経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

70ドル台うかがう 原油価格 (下)

2018-04-19 08:24:35 | 原油
◇ 日本経済への影響は大 = アメリカのシェール増産は、原油価格の上昇を抑制する。IEA(国際エネルギー機関)が2月に発表した報告書によると、アメリカのシェール石油生産量は過去6年間で74%増加した。このまま増産が続くと、アメリカの原油生産は18年中にもサウジアラビアやロシアを抜いて世界最大になる可能性があるという。にもかかわらず原油価格が上昇したのは、OPEC・ロシアによる協調減産と世界同時好況による需要増加が、シェールの抑制効果を上回ったからに他ならない。

OPECとロシアは減産したにもかかわらず、価格の上昇で収入を増やすことに成功した。したがって協調減産は19年も継続される公算が大きい。このため世界の好況が続く限り、原油価格は上昇すると予想される。ただ価格が上昇すればアメリカのシェール生産も増加すると考えられるので、国際原油価格が急騰する可能性は小さい。

そうは言っても、原油価格が70ドルを上回ってくると、日本経済には大きな影響が出てくる。まず原油やLNG(液化天然ガス)などエネルギーの輸入価格が高騰する。財務省の貿易統計によると、17年の燃料輸入額は15兆8400億円に達した。価格が上がれば輸入額は膨張し、国内の購買力がそれだけ海外に流出することになる。

燃料の価格上昇は、電力とガスの料金に転嫁される。東日本大震災で原発が稼働しなくなってから、電気・ガス料金は上がる一方。震災前と比べて、家庭用の電気料金は約4割、産業用の電力料金は約5割も上昇した。国際原油価格の高騰は、さらなる値上げ要因となるわけだ。ガソリンの小売価格も、すでに2年半ぶりの高さになっている。こうしたエネルギー価格の上昇は家計を圧迫し、企業の競争力を低下させる。

      ≪18日の日経平均 = 上げ +310.61円≫

      ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ


70ドル台うかがう 原油価格 (上)

2018-04-18 08:25:17 | 原油
◇ 中東情勢の悪化で一段高 = 原油の国際価格が高騰している。ニューヨーク商品取引所のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は先週5日間の続伸、週末には一時1バレル=67.71ドルと3年4か月ぶりの高値を付けた。主たる原因は、アメリカがシリアに対するミサイル攻撃に踏み切るという予想が強まったため。米英仏3か国による攻撃は土曜日に強行されたが、これで原油価格はさらに上昇。近日中に70ドル台に載せるという見方が広まっている。

国際原油価格は、昨年秋から上昇基調に入っている。昨年12月には1バレル=52ドル近辺だったものが、ことし1月末には62ドルに。その後は一時的に反落したが、3月からは再び上昇に転じた。価格を押し上げた原因は、OPEC(石油輸出国機構)とロシアによる減産協定の実施。それに世界同時好況の影響で、需要が堅調に推移したことが大きかった。

そこへ最近になって、シリアを中心とする中東情勢の緊迫化が加わった。トランプ大統領はシリアを支援するイランに対しても強硬な姿勢を示しており、中東の情勢は先行き不透明さを増している。原油の生産や輸出に支障が出るかもしれない。そうした思惑から、投機筋が先物を買い始めた。先物の買い越し額は、すでに過去最高の水準に達している。

そんななかIEA(国際エネルギー機関)が「OECD(経済協力開発機構)加盟国の原油在庫量が減少した」と発表。一方、サウジアラビアの要人は「ロシアとの減産協定は19年も実施する方向で、さらに10年間の長期協定にすることも検討中」と発言した。これらの動きも原油価格を押し上げる一因であり、70ドル説の根拠ともなっている。

                            (続きは明日)

      ≪17日の日経平均 = 上げ +12.06円≫

      ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ


株価のカギは 業績予想

2018-04-17 08:01:55 | 株価
◇ 円相場をどう見通すか = 荒れていた株式市場に落ち着きが戻ってきた。先週末の日経VI(恐怖指数)は18.46まで低下している。この指数は10-20が平常値と言われているから、平常な状態の上の方にまで回復したわけだ。市場が落ち着きを取り戻した原因は、投資家に不安を与えていた複数の事件が、そろって緊張感を緩めたからである。

たとえば北朝鮮は米朝会談が行われるまで、核実験やミサイル発射はしないだろう。米中間の貿易戦争も第1ラウンドの関税引き上げは実施されたが、第2ラウンドは少なくとも6月までは実行されない見通しになった。新たに米英仏3国のシリア軍事介入という事件が発生したが、戦線が拡大する兆候はない。国内の森友・加計問題も決着がつかないまま、倒閣にまでは至らないようだ。こうして緊張感は、ひところより薄らいだ。

しかし、これらの問題は解決したわけではない。時限爆弾のように、いずれは爆発するかもしれない。したがって株式市場にとっては、いぜん悪材料である。だから日経VIは、平常値の下の方までは下がらない。こうした状況のなかで、当面の株価を押し上げる唯一の要因は、これから本格化する企業の3月期決算。それも決算の内容ではなく、19年3月に向けての業績予想だろう。

すでに18年3月期の経常利益は、前年比8-9%の増益という予想が固まっている。そこで19年3月期の予想がこの水準を維持できないと、株価の押し上げ要因にはなりにくい。その18年度の予想は、経営者が通期の円相場をどう見るかによって大きく変わってくるだろう。仮に100円近くを想定する企業が多くなると、増益率は縮小せざるをえない。これから始まる決算発表で、各企業がどんな想定レートを打ち出してくるか。そこがポイントになる。

      ≪16日の日経平均 = 上げ +56.79円≫

      ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 


今週のポイント

2018-04-16 07:25:27 | 株価
◇ 落ち着きを取り戻した市場 = 株式市場に落ち着いた動きが戻ってきた。ダウ平均は先週427ドルの値上がり。ただ前日比が上下とも500ドルを超えた日はなかった。1か月ぶりのことである。北朝鮮・米中貿易戦争・IT企業の規制問題などが小康状態になって、市場に安心感が広がったためだろう。新しくシリアへの軍事介入問題が飛び出してきたが、先週の時点では市場はまだ消化し切れずに模様眺めの状態だった。

日経平均は先週211円の値上がり。こちらも前日比が150円を超えた日はなかった。3か月ぶりのことである。また円の対ドル相場も107円台の半ばで安定していた。しかし東京市場の場合は、政局の混迷という不安材料を抱え込んでいる。このため国際環境が小康状態になっても、ニューヨークほど元気にはなれない。

日米ともに、今週あたりから3月期の決算発表が本格化する。アメリカの調査では、1-3月期の利益は2ケタの増益に。4月以降の見通しも、大規模減税への期待もあって悪くはない。一方、日本企業の3月期決算は10%弱の増益だが、18年度の見通しは必ずしも明るくない。この差も、日米の株価に反映され始めたような気がする。

今週は18日に、3月の貿易統計。20日に、3月の消費者物価と2月の第3次産業活動指数。アメリカでは16日に、3月の小売り売上高。17日に、3月の工業生産と住宅着工戸数。19日に、3月のカンファレンス・ボード景気先行指数。また中国が17日に、1-3月期のGDP速報、3月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお17日には、フロリダで日米首脳会談が行われる予定。

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ
      

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-04-15 07:44:45 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪28≫ 人間を超える? = 次の部屋に入ると、壁際にロボットが100体あまりも整列していた。その壮観に目を奪われる。隣のマーヤも息を呑んでいた。ショッピー館長が、いちばん手前のロボットを指して説明を始める。

「これは350年ほど前、チャイコ星で造られた初期のロボットです。ご覧のように、背が低く動物に似ているでしょう。体は金属製で真っ白に塗られています。前に立った人間に『こんにちは』ぐらいの挨拶はできますが、まだ足がなくて車で動いています。可愛いいロボットのご先祖さまですね。
 
でも20年もたつと、この通り。2足歩行で、走ることもできるようになりました。背が高くなり、形も人間並みになっています。ここで見かけより進歩したのは、脳内構造です。記憶力と分析力では、人間を完全に上回りました。ですからチェスのような競技をやらせると、人間の方がどうしても負けてしまう。競馬の予想でも、圧倒的に当たる確率が高い。この結果、チェスや競馬などのゲームやギャンブルは、しだいに廃れてしまったのです」

そういえば、日本でも将棋に強いロボットが現われて話題になっていた。あれから将棋は廃れて行ったのだろうか。

「そして315年前、私たちの祖先がチャイコ星を脱出したころには、いわゆる機械的ロボットは完成していました。いろんな工場に大量のロボットが配置され、人間は多くの労働から解放されたのです。しかし生産工程で不具合が生じるとロボットは対応できず、少数の人間が管理者として必ず働いていました」

――その次は、ロボットの完全な人間化ですね?

「はい、その研究はチャイコ星時代の最後の10年間に集中的に行われました。そして私たちの祖先がダーストン星に移住したころには、実験的には成功していたと言われています。ダーストン時代になってからも研究は続けられ、いまからほぼ100年前に人間並みの判断力と感性を持ったロボットが世に送り出されています」

ショッピー館長はラフマとマーヤの顔を覗き込みながら、こう付け加えた。
「いまのロボットたちは、自分で新しい知識を吸収し、思考のレベルを高めることができます。経験を積むことで、少しづつですが自分を改造する能力さえ持っています。だから、こんなに愛らしいラフマがここにいるんです。
でもロボットたちは、いずれ人間をあらゆる点んで超えて行く可能性も少なくありません。これから人間とロボットが、いかに共存していけるか。これが大問題。人間とロボットとの結婚問題も、ここから発生しているのです」

                            (続きは来週日曜日)


Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>