2001年発刊の名作。今から見ると都市拡大の骨格となる緑地計画という観点が、コンパクト・シティの時代にはなじまない。また、Boston Big Digも完成したなど隔世の感がある。
なお、当方が留学時に Past Future:Two Centuries of Imaging Boston (Harvard Univ. GSD) を読んで未だに手元にあるが、本著作と一緒に見ると面白い。
また、産業革命と アメニティ( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3 )の関係からも緑地や保存の位置付けが欲しい。
知見は:
・主題:①都市更新と緑地ストックの承継、②都市空間の拡大と緑地、③巨大都市圏の成長管理
・緑地確保の考え方
①ストックの緑地の転化:Garden, Common, Boulevard, 日本 神社仏閣の境内地、城址の公園化等
②パーク・システム:公園と幅広街路を一つのシステムと見なし、緑地を軸にした都市基盤形成
③郊外の田園都市構想
・日本の公園緑地の問題点
①思想の欠如:1919年都市計画法、風致地区があるのみ→効用があった
②法体系の立ち遅れ:景勝・旧跡地、高外除外地、帝都復興計画(緑地は国が買収)、土地区画整理法の3%公園、1940年都市計画法改正で緑地の定義、敗戦後の政教分離で社寺への移管(明治の上地令と1889年下戻の歴史も)1956年都市公園法、1919年史跡名勝天然記念物保存法、1931年国立公園法
③財源の欠落:受益地の負担制度がない→アメリカでは多く、いまでは都市内の収入と教育整備などの格差の原因ともなり見直しが進んでいる
参考:明治神宮の林相 ( https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01139/contents/004.htm )
・アメリカでの事例
・最初の公園墓地はMt. Auburn Cemetery 1831年
・ボストンのエメラルド・ネックレスは事業費が課題だった
・セントラル・パークでは受益者負担制度と意思決定機関、事業施工主体、事業費査定機関
・パーク・ウエイの建設→ロバート・モーゼス⇔ジェーン・ジエイコブス
・郊外都市:ラドバーンは田園都市の緑地抜き
・パーク・システム発展の理由
①市街地拡大に新しい計画論
②経済合理性とアメニティ、資産価値の上昇
③都市拡大の計画的誘導・制御
イギリスでの事例
・田園都市:ハワード
・近隣住区理論
最後に宇沢弘文の「社会的共通資本」との共通性を述べ、①都市の成長管理、②緑地システムの創出、緑地と開発の財源確保で結んでいる。但し、整備財源の捻出手法については、都市内の特定地区のみの整備が進行し格差が拡大などの弊害が指摘されている時代だ。( 教育整備格差 http://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/e/c1489a9d4463b14f2ee6238c9dc67df8 )
ちょっと時代が変化しているが、事例として学ぶのには好適