冬の福島温泉めぐり。続いては安達太良山の麓にある中ノ沢温泉へと向かいました。訪問の数日前に、拙ブログでリンクを張らせていただいておりますhiroさんのブログを拝見していたら、中ノ沢温泉「大阪屋旅館」のお湯がいつになく濃厚な白濁を呈していると取り上げていらっしゃったので(※)、果たしてどんな様相なのか自分の目でも確かめてみたくなった次第です。玄関の「入浴500円」という掲示を確認しながら、帳場にて日帰り入浴をお願いしました。
(※)hiroさんのブログ記事はこちらをご参照ください。
糸車や古箪笥などの民芸品が並ぶ廊下を進んだ先に紺の暖簾が掛かっていました。「生粋湯 栄寿の湯」という浴室名なんですね。
えてして冬のお風呂は湯気が篭りがち。窓から陽光が降り注ぐ室内は、いつもなら照明不要なほど明るいのでしょうけど、この時は室内に充満した湯気の影響で光が拡散し、かえって足元の視界も覚束ないほど濃く煙っていました。尤もこうした曇りは、寒さの中でお湯の暖かさを実感させてくれる冬の温泉らしい情緒と言えましょう。
内湯にはシャワー付きカランが4基設けられています。浴槽は1辺3.5mの直角三角形の角を面取りしたような、ホームベースのような形状をしたものがひとつ据えられています。槽内にはチャコールグレーのタイルが張られているようですが、底にたくさん沈殿している湯の華のために、あたかも青白く染まっているように見えました。
湯口からは熱いお湯が注がれており、縁の切り欠けから溢れ出ています。循環など行われていない完全放流式の湯使いです。加水することなく湯加減を調整するためか、投入量はやや絞られていましたが、それでも湯船はかなりの高温でしたから、入りやすくするためにお湯をかき混ぜたところ・・・
湯船のお湯は湯の華によってたちまち強く白濁し、これまで底がちゃんと目視できるほどの透明度があったのに、掻き混ぜた後は全く見えなくなってしまいました。上画像は内湯における、濁る前と後を比較したものです。左(上)画像は掻き混ぜる前の状態であり、槽内のステップが見えるほどの透明度が確保されていますが(ステップの白色は全て沈殿です)、掻き混ぜた後の右(下)画像では、お湯が強く乳白色に濁り、ステップがすっかり見えなくなっています。この手の濁り方をする温泉は、数分も立てば再び湯の華が沈殿し、透明度も徐々に回復してゆくものです。
続いて露天風呂「夢の湯」へ。内湯よりちょっと低いところにあるので、庭間を伸びる石の段を下ってゆきます。日本庭園風の岩風呂は、当世のお客さんから受けが良さそうな古民家調の造り。池のように大きな湯船の真ん中に巨大な岩が屹立しており、景観のアクセントのみならず、入浴中の背もたれとしても活躍してくれます。
内湯から出てすぐのところには露天を見下ろす展望台があり、左(上)画像はそこから眺めたものです。周囲の建物や駐車場からは見えてしまいそうですが、こっちは男ですから見えたところで大したことはありません。露天風呂専用の更衣小屋もあり、おそらく宿泊客はこちらからも利用ができるのでしょう。
庭園の中の露天風呂に張られているお湯は、神秘的な美しさを放っているターコイズブルー。大きな岩風呂や民芸調の構造物にこの美しい青白色の温泉が輝いており、この世のものとは思えない寓話のような世界が展開されていました。こりゃすごいぞ!
展望台の下は洞窟風呂。湯気とともに硫黄の香りが洞内に篭り、お湯の滴る音が響いて、なんとも言えない幻想的な雰囲気です。
洞窟風呂の近くにある筧から、酸っぱい匂いを放つ透明のお湯が注がれています。露天も完全放流式の湯使い。私が入った時のお風呂は、槽内に万遍なく付着した湯の華によってミステリアスな青白色を呈しつつ、底面がはっきり見えるほどの透明度を保っていたのですが・・・
槽内を動きまわって沈殿している湯の華をかき回すと、まるで積乱雲が発生しているかのようにモヤモヤっと濁りはじめ、あっという間に透明度ゼロの真っ白な強い濁りが発生しました。
白濁のビフォー・アフターを、上から見下ろした画像で比較してみます。左(上)画像は濁る前。右(下)画像が濁った後です。その違いは一目瞭然ですね。
続いて、お風呂に浸かった視線から比較してみましょう。同じく左(上)画像は濁る前。右(下)画像が濁った後です。
濁りをもたらす沈殿を手にとってみたところ、ドロドロとしたレモンイエローの湯泥が大量に底へ積もっていました。中ノ沢温泉は沼尻元湯から引湯しており、通常は弱い青白色の懸濁を呈し、白い湯の華がチラホラ舞う程度ですが、なぜかこの時は珍しく夥しい量が沈殿しており、ステップの岩すら見えないほど強い濁りを見せていました。源泉から温泉を引いてくる過程で、いままで何処かで溜まっていた湯泥が、何らかの拍子でドバっと流れこんじゃったのかもしれませんね。今回の訪問に際して参考にさせていただいたhiroさんのブログを拝見しますと、hiroさんが確認なさった日には筧から出てくる時点で既に濃厚に白濁しているのですが、私の訪問日ですと筧のお湯は透明に戻っており、強い濁りは槽内の沈殿を撹拌することによって発生したのでした。つまり引湯からの濁りは収束へ向かい始めていたのかもしれません。いずれにせよ、イレギュラーな現象であることは間違い無さそうです。
口腔の粘膜を強く収斂させ、歯をキシキシしてしまうような強い酸味、いわゆる明礬的な味覚と匂いが感じられる他、硫酸塩泉的な味も感じられます。強酸性のお湯らしいヌメリを伴うツルスベ浴感が大変気持ち良く、露天では長湯仕様の40℃前後に落ち着いていたので、ワンダフルな濃厚白濁に浸かりながら、じっくり長湯させていただきました。源泉からかなりの隔たりを経ているとはいえ、とっても素晴らしいお湯でした。
沼尻元湯
酸性・含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 68.3℃ pH2.1 13400L/min(自然湧出) 溶存物質2.662g/kg 成分総計2.761g/kg
H+:7.9mg(19.11mval%), Na+:113.7mg(12.07mval%), Mg++:74.5mg(14.97mval%), Ca++:231.5mg(28.20mval%), Al+++78.8:mg(21.39mval%), Fe++:8.6mg,
F-:18.4mg, Cl-:582.5mg(39.38mval%), Br-:3.0mg, HSO4-:274.5mg(6.78mval%), S2O3--:6.1mg, SO4--:1025mg(51.15mval%),
H2SiO3:155.4mg, HBO2:26.1mg, H2SO4:5.5mg, H2S:98.7mg,
(平成26年7月2日)
※私が訪問した2015年1月時点で館内に掲示されている分析表は平成16年のものでしたが、別施設にて最新のデータが入手できましたので、この記事では新しいデータ(抄出)を掲載させていただきます。中ノ沢温泉はどのお宿でも沼尻元湯からお湯を引いているので、分析表上ではどの宿も共通です。
磐越西線・猪苗代駅より磐梯東都バスの達沢・高森方面行で「中ノ沢温泉」下車
福島県耶麻郡猪苗代町大字蚕養字沼尻山甲2855-138 地図
0242-64-3016
ホームページ
日帰り入浴時間不明(10:00~16:00という情報あり)
500円
貴重品は帳場預かり、シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★