デフレは「人口の波」、つまりは就業者減少と高齢者の増加が原因が要旨のようだ。<o:p></o:p>
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流行の論拠の羅列であり証明が少ない、言いっぱなしのような著作だ。また、引用文献のリストがないのは訝る。(論文を一度でも書いたら、必須は当然だろう)日本政策投資銀行で講演をこなし、その集約が本著とのこと。人口負荷社会 小峰隆夫( http://pub.ne.jp/n7ohshima/?entry_id=3435667 )からの引用が多い。<o:p></o:p>
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論旨が不明確で、フローが必要だ。目的、仮説、証明、展開などの章立てに欠けている。<o:p></o:p>
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賛成できるのは、新聞に多い変動率ではなく、実数(インフレや季別など調整はあり)の推移で示すととの指摘だ。実数で長期的な変容を示すのは「波」が良く分かる。( http://pub.ne.jp/n7ohshima/?entry_id=3337893 )<o:p></o:p>
理解しかねるのは、経済の3面等価の否定や、高齢者の貯蓄について使い道のオプション説だ。ライフサイクル仮説などご存知なのだろうか( http://en.wikipedia.org/wiki/Franco_Modigliani )信じがたい内容だ。<o:p></o:p>
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構成は、論点が脈絡なく飛んでいる感が強い。切り貼りのような構成では知見の提示と納得は得られない。再構成するなら、「貯蓄」、「貯蓄活用」、「労働力」、「消費変化」にすると良い。整理の観点はGDPというP/Lと今までの金融資産などストックのB/Sだ:<o:p></o:p>
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1.貯蓄について<o:p></o:p>
Y(GDP)=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)+NX(純輸出=輸出―輸入)<o:p></o:p>
これを加工すると( http://en.wikipedia.org/wiki/National_savings )<o:p></o:p>
I=(Y-T-C:収入から消費と税金を引くと民間貯蓄)+(T-G:税金引く予算は政府の黒字(余剰))-NX<o:p></o:p>
I=Sp(民間貯蓄)+Gs(政府余剰)-Nx(純輸出)=Sp-Gd(政府赤字)-NX<o:p></o:p>
Sp=I+Gd+NX となる<o:p></o:p>
つまりは、民間貯蓄は、投資(資本形成=株・債券など)と政府赤字(政府の投資など=国債など)純輸出(海外での消費=貸し)に化ける。これは毎年のP/Lであり、それが摘みあがったのが、民間金融資産、海外資産、政府の累積赤字になる。今までは、民間貯蓄が、銀行を通じて企業の投資となり、海外の輸出超過を支え、政府の赤字を補填)となっていた。例えば、輸出超過はアメリカの消費を支え国外消費になり、政府の赤字はバラマキ投資のエンジンで、どうやら官民、官官接待も誘発し消費となった。しかし、いまや、アメリカの双子の赤字削減、日本の公共投資削減、企業の内部留保利用もあり、民間貯蓄が少なくてもやっていける構造に変化している。貯蓄の今までの使われ方の提示が必要だ。<o:p></o:p>
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2.貯蓄の活用について<o:p></o:p>
民間の貯蓄でなく、金融資産は民間貯蓄ストックのB/Sの一部で1,450兆円( http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/data/data.htm )うち、保険 年金は27%だ。また、住宅ローンでも180兆円あり、純資産は1,200兆円くらいだろう。となると、実際使える、金融資産というのは、案外少なくなる。この他に、不動産(土地・家屋)なども資産だが、生前贈与は税務的にメリットが少ない。住宅の住み替えがうまく行かない(広い一戸建てに高齢者が住まう、狭いマンションに若い子連れが住む)など、資産のマッチングも課題だ。(なお、所有の住宅経済地代もGDPに反映される)高齢者の貯蓄を労働力人口に移転するというのは簡単ではない。例えば、相続税率を高め、生前贈与に向かわせる、高齢者の住宅の買換えを促進するなどの方策が有効だ。また、貯蓄の移転は必ずしも消費につながるかどうかも弾性率の検証が必要だ。例えば、エコポイントは消費を促したが、エコポイント自体が消費には回らなかった。(単なる値引きになった)<o:p></o:p>
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3.労働力と賃金について<o:p></o:p>
人口減少、労働人口減少、高齢者増加が、デフレの要因というが、これは所得の低下と考えるべきだ。<o:p></o:p>
GDPと労働人口Y=Y/W(一人あたりのGDP=給与)*W(労働者数)<o:p></o:p>
Wも減り、給与も低下気味なら、GDPが減少するのが当たり前だ。故に、C(消費)も低下する。また、貯蓄率の低下についてリタイア層が多いとSをマイナスにする年金(貯蓄の消費)がある、そのため I(投資)も低下する。また、年金は労働の給与よりも低いため一人当たりの所得と消費が低下する。そのため、消費が低迷するのも当然だ。また、高齢者はストックが多いため、消費性向は低いことも要因だ。<o:p></o:p>
さらに、会社のフリンジベネフィットの低下もある。かつては、格安の社宅や交際費があり、可処分所得の増加と消費の拡大があった。いまや無く、つまりは実質所得の低下もある。<o:p></o:p>
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4.消費の内容について<o:p></o:p>
デフレの要因は、この低金利のなか、需要不足としか考えられないが、所得の減少があれば当然だろう。更に、GDPにカウントされない付加価値生産と消費がある。消費の捉え方の疑問として小売店販売額だけでは判断できない。<o:p></o:p>
ネット販売は拡大している。更に、オークション、DIYなどはGDPにカウントされないが、消費だ。中古品の活用は新品の売上低下となる。自分で組み立てた家具などは、完成家具との差分がGDPとして隠される。また、時間消費(山歩きなど)のレジャーも楽しみの割りに、自然やアメニティを楽しむためにGDPに現れない。つまりは、「時間消費」は消費に顕在化しないため、消費の内容が変化している。<o:p></o:p>
これに対し、女性の労働(他の方の雇用を追い出さないとすると)働く所得でGDPは増える。女性は家事もあり忙しいため、補完するサービス(ハウスケア、子供の保育など)や外食・中食の機会増大で消費も増える。つまりはGDPに現れなかった家事労働が外部化され、消費として顕在化する。<o:p></o:p>
消費を拡大するなら、顕在化しない労働を外部化するのが一番だろう。今後は、高齢化にともなうサービスの需要は、家族内でのケアで追いつかないため、外部化しサービス消費として拡大するだろう。今は、その端境期ではないか。 <o:p></o:p>
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これに対し、本著作での対策は、世の中の焼き直しが多い。巻末の「船中八策」なども疑問だ。突然。コンパクト・シティが何で出てくるのか。観点のぶれや引用、証明の欠落が多い。<o:p></o:p>
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この本が何故売れるのか分らない<o:p></o:p>
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