箱山温泉

　
　
湯田中温泉郷から中野方面へ抜けるルートのひとつ、県道356号線沿いに位置する一軒宿「箱山温泉」は、地元の方から日頃の汗を流す銭湯的な存在としても大人気。夕方6時頃に伺ったところ、駐車場は多くの地元ナンバーの車で埋まっていました。駐車場の一角には、お湯が落とされている流し台や、屋根掛けされた木造の足湯が設けられているのですが、雑草が伸び放題である上、材木がボロボロだったので、ちょっと近寄りがたい感じ。
駐車場から建物に沿って奥へ入った先に玄関があり、受付傍に設置されている券売機で湯銭を支払います。受付の奥には食堂があり、風呂あがりのビールで乾杯しているのか、賑やかな歓声が玄関の方まで響いていました。


　
　
脱衣室はウッディーな造りですが庶民的な雰囲気が強く、旅館というより公衆浴場のような印象を受けます。
お風呂は内湯と露天風呂があり、内湯には主浴槽の他、サウナや水風呂が設けられていました。洗い場にはシャワー付きカランが6基、L字形に並んでいます。水風呂はサウナ利用者だけでなく、湯船で逆上せかかったお客さんにも人気です。後述するように、こちらのお湯はちょっと熱く、かつ火照りやすいので、夏季にはどうしても水風呂に入りたくなるんですね。訪問時には多くのお客さんが、お風呂から上がる直前に水風呂に入り、火照りを冷ましていらっしゃいました。

内湯の浴槽は目測で2.5m×3.5m、キャパは5～6人でしょうか。湯使いは完全放流式で、上の方から下りてくる木の樋よりお湯が投入されており、浴槽縁から洗い場へ絶え間なく溢れ出ていました。浴槽のお湯は赤銅色に弱く濁っており、湯中では同色の浮遊物が舞っている他、浴槽のまわりやオーバーフローが流れる床の流路など、至るところが赤茶色に染まっていました。金気がかなり強いんですね。加水されていないためか、体感で44～45℃というかなり熱めの湯加減となっていたため、そのことを予めご存知である常連さんは、誰も内湯へ入ろうとせず、皆さん露天へと直行していました。夏季はこんな状況ですが、冬期には寧ろこの熱さが恋しくなるかもしれません。


　

長い庇に護られている露天風呂は、12～13人は入れそうな大きさの岩風呂。田園風景の向こうには、テーブル状の小高い丘が盛り上がっていますが、この山は温泉名の由来にもなっている箱山と言うんだとか。露天ゾーンの大部分は庇の下に収まっているため、訪問時のような雨天でも、冬季の降雪時でも、冷たさをあまり気にせず利用できそうです。屋根掛けされているとはいえ、箱山に対して視界が開けているので、まずまずの開放感があり、微風も適度に流れ込んでくるのですが、露天ゾーンいっぱいに浴槽が設けられているため、腰を掛けて休憩できるようなスペースが少なく、隅っこに据えられているベンチ代わりの岩も、一人分の大きさしか無いため、火照った際のクールダウン対策は、水風呂に頼ることになるのでしょう。


　
露天の真ん中に立つ柱は温泉の樋であり、内湯と同じくこの木樋からドバドバと大量に投入されています。湯船は内湯同様に赤銅色に濁っており、外光の影響もあってか、やや緑色を帯びているようにも見えました。
投入口の下には、赤い鱗模様の析出が板状にこびりついており、その厚さは0.5mmに及んでいました。この部分を指先で触れてみると赤茶色に染まってしまうのですが、それどころか、いつの間にやら足の裏にも同色が付着し、風呂上がりの体を拭ったタオルもオレンジ色に染まってしまいました。お湯を口に含むと、金気と共にほんのりとした塩味、僅かな苦味、そして芒硝的な味と匂いが感じられます。端的に表現すれば、重炭酸土類泉の知覚から炭酸を抜いたような感じでしょうか。でもビジュアルから想像するほど、味覚としての金気は強くないのが意外です。食塩泉的なツルスベと土類泉的な引っ掛かりが混在する浴感。内湯・露天ともに完全放流式の湯使いで、やや熱く感じましたが、良好な鮮度も相俟って、シャキッとする爽快感が得られました。
近隣には同価格帯の入浴施設の多いのですが、それでも地元の方から愛され、いつも混雑しているのは、ひとえにお湯の良さゆえでしょうね。


元湯箱山温泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉　46.9℃　pH7.7　掘削動力揚湯　溶存物質2140mg/kg　成分総計2149mg/kg
Na+:495.7mg(64.63mval%), Ca++:216.3mg(32.35mval%), Fe++:1.8mg,
Cl-:829.0mg(71.37mval%), Br-:4.0mg, I-:1.1mg, HS-:0.05mg, SO4--:366.7mg(23.32mval%), HC3-:91.8mg,
H2SiO3:37.1mg, HBO2:68.1mg,
加温加水循環消毒なし

長野電鉄・湯田中駅より徒歩30分強(2.5km)、もしくは信州中野駅より長電バスの菅・角間線で「箱山入口」下車
長野県下高井郡山ノ内町戸狩405-1　　地図
0269-31-1088

10:00～21:00　第2・4木曜定休（祝日は営業）
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり