二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

孤独な俳人の晩年に寄り添う ~吉村昭「海も暮れきる」を読む

2021年12月15日 | 吉村昭
   (庭にころがっていた金柑の実を置いて撮影) 沈潜する慈愛のまなざしというべきものが、この作品を背後から照らしている。吉村昭は尾崎放哉と同じく肺結核に苦しんだのだ。若き日のそうした体験が、「海も暮れきる」というこの作品を特別なものとしている。 近所に住む漁師の妻、シゲの存在が大きく、放哉は彼女に救われた。彼女がいなければ、この小説も成り立たなかったろう。彼女が死んでゆく放哉の看取りをした . . . 本文を読む
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