二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

空の青さを見つめていると

2013年09月20日 | Blog & Photo
8月は不動産業はヒマ。俗に夏枯れといわれるのが、7-8月である。
新たに入居が決まったのは、2件。
その2件とも、生活保護受給者である。群馬だと生活保護適用者は、最大で34000円の家賃が、市役所からオーナー、または管理会社に振り込まれてくる。

社会的な弱者が、年々増加し、われわれもその対応に迫られる。賃貸物件の仲介・・・と一口にいうけれど、そのお客さんのプライバシーに深くかかわらざるをえない場面が多発している。

Aさん(女性)はDVのため、生後4か月の乳呑児をかかえて、S県からやってきた。
Bさん(男性)は、代行の運転手をしていたが、不治の病をかかえていて思うように働けず、家賃を何か月も滞納をしたあげくに生活保護者となった。

そういう形で窮地に追い込まれる人が、大都市はむろん、地方でも急増している。
彼らにとっては「アベノミクス効果」など、なんの恩恵もない。
そういう人たちと接したあとは、気分がひどくペシミスティックになって、浮上するまで時間がかかる。ときには非情な言動にも走らざるをえないが、そういうあとでは、やっぱり心のどこかで、自分を憎んで、さらにペシミスティックになっていく。

TVや新聞の報道でそういう人びとの実情を、ドキュメンタリーとして間接的に知るのではなく、彼らはわたしの目の前に現れるのである。

紀伊国屋書店でカメラの情報誌を買ったあと、そんなことを漫然と考えながらクルマを走らせていると、空の青さが襲いかかってきた。
というか、心の底までスカイブルーに染まりながら、くしゃくしゃした感情をクリーニングしたくなった・・・とでもいえばいいのか?

谷川俊太郎さんが若いころ書いたこんな詩の数行を思い出した。


空の青さを見つめていると
私に帰るところがあるような気がする
だが雲を通ってきた明るさは
もはや空へは帰ってゆかない

陽は絶えず豪華に捨てている
夜になっても私たちは拾うのに忙しい
人はすべていやしい生まれなので
樹のように豊かに休むことがない







<人はすべていやしい生まれなので
樹のように豊かに休むことがない>
なんという痛烈なことばだろう。
わたしは“樹のように豊かに”という表現のまえで立ち止まる。そうか、樹はそれ自体、ある途方もない豊かさを持っているんだ、とおもう。

都市から人びとは樹や草を追放する。そして、じっさいに苦境に追い込まれるのは、支配者たる人間のほうなのだろうなゞ(´Д`

こう考えること自体がすでにペシミスティックといえるかも知れないけれど。



※「空の青さを見つめていると・・・」全編がお読みになりたい方はこちらをどうぞ。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~kuro999/little/little138.html
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ネコの表情をひき出す | トップ | 「夜への階段」新作をアップ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Blog & Photo」カテゴリの最新記事