アジア嫌いだが、都市計画学会関西支部の調査に参加。大学訪問、教授によるガイド、コロンボ開発局訪問など真面目な行事と見学・観光で盛りだくさん。しかも、タイ航空だがバンコクで5,6時間のトランジットで1日がつぶれる。現地は5日間だが、到着は午前12時過ぎ、出発も午前1時で機内泊とハードそのもの。しかも、バンコクからは狭い飛行機の席。
インドの南端の東に浮かぶ島で、一時は海峡もつながっていたとの情報もある。九州より大きく、北海道より小さい。人口2千万人。雨が南部に集中し、北部は乾燥、水利が悪く溜池が多い。ポルトガル侵略(occupation),オランダ、イギリスの植民地(domination)から独立後、2009年LTTEとの内戦が終結。
スリランカのデータ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AB
http://jica-ri.jica.go.jp/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jbic/report/paper/pdf/rp24_j02.pdf
http://en.wikipedia.org/wiki/Economy_of_Sri_Lanka#Macro-economic_trend
民主社会主義(社会民主主義)国家であり、土地は政府の所有、土地収用権(クリアランスの実施もブルドーザーでできる)
水利権も国家、多期作できる気候だがも水がない、肥料・農薬で農地が荒れる。
一般企業はPVCと断ってある、対するのは国営、公営で会長がトップになる
主要施設の周りにはAK47(カラシニコフ)を持った兵隊睨みをきかす、親切だが違和感が
コロンボ港は軍施設であり撮影禁止(ホテルの窓には「撮影禁止、開けるな、撃たれる、逮捕される」とあった)
以下の内容は、University of Peradeniya でのプレゼンに基づきます
1.経済諸表の内容と解説
①GDPと産業
GDPは7兆円で日本の2%以下、一人当たりGDPは33万円/人、購買力平価で93万円(日本の1/4)
Real GDP Growth ≒7%、inflation≒7% →中国と同じ水準、10年で倍になる、高度成長期
貿易赤字(NX)がGDPの▲20.8%相当で問題
貯蓄(S)が20%(国家は25.7%、なお11.2%の財政赤字(脚注)だが、海外投資の増分反映か)、投資(I)は29.6%、FDIは1,400億円(GDPの2%)で、ミャンマーの1/15で目標の1/4と低調、開放政策を行うが反応が鈍い
産業構成は農業・工業・サービスで11%,31%,:58% 意外にサービスが多い、日本の80年頃と同じ
②人口
人口2千万人、世帯人数3.9人、生産年齢人口が68%で人口ボーナス状態だが被扶養者率49.4%と高く、都市人口が18%と低いのが課題
教育年数が10年と他のアジアに比して高い
貧富の格差、ジニ係数を調べると 33(日本25 国連調査)、見た感じはもっと高い
③環境
一人当たり二酸化排出量は少ない(0.6t)だが、コロンボ市街の汚染を考えると局所では当てはまらないのでは
2.経済の問題点
①教育しても海外に人材流出,、低技能労働者は出稼ぎ、真ん中だけ、雇用優先の政策
②国内貯蓄と投資の改善(ファイナンスによる消費者金融も多い)、現在は国家が赤字で後押しか
③製造業主導の経済発展に→現在は繊維産業主体、Support Industries が欠ける
④貿易赤字の解消
⑤国際ネットワークと生産による経済の複合化
⑥都市化の推進
3.国土開発の概要
①都市人口は30%に近づいている
②国土区分をMunisipal, Urban, Town, Village の4区分としていたが、後者2つがまとまり3区分に
③開発はUrban Development Authorithy (Ministry of Defence and Urban Development の下部団体 http://en.wikipedia.org/wiki/Ministry_of_Defence_and_Urban_Development )
④英国植民地時代に下水整備し衛生化(Commonwealthだろうか)、英国技官の教えもあった。
⑤世界遺産は5都市
3.国土開発の課題
①開発はUDAが管轄し主導
②コロンボは渋滞が多いが道路インフラを整備予定
③都市人口は拡大の見込み、都市の郊外住宅開発、都心にある行政機能の郊外移転を行っている
4.まとめ
スリランカでは日本の60年代(G国家主導の重点地域・重工業開発、過疎化密格差是正)から70年代(K高度成長 過疎化密の更なる進行、ネットワーク化、公害対策)が交錯している。さらに不動産開発などは80年代の4全総(C 国際化 集中の是認)に近い、開発ブーム(バブル)も聞かれた。( http://www.kokudokeikaku.go.jp/document_archives/ayumi/21.pdf )
つまりは下記のGとKが同時進行している。これは、国家が成長しつつ内戦が終了し、工業化移転が中途半端な中、ホテルやオフィスというCの段階の会社経済的開発も進行している。
青木昌彦教授による経済成長の段階分類
①A 農業のマルサス的局面
②M 農業から工業への転移期
③G AからMへの政府の開発国家的役割、高い出生率
④K クズネッツ効果 労働移転による所得の急上昇
⑤C 会社経済Corporate 改善効果
⑥PD ポスト人口動態変化、現代的成長局面での人口的転移(Demographic Transition)
GDP分析からは国家が経済の主導、収入が多い(開発利益や所有者利益か)のでは、民間経済化(民営化)を進める
結論と提言
①マクロの産業育成政策の欠如とマイクロのプロジェクト進行のアンバランス
②政府強権による地権者追い出しなど政府(Public)・企業(Private)・コミュニティ(Community)の協議体制が欠如、P.P.Partnership の公平・公正・情報開示も遅れている
③赤字財政の投資から公共から民間への「民営化」推進、コミュニティの形成と合意形成の法制化
④公共によるインフラ整備の推進(高速道路、鉄道等)と重点産業の決定と投資、誘致(多国籍企業)によるクラスター(産業集積の育成)
⑤クラスター形成に向けた優秀人材の帰国に向けた住環境や空港、ITの整備
⑥郊外開発よりコンパクト・シティの方策検討(日本の反省から)
脚注
S-I=Nx+Gd
S:貯蓄、I:投資、Nx:貿易黒字、Gd:財政赤字(G-T)
I=S-Nx-Gd 29.6%=20.0%-(-20.8%)-Gd→Gd=11.2%
Nx:は赤字でマイナス
Gd:は11.2%の赤字
クラスター化産業は、スパイスなどを生かした食料・医療、スパ・ツーリズムなどが考えられる。治安、国交などの課題もあり、多国籍企業の誘致は難航しているのだろうか
その他 街中事情
・立って、座って、道路でぼんやりと長く過ごす男が多い
・信号が少なく、交差点は混乱とクラクションのなか解決
・横断歩道では、ドライバーの目を見てから一歩踏み出し、渡り始めると止まる(5分待っても途切れない)
・道路を横断する綱にひらひらが付いている、青が与党、緑が野党、赤が共産党の集会を表す、白は葬式だそうだ
日本の60年代初頭と80年代後半が混じっているように感じた
(1$→100円で計算)