俺はさ、恋愛とかも、それほどのめりこまないタイプなんだ。
結婚も、妻のほうからアプローチされて、流れるように結婚して、流れるように離婚した。
別に、妻じゃなくても良かったんだと思う。
千春とのことも、あ、千春さん、ま、いっか。太郎君の前じゃないし、千春で。
千春と同じ部署になって、河合さんと3人で営業で行動するようになって、二人とも俺に気があるなって気が付いて。
そういう時も俺、そつがないっていうかさ、天秤にかけるわけさ。
河合さんは若くて可愛いけど、いろいろ面倒だろうなとか。
俺はもう結婚とか子どもとかはいいかなって。
そうなると千春の方が付き合うなら楽だなって。
で、軽い気持ちで付き合い始めたんだけど、千春が「太郎に隠れてこそこそ付き合うようなことはしたくない。
結婚する気もないし、経済的に頼る気もないし、何も変わらないとは思うけど、
ただ太郎と、スマートのマスターには付き合ってることを隠したくない。」って言って。
俺、何度か会ったけど、太郎君もマスターもいい人たちだなって思ってたし、嫌われてないだろうなって思ってたから
軽い気持ちであの日スマートに行ったんだ。
千春は、マスターのことをお兄さんみたいなものだって言ってたし、太郎君ともいい親子関係を築いてる感じだったから、「よろしくな!」みたいな軽い挨拶ですむって思ってた。
でもさ、千春が俺たちのことを言った瞬間のマスターの顔見て「この人は千春に惚れてるんだ。」って気付いて、
太郎君のうろたえたような顔見て、俺の方が百倍うろたえたよ。
太郎君はうろたえた顔した後、すぐに「すみません、少し頭冷やします。」って一礼してスマート出て行ったんだ。
千春は「大丈夫。あの子は大丈夫よ。」って言いながら、一番自分が大丈夫じゃなくて、
マスターだけがいつもの表情に戻って「コーヒー飲みますか。」って、場を作ってくれようとしたんだけど、マスターの気持ちに気付いた俺はもういてもたってもいられなくなって「とりあえず今夜はこれで帰ります。」って
逃げるように帰ってしまったんだ。
太郎君が家を出たって聞いて、初めはさ、18歳くらいでもまだ母親の恋愛って認められないものかな、まだまだ子どもだななんて思ったりした。
千春はすごく落ち込んでて、「しばらくは会えない。」って言ってきた。
でも、その落ち込みぶりを見ながら、俺は心のどっかで、「千春にとって一番が太郎君で二番が俺なんだな。」って。
俺の方がよっぽど子どもだな。
もし、千春が「別れよう」って言っても引き止めるようなことはしないで、潔く別れてあげよう、なんてこと考えてた。
上から目線ってやつだな。
もめ事の嫌いな、そつのない俺らしいだろ。
俺、絶対マスターに負けてるな。千春への気持ちも、太郎君への気持ちも。
っつーか、俺には愛が足りないな。
妻にも娘にも、恋人にも、人類にも、犬にも猫にも。」
コーラの氷を見つめながら聞いてたオレは、荒木さんの声のトーンが少し変わったことに気付き目を上げると
荒木さんは静かに泣いていた。
荒木さんと駅で別れ、オレはまた耳がちぎれそうになりながら公園を突っ切り家へ帰った。
荒木さんは「ごめんごめん。俺に泣かれても困るよなあ。
今日はありがとな。いろいろ話してくれて。
俺って、スマートじゃアウェーだろ。いろいろ気にはなっても千春からだけの情報しかないから
いつも通りの受け身な俺になってたんだ。
今日、街結君から連絡もらって、ちょっとびっくりした。
太郎君から呼び出されることは覚悟してたんだけどね。
俺には、そんな友達いないなあ、この年にもなって。
今日はさ、『くれは』とのこともあって、ちょっと涙腺が緩んじゃって、お見苦しいとこをお見せしました。
ゴメンな。
千春とも、もっと話してみる。
また連絡するよ。
今度はマックじゃなくて、焼肉とかをがっつりご馳走するよ。」と、いつものしゅっとした荒木さんに戻ってさわやかに去っていった。
結婚も、妻のほうからアプローチされて、流れるように結婚して、流れるように離婚した。
別に、妻じゃなくても良かったんだと思う。
千春とのことも、あ、千春さん、ま、いっか。太郎君の前じゃないし、千春で。
千春と同じ部署になって、河合さんと3人で営業で行動するようになって、二人とも俺に気があるなって気が付いて。
そういう時も俺、そつがないっていうかさ、天秤にかけるわけさ。
河合さんは若くて可愛いけど、いろいろ面倒だろうなとか。
俺はもう結婚とか子どもとかはいいかなって。
そうなると千春の方が付き合うなら楽だなって。
で、軽い気持ちで付き合い始めたんだけど、千春が「太郎に隠れてこそこそ付き合うようなことはしたくない。
結婚する気もないし、経済的に頼る気もないし、何も変わらないとは思うけど、
ただ太郎と、スマートのマスターには付き合ってることを隠したくない。」って言って。
俺、何度か会ったけど、太郎君もマスターもいい人たちだなって思ってたし、嫌われてないだろうなって思ってたから
軽い気持ちであの日スマートに行ったんだ。
千春は、マスターのことをお兄さんみたいなものだって言ってたし、太郎君ともいい親子関係を築いてる感じだったから、「よろしくな!」みたいな軽い挨拶ですむって思ってた。
でもさ、千春が俺たちのことを言った瞬間のマスターの顔見て「この人は千春に惚れてるんだ。」って気付いて、
太郎君のうろたえたような顔見て、俺の方が百倍うろたえたよ。
太郎君はうろたえた顔した後、すぐに「すみません、少し頭冷やします。」って一礼してスマート出て行ったんだ。
千春は「大丈夫。あの子は大丈夫よ。」って言いながら、一番自分が大丈夫じゃなくて、
マスターだけがいつもの表情に戻って「コーヒー飲みますか。」って、場を作ってくれようとしたんだけど、マスターの気持ちに気付いた俺はもういてもたってもいられなくなって「とりあえず今夜はこれで帰ります。」って
逃げるように帰ってしまったんだ。
太郎君が家を出たって聞いて、初めはさ、18歳くらいでもまだ母親の恋愛って認められないものかな、まだまだ子どもだななんて思ったりした。
千春はすごく落ち込んでて、「しばらくは会えない。」って言ってきた。
でも、その落ち込みぶりを見ながら、俺は心のどっかで、「千春にとって一番が太郎君で二番が俺なんだな。」って。
俺の方がよっぽど子どもだな。
もし、千春が「別れよう」って言っても引き止めるようなことはしないで、潔く別れてあげよう、なんてこと考えてた。
上から目線ってやつだな。
もめ事の嫌いな、そつのない俺らしいだろ。
俺、絶対マスターに負けてるな。千春への気持ちも、太郎君への気持ちも。
っつーか、俺には愛が足りないな。
妻にも娘にも、恋人にも、人類にも、犬にも猫にも。」
コーラの氷を見つめながら聞いてたオレは、荒木さんの声のトーンが少し変わったことに気付き目を上げると
荒木さんは静かに泣いていた。
荒木さんと駅で別れ、オレはまた耳がちぎれそうになりながら公園を突っ切り家へ帰った。
荒木さんは「ごめんごめん。俺に泣かれても困るよなあ。
今日はありがとな。いろいろ話してくれて。
俺って、スマートじゃアウェーだろ。いろいろ気にはなっても千春からだけの情報しかないから
いつも通りの受け身な俺になってたんだ。
今日、街結君から連絡もらって、ちょっとびっくりした。
太郎君から呼び出されることは覚悟してたんだけどね。
俺には、そんな友達いないなあ、この年にもなって。
今日はさ、『くれは』とのこともあって、ちょっと涙腺が緩んじゃって、お見苦しいとこをお見せしました。
ゴメンな。
千春とも、もっと話してみる。
また連絡するよ。
今度はマックじゃなくて、焼肉とかをがっつりご馳走するよ。」と、いつものしゅっとした荒木さんに戻ってさわやかに去っていった。
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