
生きたかったと思うコンサートがある。2021年1月23日にハクジュ・ホールで行われた新倉瞳さんのチェロ・コンサート。ショップで彼女の新譜があったので買ったらそのコンサートの録音だった。

お恥ずかしい話だけれど、彼女の舞台を見るとドキドキしてしまう。お名前通り瞳がキラキラしていて、輝いているのです。青年が初恋するような・・・失礼、音楽に対しての姿勢も素晴らしい。それが結晶したのが今回のアルバムではないでしょうか。
挨拶でご自身が書いてある通り”今回のアルバムは、「11月の夜想曲~新倉瞳 委託作品集(世界初演初録音)というとても立派なタイトルですが、もっとシンプルに表現すると、私が強く感じた「好き」がギュッと詰まったアルバムです”というとても素直な、気持ちが伝わる作品です。
このアルバム、新倉自身がファジル・サイ、藤倉 大、挾間美帆、佐藤芳明、和田 薫の5人の気鋭の作曲家に作品を委嘱して、その作品をせ世界初演したという気合の入った作品、彼女の人気をもってしてしかできないようなアルバム。
作曲家の方は挾間美帆以外は知らないのだけれど、すべての曲は(最後は違った)彼女の演奏を意識して作られているのでそこも素晴らしい。とはいっても最初の”11月の夜想曲”はタイトル曲ではああるけれど、一番難度が高く感じる。この曲だけはハクジュではなくてそれ以前に録音されているので、これがベースになったアルバムなのだろう。
続く作曲家、藤倉大の”スパークラー~チェロのための”はチェロのソロ、ここからはこちらにあってきて、続く挾間美帆になればマリンバとのデュオになって、これはJAZZがもちろんあるので聞きやすい。4曲の組曲で新倉がいた場所をテーマにしているけれど、彼女と場場所が情景的でさすがと思う。
続く佐藤芳明氏とはクレズマー音楽つながりで、すでに素晴らしいアルバムを作っている。今回は氏の作曲になるけれど、チェロとアコーデオンの素晴らしい出会いの再現になった。続く 和田 薫とは和太鼓の林永哲との共演、これはTVでも放映されたことがあった。チェロと和太鼓やはり新倉瞳だから出来たような気がする。
最後におまけみたいについたトラディショナルな”伝承曲”でマリンバ、太鼓、アコーデオンとの共演でクレズマー音楽になる。このおまけ良くつけてくれたと感謝したい。委託作品の全15曲と彼女の好きなこの1曲がまるで秤にかかるようにゆれて、彼女の素直な気持ちが伝わってくる。
という事で新倉瞳にドキドキするからではなくて、このようなアルバムが出たことにチェロをするこちらはドキドキした。
November Nocturnes / Hitomi Niikura
新倉 瞳(チェロ)
東京交響楽団(1)
飯森範親(指揮:1)
塚越慎子(マリンバ:3,6)
(アコーディオン:4,6)
林 英哲(太鼓:5,6)
録音時期:2020年3月21日(1)、2021年1月23日(2-6)
録音場所:東京オペラシティ(1)、ハクジュホール(2-6)
録音方式:ステレオ(DSD/ライヴ)
SACD Hybrid
1. サイ:11月の夜想曲~チェロと管弦楽のための
第1楽章 終わりのない夜の夜想曲
第2楽章 孤独な夜想曲
第3楽章 夜歩きの夜想曲
第4楽章 心象の夜想曲
第5楽章 青い夜想曲
2. 藤倉 大:スパークラー~チェロのための
3. 挾間美帆:組曲『イントゥー・ジ・アイズ』
第1曲 サンフランシスコ
第2曲 デュッセルドルフ
第3曲 チューリッヒ
第4曲 東京
4. 佐藤芳明:2つの楽器のための2つのカノン
第1曲 寛容
第2曲 琢磨
5. 和田 薫:巫~チェロと和太鼓のための
6. ニーグン(伝承曲)