日の人込みにもくじけず、
午後一番、京都シネマで観て来ました。
 土日もなく、仕事中のオットさんに最寄のJRの駅まで送迎して
もらい、いろいろ心苦しく思いながらも・・・
『やっぱ、こういう時間は必要だわ。』と大満足。
まっかっかの目で、どこにも寄れず、心だけはリフレッシュして
帰宅したのでした。

 見ごたえのある、真実のメッセージのこめられた、
それでいて、後味のいい映画です。
音楽も良かった。
☆☆☆いっぱいのお勧め作。


 



 
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする