村上春樹の「街とその不確実な壁」を読了した。村上春樹の本はストーリーをどんどんと追いかけていく必要は感じず書中の、(まるで〈夢読み〉が図書館で〈古い夢〉を読むみたいにゆっくりと読んで(楽しんで)来た。
村上春樹の本を読んだあとは春樹のような分になってしまう。
本作3年をかけて完成させたそうだが、これまでの作品に関連ついてかなり重要作になったと思う。
ストーリーには関係ないけれど、(ただし無駄な文章など存在しない)(雰囲気は出ている)抜き書きを二つ。
「ユー・ゴー・トゥー・マイ・ヘッド」と私は独り言をいった。
女性がマフィンをオーヴンで温めながら、顔をあげて私を見た。
「ポール・デズモンド」とわたしは言った。
「この音楽のこと?」
「そう」と私はいった。「ギターはジム・ホール」
「ジャズのことは私。あまりよく知らないんです」と彼女は少し申し訳なさそうに言った。そして壁のスピーカーを指さした。「有線のジャズ・チャンネルをそのまま流しているだけだから」
私は肯いた。まあ、そんなところだろう。ポール・デズモンドのサウンドを愛好するには彼女は若すぎる。私は運ばれてきた温かいブルーベリー・マフィンをちぎって秘匿k値食べ、温かいコーヒーを飲んだ。素敵な音楽だ。白い雪を眺めながら聞くポール・デズモンド。
店の小さなスピーカーからジェリー・マリガンのソロが流れていた。ずっと昔によく聴いた演奏だ。わつぃな熱いブラック・コーヒーを飲みながら、記憶の底を探り、その曲の題名を思い出した。『ウォーキン・シューズ』、大家育ったと思う。ピアノレス・カルテットでの演奏、トランペットはチェット・ベイカーだ。
しばらくして客席が落ち着き、手が空いたところで、彼女が私の前にやって来た。細身のジーンズに白い無地のエプロンという恰好だった。
きっと主人公の救いとなる女性との2題でした。
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