海外直接投資(FDI)投資利益の享受の時代に日本は入る「成熟債権国家(クローサーの定義による)」がテーマのようだ。<o:p></o:p>
日本(製造業)の海外進出は「空洞化」ではなく<o:p></o:p>
・国内雇用は、管理部門などが増大する→が、生産現場は縮小する<o:p></o:p>
・技術水準は、生産の分業と国内技術開発の両輪で上昇する→とは言い切れない事例もある<o:p></o:p>
・投資は還流する→株式や貸付など投資内容や連結決算による<o:p></o:p>
と言い切るには難もあるが「空洞化恐怖論」に対向する狙いだろう。<o:p></o:p>
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論理展開はまず空洞化の実際を述べ、次に日本企業の「現地化」を解き、最後に日本の企業拡大方策を述べているが、文章のつながりが悪くいまひとつだ。但し、図表は面白い。きっとハーヴァードなどで書くより、チャートにまとめる方策を学んだのかもしれない。<o:p></o:p>
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1990年に国際企業(クルーグマンの教科書だった)についてTransnational Corp(TNC 国境の概念なし)と Multinatinal Corp(MNC 母国がある)の違いを学んだ。前者は権限委譲と独自技術開発を各国に分散させ、最終的に統合するが、後者は母国があり権限・経営の現地化、製品のライフ・サイクルの転用(古いのを発展途上国に)、技術・生産分業だった。TNCが20年経って増えるかと思ったら、ITなどコア技術は本国が押えて、各国でアレンジするのが多い。むしろ、世界共通というより各国の事情に合わせるため「土着」になってきたようにも思える。<o:p></o:p>
日本の知恵を「日本入ってる」として展開するのは面白い発想だ。とくに日本の得意な「摺り合わせ(インテグラル型)」は、「組合せ(モジュラー型)」に押されているが、複雑な製品まとめには不可欠な技術だ。そのかわり、日本独特の「逸品、人間国宝」志向の「ものに神様が宿る」は合理的になるべきだ。壊れず、安くメンテナンスできるものが良い。昔のカメラもフィルムが使われなくなると趣味のものでしかない。<o:p></o:p>
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競争力もなく、海外展開もない企業が「ゆでがえる」、その対極が「登龍企業(現地化)」とは面白い。また、日本の潜在的強みとして「もったいない」、「だいじょうぶ(安心・安全)」、「(納期)ぴったり」というのも面白い。確かに海外に生産拠点を移すのは、人件費が有利なことに加え、アジア・マーケットの中での生産・消費に有利な立地戦略だ。となると、日本の優位性は何か、その展開はどうか、人的資源はどうか、教育と研究開発はどうか、海外とのネットワーク形成はどうかとなる。<o:p></o:p>
海外と簡単に言うが、現地に溶け込む、生活基盤を作り、日本の家族を呼び寄せる(1,000人いると日本料理店ができるというのはわかる)など結構大変だ。<o:p></o:p>
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提案として下請け・系列から水平的クラスターへというのはなかなか課題が多いのでは。クラスターとネットワークは自立的に生まれる側面もあり、高度成長の国家プロジェクトから、成熟に向かい企業の成長にまかす時期に起こるからだ。また、労働者の質、教育、研究機関の立地なども関与する。<o:p></o:p>
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楽しく読める痛快な著作だ<o:p></o:p>
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