二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

写真熱

2013年07月24日 | Blog & Photo
このところ、本屋へいくたびに「買おうか、どうしよう?」と迷っている写真集がある。
それが、百々新(どど・あらた)さんの「対岸」。

百々新公式サイト
http://dodoarata.web.fc2.com/

なぜ迷っているかというと、高額(5000円+税)だからです(笑)。
表紙の一枚をはじめ、思わず「凄い!」とつぶやいてしまう人物スナップが何枚かふくまれている。
この写真集は第38回木村伊兵衛賞を受賞しているので、わたしは「アサヒカメラ」2012年3月号で、掲載された作品に出会っている。
「なんでまた、カスピ海周辺諸国なんだろう?」
そのときはあまりピンとこなかった。

百々新さんは新世代のドキュメンタリストなのである。たしかに、パリやニューヨークの写真は、氾濫しているといっていいくらいWeb上にも存在していて、見飽きているといっていいかもしれない。
ここにある写真は、いわゆるジャーナリスティックなまなざしによって撮影されたものではない。百々さん固有の、とてもパーソナルな視点が一貫していて、クリエイティヴな世界を切り開くことに成功している。だから、見ていてドキドキする。
中途半端なヒューマニストではなく、冷徹なリアリストのまなざしが、うっかりしていると見逃してしまいそうな生活の深層を、とてもフレキシブルに暴きだしている。
どんな機材で撮られたものかわからないが、彼のカメラアイが、そういう深層にとどいているということである。

昨日タイヤを2本交換したので、お小遣いでポンと買うには少々ムリがあるのだけれど、手許に置いておこうかな? 経験的にいって、こういう写真集を、あとになって手に入れるのはしばしば困難であったりする(^^;)


世界には物語が充ち満ちている。一瞬にして切り取られた写真の中に、重層的・多面的なものとしての世界が、写しとめられている。
一枚の写真、あるいは一冊の写真集は「読み解かれるべきもの」「読み解くに値するもの」「読み解くには値しないかもしれないもの」として、読者の前に投げ出される。

あー、人間って、こういう存在であったのか!
エネルギーをたくわえて、何度となくチャレンジしたくなる。そういう被写体をもとめて、
短い・・・あるいは長い旅に出る。流浪し、立ち止まり、また歩き出し、出会いの瞬間に官能を研ぎすます。写真家の流浪は、まなざしの流浪ということになるのだろう。







昨日の猛暑に較べ、今日は梅雨に逆もどりしたような涼しさ。未明から小雨がパラつき、分厚い雨雲がたれ込めている。こういう日は、モーツァルトを聴きながら、雑誌や本を読んですごそう。充電期間というのが、フォトグラファーにも必要だろうから。



※写真はいずれも2005年に撮影した「東京スナップ2005」から。
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