温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

烏来温泉の野湯(湯溜まり)

2017年04月11日 | 台湾
前回記事で取り上げた台中市の野湯「馬陵温泉」は、現地へたどり着くまでのハードルが高く、また渇水期でないと楽しむことができないので、今回記事ではそれよりはるかにハードルの低い野湯を取り上げます。いや、ある意味でハードルが高くマニアックかも・・・。その場所とは、台北から気軽に行ける温泉として有名な新北市の烏来温泉。
拙ブログでも烏来温泉は何度か取り上げたことがありますが、この烏来は2015年に発生した大水害によって温泉街は濁流に呑み込まれ、道路も寸断され、甚大な被害に見舞われました。しかしながら不撓不屈の精神で復興が行われ、いまではかつてのような姿を取り戻しつつあります。そんな烏来温泉ですが、河川工事中の河原で温泉が自然湧出し、大きな湯だまりができているとの情報を得たので、2017年3月の某日、その様子を確認しに行くことにしました。



まずはMRTの終点である新店から路線バスに乗って烏来へ。この日は朝からあいにく雨模様。傘をさしながら温泉街へ向かいます。


 
大水害の時に牙を剥き出しにして暴れまくった南勢渓(川)では、この日も河川改修工事が行われており、何台もの重機が唸りを上げていました。そんな川の対岸を眺めると・・・ん? あの人ごみは、もしかして・・・



そうです。烏来温泉名物の露天公衆浴場で湯浴みに興じている人々です。雨に打たれながら、この日も大勢の人々が露天風呂の温泉に入っていたのでした。烏来の人は、雨にも水害にも負けません。実に逞しいのです。


 
さて、私はバスターミナルから橋を渡って老街へ。一見するといつも通りの光景ですが、水害の際にはここも被害に遭ったんだとか。訪れたのは平日かつ雨だったためか、観光地だというのに人影はまばらでした。



老街を抜けてさらに橋を渡ります。この橋の上から南勢渓の下流の方を眺めると、左岸にさきほどの露天公衆浴場が見えます。でも、今回そこには行きません。



同じ橋の上から、今度は上流側を眺めてみます。すると・・・



川の水面と礫の河原ちょうど境界あたりから、白い湯気がゆらゆらと上がっているではありませんか! これが今回の目標である湯溜まりなのでしょうか。そのことを確認すべく、旅館が立ち並ぶ街路の裏手に出て、その湯気が立ち上がっている場所を目指しました。


 
旅館街裏手の川岸には数多のポンプが設置され、そこから蜘蛛の巣のように無数の配管が伸びていました。各温泉旅館で使われる温泉はここでポンプアップされ、宿まで引湯されているのでしょう。つまりこの河原一帯では、温泉がたくさん湧いているのです。


 
河原に出てみますと、礫が広がる河原に複数の大きな窪みがあり、そこにお湯が溜まって湯気が上がっていたのでした。自然にこんな窪みができるはずもないので、人為的に掘られたものでしょう。


 
画像では伝わりにくいのですが、一つ一つの湯溜まり結構大きく、深さもしっかり確保されています。人力ではなく、重機で掘ったのでしょう。特に湯口のようなものはないので、おそらく窪みの底から温泉が自然湧出しているものと思われます。それだけ当地は湯量豊富なのですね。しかもちょうど良い感じの湯加減なのです!


 
私が傘をさしながらこれらの湯溜まりを見学していると、どこからともなくやってきた一人の中年男性が、やにわにその場でシャツを脱ぎ、ジーパンのまま湯溜まりに入って湯浴みをしはじめました。大混雑の露天公衆浴場とは対照的に、こちらはほとんど誰もいないので、公衆の面前で入浴することが平気な方や、野湯に慣れている方、そして多少の不衛生に目を瞑れる方なら、混雑回避が可能なこちらの野湯が良いかもしれません。実際に、その湯溜まりに入っているおじさんは、とても気持ちよさそうな表情を浮かべていました。
ただ、この湯溜まりは河原の窪みでお湯が自然湧出しているだけのシンプルな野湯ですから、着替える場所や雨よけのテントなど、入浴準備のための設備や備品類は一切ありません。このため、もしこの野湯に入る場合は、着替えポンチョと水着などを持参する必要があります。私はこの時そのいずれも持っていなかったので、ここで入浴することはできませんでした。というか、この数時間後に桃園空港から出発する飛行機で帰国しなければならなかったので、呑気の野湯を楽しんでいる余裕はなかったのでした(残念)。いや、もし時間があったとしても、決して綺麗とは言えない川水が混ざっているこの野湯に入ろうという気持ちになれたかどうか、かなり疑問です。

烏来温泉での入浴といえば、心理面や衛生面などいろんな意味でビギナーにはハードルが高い公衆露天風呂を利用するか、あるいは各旅館での日帰り入浴や宿泊が一般的な入浴方法ですが、こうしたワイルドな湯浴みもできますよ、ということを紹介したく、今回記事に致しました。ちなみにここの河原には、2015年の大水害以前にも湯溜まりがあり、当時は多くの人で賑わっていたんだとか。ということは、河川工事が進んで河原が埋め戻されなければ、再びこの湯溜まりに野湯目当ての観光客が戻って来るかもしれませんね。空いている野湯に入れるのは今のうちなのかも。




まだまだ紹介したい台湾の温泉ネタがあるのですが、それらはまた後日改めて取り上げることとして、次回記事からは日本国内・青森県の温泉に戻ります。




コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする