古本屋のゾッキ本のワゴンにあったので、買ってきた。椎名誠選・日本ペンクラブ編のアンソロジーで、本と読書をめぐるエッセイ・小説が21編と、目黒考二、鏡明、椎名誠の鼎談が収められている。昭和54(1979)年の刊行だから、もうかれこれ29年前の古い本である。執筆陣は山口瞳にはじまり、田辺聖子、植草甚一、大岡昇平、井上ひさし、小林秀雄、開高健など錚々たるメンバー。ほかに、江戸川乱歩、野坂昭如、夢野久作、澁澤龍彦の顔もみえる。
もっともこの本のために書かれた原稿ではなく、選者らがあつめてきたアンソロジーである。まず驚かされたのは山口さんの「活字中毒者の一日」。彼は新聞を6紙とっている。また多量の郵便物が洪水のように押し寄せてくる。週刊誌が15~6種。雑誌が30種だが、ほかに出版関係のPR誌もある。将棋がお好きなので、これが5誌。新刊の書籍が1ヶ月30~40冊。新聞はトイレでも読むそうである。
「私は、朝起きてから、夜の眠りにいたるまで、何かを読んでいないときはない。私の目が活字から離れることがない」
いやはや、なんともすさまじい一日ではないか。わたしのように、平均すれば、一日せいぜい2~3時間の読書など、ものの数ではないということになる。ホテルにこもらないと、執筆にあてる時間が捻出できない。このころ、山口瞳は「売れっ子」だったのだな~。
また、山口さんはつぎように書いている。
有吉佐和子:1日8時間の読書
井上ひさし:古本屋への支払いが1ヶ月200万円
五木寛之:1日4~5冊の本を読み、浴室でも読む
話が多少オーバーかも知れないが、まるっきりのデタラメとは思えない。敬服するより、ここまできたらもう立派な「奇人変人」だな~、とあきれてしまう。
また山口さんは、活字中毒者と読書家を、つぎのように区別している。
「むろん、読書とは、こういうものではない。読書とは、一般に固いものを読む、古典を読む、研究書を読む、専門書を読む、あるいは、小説でも、一人の作家をまとめて読む、ということになろうか。私における活字は、ここからは、ほど遠い。勉強からも仕事からも遠くなる」
う~ん、卓見である。
「活字中毒者」なることばは、もしかしたら、山口瞳の造語かな・・・。
いちばんえらそうに読書について語っているのは、例によって小林秀雄。田辺聖子さんは、女性らしく、情緒的に、お気に入りの本への愛情について真情を吐露しておられる。読み逃せないのは開高健の「古書商・頑冥堂主人」である。エッセイとも小説ともつかない小品だが、古書業界の裏側に潜入して、売買の現場をのぞかせてくれるあたり、信頼のおけるドキュメンタリーの味わいがある。
こういった有名人ばかりを集めたアンソロジーを星印で評価しても滑稽なだけだが、まあ、恒例ということで、お許しいただこう(笑)。
日本ペンクラブ編・椎名誠選「素敵な活字中毒者」集英社文庫>☆☆☆★
もっともこの本のために書かれた原稿ではなく、選者らがあつめてきたアンソロジーである。まず驚かされたのは山口さんの「活字中毒者の一日」。彼は新聞を6紙とっている。また多量の郵便物が洪水のように押し寄せてくる。週刊誌が15~6種。雑誌が30種だが、ほかに出版関係のPR誌もある。将棋がお好きなので、これが5誌。新刊の書籍が1ヶ月30~40冊。新聞はトイレでも読むそうである。
「私は、朝起きてから、夜の眠りにいたるまで、何かを読んでいないときはない。私の目が活字から離れることがない」
いやはや、なんともすさまじい一日ではないか。わたしのように、平均すれば、一日せいぜい2~3時間の読書など、ものの数ではないということになる。ホテルにこもらないと、執筆にあてる時間が捻出できない。このころ、山口瞳は「売れっ子」だったのだな~。
また、山口さんはつぎように書いている。
有吉佐和子:1日8時間の読書
井上ひさし:古本屋への支払いが1ヶ月200万円
五木寛之:1日4~5冊の本を読み、浴室でも読む
話が多少オーバーかも知れないが、まるっきりのデタラメとは思えない。敬服するより、ここまできたらもう立派な「奇人変人」だな~、とあきれてしまう。
また山口さんは、活字中毒者と読書家を、つぎのように区別している。
「むろん、読書とは、こういうものではない。読書とは、一般に固いものを読む、古典を読む、研究書を読む、専門書を読む、あるいは、小説でも、一人の作家をまとめて読む、ということになろうか。私における活字は、ここからは、ほど遠い。勉強からも仕事からも遠くなる」
う~ん、卓見である。
「活字中毒者」なることばは、もしかしたら、山口瞳の造語かな・・・。
いちばんえらそうに読書について語っているのは、例によって小林秀雄。田辺聖子さんは、女性らしく、情緒的に、お気に入りの本への愛情について真情を吐露しておられる。読み逃せないのは開高健の「古書商・頑冥堂主人」である。エッセイとも小説ともつかない小品だが、古書業界の裏側に潜入して、売買の現場をのぞかせてくれるあたり、信頼のおけるドキュメンタリーの味わいがある。
こういった有名人ばかりを集めたアンソロジーを星印で評価しても滑稽なだけだが、まあ、恒例ということで、お許しいただこう(笑)。
日本ペンクラブ編・椎名誠選「素敵な活字中毒者」集英社文庫>☆☆☆★