二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

カベに注意

2011年12月10日 | Blog & Photo


信州上田市を散策しながら、いくつかのとてもフォトジェニックなカベに出会っている。
カベとは、むろん壁のこと。
トップに掲げた一枚にイイネ! マークをつけてくれたのは、あっきいさん、岡山太郎さんのお二人だった。

この壁は意味不明の、不思議な壁なのである。
ところは、旧市街の裏町。途中まで拡幅された道幅が、急に狭くなる。
家が数軒、クルマの通行を拒否するかのように、出っぱっている。
そう・・・わたしの解釈では、歩行者ではなく、まさにクルマを拒否するための注意書きなのである。
ところが、この「カベに注意」は、クルマの進入方向を向いているわけではない。

通りすぎようとしたわたしが、ふと右の肩先へ眼を転じると、そこにあった。
過去になにか事故のようなことがあったのだろうが、運転者に「注意!」を喚起する標識ではなさそうである。

まあ、赤瀬川さん流の路上観察学的、ナゾの物体としておこう(笑)。
手書の「へた文字」に、ある種の味わいがある。

カベつながりで思い出したが、木村伊兵衛さんの名作・通称「馬のしっぽ」(写真集「秋田」に収録)も、カベが大きく見る者の情をとらえる。

カベといえば、もうひとつ。
気合いを入れ、シャープに写し止めねば・・・と緊張しながらカメラを構え、フレーミングに迷いながら、数枚シャッターを押した中の一枚。




崩れかけた民家の土壁。
かつては、扉があったのだろうと推測できる。
いちいち説明しなくても、見える人には、この土壁が耐えてきた風雪の重みが理解できるだろう。
ここは、その昔、養蚕農家だったのである。
素材は近隣から掘り出した土と、とれた竹、藁。見る者を時空の彼方へといざなう、すばらしい一隅であると感じ、シャッターを押す手が、いくらかこわばった。

モノクロで撮るべき素材かもしれない。(上の写真を、フォトショップでモノクロ変換)




この写真のはるかなさきに、わたしは、グラフ・ジャーナリズム全盛期を築いた天才のひとり、ウォーカー・エバンスの幻影がよみがえる思いを味わった。
http://www.artphoto-site.com/story10.html

この巨匠に魅了され、東京まで出かけていって、写真集をあさったのは、集団「はぐれ雲」をやっていたころ。いまでも、写真集二冊を大切に保管してある。

窓と扉は、これまで、意識的に撮影してきたから、わたしのアルバムには、窓と扉の写真が、た~くさん置いてある。そして壁も。
壁はしばしば、ギャラリーとしての役割を果たすから、見逃すことができないのである。
最後にもう一枚、ピックアップしておく。




わたしがここでいわんとしている意味が、おわかりになるだろう。
結果として、なかなかシュールな街角ギャラリーになっている。



※ウォーカー・エバンスに関心がある方は、googleの画像検索をどうぞ。
絵画の歴史でいえば、セザンヌにも、ゴッホにも匹敵するような写真家です。
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