二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

「破獄」を読んでいる途中

2021年12月09日 | 吉村昭
現在「破獄」を読んでいる途中だけど、ふと気になって「脱獄の天才」(「史実を追う旅」文春文庫所収)を開いてびっくりしゃっくり!  そこで吉村昭は「破獄」の舞台裏を生々しく綴っているのだ。 文献の渉猟や関係者への取材、これほど徹底したものだったとは予想を上回る。 吉村作品ベスト5入り確実かもね♪ まさに史実の重み。 それに対し、これほど謙虚に向き合い、“過去”を慈しんだ作家はいないだろう。 読者は間 . . . 本文を読む
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突き抜けていく想像力が作り出す迫力 ~吉村昭「高熱隧道」を読む

2021年12月06日 | 吉村昭
   (わたしの新潮文庫「高熱隧道」平成26年版、第60刷。ポストイットがたくさんはさんである) ■吉村昭「高熱隧道」新潮文庫(昭和42年初版/1967) ひと口にいうと、パニック映画に勝るとも劣らない、すごい迫力。むろん映画ばかりでなく、後の小説にも影響を与えていると思われる。吉村昭の名高い代表作といっていいだろう。(ほかにも“代表作”がいくつもあるけど)。 「高熱隧道」とは、こんな小説 . . . 本文を読む
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吉村昭ワールドへ

2021年12月03日 | 吉村昭
昨日立ち寄ったBOOK OFFで吉村さんと城山三郎さんの本を合計11冊買った。そのうちの6冊。 完全に吉村ワールドにハマっている。 お亡くなりになったのが2006年(平成18)なので、もっと早くに読んでしかるべきだった。 吉村さん亡くなったねぇ、と友人がいったとき、わたしは「戦艦武蔵」しか知らなかった。 時間は取り返せないので、悔やまれるといえば悔やまれる。 B級品は消えていくだろうが、A級品は . . . 本文を読む
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驚嘆すべき執念の一冊 ~吉村昭「赤い人」を読む

2021年12月01日 | 吉村昭
■吉村昭「赤い人」講談社文庫(1984年刊) ※原本は1977年筑摩書房 変てこなタイトルだなあと思いながら、書店の棚を前にして数ページ読みはじめたら止まらなくなり、結局買って帰った。 赤い人というのは囚人のこと。朱色の獄衣を着せられているため、作者がそう呼ぶことにしたのだろう。 こういう著作を秀作といっていいのかどうか、迷わざるをえないが、充実した、緻密な小説である。 小説というより、味わい . . . 本文を読む
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極限状況から生還した男たちの証言

2021年11月20日 | 吉村昭
■吉村昭「戦史の証言者たち」文春文庫(1995年刊 あとがきには昭和56年夏と付されている) うーむ、まいったなあ。こういう内容の本を読んだあとで、何をどういったらいいのか、丸一日半、考え込んでしまった。 重たい現実。 こんな体験をしたあとで、人間は生きて、平凡な生活を黙々と続けていけるものなのだ。 「戦史の証言者たち」はつぎの4章から成り立っている。 1.戦艦武蔵の進水 2.山本連合艦隊司令 . . . 本文を読む
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吉村昭の歴史再現力を考察する ~「生麦事件」を堪能

2021年11月13日 | 吉村昭
■吉村昭「生麦事件」新潮文庫(平成14年刊2002 単行本は1998年刊) 上巻:312ページ 下巻:307ページ(あとがきをふくむ) どうでもいいことだが、吉村昭さんの“歴史小説”を読むのは、わたし的にはじつははじめて。遅れてきた一読者なのだ。 そのわたしがこういう作品を何と呼ぶべきか、少し迷っている。 小説というにはあまりに歴史に忠実、歴史というには、小説的な場面にあふれている。 タイトルは . . . 本文を読む
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吉村昭「海の史劇」に胸の震えが止まらない

2021年11月05日 | 吉村昭
■吉村昭「海の史劇」新潮文庫(昭和56=1981年刊) 大げさなタイトルだなあ・・・と笑われるかもしれないが、このくらいの表現を使わないと、わたしの感銘が伝わらない。 これまで歴史書では日露戦争のことを読んでいる。しかし、このノンフィクションは別次元のもの。単に力作というにはとどまらない。痛切な“鎮魂の書”である。日本側の資料ばかりでなく、ロシア側の資料を活用している。それによって、日露戦争の核 . . . 本文を読む
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吉村昭の傑出したリアリズム ~「破船」と「ポーツマスの旗」を読む

2021年10月25日 | 吉村昭
■吉村昭「破船」新潮文庫(1985年刊) インパクトのある設定で、しかも推理小説的な味つけがなされている。読者の興味をはぐらかさず、結末まで引っ張ってゆく。 作品はいわば二部構成となっていて、因果論的である。結果を知ってしまうと、「なあんだ、そこへストーリーを持っていくのか」と、正直鼻じらむ。 あえて作り話にし、ドラマチックな展開としたところに無理がある・・・と思われた。 しかし一方、姿勢正 . . . 本文を読む
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漂流記のおもしろさを堪能する ~吉村昭「漂流」について

2021年10月13日 | 吉村昭
   (まったく同じにしか見えないが、左は改版で文字の大きさが違う。) はじめに結論を述べておくと、この「漂流」はノンフィクション・ノベルの秀作。夢中になって読ませていただいた。 吉村昭さんの作品は、新潮文庫、文春文庫、講談社文庫等に収録され、現在も多くのファンを擁している。よくいわれるように“記録文学”を確立し、集大成した小説家である。 ■吉村昭:1927年(昭和2年)~2006年(平成 . . . 本文を読む
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