二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

2012年ベストセレクション第2回「街撮り/街角」編

2012年12月13日 | Blog & Photo
<2F夢遊人>アルバム「足利との対話」3.24


今年もいろいろな出来事があった。
とくに猛暑が9月に入ってもつづいたので、いくらか調子をくずされ、2ヶ月あまり、ほとんど写真を撮っていなかった。とはいえ、カメラを手にしたわたしの「昭和ロマン」探索のショート・トリップを、とぎれとぎれに続けることができたことを、だれかに感謝しなければならないだろう。
運がいい、悪いといういいかたがある。運を味方につけないと、「いい写真」が撮れない。
あるいは「運命はみずから切り開くもの」という警句がある。それも一理あるけれど、なかなかそうは問屋が卸さなくて、四苦八苦したりしている。
しかし、傑作・佳作ばかりを集めたらアルバムがおもしろいかというと、どうもそんなに、ことは単純ではないだろう。つなぎの3枚があって、4枚目が生きて、眼に飛び込んでくる。
そういう経験を、これまでずいぶんしている。

わたしは絶景が撮りたいのではない。以前、一般公募作品を集めた「日本の絶景100選」という本が数年間にわたって刊行されていた。 何年版だったか忘れたけれど、わたしも一冊もっていて、たぶんいまでも書庫の奥でほこりをかぶっている。

写真は小品の集合体だというのがわたしの持論。だから、こうしてベストセレクションで数点を抜き出しても、効果はあまりない。たしかに一点もののインパクトはあるが、写真はJAZZでいうスィングだし、ウェーブなので、写真集を通して見ていただくのが、いちばんいい(^_^)/~

トップの「2F夢遊人」はさっき見返していて、ふと眼についた一枚。
こんな写真を撮ったことを忘れていたから、ひどく印象的におもわれた。
「ああ、こんな街角で立ち止まり、写真を撮ったのだ!」
大きなタオルケットが物干しにかかっている。そして、ハンガーにぶらさがったたくさんのタオル。いくらか色が褪めかけたピンクの背景には、へたな字で「駐車場有→」と書かれている。そしてよく見ると、→(矢印)にはガムテープが。

また、濃紺のMiniBikeがいい位置に駐車している。これは人の無意識が作り出した景観である。濃厚にというほどではないが、生活感がにおっている。そのさきに、おそらく一人の女性の気配がある。
電気のメーターBOXやエアコンの無機的な存在感。
夜がふけると、きっと粋人たちが、あるいは単なる酔っぱらいどもが集まってくるのだろう。
2Fが夢遊人というスナックだとしても、1Fはどうなっていただろう?
もう思い出せないが、様々な想像をかきたてる。



<佐野市 松葉食堂>アルバム「松葉食堂までの旅」7.6
二枚目は以前日記で取り上げている。
http://mixi.jp/view_diary.pl?via=content_link&owner_id=4279073&id=1856892974

この日はほんとうにすばらしい、記憶に残るカメラ散策だった。
わたしが出かけたあと、マイミクこだくみさんが佐野市へ出かけ、同じ松葉食堂を撮影されている。魚屋さん、豆腐屋さん、荒物屋さん、お風呂屋さんといった昔ながらの店舗は滅亡の危機に瀕している。
こういった大衆食堂も、代かぎりで、後継者はいない。

ここには、町の中心の商店街が元気だったころの生活スタイルが、そのままいわば「冷凍保存」されている。定食、ラーメン、モツ煮込、カレーライス、カツ丼は大衆食堂の定番メニュー。それにうなぎ。ファミレス文化やアメリカ流のファストフード店がはやりはじめる前、昭和40年代50年代には、こういった食堂は繁華街のいたるところにあってそれなりに賑わっていた。
右端にスパーカブがあるが、むろんこれで出前もしている。
ファミレスやコンビニに押されて、いまではさがし当てるのが一苦労。廃屋なのか、現役なのか、判然としない食堂もある。
この佇まいやデザインが時代の風韻をしのばせる。



<雨にうたれる赤い花>アルバム「雨の下仁田」5.25

最後にもう一枚、おまけでピックアップしておこう。
花の名はわからないけれど、この写真と、水色の電動アシスト自転車に傘がさしかけてある写真が、「雨の下仁田」というアルバムの核になっている。

わたしは植物園のようなところへいって撮るのではなく、街の中にある花を撮るのが好き。
「あ、いいな。いいねえ。出迎えてくれたんだね」という挨拶をこめて、よく撮っている。
あまりに機能的で、明るく清潔なショッピングモールのような場所では、こういう「意外な出会い」はまず存在しない。
すみずみまで計算されつくした人工的な空間はつまらない・・・と、昭和のおじさんたるMikenekoは考える。
「アナログ、いいじゃない。運転席のメーターも、腕時計もすべてアナログ。アナログは曖昧だけれど、ぬくもりがあるよ。人から人へとつたわってゆくぬくもりがね」

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