今回は久々に経済の話題です。「金融権力」 本山美彦著読みました。京都大学名誉教授で、巻末のサブプライム対策推移と関連文献は力作です。本の紹介に「金融が本来の役割(仲介機能)を離れてリスク転売ビジネス」とありますが、上手い言い方です。内容はケインジアンの観点で、マネタリズムを批判し、搾取する金融を嫌悪しています。マクロ経済にある程度詳しくないと楽しめないかもしれませんが快刀乱麻を切るという痛快な分析と歴史と経済背景の浮き彫りが愉快です。久々に経済で楽しめましたので本山先生の他の著作も読んでみようと思っています。<o:p></o:p>
面白い観点として、クオンツ運用(デリバティブ等)は、実際のばらつきの度合いと計算の鞘である「格差」で収益を上げていたが普及に伴い、「格差」が縮小した。(同じような商品がでてきて競争があり、大きな鞘がとれなくなった。逆にデリバティブが始まった当初、外国投資銀行は実際以上のプレミアムをのせて大儲けをしていましたね)<o:p></o:p>
次に、フィリップス曲線(インフレと雇用のトレードオフ)は短期的にはあるが、長期的には学習効果によって妥当とならないというのは初めて知りました。長期フィリップス曲線のみが経済の基本と読んだ覚えもあるのですが。。。。<o:p></o:p>
さらに今回のサブプライム問題の対応がECB(ヨーロッパ:ユーロ)により当初始まり、Fed(アメリカ:ドル)の対応が遅れたのは「ドル神話の終焉」と鮮やかに論説しています。<o:p></o:p>
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当方も、最近破綻が見られる、不動産証券化についてまとめてみました。<o:p></o:p>
まずは金利の低いのが、不動産資金流入でしょう(A)。次に不動産ファンドによる売買で土地保有が短期になり(B)、次に資産のオフバランス化(見かけの利回りが良くなったり、益出しができる)が進行しています。といってもアメリカ型でヨーロッパの企業は未だ自社ビルが多いのですが。(C) そして不動産の小口化・証券化により幅の広い資金到達が直接金融として発達を見ています。(D,E)ここで、直接金融(ノンリコースローンを含む)はリスクが高いため、プレミアムがつき、金利は上がります。大手不動産会社なら、間接金融か起債のほうがはるかに低利でしょう。つまりは直接金融なので持っている資産の価値・収益力が配当と株価につながります。会社の信用力ではありません。(F)そのため評価や格付けが必要となり、不動産物件としてのリューデリジェンスや証券としてのプロが行う格付け(今回、サブプライムでも問題となりました格付け会社とは何かを考えますが)によります。(G)<o:p></o:p>
それに金融工学が絡み(H)、オプションなど加わりますと(I)更にややこしい証券の出来上がりです。<o:p></o:p>
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ここで問題なのは、不動産証券化とは不動産の「束」であり、持っている案件も「区分持分」、「共有持分」が多く、さらに複合用途のビルも多くあります。逆に言えば、共同ビルへの投資としては最適な手法かもしれません(機関投資家は現物投資ならパートナーリスクや運営の単純化のため単純所有権を志向するため)。つまりは、複雑な所有権と用途のビルが多いといえます。それらが束になっているので、色々な材料が混ぜられた餃子の餡のようなものです。証券として一体化は皮によって包まれています。この前の中国餃子事件ではないですが、どのようなものが入っているか、例えばビルのパートナーのデフォルトで支障が出ないかなどの課題はこれからも出てくると思います。これに比べ、単純所有のビルは「ステーキ」ですから、筋が多いとか、脂がきついとか、実は脂と赤身をつないだ合成肉だったと買いいうのはあるでしょうが、出自は安心です。ただ、資金が大きく、機関投資家や企業自家用不動産が多くなり投資用には少ないのが実態です。似たようなものにローン債券をCOD(債務担保証券)にして、オプションをかましたものが例のサブプライムです。<o:p></o:p>
不動産証券化も「餃子」状態で、これから賃料つまりは価値の低下が見られる中、慎重に判断すべき、またはファンドを選別するべきときでしょう。力のあるファンドはこれからが仕込みのときかも知れません。なお、大阪では梅田の北ヤードがスケジュールを見直しているようです。大規模プロジェクトは必ず遅れるという論文もあります。(Implementing Urban Waterfront Redevelopment: Doctoral Thesis David L.A. Gordon, Harvard GSD)<o:p></o:p>
景観はちょっと置いておいて次回はこれでも。
(今回 どうしても表が貼りつきません。どなたか教えてください。)