今回、理化学研究所が主体となり、神戸に研究所を作っている次世代スーパーコンピューターの開発でNECが撤退し、関連して日立も撤退という。残るは富士通のみで当初「スカラー型」(NEC、日立)と「ベクトル型」(富士通)の組合せという新方式で開発しようとしていたのに目算が狂ってしまう。<o:p></o:p>
もともとの計画の意味は世界最速の国産スーパーコンピューターであろう。先端科学技術の一般への波及効果は「レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり(RED MOON RISING : SPUTNIK AND THE HIDDEN RIVALRIES THAT IGNITED THE SPACE AGE) 」(マシュー・ブレジンスキー)にある。ソ連に先を越されたアメリカのあわてぶりが書かれている。そのため科学教育充実のためサイエンス・ミュージアムが発展した。<o:p></o:p>
スーパーコンピューターの活用では 「レッド・オクトーバーを追え!」(The Hunt for Red October) クレイでの音からの解析を思い出す。スーパーコンピューターは空気抵抗などシミュレーション解析に重宝する。車の空気抵抗など模型を作り直しての風洞実験が不要になり、効率的な開発が出来る。また次世代CPUの開発などブレイクスルー技術が発展し、その技術は応用が利く。<o:p></o:p>
しかるに、この計画は2007年にポートアイランドに決定し、建設中とある。事業費は1,150億円だ。(床面積2~3万坪くらいのオフィスビル位の投資に相当) 開発の体制が崩れることで「投資の意義」「開発成果」が想定外になっているのではないか。それなら、中断または体制の再構築を公に明らかにし、プロジェクト存続の確認をするべきだ。まさかビル1棟に相当する投資を軽んじているわけでもあるまい。<o:p></o:p>
また、今まで研究していた研究者はどうなるのか。まさか企業業績のために営業に回すのではあるまいな。例えば、アポロ計画は1970年代半ばに中止されシャトルに代替された。その折、ロケットサイエンティストと言われた大量の科学者(主に弾道計算)が金融工学に回った。今の経済破綻の遠因である。 <o:p></o:p>
企業も、この経済事情の中、先行投資、基礎開発投資、「一品もの」の生産設備負担などの問題が出てきたのであろうが、契約で「違約金」の条項と負担や「企業イメージ、社内モチベーション」の低下のリスクなども充分勘案したのであろうか。企業としても説明責任はあろう。<o:p></o:p>
また、ポートアイランド選定の理由も良く分からない。R&Dこそ都心の周辺部で今後伸びるべきだとおもっている。(例えば大阪市西区や谷町など都心周辺部で工場の再開発やオフィスの転用など)楽しみがないと、研究者・技術者は集まらないし、創造力も伸びないし、情報交換(Informal Communication)も活性化しない。<o:p></o:p>
このままでは日本のハイテクがなまる。大体、企業の矜持がないのか 政府は将来をつくるR&Dには投資費用税額控除や補助など対応するとともに理解と意義をアピールすべきだ。更に都心周辺エリアをR&D特区と指定し、企業立地誘導策をとるのはどうか。国家の技術経営とは、例えて言うと施設リニューアルをしないテーマ・パークは当面儲かるがジリ貧になる。施設の入替を一時にまとめて行うと既存施設からの収益を大きく失い短期的損失が拡大する。効率的な国家経営にはものづくりの継続的な開発・投資・技術蓄積と活性化させるエリア形成(いわゆるクラスター)が不可欠だ。不動産投資を活性化するより企業の投資活動支援が優先されるべきだ。