郡山南インター付近にはいくつもの温泉浴場があり、私が車で東京方面へ戻る際には、界隈でひとっ風呂浴びてサッパリしてから、東北道を南下することがしばしばです。今回はインターから西へ向かった郊外の小高い丘の上にある「のんびり温泉」へ立ち寄りました。個人的には7年ぶりの再訪です。
丘の上に設けられた駐車場からは、盆地西端の水田地帯やその彼方に広がる稜線が見渡せます。この景色を眺めながら深呼吸し、胸いっぱい空気を吸い込んでから館内へ入りました。界隈でも屈指の規模を有するこちらの温泉施設は、以前拙ブログで取り上げたことのある高湯温泉「のんびり館」と同じ経営母体であり、他に県内の信夫温泉や沼尻温泉でも同系の施設が営業中です(ちなみに本社は茨城県にあるんだとか)。
券売機で料金を支払い、フロントに券を手渡します。なお下足場の鍵はフロントに預けず自分で管理します。広いホールには物販品がたくさん並んでおり、その奥にある休憩用のお座敷では湯上がりのお客さん達が、丸太のような図体を横にし、浜辺のトドのように寝っ転がっていました。
●パノラマ大露天風呂
こちらの施設にはメインである「大浴場」の他、「パノラマ大露天風呂」と称する離れの露天風呂があり、両者はちょっと離れているのですが、利用客はどちらでも入浴が可能です。今回訪問したのは誰もが汗を流したくなる夕刻であり、駐車場にはたくさんの車が止まっていたので、館内は混雑しているだろうと見当はついていたのですが、「大浴場」の中をちらっと覗いたら、案の定、洗い場が全て埋まるほど混んでいたので、そちらは後回しにして、まずは「パノラマ大露天風呂」から入ることにしました。
「大浴場」の入口前には案内が掲示されていましたので、その矢印に従って奥へ奥へと進んでいったのですが、カラオケの個室群を右に見ながら厨房の勝手口と思しき出入口を出ると、その先は明らかにバックヤードとなってしまい、「ここって客が進入しても良いの?」と不安になるほど殺風景な連絡通路を歩くのでした。もしここで誰かとすれ違ったら「こんにちは」ではなく「お疲れ様です」と口にしてしまうそうな雰囲気です。連絡通路はやがて緩やかな下り階段となり、その先に離れの小屋が接続されていました。
フローリングの休憩室にはマッサージチェアや自販機の他、ソファーマットがいくつも並べられています。しかしながら、お客さんで大賑わいだった「大浴場」とは対照的に、こちらは人っ子一人の気配も感じられません。この休憩室の左右両側に男女浴室の入口があり、男湯側には天狗、女湯側にはおかめのお面が飾られていました。なんだか意味深…。
脱衣室には郡山エリアの温泉浴場にはよくある事務用スチールロッカーが設置されています。設備としては、次回記事で取り上げる「大浴場」の脱衣室よりも簡易であり、ドライヤーなど他の備品類はありません。
脱衣室を出た先に広がっていたのは、大露天の名に恥じない広くて立派な露天風呂でした。でも、ひと気が感じられないどころか、本当に誰もいません。一応洗い場はあり、シャワー付きカランが3つ並んでいるのですが、いくら屋根に覆われているとはいえ、冬の寒風にさらされる屋外ですから、わざわざ寒い中でシャワーを浴びようとする人もいないのでしょう。
てっきり露天風呂だけかと思いきや、上画像のような小さい内湯も併設されており、中にはシャワー2基とポリバスが一つ設置されているのですが、造りが簡易的であり、しかも槽内は空っぽで、水栓のハンドルも抜き取られていたため、お風呂として利用できる状態にありませんでした。この内湯はあくまで「オマケ」としての位置づけなのでしょう。
浴槽はおおよそ6.5m×10mの大きな四角形(完全な四角形ではなく部分的に変形しています)。基本的にはコンクリ造ですが、表面には化粧の石が埋め込まれており、槽の中央や湯口付近には日本庭園をイメージさせるような大きな岩が据えられています。頭上は屋根で覆われているため、広さの割に開放感に乏しく、私が訪れた夕暮れ時には、屋外なのに薄暗さを覚えました。でも、屋根を設けないと悪天候時には利用できませんし、湯船の温度管理も難しくなってしまうのでしょうから、一人の利用客として、大きな湯船の上を屋根掛けする必要性も理解できるところです。一方、大きさと並んでこの露天風呂の売り文句である「パノラマ」ですが、樹々の間から丘の下に広がる盆地や山々の稜線が眺められるものの、目の前の木立によって視界が遮られてしまい、パノラマという言葉から期待できるほどの眺望は得られませんでした。あくまで私の個人的な感想ですが、次回記事で取り上げる「大浴場」の露天の方が、開放感や眺めは優っているように思います。
この広大な露天風呂にお湯を注ぐ湯口は2つあり、ひとつは岩から突き出たパイプよりお湯が落とされています。パイプの口には湯の華など固形物を濾し取るためのネットが被せられていますが、ここからの供給量は少なく、チョロチョロといった程度で、大きな湯船を満たすだけの量には及びません。もう一つの湯口は脱衣室側の浴槽縁に設けられた木のボックスで、箱からお湯が垂直にドバドバと落とされており、明らかにこちらがメインの投入口となっていました。槽内にお湯の吸引口などは見られず、ほぼ全量が男女両浴室の仕切り下にある切り欠けから排湯されているようでしたから、放流式の湯使いなのだろうと推測されます。
表面積が広くて冷めやすいためか、私の体感で41℃あるかないかといった湯加減ですから、じっくり長湯できるものの、真冬の夕暮れ時にはぬるくて肌寒く感じてしまいました。常連のお客さんはこうした事情をご存知なので、わざわざ通路を歩いて、この離れの露天風呂まで来ようとしないのでしょう。でも、夏でしたら直射日光を受けずに湯浴みできますし、程よく温度が下がっているならば暑い季節でも長湯できますから、冬以外でしたら存分に露天入浴を愉しめるのではないかと想像します。
お湯の熱さが物足りなかったので、この露天風呂は早々に切り上げ、「大浴場」へと戻ります。
後編につづく