温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

プノンペンの街をせわしなく逍遥 後編

2015年04月12日 | 東南アジア旅行記
前回記事の続編です。

●クラタペッパーと家系ラーメン
 
こちらは市街の南部に位置するボンケンコン(Boeung Keng Kang)地区。外国人やお金持ちの屋敷がたち並ぶ高級住宅街であり、街中にはブティックやカフェなどが点在している他、雰囲気の良さそうなホテルも見受けられます。都内で言えば、広尾や白金台のような土地柄かな。



今回のプノンペン旅行でどうしても行ってみたかったのが、このボンケンコンにお店を構える「クラタペッパー」です。1960年代まで、カンボジアでは良質な胡椒が生産されていたんだそうですが、70年代以降の内戦や混乱によって壊滅的な被害を受け、かつての名声は消滅しかかっていました。そんな状況下、カンボジアの支援を志していた日本人の倉田さんが、胡椒生産の再興を通じてこの国の産業再建を手助けすべく、90年代後半から現地で奮闘し、現在ではこのように店を構えて、海外でも名が知られるほどになったんだそうです。


 
まるで日本のセレクトショップのようなこじゃれた雰囲気の店内では、黒コショウや白コショウなど、挽いていない粒状のものが袋詰めで並べられていました。綺麗に包装されているので、そのままお土産にしても良い感じ。お店の奥ではスタッフの方が何やら作業をなさっていました。
ここでは黒コショウと完熟胡椒を購入。完熟胡椒とは赤く熟した実だけを集めて乾燥させたもので、ひと房から1~2粒しか獲れない最高級品なんだとか。帰国後に自分でステーキを焼き、塩をまぶすと同時に、ミルで挽いた黒コショウを上から振り掛けると、何とも言えない香りが漂い、肉の旨味がぐっと引き立てられました。そして胡椒のフルーティーで且つ奥深く上品な味も素晴らしく、もう市販されている普通の胡椒では満足できません。この胡椒さえあれば他の味付けなんか一切不要。本当に極上な逸品です。名脇役ぶりに心酔。セントラルマーケットでバッタもんの貴金属を買うぐらいなら、ここで胡椒を買った方が断然良い。友人知人にも大好評のお土産でした。
※なおクラタペッパーの黒胡椒は、わざわざプノンペンまで出向かずとも、何とアマゾンで購入できちゃうんですね。
↓にリンクを張っておきますので、ご興味のある方はご覧くださいませ。
マスコット ライプペッパー -完熟胡椒- 34g
クラタペッパー 黒胡椒 ブラックペッパー


 
店頭では黒こしょうを使ったポップコーンや天むすも販売されており、一刻も早く倉田さんの胡椒を味わいたくなったので、迷うこと無く天むすを購入。ラベルに"TENMUSU"って書いてありますでしょ。ホテルに持ち帰って夜食としていただいたのですが、素晴らしい芳香と重層的な胡椒の味わいに、思わず「美味いっ」と唸ってしまいました。カンボジアの産物と名古屋グルメの見事なハーモニーに拍手。


 
クラタペッパーから63番通りを南下していると、「ザ・ラーメンキオスク」という店舗を発見。"JAPANESE SOUP NOODLE"とありますので、所謂日本風ラーメンのお店なのでしょう。 ちょうど小腹が減っていたので、興味津々入ってみることに。天井が高くて白基調の店内は、明るくて綺麗。各テーブルでは現地のお客さんが丼に入った麺をすすっていました。結構人気のお店なのかも。



オーソドックスなラーメンを注文。海外なので、正直なところ期待していなかったのですが、私の前に提供されたものは、驚くなかれ、本格的な豚骨スープの家系ラーメン。現地の味覚に合うようアレンジされているのか、一般的な家系のスープより少々軽いテイストなので、ガッツリ系が好みの方には少々物足りないかもしれませんが、ここ数年家系のスープに浮かんだ脂を見るだけでも胃が痙攣していた私にとっては、むしろその位が丁度良い感じ。大変食べやすく、とても海外で食っていると信じられないほど、日本と同じレベルの味であることに驚きました。一杯3ドルという安さも魅力的。日本人オーナーの方が厨房にいらっしゃり、退店時にはわざわざ玄関まで出てきて、挨拶してくださいました。美味しかったぜ。日本の庶民の味覚を、カンボジアの地にも根付かせてください。ごちそうさまでした。


 
食後にコーヒーが飲みたくなって、通りすがりにたまたま見つけたカフェへ。バンコンケン地区には瀟洒なカフェがあちこちにあるんですね。この時訪れたのは、高級住宅の中庭をお店にしたような緑と花々が麗しいカフェ。カプチーノとスイーツをいただきます。いい年こいたオッサンのくせに、甘いものは別腹なので、食後の甘味は欠かせません。旅の恥は掻き捨てと言わんばかりに、モデルに憧れるイモ姉ちゃんよろしく、ガーデンを背景にしてテーブルの上の様子をカメラに収めて、ニッコニコ笑顔を浮かべてしまいました。店内にはWifiが飛んでいますし、表の喧騒もここまで届きませんから、散策の休憩にはもってこいなお店でした。

先日このブログでトンレサップ湖のスピードボートを取り上げた際、川岸に佇む原始的な高床式住居や、湖上に浮かぶ水上生活集落、そして慎ましやかに暮らす人々について触れましたが、そこからわずか数百キロしか離れていない同じ国内にもかかわらず、このバンコンケン地区にはアジアの経済発展をしっかり享受しているかのような、小洒落た都市の街並みが広がっています。富の再配分がうまく機能していない発展途上国では、しばしば天と地ほど著しい貧富の差が生まれますが、このプノンペンという街はその落差が鮮烈に現れていることを実感しました。


 
貧富の差に言及したついで、それに関連する光景をもういっちょ。
バンコンケン地区からはかなり北へズレるのですが、王宮の西側、ノロドム通りと214番通りの交差点付近を歩いていると、ある建物の前で白い乗用車がひしめき合う一角に出くわしました。何かと思ってその建物を確認したら、堅牢なコンクリの外壁にはインターナショナルスクールと表示されており、頑丈なゲートの向こう側には中高生と思しき学生達が集まって、次から次に白い乗用車へと乗り込んでいました。つまり白い乗用車は生徒を送迎するために集まっていたんですね。良家の坊ちゃん嬢ちゃんが通っている学校なのでしょう。
私も世間からは「坊ちゃん学校」と揶揄される学校に通っていたので、他人様のことをどうこう言う筋合いは無いのですが、トンレサップの水上で小舟に乗って漁を手伝う子供や、街中で物乞いをする兄弟など、学校に通えず貧しい生活を送っている子どもたちがたくさんいる一方、こうして車で送り迎えしてもらえる子供もいるんですから、世の中って不思議なものです。公平や平等なんて概念は儚き理想にすぎないのでしょうけど、あまりに圧倒的な差を見せつけられると、どんな現実主義者であっても複雑な心境にならざるを得ません。ま、世の中ってそんなもんなんでしょうけどね。恵まれた環境に生まれたオイラって幸せだぁ…。


●リバーサイド
 
トンレサップ川のほとりはリバーサイドと呼ばれ、前回記事で軽く触れた王宮などの観光名所がある他、外国人向けのホテルやレストラン・バーなどが集まっており、観光客にとっては何かと便利な地区。私が2泊したホテルもこの地区にありましたので、滞在中は必ずこのリバーサイドを歩いたのですが、昼夜を問わず欧米系を中心に多くの外国人観光客で賑わっていました。


 
トンレサップ川に沿ったエリアは公園状になっており、外国人のみならず、市民の憩いの場でもあります。街巡りから戻ってきた夕刻、夕涼みがてら、川風に吹かれながらこの地区を散歩していると、クメール人の親子連れがキャッキャと元気にはしゃいでいました。公園と堤防をミックスさせたスーパー堤防のようなこの街並みは、日本の援助によって築かれたらしく、一角にはそのことを示す碑が立てられていました。


 
 

リバーサイド地区から川に沿って北上してゆくと、シェムリアップからのスピードボートが着岸直前に潜った大きな橋に行き当たりました。この橋は「チュルイ・チョンバー橋」、またの名を「日本カンボジア友好橋」と称するんだそうでして、その名の通り、日本の援助によって架橋されたもの。日本外務省のODAを紹介するページに、この橋が架けられた経緯やその後の経済・社会効果などが説明されていますので、ご興味がお有りの方はリンク先をご参照くださいませ。欄干のプレートや記念碑に記されている2005年には、この橋の改修が行われたようですが、なるほど、こまめな改修工事が求められるほど交通量は激しく、しかも片側一車線とバイクレーンしかないので、橋へ接続する周囲の道路では著しい渋滞が発生していました。経済発展に伴い、交通量が増加しており、この橋がボトルネックになってしまったんですね。この渋滞を解消すべく、現在の橋に平行する形で新しい橋がもう一本増設され、私が訪れた半年後の2014年9月に新橋梁が完成したんだそうです。橋を写した上画像には、新橋梁建設工事のための赤い大型クレーンが写っていますね。この新しい橋は中国の援助によって工事が進められたとのこと。近年のアジア各国における中国の存在感には圧倒されます…。


 

日没後、リバーサイドの北側にある「ブラウンコーヒー」というお店に入り、アイスのカフェラテで一息つきます。この「ブラウンコーヒー」はカンボジア版のスターバックスを目指しているといるんだとか。コロニアル様式を模した天井の高い店内は、木材やレンガを用いて落ち着いた雰囲気となっており、エアコンも効いていてWifiもしっかり飛んでいるので、居心地はすこぶる良好でした。

これにて2泊3日のプノンペン旅行記は終了。翌朝は早い時間に空港へ向かい、エアアジアの飛行機でクアラルンプールへ飛んで、マレーシアの温泉を巡ったのでした(マレーシアの温泉めぐりに関しては、既に拙ブログで記事にしております)。
2泊3日とはいえ、実質的には2日弱しか行動できなかったのですが、貪欲にガツガツと廻ったおかげで、予想以上にたくさんのポイントを巡ることができ、大変充実した時間が過ごせました。東南アジア独特のユルさに加えて、途上国らしい適当さ小狡さにも遭遇しましたが、プラスマイナスをひっくるめてこそ、旅って面白いんですよね。自由気ままに行動できるからこそ、一人旅はやめられないのだ…。

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コメント
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