入院している母の向かいにいる女性。。。
介護病棟にいる人々は、たいていの人がコミュニケーションが成立しない。
この女性は瞬きをほとんどしない。
大きな目を見開いて、いつも背の部分を起こして座らされている。
病室に入るとジロッとこちらを見る。
その視線が私はとても苦手だった。
夕食を一人で取ることが困難になってきている母のためにほぼ毎日介助に行く。
先日、その女性が食事中にベッドの手すりに渡してあるテーブルが突如傾いてベッドの下に落ちてしまった。
食器を拾い、ベッドを見るとシーツが汚れてしまっていた。
ナースコールで事情を説明して、女性が落としたのではなく、テーブルが最初から不安定だったことを伝えた。
粗相をしてもおかしくないように見える女性だが、そうではないと伝える私に、ニッコリと微笑んだ気がした。
翌日、病室に行くといつも見開いている大きな目が私を捉えると、小さく会釈をしたように見えた。
母の食事を介助し終えて、話をしていると、「ねぇ!」と呼びかけられた。
人差し指が私を指している。
そばに行って「なんですか?」と聞くと、頭の上を指差していた。
言葉にならない様子で、私もすぐには理解できなかった。
「ごめんなさい、どうしたらいいかわからないわ。」と伝えた。
少しがっかりした様子だった。
数分後また「ねぇ!」と呼びかけられた。
ちょっとめんどくさいなぁと思いながら、「私にわかるかしら。」と言って近づいた。
今度は、テーブルを指差して向こうへ押すような仕草をしている。
女性のお腹にくっつくように置かれたテーブルがとっても窮屈そうだった。
よく見ると今日も不安定な状態で置かれていたので動かすと落ちそうだった。
それでもなんとか動かしてあげると、両手を合わせてありがとうというような仕草をしてみせた。
私は、ずっとこの女性に意思があるとは思ってなかった。
ただ目を見開いて息をしているだけの状態なのだと思っていた。
間違っていた。
彼女にはその目で見てきた人生がある。
生きているのだ。
また呼ぶ声が聞こえた。「ねぇ!」
「はい?なんですか?」と聞くと、先ほどと同じように上を指差していた。
枕の事を言っているのだろうか?
枕を少し上へずらした。「そう、そう。」と女性は満足そうな顔をした。
今度は、ベッドを倒して欲しいようなそぶりをする。
少し倒してみると「もっと」というような表情をした。
彼女の表情を見ながらベッドを倒す。
「あぁ」という声と同時に頷く彼女が見て取れた。
「オッケー??」と言って手で丸を作ると彼女が「あぁ、気持ちいい~」と言った。
この瞬間を女性が覚えているのかどうかはわからない。
でも、母と同じような年齢のこの女性を一瞬でも理解できたことを私は忘れないだろう。
そして、それほど長くはない母との時間をより愛おしく思ったのでした。
で、今回の記事、私はパートで介護ヘルパーをしています。犬たちに少しでもいい暮らしを、じゃなくって、世のため人の為、戦後復興を支えてきた方への恩返しに。なんちゃってね。
認知の方にも、しっかりした意思はあるし、慣れると話もおもしろいし、話が成立したりしなかったり。病室の女性は、誰かと話がしたかったし、自分に気を引きたいのかもね。
毎日の一辺倒な病室の暮らしに、haijiさんとのやりとりで刺激があったに違いないかも。
一点を見つめるのは認知の方に多いかも。これからもコミュニケーションとって、笑顔にしてあげれば~?
本部も受験料払っといてよかったですよ。
オビ1受験頑張ってくださいね。
私も頑張ります。
ヘルパーさんて大変な仕事ですね。
この女性、今は私が行くと挨拶してくれるようになったんですよ。
今日は私と妹と父が母のベッドのところでおしゃべりしてたら、そこに入ってきたヘルパーさんに「ねぇ!!」って声をかけて、わがままを言って手を煩わせてました^^;
確かに話をしたいし、気を引きたいのかもしれません。
いつも淋しいのかもしれないですね。