二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

時を記録する装置

2011年12月11日 | Blog & Photo


定点観測をしていた樹木が、昨日伐採されたらしく、影も形もないので、わたしは通りすぎてから引き返し、その光景を記録した。
ここには、わたしが「六本木」と名づけた樹木が、7~8本生えていたのである。
コウヤマキに似ていたが、近くによって観察したことがないので、たしかなことではない。
近隣には民家や他の樹木がなかったので、通勤途上のバイパスから、彼方のその樹影を眺めることができた。

この樹を、一年を通して定点観測し、四季の変化を記録するつもりであった。
スタートしたのは、ことし2011年の4月。
☆定点観測 途中経過
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1710526444&owner_id=4279073



これが、12月4日に撮った最後の「六本木」。



こちらが、その跡地。
カメラはいずれもCX4、85mmにて撮影。
すぐ近くで、高齢者収容施設の建設がはじまっている。
たぶん、駐車場用地になるのだろう。

一年を通して定点観測をしようというわたしのもくろみは、もろくも潰えてしまった(=_=)
残念無念、うーん・・・。
時を記録する装置としてのカメラ。
ささやかながら、そのことを、あらためて意識させられた出来事であった。

写真のおもだった機能のうち、‘記録する装置’という役割は、とても大きな使命をおびたものである。そのことに、異論をとなえる人は、まずいないだろう。ナダールが撮影したボードレールやバルザックの像を、はじめて見たときの衝撃は忘れることができない。
ナダールが「そこで見たもの」「そこにあった光」「そこを支配していた現実的な条件」がまざまざとよみがえってきて、見者(けんじゃ)を、写真特有のリアリティーでがっしりとつかまえる。

こういう光景に打ちのめされたあとでは、時間=時こそが、神なのではないかと・・・そんなことを考えたりする。たしか80年代ころから、幕末・明治に撮影された「古写真」が発掘され、人びとを驚かせたことがあった。写真装置の発明は、近代人に意識の変革をもたらした。むしろ、写真が近代人を、近代人ならしめたのではないだろうか?
映画には、美男・美女、そして「特別な選ばれた人」しか登場しないが、写真には、そこいらの普通の人が、普通に登場する。

1974年に晶文社から、桑原甲子雄さんの「東京昭和十一年」が刊行されたときも、読者は、そこに記録された昭和の光景を眺めて、なにが滅び、変化していったのかについて、多くのことを学びとった。

時間についての歴史的な概念は、精度の高い時計と、写真の登場によって、新時代へと突入したのである。
たとえば、正確に時をはかる装置としての時計が登場するまで、時間は人間の生活にとって相対的なものであって、夏と冬で伸び縮みしたものである。
<江戸時代は、日の出と日の入りを基準として、昼と夜をそれぞれを6等分して、一刻(いっとき)を算出しました。そのため、昼と夜とでは、一刻の長さが違いましたし、夏と冬でもちがいました。これを不定時法と言います。>
参照先:
http://mblog.excite.co.jp/user/wheatbaku/entry/detail/index.php?id=16074194&page=2

現代のわれわれは、物理的にはかられた絶対時間に支配されて生活しているが、こういう生活がはじまったのは、最近百年か、百数十年のことなのである。

写真には、さまざまな機能が付託されている。
写真を撮ったからといって、時の神に抵抗できるわけではない。
時の神・・・それを神格化している宗教はあるのだろうか?
あるだろう。北欧神話や、中央アジアの古代信仰、あるいは、ラテンアメリカの伝承や神話の中に。仏教では弥勒菩薩という仏がいる。
輪廻転生が仏教の時間論だし、弥勒菩薩の存在も、時間というものと、人間の意識の葛藤なしには、生まれ得なかった仏であろう。


トップにあげた一枚は、利根の河川敷で遭遇した夕陽。
なにかが、遠くの空で、ジリジリと焦げていくような強いインパクトがあった。
ねぐらへ帰るカラスが、何十羽となく、その空を、南へと渡っていった。


<メモ>
☆相変わらず、mixiアプリへの招待をいただいていますが、わたしは、ノー・アプリ、ノー・バトンです。ご了承下さい。

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