340冊読んだ、例年位だが、夏の暑さと海外旅行と学会対応、そして孫のため読む時間が減ったのもある。
長く暗いミステリなど駄作が多かった。特に、実験的なメタ、SF混在のミステリなど視点・時点を入れ替えたものは飽きた。
そのため、慣れた作家の作品が癒しだった。ただし、宮部みゆきの百物語、畠中恵しゃばけ 、ウエスト・ゲート・パークなど長く続くシリーズものは飽きてきた。
社会学・ゲノムでは
「美食地質学」入門 巽好幸
300年前の地殻変動と地形、岩質などが魚や植物の生態に影響、うまい酒、魚の発酵やATPまで解説、役に立つ、ブラタモリより的確
「悪所」の民族誌 色町・芝居町のトポロジー 沖浦和光
色町・芝居町の遊女・役者の身分や体系の歴史、経済・政治の変化による時系列の変容など見事、2006年の大作
コード・ブレーカー ウォルター・アイザックソン
ゲノム編集クリスパーのジェニファー・ダウドナの伝記、研究者の競争とチーム形成、ゲノムの病気と改良の倫理問題、COVID19への応用の3部は読ませる
歴史もの
茜唄 今村翔吾
後白河法皇・公家・武士の3者と、公家化する平家と坂東の源氏、そして内部の争い、平知盛と希子の連携と平家物語の伝承による武士のあり方の伝承へ、戦法・評議・悪だくみが渦巻く、「見るべき程のことは見つ」
朝星夜星 朝井まかて
自由亭、大阪ホテルに至る草野丈吉とゆきの夫婦、子供、義妹と料理からホテルへ明治の改革と人脈、川口や中ノ島の豊国神社(公会堂)やホテル(東洋陶磁)、大阪言葉の柔らかさ、「ほたほた」と歩き始めた赤ん坊、嬢(とう)さん、京都の洋食の嚆矢も大鳥居西側の自由亭京都支店か(明治10年頃)https://www.kyotohotel.co.jp/history/chapter_01/chapter_01_02/
愛媛県新居浜市上原1丁目3番地 鴻上尚史
新居浜の家と教師で日教組だった父母との関係、高校での演劇や生徒会長、京都百万遍での浪人を経て早稲田、仮面浪人、そして2年生から演劇に、4年生で第三舞台設立、63歳で離婚し杉並へ
いつもの馴染んだミステリが多い
連鎖 黒川博行
バツイチと映画オタクの巡査部長バディが解明する、パクリ屋+乗っ取り屋+ヤクザの保険金殺人3件とその裏の後妻業的悪妻を解き明かす、珍しくすべての悪事解決
黒石 新宿鮫Ⅻ 大沢在昌
桃井課長後任の阿坂女性の課長が前に、晶も出てこないが中国中国残留孤児3世と北朝鮮の戦いの続きがヒーロー黒石と徐福の関係が決め手、心理から事件に、人物表が欲しい
777 伊坂幸太郎 天道虫がホテルに訪れ、6人の業者(殺し屋)や爆発物、ITおばあさんが入り混じり女性を守る、真の悪に至るどんでん返しが良い
新しめのミステリは観点が面白い
逆転正義 下村敦史
イヤミスに近いが「罪」をテーマにした連作、「正義」とはなにか、隠された真意に最後の作には驚かされた
四日間家族 川瀬七緒
4人の集団自殺が赤ん坊遺棄を発見、SNSを利用した犯罪の解明と4人の連携、赤ん坊へのいとおしみと四人の罪の乗り越え、コンゲームの一種
木挽町のあだ討ち 永井紗耶子
江戸の復讐(仇討ち)と芝居関係者((徒討ち)によるコンゲーム、無理な関係もあるが時代背景も丁寧で楽しめる
ハードボイルド系
頬に哀しみを刻め S・A・コスビー
ゲイ夫婦の息子たちを惨殺された、刑務所帰りの黒人庭園管理業と無職貧乏白人が組む復讐劇、「人は復讐を正義のように語るが、復讐はちょっといいスーツを着た憎しみさ」と訳が良い
熱砂の果て C・J・ボックス
熊を追う猟区管理官ジョーと無罪化を条件に謎の政府組織からテロリスト攻撃を請け負う鷹匠ネイト、娘のシェリダンがからむヴォランティア組織は情報テロ、その上を行く政府組織と知事
有名な海外ミステリが多い、同じ作家も
優等生は探偵に向かない ホリー・ジャクソン
女子高校生探偵、バディは男子大学生壮絶なエンディング、なりすましの犯人は復讐を狙う、巻き添えの監禁
卒業生には向かない真実 ホリー・ジャクソン
3部作の完結編、DTキラーの正体がわかり、ピッパが返討、そこからはコンゲームのような展開、マックスへの復讐とホーキンス警部補のほのめかし、そしてしばしラヴィとの別離、解決へ余韻
木曜殺人クラブ 逸れた銃弾 リチャード・オスマン
真犯人が意外、4人のシルバーがゆったりと解決、逃亡の被害者とVAT詐欺と殺人、レッド・へリングとあっさりした犯罪描写
窓辺の愛書家 エリー・グリフィス
イギリスの高齢者アパートでの観察する「殺人コンサルタント」の90歳のおばあさんはミステリの殺人アイディアを作家に提供、アパートの殺人、作家二人の殺人を探る3人、並行する殺人の裏と家族・恋人の出会い
キュレーターの殺人 M・W・グレイヴン
重層化された犯罪、ポーとティリー、そしてステフの妊娠、そのなかでのダークウェブ連続殺人がアメリカから情報が、そして殺し屋を問い詰めると、悲しい親族の妬み
グレイラットの殺人 M・W・クレイヴン
ポーもの4作目、グレイラットの置物を置く殺人事件2件は、秘宝を巡る軍隊の汚職が裏に、その主役が明らかになり、仕組み、役割を解き明かす、長いが楽しめる
ナイフをひねれば アンソロジー・ホロビッツ
ゆったりした話の流れ、作家が犯人に、辛辣な批評家と関係者の過去、そして解きほぐされる伏線
処刑台広場の女 マーティン・エドワーズ
謎の女レイチェルと、不可思議な有名人の殺人、記者のジェイコブと奇術師のサラ、そして劫罰協会の悪事への復習、なりかわりや近親憎悪が交錯、暗い1930年代