現在「破獄」を読んでいる途中だけど、ふと気になって「脱獄の天才」(「史実を追う旅」文春文庫所収)を開いてびっくりしゃっくり!
そこで吉村昭は「破獄」の舞台裏を生々しく綴っているのだ。
文献の渉猟や関係者への取材、これほど徹底したものだったとは予想を上回る。
吉村作品ベスト5入り確実かもね♪
まさに史実の重み。
それに対し、これほど謙虚に向き合い、“過去”を慈しんだ作家はいないだろう。
読者は間 . . . 本文を読む
(わたしの新潮文庫「高熱隧道」平成26年版、第60刷。ポストイットがたくさんはさんである)
■吉村昭「高熱隧道」新潮文庫(昭和42年初版/1967)
ひと口にいうと、パニック映画に勝るとも劣らない、すごい迫力。むろん映画ばかりでなく、後の小説にも影響を与えていると思われる。吉村昭の名高い代表作といっていいだろう。(ほかにも“代表作”がいくつもあるけど)。
「高熱隧道」とは、こんな小説 . . . 本文を読む
昨日立ち寄ったBOOK OFFで吉村さんと城山三郎さんの本を合計11冊買った。そのうちの6冊。
完全に吉村ワールドにハマっている。
お亡くなりになったのが2006年(平成18)なので、もっと早くに読んでしかるべきだった。
吉村さん亡くなったねぇ、と友人がいったとき、わたしは「戦艦武蔵」しか知らなかった。
時間は取り返せないので、悔やまれるといえば悔やまれる。
B級品は消えていくだろうが、A級品は . . . 本文を読む
■吉村昭「赤い人」講談社文庫(1984年刊) ※原本は1977年筑摩書房
変てこなタイトルだなあと思いながら、書店の棚を前にして数ページ読みはじめたら止まらなくなり、結局買って帰った。
赤い人というのは囚人のこと。朱色の獄衣を着せられているため、作者がそう呼ぶことにしたのだろう。
こういう著作を秀作といっていいのかどうか、迷わざるをえないが、充実した、緻密な小説である。
小説というより、味わい . . . 本文を読む
■吉村昭「戦史の証言者たち」文春文庫(1995年刊 あとがきには昭和56年夏と付されている)
うーむ、まいったなあ。こういう内容の本を読んだあとで、何をどういったらいいのか、丸一日半、考え込んでしまった。
重たい現実。
こんな体験をしたあとで、人間は生きて、平凡な生活を黙々と続けていけるものなのだ。
「戦史の証言者たち」はつぎの4章から成り立っている。
1.戦艦武蔵の進水
2.山本連合艦隊司令 . . . 本文を読む
■吉村昭「生麦事件」新潮文庫(平成14年刊2002 単行本は1998年刊)
上巻:312ページ
下巻:307ページ(あとがきをふくむ)
どうでもいいことだが、吉村昭さんの“歴史小説”を読むのは、わたし的にはじつははじめて。遅れてきた一読者なのだ。
そのわたしがこういう作品を何と呼ぶべきか、少し迷っている。
小説というにはあまりに歴史に忠実、歴史というには、小説的な場面にあふれている。
タイトルは . . . 本文を読む
■吉村昭「海の史劇」新潮文庫(昭和56=1981年刊)
大げさなタイトルだなあ・・・と笑われるかもしれないが、このくらいの表現を使わないと、わたしの感銘が伝わらない。
これまで歴史書では日露戦争のことを読んでいる。しかし、このノンフィクションは別次元のもの。単に力作というにはとどまらない。痛切な“鎮魂の書”である。日本側の資料ばかりでなく、ロシア側の資料を活用している。それによって、日露戦争の核 . . . 本文を読む
■吉村昭「破船」新潮文庫(1985年刊)
インパクトのある設定で、しかも推理小説的な味つけがなされている。読者の興味をはぐらかさず、結末まで引っ張ってゆく。
作品はいわば二部構成となっていて、因果論的である。結果を知ってしまうと、「なあんだ、そこへストーリーを持っていくのか」と、正直鼻じらむ。
あえて作り話にし、ドラマチックな展開としたところに無理がある・・・と思われた。
しかし一方、姿勢正 . . . 本文を読む
(まったく同じにしか見えないが、左は改版で文字の大きさが違う。)
はじめに結論を述べておくと、この「漂流」はノンフィクション・ノベルの秀作。夢中になって読ませていただいた。
吉村昭さんの作品は、新潮文庫、文春文庫、講談社文庫等に収録され、現在も多くのファンを擁している。よくいわれるように“記録文学”を確立し、集大成した小説家である。
■吉村昭:1927年(昭和2年)~2006年(平成 . . . 本文を読む