今回からはしばらく青森県や秋田県の温泉を連続して取り上げてまいります。といっても昨年の秋に訪問した際の内容です。いつもながら鮮度感に欠ける内容で申し訳ございません。
津軽平野には「犬も歩けば温泉に当たる」と言っても過言ではないほど高密度で温泉浴場が存在していますが、今回はその中でも旧平賀町の町名を冠した温泉銭湯「平賀観光温泉」へと向かいました。県道の路傍に立つ看板を、隣接する特養老人ホームと共有しているので、おそらく両者は同じ経営母体なのかと思いますが、観光という名前とは対照的に、浴場自体は渋くて古風な佇まいであり、家庭的な雰囲気すら漂っています。玄関前にはベゴニアのプランターが段をなしてたくさん並べられており、それらは扉の前の半分を埋め、ほとんどバリケードと化していました。よほどお花が好きなオーナーさんなのでしょう。
玄関を入って左前方にある番台で湯銭を支払います。番台には手芸のタペストリと並んで、台湾の蝶の標本が飾られていました。どなたか関係者にこの手の趣味者がいらっしゃるのでしょうか。番台と反対側は、ソファーやテレビが置かれた休憩スペースです。
脱衣室はごくごく普通の公衆浴場スタイルで、番台のような何もないカウンターが、男女両室の境に設けられています。こうした構造の脱衣室って、津軽地方の温泉銭湯を巡ったことのある方にとっては、ものすごく既視感のある光景ではないでしょうか。温泉浴場の構造は、地方によって独特の特徴があるものです。
レンガ色のタイルが敷かれた浴室は、天井の高さのおかげなのか、かなり広々とした空間であるように感じられます。好天に恵まれたこの日は、浴槽の湯面が窓外の木々の緑を映しており、床の色合いと補色関係になって、なかなか美しい色彩美が見られました。浴槽手前は洗い場ゾーンであり、左右の両壁と中央の島に、計14基のシャワー付きカランが設けられていました。カランから出てくるお湯は、おそらく温泉だろうと思われます。
浴槽は大小の2つに分かれています。大きな浴槽は五角形で、窓側の長辺(左右の幅)は約5m、奥行きは広いところで約4mといったところ。ざっと見ても10人以上は余裕で同時入浴できそうな大きさです。カラフルな模様の色ガラスが嵌められた仕切り塀の隅っこに、石膏の天使が佇んでおり、その足元からお湯が浴槽へと注がれています。この湯口に指先を突っ込んでみますと、内部の左側から冷たいものが流れ込んでいたので、この湯口内で加水が行われているらしく、それゆえに万人受けする丁度良い湯加減(42℃前後)が保たれていました。
一方、その右側の小さな槽は4~5人サイズで、浅い造りながら、槽内のお湯は大変熱く、まともに入れそうではなかったので、今回こちらの入浴は遠慮させていただきました。お湯は塩ビ管から落とされており、加水は行われていないようです。熱さにおののく私を嘲笑うかのように、浴槽縁では2匹のカエルが徳利を片手にニヤニヤした表情を浮かべていました。かつてはこのカエルの下からお湯が投入されていたのかな。女湯との仕切り塀に嵌められているカラフルな模様のガラスといい、天使の石膏像といい、この素っ頓狂な面持ちをしたカエルの置物といい、昭和40~50年代の中央線沿線(杉並区)でチラホラ見られたようなメルヘン調のお店に通じるセンスがところどころに散りばめられており、それらを眺めながら入浴していると、得も言われぬ不思議な気分に包まれました。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭なのですが、よくよくテイスティングしてみますと、弱い芒硝感や微かな樹脂っぽい風味、そしてごく僅かな苦味が含まれているようでした。pH8.6という数値が示すように、弱いながらもアルカリ性泉らしいニュルっとした感覚を伴うツルスベ浴感が心地良く、それでいてお湯自体はアッサリしているので、癖のある温泉はどうも苦手という方におすすめの優しいお湯です。また、津軽地方を温泉巡りをしていて、この界隈に多く湧出する火照りの強い食塩泉に飽きてしまったら、ワンクッション置くためにここを訪れるのも良いかもしれません。ほとんど癖が無いので、アッサリサッパリ湯浴みできるのが嬉しいところです。もちろん、両方の浴槽とも放流式の湯使いであり、縁から洗い場へふんだんに溢れ出ていました。お湯に癖は無いものの、飾り等にちょっとした個性が見受けられる、ある意味でユニークな施設でした。
アルカリ性単純温泉 49.4℃ pH8.6 150L/min(動力揚湯) 溶存物質0.710g/kg 成分総計0.710g/kg
Na+:165.8mg(92.08mval%),
Cl-:47.3mg(17.85mval%), Br-:0.1mg, SO4--:204.9mg(57.32mval%), HCO3-:56.8mg(12.48mval%), CO3--:21.6mg(9.67mval%),
H2SiO3:191.8mg,
弘南鉄道・平賀駅より徒歩30分強(2.5km)、あるいは同駅から平川市循環バスの新屋・尾崎線で「町居東口」バス停下車すぐ
青森県平川市町居山元259-1
0172-44-8585
6:30~21:00、12/31と8/13の午後休み
300円
ドライヤー(有料)、他備品類なし(番台で各種入浴道具の販売あり)
私の好み:★★
津軽平野には「犬も歩けば温泉に当たる」と言っても過言ではないほど高密度で温泉浴場が存在していますが、今回はその中でも旧平賀町の町名を冠した温泉銭湯「平賀観光温泉」へと向かいました。県道の路傍に立つ看板を、隣接する特養老人ホームと共有しているので、おそらく両者は同じ経営母体なのかと思いますが、観光という名前とは対照的に、浴場自体は渋くて古風な佇まいであり、家庭的な雰囲気すら漂っています。玄関前にはベゴニアのプランターが段をなしてたくさん並べられており、それらは扉の前の半分を埋め、ほとんどバリケードと化していました。よほどお花が好きなオーナーさんなのでしょう。
玄関を入って左前方にある番台で湯銭を支払います。番台には手芸のタペストリと並んで、台湾の蝶の標本が飾られていました。どなたか関係者にこの手の趣味者がいらっしゃるのでしょうか。番台と反対側は、ソファーやテレビが置かれた休憩スペースです。
脱衣室はごくごく普通の公衆浴場スタイルで、番台のような何もないカウンターが、男女両室の境に設けられています。こうした構造の脱衣室って、津軽地方の温泉銭湯を巡ったことのある方にとっては、ものすごく既視感のある光景ではないでしょうか。温泉浴場の構造は、地方によって独特の特徴があるものです。
レンガ色のタイルが敷かれた浴室は、天井の高さのおかげなのか、かなり広々とした空間であるように感じられます。好天に恵まれたこの日は、浴槽の湯面が窓外の木々の緑を映しており、床の色合いと補色関係になって、なかなか美しい色彩美が見られました。浴槽手前は洗い場ゾーンであり、左右の両壁と中央の島に、計14基のシャワー付きカランが設けられていました。カランから出てくるお湯は、おそらく温泉だろうと思われます。
浴槽は大小の2つに分かれています。大きな浴槽は五角形で、窓側の長辺(左右の幅)は約5m、奥行きは広いところで約4mといったところ。ざっと見ても10人以上は余裕で同時入浴できそうな大きさです。カラフルな模様の色ガラスが嵌められた仕切り塀の隅っこに、石膏の天使が佇んでおり、その足元からお湯が浴槽へと注がれています。この湯口に指先を突っ込んでみますと、内部の左側から冷たいものが流れ込んでいたので、この湯口内で加水が行われているらしく、それゆえに万人受けする丁度良い湯加減(42℃前後)が保たれていました。
一方、その右側の小さな槽は4~5人サイズで、浅い造りながら、槽内のお湯は大変熱く、まともに入れそうではなかったので、今回こちらの入浴は遠慮させていただきました。お湯は塩ビ管から落とされており、加水は行われていないようです。熱さにおののく私を嘲笑うかのように、浴槽縁では2匹のカエルが徳利を片手にニヤニヤした表情を浮かべていました。かつてはこのカエルの下からお湯が投入されていたのかな。女湯との仕切り塀に嵌められているカラフルな模様のガラスといい、天使の石膏像といい、この素っ頓狂な面持ちをしたカエルの置物といい、昭和40~50年代の中央線沿線(杉並区)でチラホラ見られたようなメルヘン調のお店に通じるセンスがところどころに散りばめられており、それらを眺めながら入浴していると、得も言われぬ不思議な気分に包まれました。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭なのですが、よくよくテイスティングしてみますと、弱い芒硝感や微かな樹脂っぽい風味、そしてごく僅かな苦味が含まれているようでした。pH8.6という数値が示すように、弱いながらもアルカリ性泉らしいニュルっとした感覚を伴うツルスベ浴感が心地良く、それでいてお湯自体はアッサリしているので、癖のある温泉はどうも苦手という方におすすめの優しいお湯です。また、津軽地方を温泉巡りをしていて、この界隈に多く湧出する火照りの強い食塩泉に飽きてしまったら、ワンクッション置くためにここを訪れるのも良いかもしれません。ほとんど癖が無いので、アッサリサッパリ湯浴みできるのが嬉しいところです。もちろん、両方の浴槽とも放流式の湯使いであり、縁から洗い場へふんだんに溢れ出ていました。お湯に癖は無いものの、飾り等にちょっとした個性が見受けられる、ある意味でユニークな施設でした。
アルカリ性単純温泉 49.4℃ pH8.6 150L/min(動力揚湯) 溶存物質0.710g/kg 成分総計0.710g/kg
Na+:165.8mg(92.08mval%),
Cl-:47.3mg(17.85mval%), Br-:0.1mg, SO4--:204.9mg(57.32mval%), HCO3-:56.8mg(12.48mval%), CO3--:21.6mg(9.67mval%),
H2SiO3:191.8mg,
弘南鉄道・平賀駅より徒歩30分強(2.5km)、あるいは同駅から平川市循環バスの新屋・尾崎線で「町居東口」バス停下車すぐ
青森県平川市町居山元259-1
0172-44-8585
6:30~21:00、12/31と8/13の午後休み
300円
ドライヤー(有料)、他備品類なし(番台で各種入浴道具の販売あり)
私の好み:★★