回顧展は、いよいよ第4回目。ほんとうはわたしは人物スナップがメインだとおもっているのだが、例の肖像権問題があって、かなり神経を使っている。田中長徳さんの本を読んでいたとき、日本とフランスが、この肖像権についてはうるさいという記事を見かけたことがあったが、はたしてどんなものだろう。つまらない「盗撮事件」を起こすような連中が撮っている写真と、カルチェ=ブレッソン、ロバート・フランク、ウィリアム・クライン、リー・フリードランナー、エリオット・アーウィットのスナップショットを混同するなんて、とんでもない!!
わが国では、土門拳、木村伊兵衛からはじまって、かの森山大道、荒木経惟へと、スナップショットの伝統は脈々と流れうずまいてきたのである。
(1) 貌(かお)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/a8/af3c3b4b06fe8b776e0dfa4646d0b8bf.jpg)
浅草でのスナップショット。雷門前の雑踏で、人物スナップを狙っていた。
浅草界隈は、わたしがいちばん好きな撮影地。20代、30代には新宿、渋谷、原宿がベースキャンプのようなものだったが、40歳になったころから違和感を覚えるようになり、いまでは、浅草、アメ横あたりのほうが自然と体がなじむ感覚がある。
年に数回は出かけていきたいが、なかなか時間がとれない。
マイミクの岡山太郎さんが、この一枚をとても評価してくれているが、左の男性は、偶然の写りこみで、狙って撮ったものではない。シャッター・タイムラグのいたずらで、思いがけず、ダイナミックな構図となった(^_^)/~
(2)さあ、遠慮せずお食べなさい
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/33/1085b6627b4ea4eedb6572e5ebe054c0.jpg)
これも背景を見れば一目瞭然、浅草ショットである。
中高年の街かというと、そんなこともないが、歴史と伝統がいまに息づく、すばらしいトポスである。老若男女、そして外国からの観光客で仲見世あたりは年中ごったがえし、一年中「お祭り」気分がただよっている。mixiをはじめる以前に、寅さんで有名な柴又帝釈天や、上野・谷中周辺、本所・深川あたりを、カメラをもってよく歩いた。大阪はたった一回だが、通天閣界隈をカメラ散歩したことがあった。
こういう瞬間は、ファインダーをのぞこうとしたり、液晶画面で確認しているイトマはない。わたしは歩きながら、被写体をチラッと眺め、経験と勘だけで撮影している。
(3) 小さな王女さま
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この一枚は、「はぐれ雲」時代の友人と出かけた足利フラワーパークで撮影した。
すぐ前を外国人のご両親が歩いている。わたしはそのご両親(夫はインド人、妻はイギリス系だと想像した)に会釈し、勇気をふるって撮影に挑んだ。この堂々たる「小さな女王さま」と、なにかパクついている日本人女性の対比が、いまとなっては笑いをさそう。印象に残るステキな瞬間だった。
(4)すれ違いの瞬間
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/dc/a2ec9b34aea7a8f3c78b6f53e9d4b3d4.jpg)
撮影地はアメ横。わたしは、この瞬間、被写体を「見て」はいない。俗にいうノーファインダーなので、撮影後に液晶でたしかめ、「ははあ、こんなふうに写ってるぞ」と理解する。
銀塩フィルムのころから、ライカM6やコニカヘキサーを使用し、こんな写真を撮っていた。あいにくとピントは背景にあっている。カメラはCX4。このカメラにはタイムラグがあって、スナップシューティングで使えるか、使えないか、キギリギリの線上だった。
動きの一瞬を切り取ったのだが、この女の子のじつにデリケートな表情としぐさをつかまえることができた。サンキュー、感謝!
(5)シャボン玉つかまえようっと
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/04/7299b8b3e9239669c96400685099dc3a.jpg)
これはばら園祭りでみかけたほほえましいワンシーン。女の子が、夢中になって、シャボン玉と遊んでいる。なんと、なんと、天使のようなこの表情! これを眺めて頬がゆるまないような人は、きっと人である(笑)。
スナップショットの醍醐味。アクチュアルなその一瞬を見逃さず、シュートするところに、スチール写真の生命が宿っている。
シャボン玉製造機から、つぎつぎシャボン玉が生れ、大空に舞い上がる。お母さんにお声をかけ、この写真をプレゼントしてあげればよかった(^^;)
はじめに書いたような理由で、スナップショットを満喫できた一年ではなかった。
だけど、まなざしがスナップモードに切り替った瞬間、わたしの中でふだん眠っている動物本能のようなものが目覚める。ただし、眼をギラつかせてはいけない(笑)。
大げさにいえば、街の風物を戦場にいるように眺め、黒子のように雑踏に紛れなければ、相手に不快感と、警戒心を呼び覚まして終わる。
いちばん使いやすいのは、だれもがいうように、35mmレンズの画角。わたしの場合も、(5)を除き、もっぱら35mm付近で撮っている。そのうち、怪しまれないように、名刺でも自作し、持ち歩こうかと考えてもいる。
☆横木安良夫公式ホームページ「アマチュアは、街でスナップを撮ったらいけないのか?」
http://alao.cocolog-nifty.com/the_eye_forget/2008/05/post_ed42.html
☆森山大道「路上スナップのススメ」(光文社新書)
http://www.amazon.co.jp/%E6%A3%AE%E5%B1%B1%E5%A4%A7%E9%81%93-%E8%B7%AF%E4%B8%8A%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%82%B9%E3%83%A1-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%A3%AE%E5%B1%B1-%E5%A4%A7%E9%81%93%EF%BC%9B%E4%BB%B2%E6%9C%AC-%E5%89%9B/dp/4334035817